【ライブレポート】倉木麻衣、“秋”を表現した東京公演で「“なせばなる”が私の座右の銘」

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倉木麻衣が11月1日、東京国際フォーラム ホールAにてツアー<Mai Kuraki Live Project 2018 “Red it be 〜君想ふ 春夏秋冬〜”>の東京公演を開催した。全4公演の規模で行われた同ツアーは10月13日の千葉・成田国際文化会館 大ホールを皮切りに11月11日の名古屋・日本特殊陶業市民会館まで、コンセプトアルバム『君 想ふ~春夏秋冬~』のストーリー展開が楽しめる内容となった。ツアー3公演目となる東京公演のレポートをお届けしたい。

◆倉木麻衣 画像

美しい日本の四季をテーマにした初のコンセプトアルバム『君 想ふ~春夏秋冬~』の世界を再現する、わずか4回のみのプレミアム・ライブ。Mai Kuraki Live Project 2018“Red it be~君 想ふ 春夏秋冬~”の第3回目・東京国際フォーラム ホールA公演は、春夏秋冬の“秋”を豊かに表現するビジュアルと、数々の名曲が織り込まれた忘れがたい一夜になった。


階段で繋がれた二段重ねのステージ全体に投影される、鮮やかな紅葉と七色の帯の映像が目に沁みる。艶やかな赤いドレスに身を包んだ倉木麻衣が1曲目「渡月橋 ~君 想ふ~」を歌いだすと、会場のあちこちで振られるペンライトの赤が紅葉のように揺れる。2曲目「今宵は夢を見させて」はアップテンポのダンサブルな曲だが、2本のアコースティック・ギターでアレンジされた和風情緒豊かなサウンドは、あくまで秋の季語としてせつなく響く。バンドの演奏は実に色彩豊かで、倉木麻衣の繊細でエアリーな歌声も格別に美しい。アルバムの世界観を再現する、素晴らしいオープニングだ。

ビートの利いたロックテイストの「SUMMER TIME GONE」から、ゆったりと流れるミドルバラード「Your Best Friend」、そしてグルーヴの利いた「Tomorrow is the last Time」から代表曲「Secret of my heart」へ。赤いドレスからノースリーブ、そしてゴールドのローブを羽織る姿へ、曲に合わせた細かな衣装チェンジは見ているだけで楽しい。「Tomorrow is the last Time」の背後に映される、幾つもの灯籠のあかりが幻想的で、「Secret of my heart」のステンドグラス風の映像はとても荘厳。「Light Up My Life」の、真っ白なスモークと星空を映し出すスクリーンの美しさに息を呑む。細部に至るまで丁寧に作り込まれた、歌の魅力をバックアップするビジュアルと音。その完成度の高さにぐんぐん惹き込まれてゆく。



「今回のコンセプトアルバムは、四季と共にお送りしています。今日は秋公演、メッセージは届いてますでしょうか? 何かしら、みなさんの想いを重ねて聴いていただければと思います」

なせばなる、なさねばならぬ、何事も。「それが私の座右の銘です」と語る倉木麻衣が、このツアーのために選んだカバー曲は「Let It Be」。言わずと知れたザ・ビートルズの名曲だが、ゴスペル調のエモーショナルな曲調が、彼女が歌うとせつなくも和を感じる歌に生まれ変わるから不思議。そこから会場全体が手拍子で一つになった「Be Proud ~we make new history~」を経て、「真っ赤な傘 ~京都の雨~」「Time After Time ~花舞う街で~」、そしてアルバムのテーマ曲と言える「花言葉」と続いた3曲連続の和風情緒バラードは、間違いなくこの日のライブのハイライトだった。画面いっぱいに舞い踊る赤い傘から、ステージ全体を覆いつくすような夜桜のシーンを経て、四季それぞれの想いを織り込んだ「花言葉」のフィナーレへ。アルバム『君 想ふ ~春夏秋冬~』の世界をさらに豊かに広げてくれる、名場面の連続だ。



しかし、ライブはこのままでは終わらない。突然鳴り響くEDMサウンドと、キレキレのパフォーマンスを見せるダンサーたちの熱演に導かれ、衣装チェンジを済ませて再登場した倉木麻衣は、なんとベリーショートのウィッグに近未来的なシルバーの衣装。拳を高々と振り上げ、ステップを踏みながら「WE ARE HAPPY WOMEN」を歌い、ダンサーと共に階段を使ったキュートなパフォーマンスを見せる「BE WITH Ü」へ。はんなりとした前半のムードからの、なんと鮮やかな転身だろう。

「もっともっと熱く! もっと行きましょう!」



明るくファンキーな「Stand Up」から、ロッキンなダンス・チューン「SAWAGE☆LIFE」へ。“S・A・W・A・G・E・LIFE!”と、観客全員参加のコール&レスポンスもばっちり決まった。さらに強力なEDMチューン「Wake me up」へなだれ込み、間髪入れずに「Do it!」へと繋げてゆく、疾風怒濤の展開は圧巻のひとこと。前半のしとやかさはどこへやら、アスリートのようにステージ狭しと走りまくり、ダンスも歌も完璧に決める倉木麻衣の姿から、19年間第一線で走り続けてきたパフォーマーとしての確かな自信とプライドが伝わってくる。



アンコールに突入しても、勢いはそのまま。ハードロックなギターリフがうなりをあげる「無敵なハート」で、マッチョな男性ダンサーズに負けずに歌い踊る倉木麻衣を、大歓声と手拍子とペンライトが後押しする。そして誰もが聴きたい倉木麻衣クラシックスNo.1、「16歳の時、この曲がなかったら今の私はいませんでした」と言って歌ったデビュー曲「Love, Day After Tomorrow」の、時を超えるみずみずしさ。さらにこの日のラストチューンになった「always」に込めた、彼女を支えるすべての人へのメッセージ。一緒に生きる場所があるから。風向きが変わった今、飛び立とう──。音が消える最後の瞬間まで広いステージを走り回り、ほとんど客席のエリアにまで飛び込んで手を大きく振る倉木麻衣。その笑顔は19年間ずっと、ファンにとって常に元気と勇気の象徴だ。

「東京公演、みなさんに心からの感謝を申し上げます。また笑顔でお会いしましょう!」


11月11日、名古屋でのツアー・ファイナルを終えた倉木麻衣は、いよいよ12月からのデビュー20周年イヤーへ向けて走り出す。「なせばなる」のポジティブ精神を胸に、愛と元気の歌を唇に、どんなアクションを見せてくれるのか。新しいパーティーのスタートが、今から待ち遠しくてたまらない。

取材・文◎宮本英夫

■<Mai Kuraki Live Project 2018 “Red it be 〜君想ふ 春夏秋冬〜”>11月01日(木)@東京国際フォーラム ホールA セットリスト

01. 渡月橋 ~君 想ふ~
02. 今宵は夢を見させて
03. SUMMER TIME GONE
04. Your Best Friend
05. Tomorrow is the last Time
06. Secret of my heart
07. mi corazon
08. Light Up My Life
09. Let It Be (cover)
10. Be Proud ~we make new history~
11. 真っ赤な傘 ~京都の雨~
12. Time After Time ~花舞う街で~
13. 花言葉
14. WE ARE HAPPY WOMEN
15. BE WITH Ü
16. Stand Up
17. SAWAGE☆LIFE
18. Wake me up
19. Do it!
encore
en1. 無敵なハート
en2. Love, Day After Tomorrow
en3. always

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