【ライヴレポート】UNLIMITS、1年半ぶりライヴに第2話の始まり「またな!」

ポスト

8月5日、UNLIMITSにとって約1年半ぶりのライヴとなった主催イベント<夢幻の宴>が下北沢SHELTERにて開催された。

◆UNLIMITS 画像

UNLIMITSは沈黙を続けていた。2016年11月に渋谷O-WESTにて開催された5thフルアルバム『U』のツアーファイナル以後、少しばかり活動が落ち着いた印象はあったが、リフレッシュも兼ねて、ツアーを終えた後はペースダウンするのはどのバンドでもよくあること。おそらく、大部分のファンがそう感じていたのではないか。しかし、2017年1月にOVER ARM THROWが主催したサーキットイベントに出演後、パッタリと動かなくなってしまったのだ。

清水葉子(Vo / G)はソロ名義で弾き語り等の音楽活動を持続させていたが、他の3人は特に表立った動きはなく、何かあるとすれば、大月義隆(G)の日常的なツイートのみ。2005年のデビュー以前から活発なライヴ活動を展開してきただけあって、数ヶ月も経てば活動休止を疑われるのは当然だろう。ライヴ中に清水からそういった発言もあったが、しばしの休息の予定が少しずつ伸びていき、結果的にその歩みは止まっていた。だからと言って、そう簡単に幕を下ろせない想いもある。


決して、UNLIMITSは脆いバンドではない。2ndフルアルバム『トランキライザー』のツアー中に東日本大震災が起こり、「悲しい歌を歌っていいのかわからなくなった」とツアーファイナルのステージ上で清水が涙ながらに吐露しつつも、その意味や意義を消化してよりタフなバンドとして足を踏み出し、2016年には最高傑作とも言える『U』へたどり着いている。メンバーそれぞれに事情もあり、苦悩や葛藤はあったと想像に難くない。

そんな中、2018年4月に突如としてメンバーが集結した写真がTwitter上にアップされ、5月30日にこの日のイベントを発表。やはり、メンバーにとってUNLIMITSは欠かせない存在であった。ファンからは驚きと歓喜の声が上がり、チケットは発売と同時に即ソールドアウト。これにはメンバーもホッとしたと同時に心の底から嬉しかったはず。清水が「SHELTERがガラガラの夢を見た」と語る場面もあったほど、実際にどうなるかは誰にもわからなかったのだ。大事にしてきた繋がりが途切れているかもしれない、そしてそれは自分たちの行動による結果であり、真摯に受け止めるべきこと。そんな懸念をよそに全国各地から熱心なファンが駆けつけた状況は、喜ばしいこと以外の何ものでもなかったのだ。


自らにプレッシャーをかける意味もあったのだろう。この日、ゲストとして招いたのは、郡島陽子(Dr / Vo)が曲タイトルを名付けるほどの盟友であるSABOTEN。ヤッソー(B / cho)はUNLIMITSのタオルを掲げ、キヨシ(G / Vo)は「UNLIMITSが帰ってきた! 盛大にいきましょう!」と復活の歓迎ムードを漂わせながらも、「Hi rock Hi」や「サークルコースター」といった鋭いナンバーで対バンの矜持として序盤から畳み掛けていく。さすがは歴戦のライヴバンド。そのテンション感が凄まじい。

彼らもUNLIMITSの再始動を待ち望み、こうやってしのぎを削り合えることが嬉しいのだろう。中盤にはサケ(Dr./Cho.)を中心にUNLIMITSというバンド名ながら歩みを止めたことをイジる場面もあったが、それも愛がある故。リハーサルをしている立ち姿を観て、「個々の中でUNLIMITSを続けてたんだと思った」と噛み締めながら口にしたキヨシの姿はグッとくるモノがあった。

締めくくりには「ジマ(石島)、ツッキー(大月)、葉子、陽子、みんな! 張り手、打つぞー!」とこれから久しぶりにライヴへ臨むUNLIMITSへのエールを贈りながら、「力士」をプレイ。最後の最後の一瞬まで、SABOTENらしいポジティブでアッパーなムードが満ち溢れていた。


そして、主役であるUNLIMITS。どんな様子かも知らされず、それでも愛し続けてくれたファンが集結しただけあって、お馴染みのSEが鳴った瞬間から、ライヴ前にして燃え尽きるんじゃないかと思うぐらいの歓声が鳴り響く。この1年半の間、もどかしさからUNLIMITSから距離を置いた人もいたであろう。だが、そうであっても目の前でライヴが繰り広げられるということは何よりの喜びなのだ。

メンバーもその意気を受け取り、足元の感触を確かめたかと思いきや、いきなりの「アメジスト」を放ってから続けざまに「フランジア」。キラーチューンの連投にフロアも爆発し、石島直和(B)からは笑みもこぼれるほど。「エターナル」では、緊張からなのか、清水の歌がボヤけるところもあったが、そんなことは意に介さず、序盤戦からとにかく前のめりに突っ込んでいく。現場で命を燃やし続けてきたバンドの譲れないスタンスだろう。



冒頭にも記したが、彼らは常にライヴを繰り広げてきたバンドであり、どうしても1年半というブランクは大きい。本番前のメンバーからはリラックスした雰囲気はあったが、自信満々に構えるというほどではなく、内心には怖気づくようなところもあったに違いない。特にこの日は何の説明もできなかったファンへ感謝を届ける場でもあり、もちろん重要ではないライヴなんて存在しないが、そういった中でも大切に抱きしめたい1本なのだ。

そんな気持ちがいちばん顕著に表れたのは、中盤戦で披露したタイトル未定の新曲であろう。清水がこの日のSHELTERのステージやライヴに来てくれる人を思って作ったと語っていたが、「夢の続きはこの手の中」というリリックもあり、どれだけこのライヴを重んじていたのかが伝わった瞬間だ。まだ曲タイトルも決まってないほど産声を上げたばかりの曲であり、バンドとしてはまだ完成したと言い切れる状態ではないかもしれないが、未来へ進んでいきますという、ずっと待っていてくれたファンへ届けと懸命に鳴らしている姿はとても美しかった。

加えて、曲作りとライヴはバンドの両輪。MCでも「ゆっくりかもしれないけど、自分たちのペースで今後もやっていきます」と清水が語っていたが、その2つが同時に感じられたことによって、より胸を撫で下ろしたファンもいたはず。


終盤戦へ向けてはまさに怒涛の流れ。「月アカリサイレース」から「白い太陽」へと繋ぎ、さらに突き進むべく「蒼」を投下。大合唱も凄まじく、フロア前方ではダイバーが折り重なる状況にもなるほどの狂乱が続いていく。もちろん、攻め立てるだけがUNLIMITSではない。そこからチャンネルを切り替え、「ハロー」のように愛らしさがある曲もしっかりと響かせる。そのしなやかさこそ、他にはない魅力なのだ。

ラストは、心を落ち着かせるようにひと呼吸おいてから「ひこうき雲」。もうフロアはグチャグチャで熱気の渦巻きが尋常ではない。そのエネルギーを受け取り、それ以上のモノとして応えようとするメンバー。清水も「ありがとう!」と何度も叫び、最後は「またな!」と再開を約束してステージを降りた。


本編16曲にアンコール2曲の計18曲、約90分。キーポイントとなった曲たちはほぼピックアップしたオールタイムベストなセットリストであり、最初の一音から最後の一音まで高いボルテージのまま突っ走ったパフォーマンス。多面的に彩られたUNLIMITSの良さを押し出す内容と表現するにふさわしく、第2話の始まりとして十分すぎる内容であったと思う。

ただ、思い返してみれば、この日は最初に「UNLIMITS、始めます」という清水によるいつもの宣言が無かった。たまたまなのだろうが、まっすぐに前を見据えて発せられるあの言葉からスタートするライヴもまた観たいものだ。

次は足を運び続けてきた青森・八戸にて開催される<八食サマーフリーライブ>の出演が決定している。そちらにも注目しつつ、その後はまだ未定ということではあるが、また4人で手を取り合い、進んでいくことを決めた勇姿を追いかけていきたい。

取材・文◎ヤコウリュウジ

■<八食 SUMMER FREE LIVE 2018>

2018年08月25日(土) 青森・八食センター駐車場特設ステージ
open09:00 / start09:30 * adv:無料 / door:未定
▼出演
UNLIMITS / 39degrees / COUNTRY YARD / HER NAME IN BLOOD / HOTSQUALL / MINAMI NiNE / MOROHA / NUBO / PAN / Re:Turn / SABOTEN / SECRET7LINE / THE SKIPPERS / SWANKY DANK / TOYBEATS / waterweed / OPENING ACT : STUNNER

この記事をポスト

この記事の関連情報