【インタビュー】カイワレハンマー「“BegInner2”はカイワレハンマーの変化が一目瞭然の作品。みんなのハードルを越えている自信はあります」

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YouTubeにアップしたオリジナル曲が大きな話題を呼び、活動スタートと同時にシーンの注目を集めたラップ・ユニット:カイワレハンマー。コンスタントに音源をリリースし、ツアーは毎回即完売という好調な活動を行っていたにも拘わらず、彼らは2016年3月に突然活動休止を発表して周りを驚かせた。それから1年のブランクを経て、5月17日にカイワレハンマーの復帰作となるミニ・アルバム『BegInner2』がリリースされる。活動再開に向けて期待が高まる中、メンバー2人をキャッチして、彼らのプロフィールや活動休止に至った経緯、彼らの新たな魅力が詰め込まれた『BegInner2』などについて、じっくりと話を聞いた。

■BegInnerのBとIが大文字なのは僕達2人の頭文字だから
■このアルバムに込めた想いを感じてもらえると思います


――まずはそれぞれの音楽的なバックグランドなどを話してもらえますか。

BEMA:僕は、父親がすごくロック好きでレッド・ツェッペリンとかがよく流れている家だったので、子供の頃から音楽が身近なところにある環境で育ちました。そういえば、僕が人生で初めて歌えるようになった曲は、イーグルスの「ホテル・カルフォルニア」だったんですよ(笑)。家族で車で出かける時とかに流しているのを聴いているうちに覚えて、3~4才くらいの時に歌っていたみたいです。でも、自分から進んで音楽を聴きたがるような子供ではなかったし、中学生の時に初めて自分で買ったCDはエミネムでした。父親が好きだったロックではなくて、そういう方向に行ったんです。それで、ラップがカッコいいなと思って聴いているうちに、日本語でラップをしている人達がいることを知って、16才くらいの時にYouTubeでフリースタイルをしているのを見たんです。ビデオカメラを回して、誰かがビートボックスをして、フリースタイルをしているのを見て、“これ即興でやっているんだ、すげぇ!”と思って。それで自分もやってみたくなって、フリースタイルの練習をするようになりました。

imiga:自分は中学生の頃に、夜寝る時に親がよく音楽を流していたんです。奥田民生さんとか、バンド物とかが多くて、そういう中でチャットモンチーさんが気に入って、自分でCDも買うようになりました。そうやって音楽に目覚めて、カラオケとかにも行くようになって。カラオケでファンキー・モンキー・ベイビーズさんとかを歌っている時に、友達にラップ上手いねと言われたんです。メロディーよりもラップのほうが楽に歌えているし、すごくカッコいいよと。それで、ネットでラップ・アーティストとかを検索しまくって、ラップを聴くようになって、どんどんハマっていって。そのタイミングで、今で言うユーチューバーという存在に気づいて、BEMAのこともYouTubeで知ったんです。それがきっかけになって、自分もラップをするようになりました。


――ということは、2人は元々知り合いだったわけではないんですね?

BEMA:違います。imigaは、僕のリスナーだったんです。

imiga:BEMAのファンでした(笑)。

BEMA:知り合ったのは、6~7年くらい前かな。当時の僕はオフ会をしていて、その時に、imigaが「オフ会に行くので、コラボしてください」というメッセージをくれたんです。YouTubeには“チャンネル登録者数”というのがあって、僕はその時1万くらいだったんですね。今の感覚で言うと1万というのは全然大したことないけど、当時はまぁまぁ上のほうだったし、imigaも2千くらいあって。2千人というのは凄いなと思って、じゃあコラボしましょうと返事をして。それで、公園かどこかでコラボして、お互いにTwitterをフォローしたりするようになって。その後、『アルティメットMCバトル』を一緒に観にいったんだよね?

imiga:そう。

BEMA:それがきっかけになって、ラップをやりたいねという話をするようになって、カイワレハンマーを結成しました。

――カイワレハンマーを始めた当初はライブは行わずに、YouTubeに楽曲や動画をアップすることを主体にされていたのでしょうか?

BEMA:そう。最初は遊び感覚でやっていたんですけど、予想を超える反響があって。それで、曲が出来るとYouTubeにアップしていたんです。ライブも一度だけやりました。当時の僕はラップとは関係のない交流イベントとかにも顔を出していたんですけど、仙台でサイファー(註:ラッパーがスキルアップを図るために公園などに集まって、輪になってフリースタイルでラップを行うこと)をしている人達がいて、初めて生でサイファーを見たんです。今はサイファーをしているのもよく見かけるけど、その当時は全く見たことがなくて、すごいなと思って。それで自分も参加していたら、主催者の人に今度ライブがあるから出ないかと誘われて、仙台でライブを初めてやったんです。


▲BEMA

――短期間で大きな注目を集めて、活動も順調だったにも拘わらず、カイワレハンマーは始動から3年後の2016年3月に活動を休止します。

BEMA:カイワレハンマーはYouTubeから火が点いて、ライブも行きたいという人が増えたというのがあって。すごくお客さんに恵まれて、大きな会場でライブをしても絶対に埋まるという状況になっていたんですけど、大きいステージになればなる程、自分達が成長できていないことを感じたんです。お客さんに甘えているというか、お客さんに助けられるライブが多くて、それは違うんじゃないかと考えるようになって。それで、ここで1年間活動を休止して、その間にそれぞれがスキルアップを図ろうという話をimigaにしました。

imiga:僕としては、活動を休止しようというのは急な話だったんですよ。それでアタフタしたけど、BEMAから理由を聞いて納得して。それで、復活するまでの間に何が出来るかということを考えて、ソロで動くことにしました。

BEMA:あとは、僕が肩を脱臼して手術をしたというのがあって。

――えっ、そうなんですか?

BEMA:はい。ライブ中に左腕が脱臼して、速攻裏に帰って、腕をはめてステージに戻ったことがあったんです。これはマジで治さないとヤバいなと思って、手術することにして。それもあって活動を休止しようと言ったんです。

――そんなことがあったんですね。もう肩は治ったのでしょうか?

BEMA:手術をして、まだ無理はしないでくださいという状態です。手術から半年間は絶対安静というか、できるだけ動かないようにと言われたんですよ。そういう状態だったので、僕は休止期間に入って、まずソロ・アルバムを作りました。あとは、『MCバトル』に出たり、ソロでライブをしたり、カイワレハンマーでは出来ないようなことを、いろいろ1人でやっていて。ダラダラしていたら、すぐに1年経ってしまうというのがあったから、結構精力的に動きましたね。そういう意味では、休止期間を1年と決めたのは正解だったと思います。

imiga:BEMAもソロ活動でがんばっているから、自分も負けないぞという気持ちがあって。それに、ソロで何かを得て、それをカイワレハンマーに持って帰らないと意味がないじゃないですか。だから、僕も気合を入れてソロ活動に取り組んでいました。


▲imiga

――2人にとってカイワレハンマーが本当に大事なものだということが分かります。では、活動再開を告げるミニ・アルバム『BegInner2』の制作に入る前は、どんなことを考えていましたか?

BEMA:僕達の1stアルバムは『BegInner』というタイトルだったんですよ。一度活動を休止して、また1からやり直そうということで、今回も『BegInner2』というタイトルにすることにしました。

imiga:ちなみに、“BegInner”というタイトルの“B”と“I”が大文字なのは、僕達2人の頭文字だからです。そういうところからも、このアルバムに込めた想いを感じてもらえると思います。

BEMA:そうだね。それに、今までのアルバムよりも確実にスキルアップしたものにしないといけないというのがあって、本当に良いと思える曲だけを揃えたし、歌詞で妥協した曲も入っていない。ソロ活動で培った自分の世界観も出しつつ元々あったカイワレハンマーらしさも出しつつというところで、今回は歌詞を書くのに一番苦労したアルバムになりましたね。ラップ・パートの歌詞に、すごく時間が掛かりました。

imiga:1stアルバムを出した時は、僕はなかなか歌詞が書けなくて、プロの人に頼んだりしたんです。今回こそはもう全部自分達でやるぞという気持ちがあって、それを実践できたのは自分の中でデカいですね。そこも含めて、『BegInner2』ではさらにスキルアップしたカイワレハンマーを見せることが出来たんじゃないなかと思います。

――ラップの歌詞は、その時の自分の素直な感情を詰め込むものというイメージがあるので、自身で書くのは大事な気がします。

BEMA:そうですね。基本的に“嘘は無し”というのがあって、自分の想いやメッセージを、自分の言葉でダイレクトに伝えることが大事なので。だから、『BegInner2』の歌詞は、今の世界とか、社会とかを批判したものはないです。そういう攻撃的なことをして目立とうとは思っていなくて、等身大の自分達を見て欲しいというのが一番にあるので。「メデューサ」という曲の歌詞だけは攻撃的だけど、それは“お決まり”みたいな感じだし。そういう意味では、今回のアルバムは活動休止していた1年間で自分がどれだけ経験してきたかということを、ぶつけられたかなと思います。

imiga:それは僕も同じでした。ただ、1曲だけ苦手なコンセプトの曲があって(笑)。

BEMA:「suite room」でしょう?(笑)

imiga:そう(笑)。この曲はラブソングだから。

BEMA:もうメチャメチャ背伸びしているよね? “口付け”という言葉とかを使っていたりして(笑)。

imiga:う、うん……。でも、今は背伸びしているけど、そんなに遠くない将来に、この曲をリアルに歌える自分になるように、がんばります(笑)。

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