増田勇一の『今月のヘヴィロテ(6月篇)』
ふと気がつけば2008年も前半が終了。この『今月のヘヴィロテ』も早くも6回目ということになるわけだが、毎月、10枚に絞り込むのが困難なほどに“最新のフェイヴァリット・アルバム”と出会えているということは、今年はかなり音楽的に豊作な年ということになるのかもしれない。今回も例によって雑食傾向に拍車のかかったセレクションとなったが、選外とせざるを得ない作品もたくさんあった。
●ジューダス・プリースト『ノストラダムス』
●コールドプレイ『美しき生命』
●N.E.R.D『シーイング・サウンズ』
●フィーダー『サイレント・クライ』
●アゲインスト・ミー『ニュー・ウェイヴ』
●ジョーン・アズ・ポリス・ウーマン『トゥ・サヴァイヴ』
●モトリー・クルー『セインツ・オブ・ロスアンゼルス』
●グランド・メイガス『アイアン・ウィル』
●ジェイコブ・ディラン『シーイング・シングス』
●ブラック・タイド『ライト・フロム・アバヴ』
ジューダス・プリーストの『ノストラダムス』は、2枚組コンセプト・アルバムということで、一気に聴こうと思うとある種の覚悟が必要だし、軽い気持ちでBGMにするには無理もあるのだが、逆に、一度聴き始めると抜け出せなくなる。メタル初心者には手をのばしにくいたたずまいをした作品でもあるはずだが、妙な難解さとはむしろ無縁だったりもするし、「この作品でジューダス・プリーストに初めて触れた」という世代がどんな感想を持つことになるのかに、僕は強い興味をおぼえずにいられない。
モトリー・クルーについては、正直、まわりが騒ぐほど「最高傑作!」とは思わないのだけども、まさにパブリック・イメージに忠実で、世の中が求めているモトリー・クルー像を裏切ることのない完成度はさすが。その時代なりの鋭利さ、みたいな意味においては『ジェネレーション・スワイン』のほうがずっと上だと僕は思うし、確かにトミー・リー不在期ではあったが『ニュー・タトゥー』にだっていい曲はあった。そんななかで今作というのはタイミングや周辺状況を含めた“不可欠な駒”が全部揃っているということなのだろう。予備知識の少ない人にもバンドの特性を理解しやすい内容だし、この作品についてはジューダスの場合以上に素直に「初めてこのバンドを聴く人たちにもおススメ」と言っておこう。
ついでに暴言を吐いてしまうと、これまで勝手に「毒にもクスリにもならないバンド」だと思い込んでいたコールドプレイの『美しき人生』も充実した内容だった。「ロックアートの最高峰」という叩き文句には首を傾げたくなるところも少々あるが、いつのまにか脳を侵食してしまうような、さりげない中毒性がある。タイトルがちょっと似ているN.E.R.Dとジェイコブ・ディランの作品も、音楽的には真逆だがやはり中毒性が高いし、“脱出不能度”の高さで言えばジョーン・アズ・ポリス・ウーマンの新作は断トツかも。また、フィーダーの楽曲の充実ぶりと機能美、アゲインスト・ミーの哀愁を帯びた熱っぽさ、グランド・メイガスの堂々たる存在感も印象的だった。そして十代ならではの若々しさにあふれたブラック・タイドのデビュー作には、80年代初頭のニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタルにも通ずる匂いを感じたし、もっとストレートに言えばデビュー当時のデフ・レパードを思い出さずにいられなかった。
これらの10作品以外によく聴いたのは、オフスプリング、ウィーザー、ザ・フラテリス、キル・ハンナ、アリ・コイヴネン、ニュートン・フォークナーといったところ。輸入盤で手に入れたTANTRICの新作、『THE END BEGINS』もツボ突きまくりの1枚だった。というわけで、7月も“豊作”を祈りたい。
増田勇一
●ジューダス・プリースト『ノストラダムス』
●コールドプレイ『美しき生命』
●N.E.R.D『シーイング・サウンズ』
●フィーダー『サイレント・クライ』
●アゲインスト・ミー『ニュー・ウェイヴ』
●ジョーン・アズ・ポリス・ウーマン『トゥ・サヴァイヴ』
●モトリー・クルー『セインツ・オブ・ロスアンゼルス』
●グランド・メイガス『アイアン・ウィル』
●ジェイコブ・ディラン『シーイング・シングス』
●ブラック・タイド『ライト・フロム・アバヴ』
ジューダス・プリーストの『ノストラダムス』は、2枚組コンセプト・アルバムということで、一気に聴こうと思うとある種の覚悟が必要だし、軽い気持ちでBGMにするには無理もあるのだが、逆に、一度聴き始めると抜け出せなくなる。メタル初心者には手をのばしにくいたたずまいをした作品でもあるはずだが、妙な難解さとはむしろ無縁だったりもするし、「この作品でジューダス・プリーストに初めて触れた」という世代がどんな感想を持つことになるのかに、僕は強い興味をおぼえずにいられない。
モトリー・クルーについては、正直、まわりが騒ぐほど「最高傑作!」とは思わないのだけども、まさにパブリック・イメージに忠実で、世の中が求めているモトリー・クルー像を裏切ることのない完成度はさすが。その時代なりの鋭利さ、みたいな意味においては『ジェネレーション・スワイン』のほうがずっと上だと僕は思うし、確かにトミー・リー不在期ではあったが『ニュー・タトゥー』にだっていい曲はあった。そんななかで今作というのはタイミングや周辺状況を含めた“不可欠な駒”が全部揃っているということなのだろう。予備知識の少ない人にもバンドの特性を理解しやすい内容だし、この作品についてはジューダスの場合以上に素直に「初めてこのバンドを聴く人たちにもおススメ」と言っておこう。
ついでに暴言を吐いてしまうと、これまで勝手に「毒にもクスリにもならないバンド」だと思い込んでいたコールドプレイの『美しき人生』も充実した内容だった。「ロックアートの最高峰」という叩き文句には首を傾げたくなるところも少々あるが、いつのまにか脳を侵食してしまうような、さりげない中毒性がある。タイトルがちょっと似ているN.E.R.Dとジェイコブ・ディランの作品も、音楽的には真逆だがやはり中毒性が高いし、“脱出不能度”の高さで言えばジョーン・アズ・ポリス・ウーマンの新作は断トツかも。また、フィーダーの楽曲の充実ぶりと機能美、アゲインスト・ミーの哀愁を帯びた熱っぽさ、グランド・メイガスの堂々たる存在感も印象的だった。そして十代ならではの若々しさにあふれたブラック・タイドのデビュー作には、80年代初頭のニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタルにも通ずる匂いを感じたし、もっとストレートに言えばデビュー当時のデフ・レパードを思い出さずにいられなかった。
これらの10作品以外によく聴いたのは、オフスプリング、ウィーザー、ザ・フラテリス、キル・ハンナ、アリ・コイヴネン、ニュートン・フォークナーといったところ。輸入盤で手に入れたTANTRICの新作、『THE END BEGINS』もツボ突きまくりの1枚だった。というわけで、7月も“豊作”を祈りたい。
増田勇一
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