【ライブレポート】GOSPELS OF JUDAS、1st AL『IF』レコ発に“どの系譜にも属さない”独自の輝き

ポスト


GOSPELS OF JUDASが7月18日、東京・新代田 LIVE HOUSE FEVERにて<LIVE “IF” レコ発記念ライブ>を開催した。先ごろ公開したYTとJun Inoueインタビューの最後に「結構凄いですよ……って自分で言っておこうかな(笑)」とライヴへの自信をのぞかせていたYTだが、その言葉に偽りなし。進歩的な発想と緻密な計算に基づいたサウンド&プレイが、これまでのどんな系譜にも属さない独自の輝きを放つ夜となった。

◆GOSPELS OF JUDAS ライブ画像

  ◆  ◆  ◆

GOSPELS OF JUDASは、氷室京介と親交の深いクリエイターが集まり、“自由に、遊びから生まれた音楽をデジタルツールを使ってリスナーに届ける場”として氷室自身が立ち上げたDiGiTRONiXプロジェクトのひとつ。氷室京介のレコーディングやステージにギタリスト(アレンジャー)として参加しているLA在住日本人ギタリストYTを中心とした集合体だ。

1stフルアルバム『IF』発売当日の夜、開演直前のフロアには<LAST GIGS>Tシャツ着用の女性、ブラックスリムジーンズの男性、ネクタイをしめたサラリーマンといった姿の様々なロックファンが集まったほか、いわゆる音楽業界人も少なくない。そして、ついに生身の姿をさらしたGOSPELS OF JUDASは、想像を遥かに超える存在感でフロアを飲み込み、ド圧倒的なグルーヴに会場全体を巻き込んでしまった。

セットリストは事前に予告されていたとおり、アルバム収録ナンバーを曲順通りに披露し、『IF』の近未来的でSF的な世界観を存分に味わえるものとなっていた。インストチューン「Nexus 〜Overture〜」をSEに、Jun Inoue (DJ / Percussion)、Tessey (Sequence Programmer / Syn)、Gin Kitagawa(Bs / Vo)、そしてゆっくりとYT (G / Vo)が姿を現し、「Mystic Beauty」へ。おもむろで何のてらいもないオープニングだが、何よりも4人が鳴らす音圧が凄まじい。大胆で劇的な曲展開、入念なボイシング、それらが幾重にも連なるアンサンブルなど、メンバー個々の高度な音楽性と演奏力を結集したオリジナリティ溢れるサウンドは既に完成の域に達した感があり、トラックとして流れる氷室京介の歌声がフロアの高揚感を煽った。



YTがボーカルをとる「Area 51」、インスト「Interlude 1」を挟んで「Pris' Dream」と、オープニングから立て続けに5曲を披露。ライブハウスというシチュエーションを差し置いても、ステージ上は至ってシンプルだ。演出面での余計な装飾を一切まとうことなく、演奏面だけで描き出される世界が斬新な色彩を浮かび上げる。わずか5曲ながら曲調は実に多彩。そして、そこにスリリングなパワー感という太い線を刻むことでGOSPELS OF JUDAS固有のストーリーが映し出されるのだ。「もうアルバムを聴いてくれてる人もおるんかな? 次はGODBROTHERの曲で『LIAR 〜世界中の哀しみ集めて〜』」というYTによるこの日初の短いMCも、すべてが詞とメロディーに託されていることを物語るようで潔い。



Gin Kitagawaがボーカルを務める「LIAR 〜世界中の哀しみ集めて〜」では、全ての鎖を断ち切ったかのようにYTが信じられないほどエモーショナルなギタープレイ&パフォーマンスをみせた。そのキレの鋭さは氷室京介のギターサウンドを支えてきた“凄腕”以外の何ものでもないが、計算されたフレーズやテクニカルなギターワークをすべて吹き飛ばしてしまうほどの本能的プレイには畏怖さえ感じてしまう。それもそのはず、氷室京介のギタリストとして巨大スタジアムやドームなどの大会場を熱狂させてきたYTが、手を伸ばせば触れてしまうことができる至近距離で全開のサウンド&プレイを響かせるのだから、どれだけのインパクトをフロアに与えたことか。演奏が終わると同時に上がった歓声と拍手の大きさがその凄まじさを証明していたようだ。

続く「Bloody Moon」の前には、「オレにとって思い入れのある曲というか。GOSPELS OF JUDASというプロジェクトに入って一番初めに氷室京介さんと一緒に書いた曲で。凄く光栄なことをさせていただきました」とエピソードトークも少々。同曲は<氷室京介 COUNTDOWN LIVE CROSSOVER 12-13>でライブ披露されており、その模様が映像作品として残されているだけにファンにも耳馴染みの深い曲だが、その再現性が素晴らしかった。それぞれのパートの音がはっきりと聴こえていながらも独特のうねりのある演奏で、たとえば演奏自体がタイトでソリッドというものとは次元が違う。そこに氷室京介が立っているかのような敬意の念さえも感じさせるバンドサウンドを響かせていたことが印象深い。

前述の「LIAR 〜世界中の哀しみ集めて〜」よろしく、もちろんフロアの注目はYTの多彩なギタープレイにもあった。「Artificial Selection」はファンお待ちかねのギターインストであり、ドラマティックでダイナミック、YTのテクニカルなプレイに釘付けとなるナンバーだ。一方で、Tessey作曲による「Star Fire」でYTはE-bow(磁力によって弦振動を起こし、永続的にサステインを生み出すアタッチメント)を駆使してシンセサイザー的にバンドサウンドに溶け込むアプローチを。さらにボーカルをとりながら高速タッピングを同時に刻むという離れ業を披露した「White Moon」など、振り幅の広いギターワークはいわゆるテクニック志向だけのそれとは一線を画すアレンジ力の高さを感じさせるものだった。







「ここからはテンポの速い曲が続きます。できたら、暴れてください(笑)」というMCからスタートした後半の幕開けは「Tears in Rain」。イントロでGin Kitagawaの効果音的なベースが鳴り響いたGODBROTHERによる「RAIN」、強烈にユニゾンするギターリフとベースリフに上で「氷室さんのボーカルトラックが艶めかしい」とYTが語った「Play Within A Play」にてフロアを踊らせ、いよいよ本編ラストとなる「Cryin' with my guitar」へ。その前に、GOSPELS OF JUDASのメンバーがここで初めて紹介された。

「氷室さんをよく知っているみなさんは既にご存知だと思います。この人のセンスは最高だと思ってます、Tesseyさん。そして、「Mystic Beauty」「Star Fire」の歌詞を書いているほか、アルバムのベースはほとんどオレが弾いているんだけど、それを遥かに超す感じでバッキバキに弾いてくれている、Gin Kitagawa。下手の奥が機材で物凄いことになってるけど(笑)、彼がなければ今回のアルバムは出来なかったと思います。今回のアルバムのプロデュースを一緒にやってほしいと一番最初に声をかけた人で、曲のイメージや歌詞を共に作り上げてくれた、Jun Inoue」──YT







4人によるサウンドは「Cryin' with my guitar」で本編の幕を閉じ、鳴り止まないアンコールに応えて、YTによるインストナンバー「GHOST WITH CURLY HAIR」で全ての演奏が終了した。ハイエナジーな生演奏とデジタルの調和。GOSPELS OF JUDASのサウンドをひと言で語ればおそらくそうなるだろう。しかし、実際に展開された音は、そんなありきたりの言葉で説明がつくほど生易しいものではない。個々のキャラクターをかみ合わせた上で成り立つ実験的なサウンドは、扇情的で躍動的、音源で聴く数倍のインパクトを持っていた。サウンドがタテヨコに弾けようとも激しさの中核を貫くリズムとメロディーが、彼らが優れたロックバンドであることを明確に物語っていたようにも思える。まさに、その独自性を如実に見せつけるライブだった。加えて、Tesseyの存在はもとより、Gin KitagawaとJun InoueとYTといった10代のバークリー音楽大学時代からお互いを知るメンバーが奏でるサウンドにはインテリジェンスと無垢なバンド少年の気持ちが同居した輝きに溢れていた。





だが、GOSPELS OF JUDASはまだ走り出したばかり。これほど聴き手側の想像力を掻き立てるサウンドと、ロック体質を呼び起こすパワーを持つプロジェクトの誕生自体が興味深い事実だ。この夜のアンコールでは9月15日に渋谷チェルシーホテル、17日に代官山UNITでスペシャルライヴ<GOSPELS OF JUDAS LIVE 2018 FINAL SUPER「AREA51 -REINCARNATION-」>が開催されることに加え、氷室京介のサポートドラムでお馴染みのチャーリー・パクソンも来日することも明かされた。

約1時間半、アンコールを含む全17曲を終えてYTは「ありがとうございました。めっちゃ楽しかったです」と右手を挙げた。約2ヵ月後、この4人に生ドラム、しかも盟友とも呼べるチャーリーが加わるステージは、同夜とはまた異なる大きな衝撃と波紋を呼ぶに違いない。

  ◆  ◆  ◆

取材・文◎梶原靖夫(BARKS)

【ライブ情報】

<GOSPELS OF JUDAS LIVE “IF #2”>
日程:2018年9月2日(日)
会場:青山Future SEVEN
1部:開場16:00 / 開演 16:30
2部:開場19:00 / 開演 19:30

日程:2018年9月8日(土)
会場:心斎橋VARON
1部:開場16:00 / 開演 16:30
2部:開場19:00 / 開演 19:30

チケット 一般発売日:8月12日(日)
チケット料金:¥5,000(税込)
入場時に1drink ¥500

<GOSPELS OF JUDAS LIVE 2018 FINAL SUPER
「AREA51 -REINCARNATION-」>
日程:2018年9月15日(土)
会場:渋谷CHELSEA HOTEL
開場18:30 / 開演 19:00

日程:2018年9月17日(月・祝)
会場:代官山UNIT
開場16:00 / 開演 17:00

チケット 一般発売日:8月12日(日)
チケット料金:¥6,800(税込)
入場時に1drink ¥500

【リリース情報】

1st ALBUM『IF』

▲ALBUM『IF』

2018年7月18日発売
価格:¥3,240 (Tax in)

1. Nexus 〜Overture〜
2. Mystic Beauty
3. Area 51
4. Interlude 1
5. Pris' Dream
6. LIAR 〜世界中の哀しみ集めて〜
7. Bloody Moon
8. Artificial Selection
9. Star Fire
10. Interlude 2
11. White Moon
12. Silent Train
13. Tears in Rain
14. RAIN
15. Play Within A Play
16. Cryin' with my guitar


この記事をポスト

この記事の関連情報