【インタビュー】「フェス慣れしてライブがダメになる」後悔と自責を超えたFIRE BALLの最高傑作『PROGRESS』

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Photo by Hirofumi Mimaya / 2017

■転機は何度も訪れる
■グループだからこその苦悩

レゲエシーンど真ん中で活動するFIRE BALLだが、20年もの期間があれば、当然その影響はレゲエの外にも波及する。前作「one」に収録の、新しく生まれてきた命の尊さを歌った曲「Wonderful Days」が、デパートの店内放送として採用されたり、同曲がきっかけで神奈川県の「いのちの授業」に関わったりしている。「いのちの授業」とは、命の大切さや他人への思いやりなどを伝え、共に学びあう取り組みだ。



レゲエやダンスホールは、世間的にはちょっと怖いイメージがあるだろう。でもレゲエの本質は、生き方の道しるべ。リリック(歌詞)やリズムに鼓舞されているレゲエファンは多い。そんなレゲエとしてのあり方を、ダンスフロアの外へも広げられたことは、レゲエにとって重要な前進と言える。

ここ数年では「Wonderful Days」がFIRE BALL最大のターニングポイントだったと言うが、これまでを振り返ると転機は何度も訪れたと語る。

Chozen Lee「俺たちはターニングポイントだらけで、ずっとぐるぐるまわっている気がするね。まわってまわってまわって、また戻る、みたいな」

Super Criss「今も音楽やれてるのは、そういうことなんじゃない? ずっとターニングポイントがあって、まわり続けていることが俺たちにとって大切なんだと思う」


FIRE BALLはまた、早くからフジロックをはじめ、サマーソニック、京都大作戦、RUSH BALL、RISING SUNなどレゲエの枠を飛び出しロックフェスにも出演を続けており、自身でも対バンライヴ「大炎上」シリーズをスタートさせてもいる。彼らは「ライヴで最高の気分を味わえる」と言うが、反面、グループだからこその苦悩に陥ることもある。


Chozen Lee「2年くらい前かな、フェスに慣れちゃった時期があって、そんときに酷いショウをやっちゃった反省があって。自分らはその失敗を次に活かせばいいけど、観に来てくれたお客さんは一回きりだからね。そこでダメだったら、こいつらヘタクソだなで終わり。結局、ライヴがダメだったときって、本番当日がダメなんじゃなくて、大抵が当日までのモチベーションとか準備がダメなんだよね。特に俺らは4人グループだから練習が必要。ライヴがダメだったときは、その後悔と自責の念が強くなっちゃう」

Jun 4 Shot「一回一回が勝負だよね。曲の構成も、もうちょっとこうすればよかったとか、毎回反省はある。完璧を求めても完璧がないのがライヴなんじゃないかな。でも昔に比べたら、ライヴに対する緊張感は高まっているし、メンバー内での遠慮がなくなったと思う。俺も『お前、音外れてるよ』って的確に言われるし、そういう反省が次に繋がる。それが当たり前だと言えばそうなのかもしれないけど、ライヴを重ねることで成長できることはたくさんあると思う」

そう。20年のヴェテランとはいえ、まだ“進化”の渦中にいるのだ。

■グループは分担できるから楽……ではない
■それぞれの活動の集大成がFIRE BALL

▲2002年全国でのタオル回しの起源となった「Bring It On」MV撮影オフショット

記事の最初で「曲作りは4人で分担できるから楽ではなく、むしろメンバー4人を一致させる必要があるので大変だ」といったメンバーの言葉を紹介したが、彼らは息を合わせるために普段から行動を共にしているのだろうか。いや、実はその逆。ソロ活動など、各々独自に行動している。

その集大成が、アルバムであり、ライヴであり、FIRE BALLなのだ。

彼ら4人は、それぞれの未来を見据え、日々研鑽を積んでいる。チームで進化するコツは、ここに大きなヒントがありそうだ。

Chozen Lee「やれてないことがいっぱいあるから、そこへの取り組みをして行きたい。ソロの制作もそうだし、FIRE BALLも完成しきっているものではないわけで。アルバム制作でもライヴでも、やればやるほど足りてないところが目に付くもの。将来こうしたいって展望はあるけど、目の前のこと、まだできてないことを精一杯やるだけだと思ってる」

Super Criss「俺も次のステップとしてソロを考えていて、LIFE STYLE RECORDS(*3)でも何曲か録ってるところ。最近は遊びでバンドを始めたり、音楽をやれる幸せを噛みしめているし、仕事にならなくても音楽は常にやっていたい。なんでも上手くなれば楽しいから、もっともっとスキルを上げていきたいね」

Jun 4 Shot「俺はあんまり将来のことを決めない性格だし、1日1日のことを大事にやっていくって感覚でしかないかな。いくら将来の展望があっても、思いだけじゃ実現しないしね。それよりも、今やらなければいけないことをしっかりやって、貪欲に自分のスキルを上げていくことが大切だと思ってる」

Truthful a.k.a. Sticko「20年間やってきて培ったことはデカいし、『Wonderful Days』で新たな扉が開いたのも事実。その開いたドアに向けて発信していきたいって気持ちも強いね。その一方では、ソロの動きとして俺の好きなアングラな世界でやりたいことも多い。結局、俺の音楽の原点はサウンドシステムなんだよね。スピーカーを作って、ターンテーブルにレコードをのせて音を出すこと、それが一番心地いい。当然FIRE BALLは俺にとっての軸なんだけど、SHADOW SHOGUN(*4)とかSCORCHER HI-FI(*5)にも力を入れていきたいし。あとはアコースティックバンドのFried Jamming Fishで感じている音楽を奏でる楽しみも俺には必要だし、FIRE BALLにも活かせていることだと思ってて。やっぱり常に音楽していたいし、やめられない。昔どっかのインタヴューで『俺はスーパー音楽人になりたいんだ』なんて言ったこともあったけど、やっぱり俺はそういうことなんだと思う」

▲MV「Don’t Turn Dat Down」撮影時にキャストと。(King Of Swag, Anya, Akane, Luna, Masta Simon from Mighty Crown)

*3. LIFE STYLE RECORDSとは - MIGHTY CROWN プロデュースの音楽レーベル
*4. SHADOW SHOGUNとは - TRUTHFUL a.k.a. STICKOとGUAN CHAI(DeeJay)によるサウンド・クリエイト・ユニット
*5. SCORCHER HI-FIとは - TRUTHFUL a.k.a STICKOとMIGHTY CROWNのCOJIE(セレクター)によるサウンド・ユニット

Text◎Keitaro Kitano
Interview◎Nobuhiko Mabuchi

■FIRE BALL結成20周年、メンバー4人の集大成。通算10作目のアルバム『PROGRESS』が発売
時代を切り拓き、壁があるなら壊し、繋げてきたFIRE BALL。結成20周年を迎え、積み重ねてなお挑む、さらなるPROGRESS(進化 / 発展)を体現するニューアルバムが、7月19日(水)にリリース!

FIRE BALL『PROGRESS』

LIFE STYLE RECORDS:MCLS-0001 / 2,700円+税
※初回生産分レンチキュラージャケット付
[ 収録楽曲 ]
01. Intro
02. P.R.O.G.R.E.S.S.
03. Choice Is Yours
04. Don't Turn Dat Down
05. Around The World feat. Mighty Crown, CRAZYBOY
06. Skit~Chillin'~
07. あっちゅうま
08. Soul On Fire
09. Skit~イザベラ~
10. 何がどうしてこうなった?
11. BOUNCE
12. Kingston Town~愛しのキングストンタウン~
13. HAPPY BIRTHDAY
14. CHANGES feat. PUSHIM
15. みんなのうた
16. Outro

<横浜レゲエ祭2017 - PROGRESS- Fire Ball 20th Anniversary>

日時:8月11日(金・祝) Open/Start 13:00
会場:パシフィコ横浜 国立大ホール(神奈川県横浜市西区みなとみらい1丁目1−1)

<Fire Ball 20th Anniversary FIRE CAMP TOUR 2017 -PROGRESS->

10月7日(土) NAGOYA CLUB QUATTRO
10月8日(日) UMEDA CLUB QUATTRO
10月15日(日) AKASAKA BLITZ

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