米国同時多発テロ事件を受けて、チャリティ作品が続々リリース!…音楽にできることとは?

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米国同時多発テロ事件を受けて、チャリティ作品が続々リリース!


せめてこの悲劇を忘れないためにも、耳に胸に刻んでおきたい

▲Ozzy Osbourne
戦争じゃ何も解決しないって言うんだったら、これから戦争が始まる国に行って、カブールのクソったれなメインストリートを歩いて、肝の据わってるところを見せてくれよ。そのバカげたスローガンじゃ絶対に誰も助からないだろうな。すぐに後ろから頭を撃ち抜かれて死んじまうぜ。だろう?」(Ozzy Osbourne


▲Green Day
報復は、単なるひとつの意見でしかない。個人的には平和を望んでいる。そう言うとたぶん、無知とか、短絡的と思われるだろうけど、オレは政府の人間じゃないし、米国を動かしてるわけでもないからね。被害者を癒すのに、人々を殺すのがいい考えだとは思わない。マーティン・ルーサー・キングJr.は、『殺人者を殺すことはできるけど、殺人そのものを殺すことはできない』って言っているだろう?」(Green Day のドラマー、Tre Cool)

これは、9月11日に米国で起きたテロ事件後、連日BARKS(アメリカ本国の情報元はアメリカの音楽サイトLAUNCH.com)に寄せられた多数のメッセージの中から、報復賛成派と反対派のアーティストのコメントを抜き出したもの。
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後者のグリーン・デイは、ヴォーカリストのビリーも、戦争の無意味さをあらゆるメディアで訴えかけている。

くしくも事件から2ヶ月半後、ジョージ・ハリスンが他界した。ニューヨークの象徴であった世界貿易センタービルが崩壊し、アメリカの、いや世界の音楽の象徴であったビートルズのジョージが逝く。もちろん単なる偶然に過ぎないのだけれど、ともかく、もはや世界が、“あのころ”とは全然違うものになってしまったことは間違いない。

“あのころ”には当たり前のようにあったものが、今はもう、ない。本当に、ないのだ。

実に、アメリカ国民の8割以上が、報復を支持しているらしい。偏見だとお叱りを受けるかもしれないけれど、個人的には、「アメリカがNo.1」とすり込まれ、いったん「No.1」が危険に晒されれば、どんな手段を使ってでもその対象を叩きのめし、「No.1」をアピールし続けようという、自己顕示意識と支配意識が強いアメリカ人的気質が、どうも引っかかっている。

もちろん、安直に戦争反対を唱えるだけなのもよろしくないのだろう。でも、傍から見ていると、報復の指令を出しているブッシュ大統領なんか、まるでヒーローではないか。事実に基づいたドラマティックなストーリーを演じ、盛り上げ、ヒロイックな自己満足に陥る。どうもそんな図式が、お偉いさん連中からは感じられてならない。
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→□ さて、政治論や戦争論はさておき、ここでは、こんな時に音楽が持つ意味を考えてみたい。大きな天災や事件、事故が起こった時によくテーマにされる、「音楽には何ができるのか?」という問題である。

ぼくは、音楽にはふたつの大きな側面があると思っている。

ひとつは、エンターテインメント性。テロ事件の直後、現地在住の日本人音楽ジャーナリストがどこかで、「とても音楽が鳴らされるような空気ではない」みたいなことを言っていた。音楽をエンターテインメントと捉えると、悲劇の後ではやはりそうなってしまうだろう。

しかし、音楽はもうひとつ、スピリチュアルな側面も併せ持っているのではないだろうか。
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歌う者、プレイする者のスピリットが、聴く者のスピリットに何かをもたらす。それは慰めや癒しかもしれないし、勇気かも、希望かもしれない。すべて束の間のものだけど。

――でもぼくは、それだけでも充分だと思うのだ。

何をもって音楽に何かが「できた」とするのかは、極めて難しい。しかし、聴いた誰かが3分、4分の間、さっきまでの自分とは違う感情、感慨を抱く。これは音楽が持つマジックとも言える大きなパワーだし、人の心を動かすことができるなんて、素晴らしいことではないか。

だから、偽善だ茶番だと、必ず一部で批判の対象となるチャリティー作品に対しても、決して否定する気にはなれない。だってそもそも、収益金でほんのちょっとでも潤う人が存在するのだったら、それは、何がしかの役に立っているということなんだし。
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→△ そのチャリティーCDだが、テロ事件を受けて企画されたものが立て続けにリリースされている。

Marvin Gayeの名曲を、ジャンルを問わずスーパー・アーティストが競演した「WHAT'S GOING ON」、Celine Dionの2年ぶりのレコーディングでも話題の『GOD BLESS AMERICA』、アメリカで65%という驚異の視聴率を記録したチャリティー番組のCDDVDビデオ化『AMERICA:A TRIBUTE TO HEROES』、ポール・マッカートニーの提唱でマジソン・スクエア・ガーデンで行われたイベントの模様を収めた『THE CONCERT FOR NEW YORK CITY』。主だったものはこの4本。

個人的には、『A TRIBUTE~』でNeil Youngがあえてプレイした「イマジン」と、『THE CONCERT~』での、Mick JaggerとKeith Richardsの久々の共演に感銘を受けてしまったが、それぞれに(特に後の2枚)聴きどころは多い。

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▲Weezer
当事者と同じ気持ちにはなれないのを重々承知の上で、せめてこの悲劇を忘れないためにも、耳に胸に刻んでおきたい作品だ。
この事件について何かしたいと思うけど、僕ができるのは音楽をプレイすることくらいなんだ」(Weezerのヴォーカリスト、リヴァース・クオモ)

それで、いいのだと思う。

文●鈴木宏和(01/12/03)


『What's Going On』/Artists Against AIDS Worldwide

『What's Going On』

Artists Against AIDS Worldwide
Sony Records International SICP-56
2001年11月7日発売  1,260(tax in)

1 Dupri Original Mix
2 The London Version
3 Moby's Version
4 Fred Durst's Reality Check Mix
5 Mangini/Pop Rox Mix
6 Mick Guzauski's Pop Mix
7 Dupri R&B Mix
8 The Neptunes This One's For You Mix
9 Junior Vasquez's Club Mix

Marvin Gayeの名曲のリメイク。

MTV Video Music Award授賞式に参加するため、トップ・アーティストが集結していたニューヨークで、U2のBonoが提案したことから始まる。プロデュースはJermaine DupriLimp BizkitのFred Durstによるロック・ヴァージョン、Mobyによるリミックス等も収録。

この作品の収益金は、米国同時多発テロ被害への支援を目的とした「ユナイテッド・ウェイ-9月11日基金」(2001年末まで)、そしてアフリカに蔓延するAIDSに対する意識を高め、物資、医療処置などの援助活動をサポートする「アーティスト・アゲインスト・エイズ・ワールドワイド」「グローバル・エイズ・アライアンス」他、複数のチャリティ団体に寄付される。

『God Bless America』 /V.A.
米国同時多発テロ事件を受けて、ソニー・ミュージックのビッグ・アーティストが集結、実現したチャリティ・アルバム。

Celine Dionが約2年間の沈黙を破り、David Fosterプロデュースによる「God Bless America」をレコーディング。その他、Mariah CareyBruce SpringsteenBob Dylanなど、大物スターが参加。

この作品の収益金は、事件の救済にあたった警察官、消防士、救急隊、ニューヨーク市職員とその家族を助ける基金「Twin Tower Fund」に寄付される。

『God Bless America』

Sony Records International SICP-57
2001年11月7日発売 2,100(tax in)

1 ゴッド・ブレス・アメリカ/セリーヌ・ディオン
2 ランド・オブ・ホープ・アンド・ドリームス/
ブルース・スプリングスティーン
3 ヒーロー/マライア・キャリー
4 アメージング・グレース/トラメイン・ホーキンス
5 風に吹かれて/ボブ・ディラン
6 明日に架ける橋/サイモン・アンド・ガーファンクル
7 ピースフル・ワールド/ジョン・メレンキャンプ
8 ゼアーズ・ア・ヒーロー/ビリー・ギルマン
9 アメリカ・ザ・ビューティフル/フランク・シナトラ
10 ゴッド・ブレス・ザ・USA/リー・グリーンウッド
11 我が祖国/ピート・シーガー
12 カミング・アウト・オブ・ザ・ダーク/グロリア・エステファン
13 ウィー・シャル・オーヴァーカム/マヘリア・ジャクソン
14 ザ・スター スパングルド・バナー(アメリカ国歌)/ザ・モルモン・タバナクル・コーラス
15 リーン・オン・ミー/ビル・ウィザーズ


『America:A Tribute To Heroes』/V.A.

『America:A Tribute To Heroes』


Sony Records International SICP-67/68(CD2枚組)
2001年12月12日発売 3,150(tax in)

<DISC 1>
1 マイ・シティー・イン・ルーインズ/ブルース・スプリングスティーン
2 ある愛の伝説/スティーヴィー・ワンダーfeat.TAKE 6
3 ウォーク・オン/U2
4 ゼア・ウィル・カム・ア・デイ/フェイス・ヒル
5 アイ・ウォント・バック・ダウン/トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ
6 ヒーロー/エンリケ・イグレシアス
7 イマジン/ニール・ヤング
8 いつか自由に/アリシア・キーズ
9 あなたがここにいてほしい /リンプ・ビズキット with ジョン・レズニック
10 ニューヨークの想い/ビリー・ジョエル

<DISC 2>
1 アイ・ビリーヴ・イン・ラヴ/ディクシー・チックス
2 エヴリデイ/デイヴ・マシューズ
3 リデンプション・ソング/ワイクリフ・ジーン
4 ヒーロー/マライア・キャリー
5 リヴィン・オン・ア・プレイヤー/ボン・ジョヴィ
6 セイフ・アンド・サウンド/シェリル・クロウ
7 フラジャイル/スティング
8 ロング・ロード/エディー・ヴェダー
9 明日に架ける橋 /ポール・サイモン
10 ゴッド・ブレス・アメリカ/セリーヌ・ディオン
11 アメリカ・ザ・ビューティフル/ウィリー・ネルソン


『America:A Tribute To Heroes』
WRV/WMN:Warner Bros./Universal/Sony/Bmg/Emi
2001年12月22日発売
WPBR-90066(DVD) 4,935(tax in)
WPVR-90066(VHS)3,780(tax in)

1 マイ・シティー・イン・ルーインズ/ブルース・スプリングスティーン
2 トム・ハンクス(トーク)
3 ある愛の伝説/スティーヴィー・ワンダーfeat.TAKE 6
4 ジョージ・クルーニー(トーク)
5 ウォーク・オン/U2
6 イスラム教徒の子供達(トーク)
7 ウィル・スミス&モアメド・アリ (トーク)
8 ゼア・ウィル・カム・ア・デイ/フェイス・ヒル
9 ケルシー・グラマー(トーク)
10 アイ・ウォント・バック・ダウン/トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ
11 ジム・キャリー(トーク)
12 ヒーロー/エンリケ・イグレシアス
13 行方不明者
14 イマジン/ニール・ヤング
15 キャメロン・ディアス(トーク)
16 いつか自由に/アリシア・キーズ
17 ロビン・ウィリアムス(トーク)
18 あなたがここにいてほしい/リンプ・ビズキット with ジョン・レズニック
19 デニス・フランツ&ジミー・スミッツ(トーク)
20 ニューヨークの想い/ビリー・ジョエル
21 キャリスタ・フロックハート&エイミー・ブレナマン(トーク)

22 アイ・ビリーヴ・イン・ラヴ/ディクシー・チックス
23 メモリアル/ONE
24 エヴリデイ/デイヴ・マシューズ
25 コナン・オブライエン&サラ・ジェシカ・パーカー(トーク)
26 リデンプション・ソング/ワイクリフ・ジーン
27 トム・クルーズ(トーク)
28 ヒーロー/マライア・キャリー
29 レイ・ロマンド(トーク)
30 リヴィン・オン・ア・プレイヤー/ボン・ジョヴィ
31 ルーシー・リュー(トーク)
32 セイフ・アンド・サウンド/シェリル・クロウ
33 セラ・ウォード&ジェーン・カツマレク(トーク)
34 フラジャイル/スティング
35 ジュリア・ロバーツ(トーク)
36 ロング・ロード/エディー・ヴェダー
37 クリス・ロック(トーク)
38 黙祷
39 明日に架ける橋/ポール・サイモン
40 ロバート・デニーロ(トーク)
41 ゴッド・ブレス・アメリカ/セリーヌ・ディオン
42 クリント・イーストウッド(トーク)
43 アメリカ・ザ・ビューティフル/ウィリー・ネルソン

米国4大ネットワーク(CBS、NBC、ABC、FOX)が一致団結し、企画・制作し、放送した米国同時多発テロ犠牲者追悼チャリティ番組のライヴ・パフォーマンス。

音楽業界では、BMG、EMI、Sony Music Entertainment、Universal Music Group、Warner Music Groupの5大メジャー・レーベルが協力。2枚組CDとDVD/VHSによる同作品をチャリティ目的で発売。Bruce SpringsteenU2Neil YoungAlicia KeysLimp Bizkitなど、ジャンルや世代を越えて、ビッグ・アーティストが集結、参加。

この作品の収益金の一部は、米国同時多発テロの被災家族援助を目的とする基金「September 11 Telethon Fund」に寄付される。
既にこのテレソンで、1億5000万ドル以上が集められ、被害者の遺族へ寄付されている。

『The Concert For New York City』/V.A./V.A.
世界貿易センターの崩壊により亡くなった消防士のために、Paul McCartneyが提唱し、10月20日のニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンで行われたチャリティイベントがライヴ・アルバムとしてリリース化。

Paul McCartneyMick JaggerKeith RichardsEric ClaptonDavid BowieBon JoviElton JohnBilly JoelJay-ZDestiny's ChildBackstreet Boysなどが一堂に会した。

コンサートの収益金は、「世界貿易センター基金」に寄付されている。

イベントには、何千人ものニューヨーク市内の消防署、警察、救助隊員とその家族が招待された。この作品の収益金の一部は、被害を受けたニューヨーク市民を援助する「ロビン・フッド・リリーフ・ファンド」に寄付される。

『The Concert For New York City』

Sony Records International SICP-69/70(CD2枚組)
2001年12月19日発売 3,150(tax in)

<DISC 1>
1 Devid Bowie/America
2 David Bowie/Heroes
3 Bon Jovi/Living On A Prayer
4 Bon Jovi/Wanted Dead Or Alive
5 Bon Jovi/It's My Life
6 Jay-Z/Izzo(H.O.V.A.)
7 Goo Goo Dolls/American Girl
8 Billy Joel/Miami 2017
9 Billy Joel/New York State Of Mind
10 Destiny's Child/Emotion
11 Destiny's Child/Gospel Medley
12 Eric Clapton and Buddy Guy/I'm Your Hoochie Coochie Man
13 Adam Sandler/Operaman
14 Backstreet Boys/Quit Playing Games With My Heart
15 Mick Jagger and Keith Richards/Miss You
16 Mick Jagger and Keith Richards/Salt Of The Earth

<DISC 2>
1 Spoken Word/Mike Moran FDNY
2 The Who/Who Are You
3 The Who/Baba O'Riley
4 The Who/Won't Get Fooled Again
5 Melissa Etheridge/Come To My Window
6 Melissa Etheridge/Born To Run
7 James Taylor/Fire And Rain
8 James Taylor/Up On The Roof
9 John Mellencamp/Peaceful World
10 John Mellencamp and Kid Rock/Pink Houses
11 Five For Fighting/Superman
12 Elton John/Mona Lisas And Mad Hatters
13 Paul McCartney/I'm Down
14 Paul McCartney/Yesterday
15 Paul McCartney&All Star Cast/Let It Be
16 Paul McCartney&All Star Cast/Freedom

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