【ライブレポート】松本孝弘率いるTMG 、20年ぶり全国ツアー<Still Dodging The Bullet>完遂「We are Back!!」
B'zの松本孝弘(G)を中心として、MR.BIGのエリック・マーティン(Vo)、Night Rangerのジャック・ブレイズ(Vo/B)という錚々たるメンバーが集い、2004年6月にフルアルバム『TMG I』をリリースするなど、颯爽とシーンに登場したドリームバンドが、TMG (Tak Matsumoto Group)だ。その始動は国内外からも注目を集め、日本武道館をファイナルに据えた同年の<TMG LIVE "Dodge The Bullet" Tour>も大成功を収めた。TMGに魅せられたリスナーは彼らの次なるアクションに期待を寄せたが、新たなニュースが届くことはないまま時は過ぎ、TMGは一度きりのスペシャルなプロジェクトだったと誰もが思うようになっていた。
◆TMG 画像
ところが2024年3月、TMGが約20年ぶりに再始動することがアナウンスされ、9月18日に2ndアルバム『TMG II』がリリースとなった。実に20年ぶりの動きだったわけだが、彼らの再集結はシーンに多大な衝撃を与え、国内はもとより海外でも快哉の声が無数に上がった。このことからは多くのリスナーがTMGの復活を渇望していたことがうかがえる。
TMGはアルバムリリースに伴い、9月19日から10月12日にかけて全9公演の全国ツアー<TMG LIVE 2024 -Still Dodging The Bullet->を開催。オリジナルメンバー3名に加えて、ドラムにマット・ソーラム(ガンズ・アンド・ローゼズ、ヴェルヴェット・リヴォルバー etc.)、そしてB'zのレコーディングやライブに参加していることでも知られるYukihide “YT” Takiyama(G)という強力な布陣で臨んだツアーは各地ともに大盛況で、ツアーファイナルを飾る10月12日、東京ガーデンシアターも客席は最上段まで満杯となっていた。場内に流れるBGMが一際爆音を放ったのはGuns N' Rosesの「Welcome To The Jungle」。場内総立ち、おそらくこの曲の次にスタートするであろうTMGを待ち構えるようにビートに合わせた手拍子が次第に大きくなっていく。
開演時間を迎えて暗転した場内にアジアンテイストを押し出したオープニングVTRが流れ、ステージにTMGが姿を現した。客席から大歓声と熱い拍手が湧き起こる中、ライブは爽やかな味わいの「THE STORY OF LOVE」からスタート。トップクラスのアーティストが並び立ったステージの情景と気持ちを引き上げるサウンドにオーディエンスのボルテージは一気に高まり、オープニングから熱いリアクションを見せる。開演前は落ち着いた雰囲気だった場内が、ライブが始まると同時に熱気が渦巻く空間へと変貌したことからは、その場にいる誰しもが、この瞬間を待ち望んでいたことが強く伝わってきた。
「THE STORY OF LOVE」で作り上げた良好な空気を保ったまま、どっしりとしたシャッフルビートが心地いい「ENDLESS SKY」ではジャックのベースソロから、松本孝弘のギターソロへ続くリレーが熱い。
「Hello TOKYO! Brother&Sister 元気ですか? We are TMG, and We are Back!!」──エリック・マーティン
という短いMCに続いては、大陸的なスケール感を纏った「THE GREAT DIVIDE」、キャッチーな「DARK ISLAND WOMAN」などをプレイ。圧倒的な存在感を発して、テイスティーなギタープレイを紡いでいく松本孝弘。リラックスした笑顔を見せつつ力強さとエモさを兼ね備えた歌声を聴かせるエリック・マーティン。躍動感に溢れたステージングを展開して、ファットにドライヴするベースサウンドを響かせるジャック・ブレイズとマット・ソーラムのリズム隊はあまりにも強力だ。B'zツアーで経験を重ねてきた松本孝弘とYTとのツインギターも相性抜群。5人が生むケミストリーは非常に魅力的で、長年に亘って活動しているバンドを思わせる強固なバンド感を放っていることが印象的だった。
ジャックの「TMG is Back in TOKYO! Are You OK!?」という煽りを挟んで、その後は胸に沁みるスローチューンの「FAITHFUL NOW」、エリックとジャックによるツインボーカルやクラシックが香る松本孝弘のギターソロをフィーチャーした「Everything Passes Away」、松本孝弘がラップを披露する導入パートから、翳りを帯びた世界へと移行する「OH JAPAN ~OUR TIME IS NOW~」などが届けられた。表情豊かな流れには終始引き込まれたうえ、アメリカンロック直系の華やかさと松本孝弘ならではのキャッチーなメロディーや緻密さを融合させたTMGの楽曲は独自の魅力に溢れている。そして特にライブ映えは抜群。TMGのライブを体感して、彼らが唯一無二の存在であり、だからこそ多くのリスナーがTMGの再始動を心待ちにしていたことを実感できた。
ライブ中盤では場内に波の音が響き、松本孝弘のソロインスト曲「Waltz in Blue」を演奏。Gibson 1955 Les Paul Gold Topを抱えてメロウなクリーントーンとパワフルなディストーションサウンドのコントラストを活かしつつ、エモーショナルなギタープレイを織り成す姿に目を奪われずにいられない。YTとのツインリードによるハモリも美しい。深みのある世界観でオーディエンスをさらに惹き込んだ後、エリックがアコースティックギターを持って披露されたナンバーに場内が沸き立った。
その曲は、エリックがボーカルを務めるMR.BIGの世界的名曲「To Be With You」だ。なお、このほかアンコールでジャック・ブレイズ擁するNight Rangerの「(You Can Still) Rock in America」を披露したことも含めて、“TMGのライブだから”と変に肩ひじを張らずにメンバーそれぞれの個性を味わえることも彼らの魅力といえる。もちろん「Waltz in Blue」や「To Be With You」「(You Can Still) Rock in America」といったメンバーそれぞれのナンバーが始まると同時に、客席からはどよめきや歓声が起こり、ライブは終始良い雰囲気で進んでいった。
5人のメンバーも楽しげだ。たとえば「Waltz in Blue」後のMCでは、それまで英語でトークしていたエリックがYTを近くに呼んで日本語訳をさせる場面も。「皆さん、20年前と変わってないんですって」と訳したYTに客席から拍手が降り注ぐが、その直後に「そんなわけないと思うんですけど(笑)」と付け加えたYTに場内爆笑。演奏力は世界のトップレベルながら、親近感のあるトークでも楽しませてくれたのだ。
「To Be With You」に続いては、そこはかとなくサイケデリックな「COLOR IN THE WORLD」や洗練された“泣き”を表現した「CRASH DOWN LOVE」、パワフルに疾走する「KINGS FOR A DAY」などを相次いでプレイ。ステージ両サイドに設置された花道まで使ったフィジカルなパフォーマンスを織り成しながら演奏するメンバー達の姿は観応えがあるし、キレの良さとウネリを兼ね備えたサウンドは心地よさに満ちている。オーディエンスも熱さと一体感に溢れたリアクションを見せ、場内の熱気はさらに高まっていった。
客席から大合唱が湧き起った「NEVER GOOD-BYE」を経て、ライブ終盤では千秋楽公演のスペシャルゲストとしてBABYMETALが登場した。松本孝弘とBABYMETALの交流はTMGの「ETERNAL FLAMES (feat. BABYMETAL)」や、BABYMETALの「DA DA DANCE (feat. Tak Matsumoto)」で知られるところ。“BABYMETALコール”に呼ばれて、SU-METAL、MOAMETAL、MOMOMETALが登場するなり、一気にステージ上が華やいだ。客席から歓喜の声があがる中、BABYMETALならではの煌びやかなパフォーマンスをフィーチュアした形で、まずは「DA DA DANCE」を披露。BABYMETALを交えたステージも本当に魅力的だったし、こういうコラボレートを行っても違和感が生じない辺り、TMGというバンドの奥深さをあらためて感じさせられた。
その後は本編のラストソングとして、SU-METALを加えた編成で「ETERNAL FLAMES」をプレイ。ダンステイストを活かした華やかかつアッパーなサウンドや、エリックとSU-METALによる立体的なボーカリゼーション、鮮やかなライティング、笑顔で埋まった客席などが折り重なって、東京ガーデンシアターの場内は華々しさに溢れた空気に包まれて本編が終了した。
迎えたアンコールは、前述したNight Rangerの「(You Can Still) Rock in America」から。Ernie Ball Music Man EVH Model PINK #86255を手にした松本孝弘の派手なアーミングプレイはNight Rangerのブラッド・ギルズを彷彿とさせ、となればYTはジェフ・ワトソンよろしくエイトフィンガー奏法を披露するなど、ツインギターの掛け合いに会場の7000人が燃え上がった。
エリックから感謝の言葉が伝えられて、改めて一人ずつメンバーを紹介。そして「GUITAR HERO Tak Matsumoto!」の言葉に続いて、千秋楽を締めくくるナンバーは「GUITAR HERO」だった。すべての演奏を終えて松本孝弘は、「今日は本当にどうもありがとうございました。気を付けて帰ってね」とひとこと。メンバーや客席に両手を合わせ、右手を高く突き上げてステージを去った。
20年という長い年月を経て再び集結し、上質という言葉が似つかわしいライブを披露したTMG。トップクラスのアーティストが顔を揃えたバンドならではのハイクオリティーな音楽性に加えて、多彩な魅せ方でオーディエンスを熱狂させたのはさすがの一言に尽きる。また、2024年に入ってから5月に松本孝弘ソロツアーを行い、8月に邦楽カバーアルバム『THE HIT PARADE II』をリリースした一方で、TMGの再始動を主導するなど、素晴らしいアルバムとライブをエネルギッシュに提示してみせた松本孝弘の意欲や秀でた手腕には圧倒されずにいられない。TMGは非常に魅力的な存在だけに、長いブランクを空けることなく、近い将来に再びTMGに触れる機会が訪れることを強く願う。
取材・文◎村上孝之
(c)VERMILLION
(c)Dynamic Planning・TOEI ANIMATION
■<TMG LIVE 2024 -Still Dodging The Bullet->10月12日(土)@東京ガーデンシアター SETLIST
02. ENDLESS SKY
03. THE GREAT DIVIDE
04. DARK ISLAND WOMAN
05. JUPITER AND MARS
06. FAITHFUL NOW
07. Everything Passes Away
08. OH JAPAN~OUR TIME IS NOW~
09. Waltz in Blue
10. To Be With You
11. COLOR IN THE WORLD
12. MY LIFE
13. CRASH DOWN LOVE
14. KINGS FOR A DAY
15. NEVER GOOD-BYE
16. DA DA DANCE (feat.Tak Matsumoto)
17. ETERNAL FLAMES (feat.BABYMETAL)
encore
18. (You Can Still) Rock in America
19. GUITAR HERO
▼TOUR SCHEDULE
09月19日(木) 愛知・Zepp Nagoya
09月20日(金) 愛知・Zepp Nagoya
09月23日(月) 東京・Zepp Haneda(TOKYO)
09月24日(火) 東京・Zepp Haneda(TOKYO)
09月28日(土) 北海道・Zepp Sapporo
10月02日(水) 福岡・Zepp Fukuoka
10月06日(日) 大阪・Zepp Osaka Bayside
10月07日(月) 大阪・Zepp Osaka Bayside
10月12日(土) 東京・東京ガーデンシアター
▼TOUR MEMBER
Guitar:Tak Matsumoto
Bass & Vocal:Jack Blades
Vocal:Eric Martin
Drums:Matt Sorum
Guitar:Yukihide “YT” Takiyama
■WOWOW特番『松本孝弘・稲葉浩志 4ヵ月連続特集』
▼『稲葉浩志 Special Interview Program』
放送日時:10月19日(土)午後9:00
放送局:WOWOWプライム/WOWOWオンデマンド
※放送/配信終了後~2週間アーカイブ配信あり
・ソロ活動における音楽制作や最新ライブツアーを通して稲葉浩志の魅力に迫るスペシャルインタビュープログラム。今年6月からスタートした全国ソロライブツアーが<Koshi Inaba LIVE 2024 ~enⅣenⅣ~>だ。ツアータイトル“en”は、稲葉がソロ活動において大切にしている言葉。表現の“演”、人と人とをつなぐ“縁”、一つになる“円”などの意味が込められている。番組では稲葉本人へのスペシャルインタビューを軸に、最新ツアーと軌跡を辿る映像を交えながら、最新アルバム『只者』をはじめとする音楽制作やライブに込めた想いに迫る。
▼『Koshi Inaba LIVE 2024 ~enIV~』
放送日時:11月19日(土/祝)午後8:00
放送局:WOWOWプライム/WOWOWオンデマンド
※放送/配信終了後~2週間アーカイブ配信あり
・稲葉浩志ソロツアー<Koshi Inaba LIVE 2024 ~enIV~>から、静と動の絶妙なコンストラストで魅せた熱気と感動のKアリーナ横浜公演の模様をお届け。ソロ名義では10年ぶりのアルバム『只者』を携えてスタートした今ツアーでは、表現者・稲葉浩志が“只者”=“何者でもないひとりの人間”として飾らない言葉をメロディーに綴り、ありのままの魅力を発揮。アルバム『只者』からの楽曲を中心に披露したステージが放送/配信される。
収録日:2024年7月21日
収録場所:神奈川・K アリーナ横浜
https://www.wowow.co.jp/music/tmg_inaba/
▼『松本孝弘/TMG Special Interview Program』
放送日時:12月放送/配信予定
放送局:WOWOW ※後日発表
※放送/配信終了後~2週間アーカイブ配信あり
・松本孝弘率いるTMGの魅力と世界的ギタリストとしての創作活動に迫るスペシャルインタビュープログラム。20年ぶりに再始動を発表したTMGは、ジャック・ブレイズ、エリック・マーティン、マット・ソーラム、Yukihide“YT”Takiyamaといったワールドワイドに活躍する名プレイヤーが松本孝弘のもとに集結。アルバム『TMGⅡ』を完成させ、全国ツアー<TMG LIVE 2024 -Still Dodging The Bullet->を9月からスタートした。番組では、松本孝弘とTMGメンバーのインタビューとともに、多岐にわたるソロプロジェクトで数々の名作を生み出し、グラミー賞受賞という栄誉に輝いた“ギタリスト松本孝弘”の創作活動とライブに込めた想いに迫る。
▼『TMG LIVE 2024 -Still Dodging The Bullet-』
放送日時:2025年1月放送/配信予定
放送局:WOWOW ※後日発表
※放送/配信終了後~2週間アーカイブ配信あり
・全国ツアー<TMG LIVE 2024 -Still Dodging The Bullet->にはバンド結成時からのメンバーであるジャック・ブレイズ(B&Vo/Night Ranger)とエリック・マーティン(Vo/MR.BIG)に加え、マット・ソーラム(Dr/Guns N’ Roses)とYukihide“YT”Takiyamaが参加。番組では、同全国ツアーから、ファイナルを飾った東京ガーデンシアターの模様をお送りする。日米トップアーティストが繰り広げるパワフルかつソリッドなステージをお見逃しなく。
収録日:2024年10月12日
収録場所:東京ガーデンシアター
https://www.wowow.co.jp/music/tmg_inaba/
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