プロデューサーに焦点をあてた書籍『AOR名盤プロデューサーの仕事』

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「AOR」と聞いてビビッドに反応するのは、もしかすると40代以上の人かも知れない。その洗練されて耳当たりが良く、都会的なセンスに溢れたサウンドは、1980年代に全盛だったからだ。1980年代と言えば、バブル時代。そう、あの時のムードにはまさにピッタリで、豪華ミュージシャンを多数起用するなど制作にもそれなりのお金をかけたAORは、カフェバー・ミュージックの定番でもあった。

◆『AOR名盤プロデューサーの仕事』画像

しかし、AORは金のメッキを貼り付けた音楽ではない。クオリティの高いグッド・メロディ、そして柔らかく温かい歌声を最大限活かすために、生のオーケストラや一線級のミュージシャンたち、そしてそれらをまとめるプロデューサーが腕によりをかけて、純粋に質のいい音楽を作り上げようとして生まれたものなのだ。

だから、AORを今聴くと、デジタル・サウンドでピカピカに磨き上げられた21世紀の音と違い、より人間らしく馴染みやすい、リラックスして浸れる音楽であることがよくわかる。年齢や性別に関係なく、これは誰もが必要とする要素を満たしたものだと言えるのではないだろうか。

そして、先程出て来たプロデューサーが、AORのサウンドのカギを握っていた。AORで活躍するのはいわゆるスタジオ・ミュージシャンが多く、プロデューサーが考える「いい音」を、アルバムや曲毎に彼らを起用して編み上げて行ったというわけだ。

書籍『AOR名盤プロデューサーの仕事』は、そんなプロデューサーに焦点を絞り77人をピックアップ。彼らのプロフィールや音楽的な特徴を数多くのアルバムを絡めながら浮き彫りにしている。いわゆるディスク・ガイドは多くあるが、プロデューサーをテーマに作品を解説したものは世界的に見てもほとんどないだろう。AORのマニアはもちろん、興味を持ったのでこれから聴いていきたいという初心者にもきっと役に立つ一冊だ。人気レコード店「芽瑠璃堂」プロデュースのシリーズ第1弾となる本書、著者はAORの第一人者である中田利樹。

AORに造詣が深いミュージカル俳優の石井一孝と筆者の対談、プロデューサーとしても活躍しつつ、日本で矢沢永吉のツアー・メンバーを務めたり、SMAPや嵐、Hey! Say! JUMPらジャニーズ勢から土屋アンナ、和田アキ子までと幅広いアーティストたちに1,000曲以上の曲提供をしたりしているジョーイ・カルボーンのインタビュー、そしてコラムもと、読み物も充実しているので是非手に取ってみて欲しい。

文:CROSSBEAT

『AOR名盤プロデューサーの仕事』
11月29日発売
著者:中田利樹
判型:B5判
頁数:208ページ
2,000円(税込み定価2,100円)
登場プロデューサー:デヴィッド・フォスター、ジェイ・グレイドン、バート・バカラック、ピーター・バネッタ&リック・チューダコフ、デイヴ・グルーシン、ゲイリー・カッツ、トミー・リピューマ、アリフ・マーディン、グレッグ・マティソン、マイケル・オマーティアン、ブルックス・アーサー、ピーター・アッシャー、グレン・バラード、ブラウン・バニスター、スティーヴ・バリ、ジェフ・バクスター、ウォルター・ベッカー、バリー・ベケット、ブルース・ボットニック、ジョン・ボイラン、ジョナサン・デヴィッド・ブラウン、ロビー・ブキャナン、チャールズ・カレロ、ジョーイ・カルボーン、ラリー・カールトン、クリス・クリスチャン、ボビー・コロンビー、ニック・デカロ、デニー・ダイアンテ、トム・ダウド、ジョージ・デューク、アンドレ・フィッシャー、ヴァル・ギャレイ、デヴィッド・ガーフィールド、ウンベルト・ガティカ、ボブ・ゴーディオ、アンドリュー・ゴールド、マイケル・マクドナルド、アル・マッケイ、セルジオ・メンデス、キース・オルセン、デヴィッド・ペイチ、レイ・パーカーJr.、フィル・ラモーン、ベン・シドラン、テッド・テンプルマン、ラス・タイトルマン、他全77人
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