【ライブレポート】Ken Yokoyama「友達助けるのに理由なんていらないよな」

東日本大震災以降、被災地フリーライブ開催や、Hi-STANDARDを復活させ<AIR JAM>による復興支援ライブ等を行ったKen Yokoyamaは、2011年末、すべてのライブ活動を一時休止して曲作りに専念することを発表した。
◆Ken Yokoyama画像
「全部を止めて、一回自分を追い込まないとダメかなと思っちゃってさ。たぶん自分も混乱してると思う。早く曲を作って、作品として吐き出して、またツアーするよ」
これは当時のステージでKenが語った言葉だ。そして完成したアルバム『Best Wishes』は、試行錯誤と労力を注ぎ込み、葛藤の末に掴んだ作品だからこそリアリティに満ちて微塵の偽りもない。



「My Shoes」では曲に入る前に、客席とのコール&レスポンスがあったものの、その後もライヴ前半は「Sold My Soul To R'NR」「Your Safe Rock」「Not A Day Goes By」「Last Train Home」と畳みかける。こう記すと、ひたすら演奏のみに没頭するストイックなライブだったと思われるかもしれないが、そうではない。Kenはステージからマイクを客席に投げ渡し、自らはJunのコーラスマイクで歌ってみせた。何度Kenの白いマイクとシールドが、客席へ向かって大きな弧を描く場面を見たことか。至近距離のやり取りが可能なライブハウスで、もっと直接的に音楽でつながり合おうとするステージと客席は、どうしようもなく感動的な光景を作り出していた。また、たとえば「We Are Fuckin' One」のエンディングで語った「友達助けるのに理由なんていらないよな」というひと言。曲に込めたメッセージを伝える言葉は短いが、だからこそ強く優しく響くのだろう。


この日、演奏されたナンバーは5thアルバム『Best Wishes』を中心に、つなげるというKenの気持ち、続けていく決意が強烈に感じられるものだった。伝えたいこと、伝えなくてはならないことを大上段に構えることなく、的確に言ってのけるリアルな言葉と表現力。それを本能的に受け取る客席とのやりとりを熱く感じ取ることができる本編だった。
鳴り止まないアンコールに応えて、ステージに登場したKenはこう語った。「NO USE FOR A NAMEの曲やるわ。ボーカルのトニーが亡くなって、バンドは解散してしまったんだけど、最後に会えたのがこの会場でね。dustboxもNO USE FOR A NAMEとは一緒にツアーしたことあるんだよね。だから、もしかしたらトニーが今日、来てくれてるかもしれないよね」。そして演奏されたナンバーは「Soulmate」。さらに続けてハスキングビーの「WALK」が披露された。「単純に曲が聴きたいからさ」と語っていたが、これらカバーには、彼らの音楽を引き継いでいく覚悟すら感じさせた。直後に演奏されたナンバーが、それを裏付けるように輝かしく感じられたのは私だけではないはず。「Let The Beat Carry On」にはそういった気持ちも込められていたのではないだろうか。
ライブはまだまだ終わらない。この後はファンのリクエストから、ライブでやったら盛り上がらずにはいられないナンバーが次々と演奏された。とりわけ印象的だったのが、リクエストを整理するためか、ステージ上でメンバー間の打ち合わせをしているときにJunが漏らした“えっ!”という悲鳴にも似た叫び声(笑)。その後演奏された久しぶりのナンバーに思わず納得してしまったが、それほどガチにリクエストに応えていることがわかる瞬間だった。終わってみれば、全30曲の大熱演。大音量でいながら、メンバーのはじき出す1音1音が明確な意志を伝えるかのごとく、その隅々まで堪能できるサウンドに魅了された。
「Running On The Winding Road」でライブを締めくくったKenは、グッと親指を突き立ててステージを去った。彼らはこの後、沖縄と北海道を廻る<This Is Your Land Tour>の開催を発表している。Ken Bandの生み出す強く優しいグルーヴは、命をつなぐかのように続いていく。
取材・文:梶原靖夫
撮影:Teppei Kishida
◆Ken Yokoyamaオフィシャルサイト
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