【ライブレポート】呪イ系アイドル・マザリ、「これからもこの7人で一生歩み続けていきます」

真夜中の山奥にある神社を模したステージセット。中央に聳える鳥居を挟んで上手壇上にRay(G / DEVILOOF)と響(Dr / 摩天楼オペラ)、そして下手壇上には明徳(B / lynch.)と葉月(G / NEMOPHILA, KOIAI)が構える。禍々しい雰囲気の会場に「マザリのライブには怨み、妬み、憎しみが込められています。幸せに満たされている方は……充分に、ジュウ、ブンニ注意シテ……ゴ覧クダサイ……」と、不穏なナレーションが響き渡った。
猛者バンドがけたたましくずっしりと重いビートを刻む。お馴染みのSE「呪詛」の生演奏に合わせて、鳥居から能面を被ったマザリのメンバーが1人、また1人と現れ、能面を剥ぎ取るように、ステージの定位置につく。6人がステージに横一列並ぶと、猛者が奏でるビートはブラストへと変貌し、蛇喰ホムラの邪悪な咆哮と共に轟音がフロアに降り注いだ。

“呪イ”をコンセプトにしたアイドルグループ、マザリが1月よりスタートした<マザリ 二○二六年 七大都市単独巡礼「呪物崇拝見世物花屋敷」>ツアーファイナルを4月14日、EX THEATER ROPPONGIにて開催した。本公演を含めたツアー全公演がソールドアウト。各地では“日本最後の見世物小屋”を担う劇団・ゴキブリコンビナートや怪談師を招いたライブを展開。到底アイドルとは思えぬ、マザリだからできる趣向でツアーを彩ってきた。


このファイナルでは、開演から怪談師・ぁみが背筋も凍る怖い話を言葉巧みに並べ、呪物コレクター・田中俊行が実演販売さながらの話術で不気味で怪しい呪物を紹介していた。普通に考えればアイドルライブとは無縁の出演者がステージに登場するのも異形のアイドル、マザリならではである。
そうした不気味な演者たちによって、あたためられ……いや、悍ましく冷やされた会場で、メインアクトであるマザリのバンドセットライブが始まる。「サイタサイタ」と童謡を想起させる旋律と絡み合う三味線の音色、和情緒とDビートがせめぎ合う「生花死花」から噴き上がる無数の炎が彩り、今宵の宴は幕を開けた。


おどろおどろしくもキャッチーなサビに心が浄化される「禁呪」、奇怪な風情を撒き散らす「遺骸奇譚座」と、攻撃的で重厚な楽曲を次々と紡いていく。大砲の如く乱れ撃たれるツーバスと精確なスネアのショットで唯一無二のビートを繰り出す響に、クールな面持ちから地を這う重低音を繰り出す明徳。2人の一糸乱れぬリズムとグルーヴが会場を揺らす。Rayがあざやかに華麗なシュレッドをキメれば、葉月があでやかに流麗なフレーズで呼応する。分厚い轟音の壁を作り出す猛者バンドの音と雄姿を背に、歌い踊るマザリの6人。彼女たちの姿は、昨年10月に地元・名古屋で行われた初のバンドセットライブ<マザリ一周年単独公演『呪詛-生演奏-』>のときとは比べものにならないほど自信に溢れ、堂々としている。

禍々しいシンセのシーケンスから「ヲドレ!」と素っ頓狂な死ヰメロアンチの声で狂騒へと導かれる「一緒に死ぬ序でに愛して欲しい」。どこか懐かしい歌謡性を帯びたメロディから一気に堕とされるブレイクダウン。間奏では、明徳を筆頭に弦楽器3人がそしてステージフロントに躍り出て、葉月とRayがメロウなツインギターソロを奏でた。
マザリの1人ひとりの挨拶から「人を呪えば穴二つ」とのホムラの言葉から始まった「御呪い」。童謡風のフレーズをリズミカルなダンスに合わせて歌う。声量たっぷりに歌声を響かせながら躍動感に溢れる動きで魅せる米粉パンと、男前なオーラをバンバン放つ真鬼マナセがオーディエンスをねじ伏せていく。真っ青なブレイズヘアを振り乱しながら狂ったようにシャウトする朽壊レムと、ネオンのグリーンヘアを靡かせる髄狂アクが陰を持つ眼光でフロアを圧倒する。6人はダンサブルに「お慕い申し上げます。」を届けると、颯爽とステージから去っていった。


けたたましく鳴り響く轟音。「愛×食欲」のリフに合わせてバンドメンバーによるソロ回しが展開される。葉月、明徳、響、Rayが次々と華麗で豪快なソロプレイを炸裂させ、オーディエンスを魅了する。そんな猛者どもの戯れが終了すると「マザリ、カーモン!!」と、明徳が6人をステージに呼び戻す。「さあお前ら、もっともっとここに魂捧げてこいやァァー!!」ホムラの叫びが響くと、怒涛のビートで「二十六時の愚行」を届けた。


「東京! オイ、東京! 上手(カミテ)行こうかぁ!」と、フロアを煽りまくるマナセ。「まだ足りねえな! まだ声聞きてえんだよ!!」と怒号のような声を上げながらステージ上を徘徊する。そして、おもむろに響のバスドラムに足を掛け、そのまま上がると「いけんのか! いけるか、響ィィィ!!!」と挑発する。そんなバンドのフロントマンのようなマナセの姿を前に、響は笑顔を浮かべながらワイルドなフィルで応える。そのままアッパーチューン「人形-ヒトガタ-」へと傾れ込んだ。

右へ左へと所狭しに歌い踊る6人。パンの雄叫びが会場にこだまし、ホムラの咆哮が虚を切り裂いていく。マザリのパフォーマンス、バンドと織りなすスリリングなライブ運びを目の前に、これまでずっとマザリを見届けてきた者、初めてマザリのライブを観る者、その眼前の光景を目にした全員、“アイドルのライブ”だと思っていなかったはずだ。


訪れる束の間の静寂。落ち着いた声でマナセが挨拶すると、サプライズで新曲「追白、貴方を恨みます。」の初披露。この日のマナセの言葉を借りれば「悔やんでも悔やみきれない心情を手紙に記したような」曲である。マザリの新境地、ミディアムテンポで切なくメロウな歌モノをしっとりとしっかりと届けた。
MCではツアー中に出演した、北海道・札幌での『さっぽろ雪まつり』のステージで、滑って転倒したパンの動画がXでバズったこと、そんなパンがメンバーに手料理を振る舞ったことなど、「五大都市」から「七大都市」に拡大された本ツアーを振り返りながら、熾烈なライブパフォーマンスの合間にアイドルらしい顔を見せた。こうした緩急ある側面もマザリの大きな魅力である。

「東京、オレらについてこいよ」
マナセのクールな口ぶりからのラストスパートは「蠱毒怨唄」からスタートした。「ひとりかくれんぼ」のホムラとレムによるダブルシャウト、「こっくりさん」での地鳴りのブレイクダウン。ホムラのこの世の終わりを告げるかのような咆哮が、マザリとバンドのグルーヴをさらに獰猛にする。フロアを埋め尽くしたオーディエンスも負けじと腕をあげ、声をあげ、頭を振って応えていく。マザリが放つ呪イのメロディと轟音アンサンブルが一丸となって会場を揺らし、本編ラストの「逢魔時に染まる私の自傷癖」まで一気に駆け抜けた。

アンコールでのメンバー挨拶。LINEなど、メンバーとの交流を見返していたら感慨深い想いになったと語り始めたマナセ。「1年半いろんなことがありましたけど、こんなにたくさんの人がついてきてくれた、僕たちのことが好きで応援してくれた、これは当たり前のことじゃない。なおさら、みんなのこと抱きしめていくからね。これからもみんなのこと愛していくんで、僕たちのこと愛してください!」とハンサムにキメた。

毎回ツアーファイナル、会場が埋まるか心配だったというメロ。満員のフロアと本編での充実感に溢れた気持ちを前に「5月からも予定あるよね? 集大成の気持ちなんだけど……」と吐露。「あたしは文じゃないと伝えられません」と照れながら、Xであらためてお礼を言うと約束した。

ツアーが始まって3ヶ月。その間にメンバーの生誕祭があったりと充実と忙しさを体感したアク。ツアーを開催する度に会場が大きくなり、リハでは走り回って、メンバーとの物理的な距離が遠くなったことを実感。「これからも大きい会場に立つつもりで、これからもっと早く走れるように練習します!」と語った。

「もっと大きい会場でライブがしたい、もっとたくさんの方と歩んでいきたい、ゆくゆくは海外を狙っていきたい」と大きな野望を掲げるホムラは、「1人ひとりの応援がマザリの未来に繋がっていくので、これからもでっかい夢を追い続けるために全員ついてきてほしいです。これからもよろしくお願いします」と続けた。

「こんな大きいステージに立たせてもらってるのも、マザリの朽壊レムとして生きられてることも、このメンバーでマザリができていることも当たり前じゃない。お前らのおかげで、ステージに立てているので感謝を伝えます、ありがとうございます」と礼を述べたレム。「自分もこんな見た目で怖がられるし、雰囲気も呪イとか、怖がられることが多いんですけど、ここにきてくれてありがとうございます」と感謝した。

最後はパン。「マザリってやっぱり、マザリにしか出せないものがあると思ってて。それが好きなんでしょ? みんな。マザリだから好きなんでしょ? マザリにしかできないことがあるから、みんな楽しくて来てるんでしょ? だからそういうキミたちの生き甲斐になれるように。これで終わりじゃないから。これからもついて来てください」と自分たちにしかできないライブと世界観を掲げていることを誇らしげに語ると、大きな歓声に包まれた。

「マザリに呪われる覚悟はできてますか?」
「あなたの恨み、晴らします」と、ホムラの誘いで始まった「丑の刻参り」。MVで舞台となった真夜中の神社を彷彿とさせるステージセットの中で、マザリだからこそできるカオティックな世界を創り出していく。そして、2025年に旅立ってしまった心臓ウリンの落ちサビの歌声が轟く「遺書」を届けた。
「マザリのことを、マイノリティな僕たちのことを、好きでいてくれて、愛してくれてありがとうございます。マザリを始めたときは、こんなに大きなステージで、こんなに素敵な景色を見れるとは思ってなかった。これからもどうか末長く、マザリのことを愛してください。そして、これからも笑い合って混ざりあっていきましょう」

メロがそう語ると「混ざり」が贈られた。ダークな雰囲気から一気に解放されていくサビ。混沌とした世界から解き放たれるように6人の歌声が明るく会場に鳴り響くと、盛大に銀テープが放たれた。6人は肩を寄せ合ってステージ中央で円陣を組み、団円……と思いきや、どこからともなく無機質なシーケンスが鳴り出した。

「お前ら今日楽しみだったんでしょう? 声聞かせてくれよぉ〜、死ぬ気でこいや!」
パンが叫ぶと、明徳が持ち替えたVシェイプのベースでスラップをはじき出した。「ヴォイ!ヴォイ!」と割れんばかりの歓声に合わせて火柱が上がる。最後の最後の力を出し切るように「メンタルリストカット」の投下だ。Rayも明徳もフロア最前列を扇動するように頭を振り、葉月とメロが向かい合わせで頭を振る。ボルテージ全開のキラーチューンで激しくも美しいステージを終えた。
「これからもこの7人で、一生歩み続けていきますので、これからも私たちと共に歩んでいってください。あなたたちの未来に私たちがいるように、私たちの未来にもあなたちが必要です。これからも一緒に人生歩んでいきましょう。今日はありがとうございました!」
最後にパンの言葉が響いた。そう、マザリはこれからもずっと7人なのだ。
8月には、この猛者バンドとともに東名阪を廻る。より強靭に、凶暴になっていくマザリから目を離すな。

取材・文◎冬将軍
撮影◎ミヤタショウタ、岡見高秀
セットリスト
SE「呪詛」
生花死花
禁呪
遺骸奇譚座
一緒に死ぬ序でに愛して欲しい
御呪い
お慕い申し上げます。
愛×食欲《バンドソロ》
二十六時の愚行
人形-ヒトガタ-
追白、貴方を恨みます。
蠱毒怨唄
ひとりかくれんぼ
こっくりさん
逢魔時に染まる私の自傷癖
アンコール
丑の刻参り
遺書
混ざり
メンタルリストカット
<東名阪バンドセットツアー『 呪奏巡業 -獄彩- 』>
《大阪編》
8月4日(火)
大阪・BIGCAT
(問)キョードー大阪
《名古屋編》
8月19日(水)
名古屋・DIAMOND HALL
(問)サンデーフォークプロモーション
《東京・ファイナル編》
8月24日(月)
東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
(問)ディスクガレージ
<全会場共通>
開場 / 開場 18:00 / 19:00
【チケット発売中】
・チケットぴあ
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・ローソンチケット
https://l-tike.com/mazari/
・イープラス
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