渋谷CLUB QUATTROを異次元に変える歌姫ANZA

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オープニングアクトで温まった会場は、そこはかとない存在感で会場をひとつにする歌姫の登場を待っていた。そう、HEAD PHONES PRESIDENTのANZAだ。

20:00。セットチェンジが終わり、HEAD PHONES PRESIDENTへの扉が開かれる。ベースの音が響き、会場からはANZAを呼ぶ声。そこへ、両手を高く上げて彼女はステージに現れる。

HEAD PHONES PRESIDENTのライブにMCはない。激しいまでの演奏と、痛いまでの歌声がただ続いていく。そして、観客は一切気持ちを途切らせることなく、あるひとつの架空の場所へ集中していくのだ。

天に伸びるような声が響き始める。たっぷりとしたパープルのロングスカートを思いっきり揺らしながら、迷うことなく頂点まで登り詰める。

続く曲では、自分の存在をたたきつけるようなパフォーマンスを見せてくる。緩急の波を起こしながら、観客を巻き込んでいく。セクシーな仕草のあとに、激しいヘッドバンギング。観客を煽るようにステージを盛り上げる。

そして、彼女の存在を思う。綺麗な顔立ち。安定した歌唱力。ミュージカルのステージにも立つ彼女は、正統派を求めようとすれば、いくらでもそれが可能だ。しかし、彼女は何よりもHEAD PHONES PRESIDENTをいうバンドを愛し、その存在こそが自分の証明だと以前語っていた。そう、ここで彼女は心を裸にして勝負しているのだ。

足元から上がってくるような音。子宮を攻めてくるようなリズム。そんななかで彼女は歌い伝え続ける。腕を客席に伸ばし指先を触れあわせながら、優しい表情をするときはまるで聖母のよう。しかし、そんな聖母の顔はすぐに裏切られていく。激しい音の中へ。ヘッドバンギング。

囁くような声、鈴の音。ステージという魔物を相手に正面から戦いを挑むような本気の勝負。見ているこちらも息つく暇がない。

最後には、座り込んで、まるで子供のような無邪気な雰囲気を見せる。彼女はいったいいくつの顔を持っているのだろう? そして、何が素顔なのだろう? そんな疑問も無駄だ。きっとすべてが素顔であり、飾らないすべてで自由を求めているのだから。

7曲という短いステージが終わる。最後にステージの中央で、「Thank you.ありがとうございました」と言い、舞台を去る。扉が閉まる。現実に戻りきれない私たちを残して。

2008年5月19日@渋谷CLUB QUATTRO
1.n0ize
2.Chain
3.新曲(曲名未定)
4.Labyrinth
5.Light to Die
6.non title
7.I will stay

<LIQUIDROOM presents“UNDER THE INFLUENCE”>
2009年7月8日 (水) 開場 18:00 / 開演 18:45
@恵比寿 LIQUID ROOM ...website
出演:HEAD PHONES PRESIDENT / DETROX / Pia(from韓国) / and more
DJ:激ロック(DJ MAY-E/DJ TETU★KID)
料金:前売¥3,300(1ドリンク代別途必要)
◆HEAD PHONES PRESIDENTオフィシャルサイト

[寄稿] 伊藤 緑:http://www.midoriito.jp/
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