1stアルバム『World Scratch』に迫るロング・インタヴュー

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全く違う個性とバックグラウンドでも、音楽ってひとつにまとまるし、壁がない

それぞれ違うバックグラウンドで育ったメンバーが、自分自身の視点を通しながら、
東京エスムジカとして新しい世界観の音楽を作り出した1stアルバム『World Scratch』。
タイトルからも想像できるように、楽器、音、歌詞…とあらゆる角度から様々な世界にトリップできるような楽曲群。
今のポップ・シーンとはまったく違う視点から迫る新鮮で斬新な曲だが、
どこか懐かしさや心地よさを感じる仕上がりだ。
そんな1stアルバムをリリースしたばかりのメンバーに話を訊いた。

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マニアックな視点からポップスに変えるヴォーカル2人の歌声

最新アルバム

『World Scratch』

東芝EMI Victor Entertainment
2004年9月22日発売
VICL-61481 \3,045(tax in)

1 月影のワヤン
2 月凪
3 泥の花
4 Standing On the Ground
5 オレンジの実る頃
6 Vida
7 World Strut
8 レンガ通り
9 邂逅
10 百万年の愛の歌
11 月夜のユカラ
12 始まりに向けて

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――まずはそれぞれ相手のヴォーカルを聴いたときの印象をお訊かせください。

瑛愛
: 独特な歌い方にすごく驚いたし、魅力的だと思いました。そして、この声と一緒に絡む私は、どういう風に歌えるのかなってすごい楽しみでした。

美帆: 柔らかい声で透き通ってて、真っ直ぐだな~って。その声が全然違う私の声と混ざってもすごくいいんですよね。そこにビックリして、あ~2人でやっていこうって思いました。2人っていうか…声の意味でだよ、(早川)大ちゃん(笑)。

早川: それぞれの声はライヴやデモで知ってたんですが、実際試してみて"いけるな!"って思いましたね。いろんなヴォーカル・パターンで美しいことを最大限活かそうと思いました。

――3人とも全く違うバックグラウンドを持つのですが、そこで改めて気づいたことは?

瑛愛: 実際、韓国と石垣に行く機会があってそれぞれ見て廻ったら、自分が育ってきたものとか、見てきたものがこんなに大事だったり、活かされるっていうのが分かったし、他所の土地を巡って初めて自分の土地の良さが見えたりしたので、勉強になるし、新鮮に思いましたね。あと、私は東京で育ったんですが、今までくたびれてがんばりすぎてる街だな~と思ってきたけど、東京でしか生まれないものとか、刺激を求めてみんなが集まってくる場所だし、改めてすごいなって思いました。そして私たちが東京から音楽を発信していくことの意味もわかったような気がしています。

美帆
: 石垣に居ると沖縄で起こることって当たり前じゃないですか。例えば音楽がいっぱい聴こえるとか、民謡があるとか。小さい頃は民謡なんておもしろくないと思ってましたから(笑)。でも、東京に出てきて、民謡は心に染みて "あ~、いい歌だな~"と、改めて思いました。

――1stアルバム『World Scratch』は世界各国の楽器が使われ、曲のテーマも様々ですが、制作前に大きなテーマはあったのですか?

早川
: おおまかなコンセプトだけはありましたけどね。1st、2ndシングルがオリエンタル寄りだったんですが、エスニック=オリエンタルじゃないってことも、アルバムのバラエティな曲を聴けば分かってもらえるのでは無いでしょうか? 情報量はすごく多いと思うんだけど、1stアルバムなんであらゆることを出し切って、一枚で最大限楽しんでもらおうと。

瑛愛
: とにかく濃いよね~(笑)。

――歌詞の視点は、現実的というよりは文学的だったり、昔のことだったりしますが…どんなところから影響されているのですか?

早川
: 映画とか、物語とかからの影響が多いですね。あと、民族学自体は好きなんで勉強したりして。東京エスムジカで何を歌うべきかって考えた時に、それぞれひとりじゃできないような世界観や、他の人たちが絶対にやらないような世界観だと思ったので、そういう意味では成功しているかなと思ってます。また、僕自身はいろんな知識やマニアックな視点を持ってるんですが、そういうのを知らない人も楽しめる音楽、ポップスを作りたいと思ったんですね。その時にすごく重要なのがこの2人の存在でした。例えば「月凪」とかチベットのことを登場人物になりきって歌ってるけど、やっぱり普通の女の子の姿が見え隠れする。そこがすごくカッコよくて、ポップだと思うんです。アルバムではそういうところが出せたかな~と。

――それぞれ全く違うテーマの楽曲で、ヴォーカルの2人は大変だったのでは?

美帆
: いつも、曲を聴いた瞬間に景色が浮かぶんですよ。その感じをみんなに伝えたいので、大切にして歌っています。歌詞も、話し合ったり、デモ段階で歌ってみて直したりしながら詰めていきます。だから、テーマが難しいとかは全く無くて。大ちゃんは私達のいい所を引き出そうとしてくれているんですよ。地球は広いし、いろんな人が居て、音楽があって、それを私たちなりに表現できる嬉しさや楽しさがありましたね。

瑛愛: 自分達が歌いたいように歌っていますね。細かなフレーズやニュアンスも、ヴォーカリストの感覚を大切にしてくれるので、気持ちよく、歌うことに集中できるんです。

早川: サウンドから受けた感じが全てそのテーマだと思ってもらう必要もないし、その辺はもう自分の思うままに気楽に表現してちょうだいね…っていうやり方なんですよ。だから、最初の骨格の部分を僕が作り出して、そこで「これはいいものになる」と思うけど、まだ先が見えない……。それを彼女達に渡してどうしてくれるんだろうっていうのが楽しい作業でしたね。

――「始まりに向けて」という曲もこのアルバムの最後に収録されていますが、今後、東京エスムジカとしてどんなことを伝えていきたいですか?

美帆: まだまだ、“こういう音楽があるんだよ”っていうのを伝えたいし、全く違った3人でそれぞれの文化も違うけど、音楽ってひとつにまとまるし、壁がないっていうのを分かってもらいたいなって。基本的には自分達が楽しいものを作っていきます!

瑛愛: 他の文化に触れてみて、自分達の良さも分かると思うので、リスナーの人たちが、これを聴いて自分達の持っているものを大事にして欲しいなと思いますね。

早川: 音楽の可能性を広げるための実験をしていきたいと思うので、みなさん、期待していてください。


取材・文●イトウトモコ

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