UNCHAIN、テーマパークのアトラクションのようにポップとブラックが融合したファンタジックなニューアルバム『Eat The Moon』特集
UNCHAIN
ニューアルバム『Eat The Moon』2012.4.25リリース
INTERVIEW
谷川正憲(以下、谷川):去年、6月に「SUNDOGS」っていうアルバムを出したんですけど、その発売前からこのアルバムを作っていました。
佐藤将文(以下、佐藤):デモ作りのほうが絞り出すという感じでしたけどね。収録曲をこれにしようかって決まってからは、ゆっくりとという感じで。
谷川:8ヶ月、9ヶ月、このアルバムのことをやっていたって感じですね。その間に「Love & Groove Delivery」企画が入ってきたりして。去年はずっとトラック制作をしていたような感じです。
谷川:今回はあらかじめ方向性が決まっていたんですよ。テーマも早い段階からあったので。だから途中からはそれに沿って、ジャケットのアートワークも歌詞も考えることができたんです。
谷川:そうですね。最近、ライヴも楽園のようになればいいなと思っていて。今まではハイアーグラウンドというか、自分達の技術を究めて究めて、それを観てもらって楽しんでもらうような方向性だったと思うんですけど、最近は、みんなといかに一緒になって楽しむかという方向性になっているんです。ハイアーグラウンドに対して、プレジャーグラウンドというんですが、そっちを目指すステージがいいんじゃないかと。そういうのもあって、プレジャーグラウンドというのはどんなものなのかということで、「楽園」や「テーマパーク」というところに繋がって行ったんです。
谷川:「SUNDOGS」と今作は太陽と月なんですね。だから夜の雰囲気を出したかったし、ブラックミュージックのセクシーさというのも合わさって、深夜に移動する遊園地のようなイメージなんです。
谷川:そうですね。月を食べるというのは現実ではあり得ない世界観ですけど、再生ボタンを押したら、いつでも夢の世界に行けるみたいなイメージで。頭の中に自分だけのテーマパークができ上がるという感じになったらいいかなって。あと、震災からもう一年じゃないですか。震災っていうのは、現実がファンタジーを越えてしまって、本当に悲しい出来事だと思うんですけど、現実の中には、ファンタジーを越えるような楽しいことや良いこともあると思うんです。そういうことも、この『Eat The Moon』では唄いたかったんですよ。聞いたあとにまた現実と向き合ってくれたらいいなって。
佐藤:僕らの中では震災から時間は進んでいるんですけど、被災地には、そこから時間が止まったまま、闘っているような方々もまだたくさんいらっしゃると思うんです。でも、震災だけではなく、普通に生活している中でも、「なんだかなぁ」ってモヤモヤしてしまうこともありますよね。夜っていう真っ暗な不安になる時間の中で、僕らが明るく照らして行く場所を作ってあげたらなと。羽根休めできるような。それで遊園地というのを思いついて。
谷川:一番わかりやすい例えかなぁと思ったので。
谷川:そうなんです。曲順とかも、レコーディング中に決まってった感じだったんですよ。歌詞も真夜中の歌詞から曲が進むにつれて、夜明けが近いような歌詞になっていくんです。筋書きがちゃんとできた。ブックレットも、夜から朝にかけて明けて行くような色合いになっているんですよ。今回、そういうところも含めてトータルで提示できる作品になりましたね。
谷川:そうですね。ゲストミュージシャンもたくさんいるんですけど、誰が欠けてもできなかったような感じがします。
谷川:歌入れのレコーディングっていつもギリギリなので、歌詞ができてすぐ唄うという感じなんですね。今回もそういう曲が多かったけど、唄っててしっくりくるということが多かったんですよ。レコーディングで初めて唄った曲もあったのに、しっくりくるんです。
谷川:歌詞とメロディのマッチングだと思うんですよね。その擦り合わせがしっかりできていた。
佐藤:今までデモのときは“なんちゃって英語”で作ったりしてたんですけど、今回は適当でも日本語が乗っていて、その状態でデモを聴いてたんですよね。だからすんなりその世界に入れたし、わかりやすかったし、入り込みやすかったと思うんです。
谷川:デモのときに適当に唄っている日本語が、ファーストインプレッションじゃないですか。最初に唄っている日本語っていうのが結構重要だったりして。そのイメージで曲になっちゃうというか。その方がハマりが良かったりするんですよね。昔は英語で歌詞を作っていたので、日本語で歌詞を書きはじめた最初の頃はメロディに乗せたときにちょっと違和感を感じたりすることがあったんですよ。でも、今回はそういうこともなく。意識の問題かもしれないですけど。
谷川:日本語で歌うようになってから、曲の作り方が変わった部分はあると思います。サウンドにしても今回は転調を意識したんですよ。デモの段階でドラマティックな展開みたいなのを転調することで作るというのは意識しました。
谷川:そうですね(笑)。今まではあまり転調しなかったんですよ。サウンドの雰囲気を変えることでドラマを作るということをやっていたので。
谷川:それもありますけど、ブラック・ミュージックの横ノリのリズムを保ちながら行くと、普通になっちゃうので転調を使おうかと。
谷川:はい。遊園地というテーマの前は、逆転劇っていうテーマがあったんですよ。これも震災の話になってしまうんですが、被災者の中には追いつめられている人がいるかもしれないし、そういう人たちに向けて、俺たちが逆転サヨナラ満塁ホームランを打ってやろうぜみたいな。サウンドとかアレンジも逆転のドラマがあるようなものにしたかったんですよね。
谷川:あぁ、確かに変態ですよね。どうやってあんな曲ができたのかわからないんですよね(笑)。
谷川:ですよね。
佐藤:で、急に悪い感じになりますよね(笑)。夜の悪い部分。
谷川:僕の中では、「Eat The Moon」というルパン三世のような盗賊が現れて、月を盗んでいくという。
谷川:本当に皆さん、凄い方ばかりだったので、どの方も濃かったんですけど、僕のMVPはPhillip Wooかなと思ってるんですけど。ちなみにPhillipのレコーディングの日は、僕、弾き語りのライヴがあって、会えなかったんですよ。唯一会えなかった。だからレコーディング後に音だけ聴いたんですけど、本当に別の味付けをしてくれて、完全にMVP決定ですね。会いたかったな。
佐藤:僕は会ったんですけど凄かったですよ。カタコトの日本語で、「これどう? いらん?」「Good! Good!」みたいな。で、ここをこういう感じにって言うと、それを越えるプレイが出るという。
佐藤:大森はじめさんのパーカッションとか凄かったですよね。オケができてからダビングしてもらう感じだったんですけど、淡々としたところにも、リズムがグネグネっときているような感じにしてくれて。すごい生ものになるというか。
谷川:「テレスコープ・トリッパー」という曲があるんですけど、デモの段階からこういう面白い展開だったんですけど、それが上手いこと、ちゃんと面白く聴けるようになったなと。谷(浩彰)くんの歌詞がまずあって、ノート一冊ぶんくらい、この曲の歌詞を書いてたんですよ。すごく頑張ってくれて。面白い歌詞になってますよね。
谷川:はい。でも谷くんに文学的という表現が似合わなさすぎて(笑)。でもこんな面白い歌詞がハマったっていうのと、アレンジも面白い感じになったし、渡辺シュンスケさんがピアノで参加してくれているんですけど、このプレイが絶妙で。一回か二回くらいしか合わせてないんですけど、最高ですっていうプレイが出たんで。
佐藤:僕は、「0.0025」。この曲はライヴで結構やっていたので、その感じを出すためにみんなで「せーの」で、Donnyのピアノも一緒にやったんですけど、ツアーでやってたときのグルーヴがそのまま出たんじゃないかなって。
谷川:まだまだ模索中なんですけどね。
佐藤:前回は太陽で、今回は月ですから、そろそろ地球に帰って来ていいんじゃないかって(笑)。
谷川:ライヴもありますからね。移動遊園地なので、ライヴハウスを遊園地みたいにしたいですよね。<Eat The Moon Parade>っていうタイトルにしてるんですけど、テーマパークがそこに出現するみたいな。奇想天外なドキドキワクワクなライヴにしたいです。
佐藤:今までのライヴから比べても、一番考えていかんと。ツアーにはPhillip Wooも大森さんもいないですから、音の部分でも考えないと。遊園地って言っちゃってるので、普通のライヴをしてもねぇ(笑)。だから結構いろいろ考えます。程よい期待をしてきてください。
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