【インタビュー】FEVER 333、「君は単なるリスナーじゃない」
1月18日、デビュー・アルバム『ストレングス・イン・ナンバーズ』のリリース日当日、フィーバー333の3人は、ロサンゼルスの市庁舎前でデモに参加していた。この週、ロサンゼルスでは大規模な公立教師のストライキが行なわれており、金曜朝はロサンゼルスのダウンタウンで、トム・モレロらを始めとするアーティスト達のパフォーマンスを交えたデモがあった。フィーバー333は出演者としてではなくデモの一員としてそこにいて、デモ終了直後にこの取材に応じてくれた。
2017年に結成された彼らは、昨年発表のEP『メイド・アン・アメリカ』のタイトル曲が第61回グラミー賞の「最優秀ロック・パフォーマンス」部門にノミネートされるという快挙をすでに成し遂げている。フィーバー333の登場とアルバム『ストレングス・イン・ナンバーズ』の誕生は、ロックファンだけでなく、世界にとって大きな事件だと思う。3月の単独来日公演を見逃さないで欲しい。
◆ ◆ ◆
■ 基盤は、コミュニティー 、チャリティー 、チェンジ
── まず、昨年7月の<フジ・ロック・フェスティヴァル>での日本初公演はいかがでしたか?
アリック・インプロタ(Dr)「僕の人生の中で、トップ3に入るショウだったよ」
ステファン・ハリソン(Gt)「僕もそう思う」
ジェイソン・エイロン・バトラー(Vo)「最高だった。俺達が慣れ親しんでる文化とは全く違う土地なのに、観客がもの凄く音楽に熱中してくれてるのを見たからそう感じたんだと思う。誰もがショウに集中してて、アメリカでは見たことがないほど熱心だった。素晴らしかったよ。台風が直撃して大雨が降ってて、僕達は服を脱いだんだけど」
アリック「雨が降ってても観客はおかまいなしで、最初から最後までずっと同じ場所でショウに熱中してた。僕達はどのショウでも最高のエネルギーでパフォーマンスをしているけど、あれほど観客が集中し続けているのを見て、感動したよ。観客の皆に、心から感謝しているよ」
── 良かったです。日本のファンの多くは、フジロックの会場か、ライヴ配信であなた達のことを発見したと思うので。
ジェイソン「このバンドをあのショウで知るのは、すごくナイスな方法だったと思うな。ワイルドなショウだったから(笑)」
アリック「うん、服を脱がなきゃならなかったけど(笑)、楽しかったよ」
── ショウ以外での日本の印象は?
ステファン「僕は日本が大好きで、すでに4、 5回行っているんだ。日本食は最高だし、日本の全てが最高だよ。子供の頃、日本のアニメをよく観てたんだ。『カウボーイ・ビーバップ』とか、『ナルト』とか、『ドラゴンボールZ』とか。だから、日本は天国にいるような気分だったよ。パーフェクトだった!」
ジェイソン「俺は去年フジロックの前に、妻と息子と一緒に日本に2週間旅行に行ってたんだ。素晴らしかったよ。文化の違いは確かに感じたけど、その違いがすごく魅力的で、楽しめたよ。日本の人達は本当に礼儀正しいと思った。社会の全てが調和しているような感じがしたな。地下鉄に乗る時とかさ、皆がお互いの空間に気を配っているから、楽だったよ。ニューヨークの人達なんて、一斉に乗ろうとするからね」
アリック「僕は来日公演で初めて日本に行ったんだけど、滞在はたった1日だったから、僕の彼女に電話して、『次回はもっと早く日本に入って楽しみたい』って話してたんだ。僕はそれまで見たことのないようなユニークな場所を旅するのが好きなんだけど、日本では本当にそれを感じたよ。目にするもの全てが、すごくユニークだった。興奮したよ」
── よく聞かれる質問だとは思いますが、改めてこのバンドの結成の経緯を教えて下さい。
ジェイソン「バンド結成の舵を取ったのは、俺達のプロデューサーのジョン・フェルドマンとトラヴィス・バーカー(Blink-182)なんだけど、俺が彼らとバンドの話をした後にすぐに連絡したのが、ステファンとアリックだった。ステファンとは約10年前、アリックとは10年以上前からの付き合いなんだ。アリックと俺は、俺が昔やってたバンド(Letlive)のために一緒に曲作りをしたり、俺のソロ・プロジェクトで共作したりしてて、バンドのメンバーが抜けた穴を埋めてくれた時もあった。そしてステファンのバンド(The Chariot)とは、何度も一緒にツアーしてて。昔からアリックともステファンとも、何か一緒にプロジェクトをやろうっていう話をしてたんだよ。俺達は同じ考え方と信念を共有していて、アートを通じてやりたい事も一緒で、共に成長できるって感じたから、この3人でバンドを始めることにした。筋が通ってたから、試しにリハーサルをする必要もなかったよ」
── フィーバー333というバンド名には、どういう意味が込められているんですか?
ジェイソン「バンド名の3つの3は、アルファベットのC(CはABCの3番目の文字)のことなんだ。そして、それぞれのCは、コミュニティー(地域) 、チャリティー(慈善) 、チェンジ(変化)を意味してる。俺達の活動の全ては、この3つを基盤にしてる。俺達が啓発したいコミュニティーにフォーカスして、チャリティーなどの活動を通じて地域に貢献したいんだ。俺達は、ウォーク・イン・マイ・シューズ基金っていう慈善団体活動もやってる。だから、俺達はチャリティーと地域への貢献にかなりフォーカスした活動をしてるんだけど、この二つは相互に関係し合ってる。そしてチェンジは、俺達がポジティヴな方法で変化を起こしたいと思ってることを表してる。こういう話をしたり、その議論に加わったりする人々が安全を感じられる社会を創造していきたいんだ。人類が前進できるようにね」
── バンドのシンボルマークとしてブラックパンサー(黒ヒョウ)を使っていますが、このマークについても教えていただけますか?
ジェイソン「武装自衛組織のブラックパンサー党(1967年に誕生した政治運動組織で、革命による黒人の解放、正義、教育、暮らしの改善を提唱、推進した)が行なったやり方に、俺は心を動かされた。それは俺達が世界に届けようとしているメッセージと繋がっているものだったんだ。実は俺達は、ブラックパンサー党のエンブレムを作ったエモリー・ダグラスに連絡を取って、俺達のエンブレムを見せたんだ。彼は『気に入った』って言ってくれた。ブラックパンサー党が体現していたことと、彼が続けたかったことを表していると思うって。俺達は、変化とコミュニティーという考えに敬意を表したくて、このシンボルを選んだんだ。でも俺達は、暴力的なやり方で活動してるわけじゃない。ブラックパンサー党は、暴力を基に創設されたものではなかった。攻撃されて自衛の必要を感じた時だけ、それに対抗する行動をするというものだった。動物の黒ヒョウも、そういう行動をしているんだよ。俺達はその考え方を取り入れて、このバンドで俺達独自の活動をやろうとしているんだ」
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