【インタビュー】エントゥームドA.D.「腰を突き動かすデス・メタル」
エントゥームドA.D.のニュー・アルバム『デッド・ドーン』が2016年2月26日に発売になった。
◆エントゥームドA.D.画像
スウェーデンのデス・メタル界の重鎮として知られてきたエントゥームドが、2014年にメンバー離脱によって“エントゥームドA.D.”と改名し、2年間突っ走ってきた彼らだが、怒濤の勢いはアルバムのサウンドにもそのまま反映されている。本作を「初期エントゥームド・サウンドに新しい要素を加えた、よりヘヴィでダークな作品」と語るのはバンドのヴォーカリスト、L.G.ペトロフだ。彼に新作について語ってもらおう。
──『デッド・ドーン』の音楽性をどのように表現しますか?
L.G.ペトロフ:『レフト・ハンド・パス』(1990)や『ウルヴァリン・ブルース』(1993)の頃のオールドスクールな精神とモダンなサウンドを意識している。ディストーション・ペダルを踏み込んで、雄弁で幅の広いヘヴィ・メタルをプレイしようとしたんだ。全編ヘヴィで攻撃的なアプローチを貫きながら、不吉で不穏なムードを込めている。メロディアスであっても、クレイジーな雰囲気があるんだ。ジョン・カーペンターが書くメロディみたいにね。もちろん彼みたいな曲は書けないけど、あのムードに近づこうとしたんだ。映画『ハロウィン』などのテーマ曲も素晴らしいけど、彼のアルバム『Lost Themes』も背筋がゾッとするようで最高だよ。具体的には「ヒューブリス・フォール」のイントロなんか、カーペンターっぽいかも知れない。
──よりダークな方向性に向かったのは、何が理由だったのでしょうか?
L.G.ペトロフ:ヘヴィ・メタルは本来ダークな音楽なんだよ。理由なんか要らない。今回特にダークだったのは、スタジオで作業するのが夜が多かったからかも知れない(笑)。いや、これはジョークではなく、音楽が気候に左右されることはよくあるんだ。このアルバムではニコ(エルグストランド/ギター)が特にダークなリフを書いたね。すごくダークだけどポジティヴな雰囲気があった。
──前作『バック・トゥ・ザ・フロント』(2014)からあまり間を置くことなく新作を完成させましたが、使わなかったアイディアを流用したりもしましたか?
L.G.ペトロフ:1つか2つ、温めていたリフを使ったかも知れないけど、ほとんどすべてが新しいアイディアだよ。今、俺たちは最高にクリエイティヴなモードに入っているんだ。昔のメンバーとのトラブルがあって、“エントゥームドA.D.”を名乗ることになったときは悩みもしたけど、結果としてそれは正解だったと思う。新しいバンドになって、すごく新鮮な気分になったんだ。『デッド・ドーン』には速い曲、遅い曲もあるし、エントゥームド以来のドライヴ感・グルーヴ感がある。俺たちがそこいらのデス・メタル・バンドと大きく異なるのは、腰を突き動かすグルーヴがあることなんだ。
──エントゥームド~エントゥームドA.D.の他に、グルーヴを感じるデス・メタル・バンドはいますか?
L.G.ペトロフ:ボルトスロワーにはグルーヴを感じるね。カーカスの曲にもグルーヴィなリフがあるし、俺たちがやっているスタイルと共通なものがあると思う。
──アルバムの共同プロデューサーであるトム・ファン・ヒーシュとヤコブ・ヘルナーの役割はどんなものでしたか?
L.G.ペトロフ:トムとヤコブはラムシュタインなどとの作業で有名なプロデューサーだけど、とてもナチュラルなタイプのプロデューサーで、俺たちのサウンドを変えたりしようとせず、ベストな部分を引き出してくれた。彼らはミックスもやってくれたけど、素晴らしいサウンドになった。俺たちも彼らのことを信頼していたし、楽しい経験だったよ。
──前作のレコーディング後、セカンド・ギタリストとしてヨハン・ヤンソンが加入しましたが、彼はもう脱退したのですか?
L.G.ペトロフ:うん、ヨハンはたくさんのショーでギターを弾いてくれた。でも彼には別のバンドもあるし、エントゥームドA.D.の長期的なスケジュールに時間を割くことが難しかった。だから彼はもうバンドには関わっていないけど、今でも友達だよ。ビヒーモスとアバスとのツアーではブラジルのクロウ(KROW)というバンドのギタリスト、ギレルモ・ミランダが参加する。彼は「ザ・ウィナー・ハズ・ロスト」のミュージック・ビデオにも出演してもらうし、長期的に一緒にやって欲しいと考えているよ。
──2015年12月28日にモーターヘッドのレミーが亡くなってしまいましたが、エントゥームド時代に一緒にツアーした思い出を教えて下さい。
L.G.ペトロフ:エントゥームドはモーターヘッドと2回一緒にツアーしたことがあるんだ。レミーは最高の人物だった。ライヴの前になると俺たちの楽屋に来て、一緒に近所のパブに行って、ビールを飲みながらビリヤードをやったりしたよ。素晴らしい経験だった。レミーとの思い出とモーターヘッドの音楽を想いながら、俺たちは前に進んでいくんだ。
取材・文:山崎智之
Photo by Sara Gewalt
【メンバー】
L.G.ペトロフ(ヴォーカル)
ニコ・エルグストランド(ギター)
ヴィクター・ブラント(ベース)
オーレ・ダールステット(ドラムス)
エントゥームド A.D.『デッド・ドーン』
【通常盤CD】2,500円+税
1.ミダス・イン・リヴァース
2.デッド・ドーン
3.ダウン・トゥ・マーズ・トゥ・ライド
4.アズ・ザ・ワールド・フェル
5.トータル・デス
6.ザ・ウィナー・ハズ・ロスト
7.サイレント・アサシン
8.ヒューブリス・フォール
9.ブラック・サヴァイバル
10.ノット・ホワット・イット・シームズ
《日本盤限定ボーナス・トラック》
11.デッド・ドーン(デモ)
12.モール・エム・マッシュ・アンド・メイム(デモ)
◆エントゥームド A.D.『デッド・ドーン』オフィシャルページ