【月刊BARKS 藤井丈司連載対談『「これからの音楽」の「中の人」たち』】第1回 椎名もた編Vol.2「嘘をつく」
音楽プロデューサー、藤井丈司による連載対談。第1回目となる10月は10月9日に2ndアルバムをリリースした椎名もた君との対談を全8回に渡ってお送りします。ではさっそく、椎名もた君との対談Vol.2をお届けしましょう。
◆【月刊BARKS 藤井丈司連載対談『「これからの音楽」の「中の人」たち』】第1回 椎名もた編Vol.1「18才と56才」
Vol.2 「嘘をつく」
藤井:曲はどういう感じで最初は浮かぶんですか? 僕はわりと、自分の話を先にしてあれなんですけど(笑)、なんとなくメロディーと歌詞が一緒に浮かんだり、あるいはアレンジする時は、もらったメロディーと歌詞が体の中に入ってきて、それに肉付けがぱっと、楽器を持ってない時に浮かんでくるんですけど、散歩してたりする時に。
椎名:散歩、ありますよね。
藤井:やっぱり10代でも、そうか(笑)。
椎名:はい。でも、まず、こんな曲を作りたいなっていうアイデアが浮かんで、そこからは、まずデモを作るみたいな行程が一切なくて。例えばギター1本でジャンジャカジャンジャカやって、弾き語ってそこから構成するみたいな行程がないんです。
藤井:あ、そうなんだ。
椎名:アレンジから組み込んでいって、アレンジでオケを作って、それに合わせて鍵盤を叩いてメロディを固定して固めていくという。
藤井:リズムとコードが最初にあるっていうことですね。
椎名:はい。で、アイデアを固めてミディに書き起こして、それを吐き出してボーカロイドに歌わせるっていう。
藤井:書いたメロディを1回ボカロに読ませて、それに歌詞を書いていくっていうことですか。
椎名:はい。歌詞は1ワードから刺激を受けて書くことが多いです。なんだろう、「かげふみさんは言う」とかは、小路啓之先生の漫画のタイトル、『かげふみさん』っていう、漫画のタイトルから来てるんです。
藤井:ふーん。
椎名:でも、小路啓之先生の漫画とは、内容は全然関係なくて、その素敵だなと思った1ワード、言葉を広げて解釈をするというか。
藤井:うんうん。「かげふみさん」の歌詞、すごいいいですよね。すごい好きだな。
椎名:あれはなかなか思い入れの強い曲ですね。
藤井:あと構成もすごくいいよね。1回終わったと思ったらまた出てきて、また終わったと思ったら出てきてっていう。
椎名:はい。ありがとうございます。
藤井:(笑)。
椎名:なんか、ことあるごとに、ありがとうございます(笑)。
藤井:(笑)。サンプリングのように、それが入ってくる、と(笑)。
藤井:「かげふみさん」の話、しますか。「かげふみさん」は、もともと作った過程は、なにかあるの?
椎名:うーん、ちょっと伏せるんですけど、とある出来事があって。…………なんでできたか…………単純に言うと、お別れの歌ですね……。
曽根原(椎名もた A&R/マネージャー):けっこう サウンド的なことを言うと、駅の音が入ってるんですよ。
椎名:入ってる。金沢駅で録った、フィルムレコーディング的な音が。
藤井:あ、そうなんだ、あれ金沢駅なんだ。
曽根原:地元が石川で。ちょうどできたのって2012年? 2013年だっけ?
椎名:いや、2012年。
曽根原:2012年だよね。こっち来た後だよね。直後だ。実家からひとり上京してきた直後にできた曲で。
椎名:なんだろう、都会の情景っていうのが、とても強く表れてると思います。
藤井:それはSEが入ってるからじゃなくて、歌詞の中に?
椎名:歌詞の中に。
藤井:そっか、そうなのか。歌詞のどこらへん?
椎名:最初の8行かな。“笑う人は今日も携帯を片手に”。
藤井:そこ、くるよね。……くるよね、じゃないか(笑)。そこ、くるんですよ(笑)。
椎名:けっこうポイントです。
藤井:ポイント高いよね、非常に。
曽根原:ほんとにそこはかなり、自分との対比もあるんじゃないの?
椎名:“歌う人は今日もペンで嘘をつく”って、いわゆる作家仕事って嘘をついてるところってあるじゃないですか。
藤井:あぁ、「ファンタジー」みたいなことかな。
椎名:ファンタジー、悪く言えば嘘じゃないですか。その嘘についてっていうのが、今回のアルバムの大元というか。いろんなところで嘘っていう単語が散りばめられてるんですけど。
藤井:そういえばそうだね。
椎名:で…………まぁ、そうですね(笑)。
藤井:わりと嘘だ、みたいなのを強く言う時もあれば、それは嘘だよなってぽつりと言うみたいな、いろんな嘘がある。
椎名:そう、いろんなタイプの嘘が。
藤井:椎名君って、ガーッて叫んでるような内容の歌詞が多いと思うんですよね。そういう歌詞を、叫べないボカロが歌ってるっていう、その温度差がすごくいいなって思って….。
椎名:うん…。
藤井:と、思って聴いてたんだ。
椎名:はい。ありがとうございます(笑)。なんというか、今回、等身大を投影させて 作ったというか。で、嘘をテーマにしてるんですけど、結局「嘘をついてる」っていう「真実」を投影したみたいな、そういう、ちょっとした矛盾があるんです。
藤井:なるほど。矛盾か…。でも、それが「創る」って事だったりしません?
椎名:…(うなづく)。
◆ ◆ ◆
続きは次回。連載対談、椎名もた編Vol.3「すべてが14才で始まる」をお届けいたします。
【椎名もた Information】
2nd Album
『アルターワー・セツナポップ』
2013年10月9日発売
[初回生産限定盤]
UMA-9026~9027 ¥3,000円(税込)
※商品仕様 CD+DVD
三方背スリーブ+ブリキ缶ケース
カード型リリック集 12枚封入
[通常盤]
UMA-1026 ¥2,700(税込)
※商品仕様CD
ジュエルケース
Tracklisting
1.ピッコーン!!
2.MOSAIC
3.パレットには君がいっぱい
4.Q
5.ウソナキツクリワライ
6.forgot me not
7.シティライツ
8.Halo
9.ツギハギ
10.嘘ップ
11.かげふみさんは言う
12.LIVEWELL
13.vanilla flavor piece
◆椎名もた オフィシャルサイト
◆椎名もた オフィシャルTwitter
◆椎名もた 『アルターワー・セツナポップ』特設サイト
◆藤井丈司プロフィール
◆藤井丈司Facebook
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Vol.2 「嘘をつく」
藤井:曲はどういう感じで最初は浮かぶんですか? 僕はわりと、自分の話を先にしてあれなんですけど(笑)、なんとなくメロディーと歌詞が一緒に浮かんだり、あるいはアレンジする時は、もらったメロディーと歌詞が体の中に入ってきて、それに肉付けがぱっと、楽器を持ってない時に浮かんでくるんですけど、散歩してたりする時に。
椎名:散歩、ありますよね。
藤井:やっぱり10代でも、そうか(笑)。
椎名:はい。でも、まず、こんな曲を作りたいなっていうアイデアが浮かんで、そこからは、まずデモを作るみたいな行程が一切なくて。例えばギター1本でジャンジャカジャンジャカやって、弾き語ってそこから構成するみたいな行程がないんです。
藤井:あ、そうなんだ。
椎名:アレンジから組み込んでいって、アレンジでオケを作って、それに合わせて鍵盤を叩いてメロディを固定して固めていくという。
藤井:リズムとコードが最初にあるっていうことですね。
椎名:はい。で、アイデアを固めてミディに書き起こして、それを吐き出してボーカロイドに歌わせるっていう。
藤井:書いたメロディを1回ボカロに読ませて、それに歌詞を書いていくっていうことですか。
椎名:はい。歌詞は1ワードから刺激を受けて書くことが多いです。なんだろう、「かげふみさんは言う」とかは、小路啓之先生の漫画のタイトル、『かげふみさん』っていう、漫画のタイトルから来てるんです。
藤井:ふーん。
椎名:でも、小路啓之先生の漫画とは、内容は全然関係なくて、その素敵だなと思った1ワード、言葉を広げて解釈をするというか。
藤井:うんうん。「かげふみさん」の歌詞、すごいいいですよね。すごい好きだな。
椎名:あれはなかなか思い入れの強い曲ですね。
藤井:あと構成もすごくいいよね。1回終わったと思ったらまた出てきて、また終わったと思ったら出てきてっていう。
椎名:はい。ありがとうございます。
藤井:(笑)。
椎名:なんか、ことあるごとに、ありがとうございます(笑)。
藤井:(笑)。サンプリングのように、それが入ってくる、と(笑)。
藤井:「かげふみさん」の話、しますか。「かげふみさん」は、もともと作った過程は、なにかあるの?
椎名:うーん、ちょっと伏せるんですけど、とある出来事があって。…………なんでできたか…………単純に言うと、お別れの歌ですね……。
曽根原(椎名もた A&R/マネージャー):けっこう サウンド的なことを言うと、駅の音が入ってるんですよ。
椎名:入ってる。金沢駅で録った、フィルムレコーディング的な音が。
藤井:あ、そうなんだ、あれ金沢駅なんだ。
曽根原:地元が石川で。ちょうどできたのって2012年? 2013年だっけ?
椎名:いや、2012年。
曽根原:2012年だよね。こっち来た後だよね。直後だ。実家からひとり上京してきた直後にできた曲で。
椎名:なんだろう、都会の情景っていうのが、とても強く表れてると思います。
藤井:それはSEが入ってるからじゃなくて、歌詞の中に?
椎名:歌詞の中に。
藤井:そっか、そうなのか。歌詞のどこらへん?
椎名:最初の8行かな。“笑う人は今日も携帯を片手に”。
藤井:そこ、くるよね。……くるよね、じゃないか(笑)。そこ、くるんですよ(笑)。
椎名:けっこうポイントです。
藤井:ポイント高いよね、非常に。
曽根原:ほんとにそこはかなり、自分との対比もあるんじゃないの?
椎名:“歌う人は今日もペンで嘘をつく”って、いわゆる作家仕事って嘘をついてるところってあるじゃないですか。
藤井:あぁ、「ファンタジー」みたいなことかな。
椎名:ファンタジー、悪く言えば嘘じゃないですか。その嘘についてっていうのが、今回のアルバムの大元というか。いろんなところで嘘っていう単語が散りばめられてるんですけど。
藤井:そういえばそうだね。
椎名:で…………まぁ、そうですね(笑)。
藤井:わりと嘘だ、みたいなのを強く言う時もあれば、それは嘘だよなってぽつりと言うみたいな、いろんな嘘がある。
椎名:そう、いろんなタイプの嘘が。
藤井:椎名君って、ガーッて叫んでるような内容の歌詞が多いと思うんですよね。そういう歌詞を、叫べないボカロが歌ってるっていう、その温度差がすごくいいなって思って….。
椎名:うん…。
藤井:と、思って聴いてたんだ。
椎名:はい。ありがとうございます(笑)。なんというか、今回、等身大を投影させて 作ったというか。で、嘘をテーマにしてるんですけど、結局「嘘をついてる」っていう「真実」を投影したみたいな、そういう、ちょっとした矛盾があるんです。
藤井:なるほど。矛盾か…。でも、それが「創る」って事だったりしません?
椎名:…(うなづく)。
◆ ◆ ◆
続きは次回。連載対談、椎名もた編Vol.3「すべてが14才で始まる」をお届けいたします。
【椎名もた Information】
2nd Album
『アルターワー・セツナポップ』
2013年10月9日発売
[初回生産限定盤]
UMA-9026~9027 ¥3,000円(税込)
※商品仕様 CD+DVD
三方背スリーブ+ブリキ缶ケース
カード型リリック集 12枚封入
[通常盤]
UMA-1026 ¥2,700(税込)
※商品仕様CD
ジュエルケース
Tracklisting
1.ピッコーン!!
2.MOSAIC
3.パレットには君がいっぱい
4.Q
5.ウソナキツクリワライ
6.forgot me not
7.シティライツ
8.Halo
9.ツギハギ
10.嘘ップ
11.かげふみさんは言う
12.LIVEWELL
13.vanilla flavor piece
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◆椎名もた 『アルターワー・セツナポップ』特設サイト
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