生まれながらのライヴ・パフォーマー、超新星パロマ・フェイス
2008年のダフィーやアデルに続き、ラ・ルー、フローレンス&ザ・マシーン、ピクシー・ロットなど2009年もUKでは女性シンガーの活躍が目立つが、またもや並外れた才能の持ち主が現れた。
パロマ・フェイス――2009年デビューした女性アーティストはそれぞれユニークなヴォイスとファッション・センスを持ち合わせているが、パロマも“ヴィンテージ”な歌声と“演劇的”なスタイルで、幻想的でミステリアスな独自の世界を築いている。
◆生まれながらのライヴ・パフォーマー、超新星パロマ・フェイス ~写真編~
エイミー・ワインハウスやダフィーとも比較されるブルージーな歌声を持つだけでなく、ロンドン芸術大学の名門セント・マーティンズ・カレッジで舞台監督学のMA(学士号)を修得し女優としても活躍。そんなバックグラウンドを持つだけに、ヴィジュアルの面でも惹き込まれてしまうパロマ・ワールド。
ロンドン、スカラでのコンサート前、パンパドールのレッド・ヘアに白いアンティークのドレスというお人形のような姿で現れた彼女に話を聞くことができた。
――まず初めにあなたのバックグラウンドについて教えてください。
パロマ:ロンドンのハックニーで生まれたの。ダンスをやってて…、主にバレエね。4歳のころからバレエをやってて、フツウの学校、カレッジへ行ったんだけど、アートにすごく興味があって、よく絵も描いてたわ。結局、コンテンポラリー・ダンサーになろうと思ってダンスの学位を取ったんだけど、“間違えたかも”って思い始めたの。それと同時によく歌も歌ってたけど、プロってわけじゃなく楽しみのためにね。学校のショウとかシャワーの中でとか(笑)。
――女優としてのキャリアを先にスタートしていますよね?
パロマ:音楽と演技は同じときスタートしたのよ。ダンスの学位を取った後、舞台監督学のMA(学士号)を取ったの。それって、わたしの格好やショウでのパフォーマンス、セットにいっぱい影響を与えている。わたしに大きなインパクトを与えたわ。そのころ、40'sや50'sのカバー・バンドで歌ってて、うまく行ってたの。それに、女優の勉強をしておけばよかったとも思うようになって、ショーリールを作ってエージェントに送ったら、契約できたのよ。女優としての初仕事(CM)のオファーが来たのは、レコード会社と契約する前だったわ。でも、同じときにこのアルバムの曲を書いてたのよ。このアルバムのトラックは5年も書き溜めてたものだから。
――女優であり舞台の勉強をしていたことは、あなたのパフォーマンスにどう影響を与えているのでしょう?
パロマ:いつもセットのアイディアがあるし、オーディエンスとどう関わったらいいか考えている。わたしのパフォーマンスってとても演劇的だと思うの。だから決して型にはまった、ありきたりのライヴにはならないわ。
――ソングライティングにも影響していますか?
パロマ:その通りよ。はっきりとしたヴィジュアルを持ってるし、メタファーもたくさん使っている。みんなを日常や現実から引き離したいの。フェアリーテールやシュールな世界へね。
――子供のときはどんな音楽を聴いていたのでしょう?
パロマ:ほんとに小さいときは、親が聴いてたものを聴いてたわ。父はジャズが好きで、母は、ボブ・ディランとかキャロル・キング、ニーナ・シモーン、テンプテーションズ、フォー・トップス、スプリームスのような音楽を聴いてたの。そういうのを聴いて育って、学校へ行くようになってからは90'sのR&BとかUKガラージなんかを聴き始めたわ。それからもっと実験的なものに興味を覚えるようになった。エリカ・バドゥ、レディオヘッド、CocoRosieみたいなアヴァンギャルドな人たちをね。ほんとうにいろんなタイプの音楽を聴いてきたから、結構、音楽の歴史に詳しいと思うわ。
――でも、ジャズが1番のお気に入り?
パロマ:そうね、痛みを歌う女性たち、悲劇の女王が好きなのよ。ビリー・ホリディやエディット・ピアフ、エラ・フィッツジェラルドやダイアナ・ワシントン、ペギー・リーのように悲劇的でロマンチックな人たちが。
――デビュー・アルバム『Do You Want The Truth Or Something Beautiful?』に込められた思いについて教えてください。
パロマ:オーディエンスに何か美しいものをあげたいって考えたの。いまのメディアって、真実を知ろうってことに躍起になっているでしょ。アイコンの実態を探って、アイコンの座からひき下ろそうとしてる。マドンナは朝何食べてるとか、誰々は太ってて、誰々の家はこうだとか…。そういうのって、魔法を台無しにしてると思うのよ。わたしは謎が好きなの。だから、わたしはみんなに神秘や希望を与えたいって思ったのよ。アルバム全体に、愛する人との出会い、そして喪失という人間の永遠のテーマを込めてる。それが音楽のテーマになってるわ。
――ソングライティングの過程を教えてください。
パロマ:いつもノートブックを持ち歩いてて、自分の経験だけじゃなく、友達や、バスで一緒になった見知らぬ人たちの会話にインスパイアされたものを書き溜めてるの。それに映画からもインスピレーションを得るわ。映画館へ行くときもノートブックを持ち込んでる。そのアイディアを持ってスタジオへ入るの。昔、影響を受けた古い曲を参考にすることもあるし、いろいろよ。でも、いつも自然な流れで(曲が)誕生する。
――アルバムの中で1番古い曲は?
パロマ:5年前に作ったもの、「Broken Doll」よ。
――いくつのときに作ったのですか?
パロマ:19のときだったわ。
――いま、女性アーティストの活躍が目立ちますが、共感を覚える人は?
パロマ:いまの人たち? そうね、ノイゼッツのシンガーのシンギーかな。昔、彼女と一緒に住んでたこともあるし、いい友達なのよ。
――エイミー・ワインハウスやダフィーと比べられることもありますが、彼女たちのことはどう思いますか?
パロマ:2人ともすごくいいシンガーだと思う。だから嬉しいわ。でも、わたしは彼女たちとは別のものを持っている。音的にも歌詞の面でも、まったく違う。それに、演劇的な方法でパフォーマンスするという点では、アニー・レノックスに近いんじゃないかと思ってるの。でも、声のトーン、ヴィンテージなヴォイスという意味では(ワインハウスやダフィーに)似てるのかな。だから、比較されるんじゃないかしら。
――自分自身をひと言で表すと?
パロマ:うーん、そうね…、多分、演劇的。
――今夜はどんなショウになるのでしょう?
パロマ:ギグというよりパフォーマンスといった感じね。シアターにくるような感覚で来て欲しい。疑念や疑問を持たずに、感じて欲しいの。経験してもらいたいのよ。
――日本のファンへメッセージを。
パロマ:日本へ行って、パフォーマンスしたい! わたしって生まれながらのライヴ・パフォーマーだと思うの。だからみんな、どんな手段を使ってでも、わたしが日本でパフォーマンスできるようにしてちょうだい! みんなに会えるの、楽しみにしてるわ。
その夜ロンドンのスカラで開かれたショウは、まるでミニ・シアターのような趣き。真っ赤な垂れ幕をバックに天井からは折り紙でつくられた白い鳥がいくつも吊り下がり、ステージ上には幼稚園にあるような可愛らしい小さな椅子が並び、観客席にはたくさんの黒い風船が舞っている。
そんなフェアリー・テールのようなセットの中、ゴールドとホワイトのロング・ドレスを着たプリンス・パロマが登場。演劇的な身振りやバレエのようなダンスを交えたパフォーマンス、椅子の上に立ち上がったりフェザーが空中を舞うなど、確かにライヴというよりお芝居を観に来た感もあるが、その歌声、そのキャラにより、オーディエンスはただじっと舞台を鑑賞しているわけにはいかない。フル・バンドとともにプレイされたオープニング・トラック「Stone Cold Sober」は、アルバムで聴く以上にパワフルでロック調でさえあり、会場ははやくも大合唱。スタイリッシュなショウだが、オーディエンスにしきりと話しかける気取らないキャラのおかげで会場にはフレンドリーな空気が流れた。
前半は演劇の要素が強かったが、後半ではミニ・スカートに衣替え、“Let's Shake!”という掛け声でアップテンポなトラックをプレイし会場はパーティー・モードに。舞台とライヴ両方が楽しめるショウとなった。
パロマ・フェイスのデビュー・アルバム『Do You Want The Truth Or Something Beautiful』は英国で今週月曜日(9月28日)にリリースされた。
Ako Suzuki, London
パロマ・フェイス――2009年デビューした女性アーティストはそれぞれユニークなヴォイスとファッション・センスを持ち合わせているが、パロマも“ヴィンテージ”な歌声と“演劇的”なスタイルで、幻想的でミステリアスな独自の世界を築いている。
◆生まれながらのライヴ・パフォーマー、超新星パロマ・フェイス ~写真編~
エイミー・ワインハウスやダフィーとも比較されるブルージーな歌声を持つだけでなく、ロンドン芸術大学の名門セント・マーティンズ・カレッジで舞台監督学のMA(学士号)を修得し女優としても活躍。そんなバックグラウンドを持つだけに、ヴィジュアルの面でも惹き込まれてしまうパロマ・ワールド。
ロンドン、スカラでのコンサート前、パンパドールのレッド・ヘアに白いアンティークのドレスというお人形のような姿で現れた彼女に話を聞くことができた。
――まず初めにあなたのバックグラウンドについて教えてください。
パロマ:ロンドンのハックニーで生まれたの。ダンスをやってて…、主にバレエね。4歳のころからバレエをやってて、フツウの学校、カレッジへ行ったんだけど、アートにすごく興味があって、よく絵も描いてたわ。結局、コンテンポラリー・ダンサーになろうと思ってダンスの学位を取ったんだけど、“間違えたかも”って思い始めたの。それと同時によく歌も歌ってたけど、プロってわけじゃなく楽しみのためにね。学校のショウとかシャワーの中でとか(笑)。
――女優としてのキャリアを先にスタートしていますよね?
パロマ:音楽と演技は同じときスタートしたのよ。ダンスの学位を取った後、舞台監督学のMA(学士号)を取ったの。それって、わたしの格好やショウでのパフォーマンス、セットにいっぱい影響を与えている。わたしに大きなインパクトを与えたわ。そのころ、40'sや50'sのカバー・バンドで歌ってて、うまく行ってたの。それに、女優の勉強をしておけばよかったとも思うようになって、ショーリールを作ってエージェントに送ったら、契約できたのよ。女優としての初仕事(CM)のオファーが来たのは、レコード会社と契約する前だったわ。でも、同じときにこのアルバムの曲を書いてたのよ。このアルバムのトラックは5年も書き溜めてたものだから。
――女優であり舞台の勉強をしていたことは、あなたのパフォーマンスにどう影響を与えているのでしょう?
パロマ:いつもセットのアイディアがあるし、オーディエンスとどう関わったらいいか考えている。わたしのパフォーマンスってとても演劇的だと思うの。だから決して型にはまった、ありきたりのライヴにはならないわ。
――ソングライティングにも影響していますか?
パロマ:その通りよ。はっきりとしたヴィジュアルを持ってるし、メタファーもたくさん使っている。みんなを日常や現実から引き離したいの。フェアリーテールやシュールな世界へね。
――子供のときはどんな音楽を聴いていたのでしょう?
パロマ:ほんとに小さいときは、親が聴いてたものを聴いてたわ。父はジャズが好きで、母は、ボブ・ディランとかキャロル・キング、ニーナ・シモーン、テンプテーションズ、フォー・トップス、スプリームスのような音楽を聴いてたの。そういうのを聴いて育って、学校へ行くようになってからは90'sのR&BとかUKガラージなんかを聴き始めたわ。それからもっと実験的なものに興味を覚えるようになった。エリカ・バドゥ、レディオヘッド、CocoRosieみたいなアヴァンギャルドな人たちをね。ほんとうにいろんなタイプの音楽を聴いてきたから、結構、音楽の歴史に詳しいと思うわ。
――でも、ジャズが1番のお気に入り?
パロマ:そうね、痛みを歌う女性たち、悲劇の女王が好きなのよ。ビリー・ホリディやエディット・ピアフ、エラ・フィッツジェラルドやダイアナ・ワシントン、ペギー・リーのように悲劇的でロマンチックな人たちが。
――デビュー・アルバム『Do You Want The Truth Or Something Beautiful?』に込められた思いについて教えてください。
パロマ:オーディエンスに何か美しいものをあげたいって考えたの。いまのメディアって、真実を知ろうってことに躍起になっているでしょ。アイコンの実態を探って、アイコンの座からひき下ろそうとしてる。マドンナは朝何食べてるとか、誰々は太ってて、誰々の家はこうだとか…。そういうのって、魔法を台無しにしてると思うのよ。わたしは謎が好きなの。だから、わたしはみんなに神秘や希望を与えたいって思ったのよ。アルバム全体に、愛する人との出会い、そして喪失という人間の永遠のテーマを込めてる。それが音楽のテーマになってるわ。
――ソングライティングの過程を教えてください。
パロマ:いつもノートブックを持ち歩いてて、自分の経験だけじゃなく、友達や、バスで一緒になった見知らぬ人たちの会話にインスパイアされたものを書き溜めてるの。それに映画からもインスピレーションを得るわ。映画館へ行くときもノートブックを持ち込んでる。そのアイディアを持ってスタジオへ入るの。昔、影響を受けた古い曲を参考にすることもあるし、いろいろよ。でも、いつも自然な流れで(曲が)誕生する。
――アルバムの中で1番古い曲は?
パロマ:5年前に作ったもの、「Broken Doll」よ。
――いくつのときに作ったのですか?
パロマ:19のときだったわ。
――いま、女性アーティストの活躍が目立ちますが、共感を覚える人は?
パロマ:いまの人たち? そうね、ノイゼッツのシンガーのシンギーかな。昔、彼女と一緒に住んでたこともあるし、いい友達なのよ。
――エイミー・ワインハウスやダフィーと比べられることもありますが、彼女たちのことはどう思いますか?
パロマ:2人ともすごくいいシンガーだと思う。だから嬉しいわ。でも、わたしは彼女たちとは別のものを持っている。音的にも歌詞の面でも、まったく違う。それに、演劇的な方法でパフォーマンスするという点では、アニー・レノックスに近いんじゃないかと思ってるの。でも、声のトーン、ヴィンテージなヴォイスという意味では(ワインハウスやダフィーに)似てるのかな。だから、比較されるんじゃないかしら。
――自分自身をひと言で表すと?
パロマ:うーん、そうね…、多分、演劇的。
――今夜はどんなショウになるのでしょう?
パロマ:ギグというよりパフォーマンスといった感じね。シアターにくるような感覚で来て欲しい。疑念や疑問を持たずに、感じて欲しいの。経験してもらいたいのよ。
――日本のファンへメッセージを。
パロマ:日本へ行って、パフォーマンスしたい! わたしって生まれながらのライヴ・パフォーマーだと思うの。だからみんな、どんな手段を使ってでも、わたしが日本でパフォーマンスできるようにしてちょうだい! みんなに会えるの、楽しみにしてるわ。
その夜ロンドンのスカラで開かれたショウは、まるでミニ・シアターのような趣き。真っ赤な垂れ幕をバックに天井からは折り紙でつくられた白い鳥がいくつも吊り下がり、ステージ上には幼稚園にあるような可愛らしい小さな椅子が並び、観客席にはたくさんの黒い風船が舞っている。
そんなフェアリー・テールのようなセットの中、ゴールドとホワイトのロング・ドレスを着たプリンス・パロマが登場。演劇的な身振りやバレエのようなダンスを交えたパフォーマンス、椅子の上に立ち上がったりフェザーが空中を舞うなど、確かにライヴというよりお芝居を観に来た感もあるが、その歌声、そのキャラにより、オーディエンスはただじっと舞台を鑑賞しているわけにはいかない。フル・バンドとともにプレイされたオープニング・トラック「Stone Cold Sober」は、アルバムで聴く以上にパワフルでロック調でさえあり、会場ははやくも大合唱。スタイリッシュなショウだが、オーディエンスにしきりと話しかける気取らないキャラのおかげで会場にはフレンドリーな空気が流れた。
前半は演劇の要素が強かったが、後半ではミニ・スカートに衣替え、“Let's Shake!”という掛け声でアップテンポなトラックをプレイし会場はパーティー・モードに。舞台とライヴ両方が楽しめるショウとなった。
パロマ・フェイスのデビュー・アルバム『Do You Want The Truth Or Something Beautiful』は英国で今週月曜日(9月28日)にリリースされた。
Ako Suzuki, London
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