【ライブレポート】Ken Yokoyama、<The Golden Age Of Punk Rock Tour>完遂「言葉以上にありがとう。また会えたらいいな」

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Ken Yokoyamaが2024年10月、90sパンクカバーアルバム『The Golden Age Of Punk Rock』をリリースした。同作を引っ提げたレコ初ツアー<The Golden Age Of Punk Rock Tour>は、10月21日の渋谷 CLUB QUATTROを皮切りに12月6日の渋谷 Spotify O-EASTまで全11公演の規模で開催されたもの。同ツアーファイナルのライブレポートをお届けしたい。

◆Ken Yokoyama 画像

Ken Yokoyamaによる<The Golden Age Of Punk Rock Tour>のツアーファイナルとなる東京・渋谷Spotify O-EAST公演のゲストに招かれたのは、結成30周年を迎えた神奈川の3人組、STOMPIN' BIRDだ。

SEもなくオンステージしたTOM(Vo, G)、YASU(B, Vo)、HOLY(Dr)の3人は「Wild Ride」から演奏になだれ込むと、「遠慮するんじゃねえぞ!」とTOMが声を上げながら、ラストの「Hurry Up」まで35分の持ち時間にメロディックパンク、ハードコア、スカパンクが入り混じる人気曲ばかり全15曲を詰め込み、スタンディングのフロアにモッシュ&ダイブの地獄絵図を作り出していった。

「いつ一緒にできるんだろうね。困った子だよ!」と慈愛なのか、必ず戻ってこいよという叱咤激励なのか、途中、YASUは後輩バンドに対する思いをふと言葉に滲ませたが、コンプラなんてお構いなしの言いたい放題、および出禁上等のやりたい放題のパフォーマンスが作り出した熱狂には、「みんな、ずいぶん削られたんじゃねえのか? 俺もかなり削られたよ!」とこの日の主役である横山健(Vo, G)も舌を巻いたほど。

「残り12分!」と声を上げたYASUが、さあラストスパートをかけるぞというタイミングで、これから演奏する曲の数々のタイトルを言い放ったのは、彼ら一流のユーモアであると同時に、ネタバレしたところでいくらでもモッシュ&ダイブはさせられるという自信があるからこそなんじゃないかと思ったりも。


それも含め、まさに破天荒という表現がふさわしいパフォーマンスとともにSTOMPIN' BIRDが作り出した熱狂が冷めやらぬ中、Fatboy Slimの「The Rockafeller Skank」を出囃子にオンステージしたKen Yokoyamaは横山がかき鳴らすギターリフから演奏になだれこむ。1曲目は「Save Us」。スラッシーなリフと竜巻く2ビートに応え、早速、モッシュを始めた観客は、もちろんサビのシンガロングを忘れない。

1曲目から全力でステージにぶつかってくる観客の反応に手応えを感じた横山は笑顔でサムズアップ。「もっと!もっと!」というジェスチャーで観客に声を上げさせると、新たなライブアンセムである「My One Wish」をはじめ、現在のKen Yokoyamaのライブの主力になっている曲の数々を繋げながら、クライマックスを思わせる盛り上がりを序盤から作り上げていく。





そんな怒涛の展開の途中、この日11歳になるという少年に「Happy Birthday To You」の弾き語りをプレゼント。「15歳になっても、18歳になっても、ライブハウスに遊びに来てな。他のことに興味があるんだったら、それはしかたない。でも、ロックンロールが好きだったら遊びに来てくれ」と語り掛け、フロアを沸かせるヒトコマも。

今回のツアーは各地、「Happy Birthday To You」の弾き語りが恒例になっていたらしく、この日も客席から幾つも飛んだ「健さん、「Happy Birthday To You」歌って~」という声に対して、横山ははじめ「誕生日だなんてウソだ。割合として3〜4人はいるかもしれないけど、多すぎないか!」と頑なに拒んでいたのだが、11歳の少年のリクエストはさすがに断り切れなかったようだ。

そんなざっくばらんな観客とのやりとりから繋げたミッドテンポのポップナンバー「I Love」のエンディング。両手でハートマークを作って、おどけた横山に客席から「カワいい!」という声が飛ぶと、なぜか他のメンバーも、という空気が生まれ、EKKUN(Dr)とJun Gray(B)がそれに応えたもんだから(しかもJunは指ハートだった!)、“当然次は…”と期待した観客に対して、南英紀(G)が一言、「やんねえよ!」と断言。見事オチが付いたところで、横山が自身のシグネチャーモデルであるGretsch Kenny Falcon IIに持ち替え、弾き語りからバンドイン。サビのシンガロングで一際、大きな盛り上がりを作った「I Won't Turn Off My Radio」で前半戦は終了。ぐっと拳を握ってみせ、手応えを観客に伝えながら一旦ステージを降りた横山をはじめ、Ken Yokoyamaの4人は、バックドロップに掲げた“Ken Band ™”というフラッグが『The Golden Age Of The Punk Rock』のジャケのアートワークを使ったフラッグに変わると、Beastie Boysの「Sabotage」を出囃子にして再びオンステージ。


「さあ、『The Golden Age Of Punk Rock』の時間だ。楽しんで、一緒に歌ってってくれ!」──横山健

DESCENDENTSの「I'm The One」からNOFXの「Stickin' In My Eye」まで、Ken Yokoyamaのルーツになったという90sメロディックパンク・バンドのカバーの数々をたたみかけるように繋げ、客席から沸いたNOFXコールの中、横山は2025年2月に<The Golden Age Of Punk Rock Tour Extras>を京都、浜松、横浜、東京の4ヵ所で開催することを発表して、客席をさらに沸かせる。今回のツアーを発表したとき、「ここ最近のツアーの中で一番注目度が高い気がしている」と横山は言っていたが、実際、ツアーを始めてみたら、自分が考えていた以上に評判がいいことに気づいたということらしい。

「今日で終わらせたらパンチが弱いから2月にやるんだ!」──横山健

『The Golden Age Of Punk Rock』の全16曲中2曲含まれていたスカパンクのカバーの、どちらを聴きたいか、と観客に尋ねたところ、観客の答えは予想外の5分5分だったため、ステージで緊急会議を開いた上で、結局、The Suicide Machinesの「Break The Glass」も、Less Than Jakeの「All My Best Friends Are Metalheads」も2曲とも披露。The Vandalsの「It's A Fact」のリズムがラテン風になるところで、横山が見せるヘンテコなダンスも見どころだと思ったら、横山曰く「あの動きに賭けている」のだそう。


この日、『The Golden Age Of Punk Rock』から演奏したのは、全12曲(セットリストを参照されたし)。1曲演奏するたび、客席から飛ぶリクエストは「無視する」と口では言いながら、予定していなかった曲もけっこうやったっぽい。それがKen Yokoyamaのサービス精神であることはもちろんだが、『The Golden Age Of Punk Rock』の曲を演奏することを心底楽しんでいる横山をはじめとするメンバー達が、時間が許すなら1曲でも多く演奏したいと考えていることは、横山の次の発言からも明らかだった。

「(この日を)本当に待ってたんだよ。なんでそんなに待ってたかって言うと、この場を想像しながら、アルバムを作ってた。着地点はいつでもライブなんだ」──横山健


No Use For A Nameの「International You Day」を演奏した直後、その日着ていた彼らのTシャツを誇らしげに見せながら、今は亡きフロントマン、トニー・スライの名前を叫んだ横山は、続けて、幾つかある『The Golden Age Of Punk Rock』を作った理由の一つについても語った。

「あのアルバムには16バンドの16曲が収録されてるんだけど、そのうち14バンドが現存している。つい先日、解散してしまったNOFXとNo Use (For A Name)だけがこの世にいない、と言うか、解散状態と言うか、見たくても見られない。今日来てる人に歓んでもらえればいいなとか、その友達が話を聞いてうらやましがってくれたらいいなとか思って、こういうアルバムを作ったんだ。歌い継ぐって言ったらちょっとカッコつけすぎなんだけど、少しだけ。現存してるバンドについては来日を待てばいいと思う。それで、やっぱ本家だなと思ってくれればいいんだよ。No UseとNOFXに関しては俺達がやっていけば、彼らの音楽は残るだろ。俺達がやらなくても潰えないと思うけどさ、やっていくよ」──横山健

Lagwagonの「May 16」で『The Golden Age Of Punk Rock』のコーナーを締めくくり、「Believer」で口火を切った終盤戦は、「Punk Rock Dream」「Let The Beat Carry On」「These Magic Words」とKen Yokoyamaのアンセム中のアンセムを揃えていたのだから、観客の熱狂ぶりは敢えて書くまでもないだろう。そうだ。「Punk Rock Dream」を演奏する前に観客の熱心なリクエストに応え、「Walk」を弾き語りでワンコーラスだけ演奏したことをも忘れずに記しておかなければ。なぜなら、そこに横山の何かしらの心境の変化あるいは心の機微が窺えるような気がするからだ。


「もう1曲どうだい? 俺ももう1曲やってから帰りたいよ」と横山が言い、再びKenny Falcon IIに持ち替え、この日最後に演奏したのは、「While I'm Still Around」だった。今回のツアーでは、まだどこでもやっていなかったそうだ。

「(だけど)ツアーの最後に、これを皆さんに置いていかないとなんとなくツアーが締まらないような気がしてさ。なぜなら、俺達は英語で歌っているから何を歌っているかわからない人も多いと思うんだけど、日本語の歌詞を読んでくれたら、たくさんのありがとうが詰まってるからさ。もしかしたら、この中には、いろいろな事情から今日で俺達のライブを見るのが最後になってしまうという人もいるかもしれないけど、寂しいと思ったらこの曲の日本語の歌詞を読んでくれ」──横山健

前述した「May 16」を演奏し終えたとき、観客が口々に言った「ありがとう」という言葉に対して、「俺達こそ、皆さんありがとうと思ってるよ」と横山は言ったが、それだけでは足りなかったようだ。

「このマイクでありがとうって言ってるけど、自分の言っている言葉が軽く感じられるくらい気持ちは大きいんだ。言葉以上にありがとう。また、会えたらいいな!」──横山健


そんな言葉から演奏になだれこんだ「While I'm Still Around」。Ken Yokoyama印のメロディックパンク・ナンバーを、観客と一緒に歌いながら、この日、横山は“俺は誰かを救ったと思ってたけど、救われたのは俺なんだ” “俺達の敵は君の敵だ。これだけ繋がってるんだから大丈夫なんじゃないかな”と曲に込めた思いを日本語で言葉にしたのだからびっくりだ。

曲と曲の間のMCでは、この日も「健さん、曲をお願いします」と観客から言われ、「はい」と苦笑いしてしまうくらい饒舌になる横山だが、曲の一部として日本語を使ったのは、もしかして初めて!? アドリブだったのだろうか。演奏中のフラッシュアイデアだったかもしれないから、ことさらに取り上げる必要はないかもしれない。しかし、そんなところにも心境の変化あるいは心の機微を感じて、横山健のこれからにますます興味が湧いてきたのだった。

取材・文◎山口智男
撮影◎Yasumasa Handa

■<The Golden Age Of Punk Rock Tour>2024年12月6日(金)@東京・Spotify O-EAST セットリスト

▼STOMPIN’ BIRD
01. Wild Ride
02. I Love Me
03. Brandnew World
04. I Go
05. Now or Never
06. Ready to Rock?
07. Know?
08. Rumor
09. 2 Phuck
10. Your Right
11. Rockin’ Show
12. Cheers
13. Childish
14. Brave Song
15. Hurry Up

▼Ken Yokoyama
SE:〜The Rockafeller Skank (Fatboy Slim)〜
01. Save Us
02. Your Safe Rock
03. 4Wheels 9Lives
04. Parasites
05. Maybe Maybe
06. My One Wish
07. Happy Birthday
08. I Love
09. I Won't Turn Off My Radio
SE:〜Sabotage (Beastie Boys)〜
10. I'm The One
11. 21st Century Digital Boy
12. Stickin' In My Eye
13. Break The Glass
14. All My Best Friends Are Metalheads
15. It's A Fact
16. You've Done Nothing
17. International You Day
18. Happy Birthday
19. Roots Radical
20. Holiday
21. May 16
22. Believer
23. Punk Rock Dream
24. Let The Beat Carry On
25. These Magic Words
26. While I'm Still Around

■レコ発追加公演<”The Golden Age Of Punk Rock Tour” Extras>

▼2025年
2月20日(木) 京都 MUSE
 open18:15 / start19:00
 ※ゲストあり
2月21日(金) 浜松 窓枠
 open18:15 / start19:00
 ※ゲストあり
2月23日(日) 横浜 Bay Hall
 open17:00 / start18:00
 ※ゲストあり
2月25日(火) 東京 Zepp Diver City
 open18:00 / start19:00
 ※ゲストあり
▼チケット
前売り ¥4,800
※全公演共通
一般発売:1月25日10:00〜 ※チケットぴあ
【SATANIC ENT.会員先行】
受付期間 : 12月6日22:00〜12月10日23:59
https://satanic.jp/
【オフィシャル先行1次】
受付期間 : 12月17日12:00〜12月22日23:59
https://w.pia.jp/t/kenyokoyama-tgaoprt-ex/
【オフィシャル先行2次】
受付期間 : 1月10日19:00〜1月15日23:59
https://w.pia.jp/t/kenyokoyama-tgaoprt-ex/


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