『Beyond Good And Evil』 イーストウエスト・ジャパン AMCY-7251 2001年06月20日発売 2,520(tax in) 1 War (The Process) 2 The Saint 3 Rise 4 Take The Power 5 Breathe 6 Nico 7 American Gothic 8 Ashes And Ghosts 9 Shape The Sky 10 Speed Of Light 11 True Believers 12 My Bridges Burn 13 Libertine | '85年の「シー・セルズ・サンクチュアリー」の大ヒット以降、ポジパン~ニュー・ウェイヴの世界から飛び出したハード・ロック・バンドとして独自のポジションを築いてきたThe Cult。’94年の解散後、2000年に突如として活動を再開、今年に入ってついにニューアルバム『Beyond Good & Evil』をリリースした。そんな彼らが、16年ぶりに日本に帰ってくる。その舞台はサマーソニックだ! 【The Cult in SUMMER SONIC】 ■大阪 日程:8月18日(土) 場所:WTCオープンエアスタジアム ※15:20頃出演予定 1日券:12,000円(税込) 2日間通し券:21,000円 (税込) ★チケット発売中 ぴあ 06-6363-9999 CN 06-6776-1199 ローソン 06-6387-1900 [Lコード:31111] イープラス http://eee.eplus.co.jp/west 【問い合せ先】 サマーソニック2001 OSAKA事務局 03-5466-0777(携帯・PHS不可) ■東京 日程:8月19日(日) 場所:千葉マリンスタジアム ※14:25頃出演予定 1日券:12,000円(税込) 2日間通し券:21,000円 (税込) ★チケット発売中 ぴあ 03-5237-9999 CN 03-5802-9999 ローソン 03-3569-9900 [Lコード:31111 イープラス http://eee.eplus.co.jp/ 【問い合せ先】 サマーソニック2001 事務局 0180-993-030(携帯・PHS不可) | | The Cultはこれまで、常にジャンルの境界線上につま先で立つことに成功してきた。強力なリフこそアリーナロックにしっかりと根差しているが、このブリティッシュグループの持つヴァイブ、特にニューエイジ風のフロントマン、Ian Astburyが醸し出すそれは、明らかにオルタナティヴそのものだ。だからこそ、'94年以来となるThe Cultの最新作『Beyond Good & Evil』が2001年に登場するのは実に意味あることなのだ。今やポストNirvanaのハードロックの時代である。だったら、“She Sells Sanctuary”や“Love Removal Machine”“Wild Flower”など、'80年代後半にあの歯ごたえのいい音楽を作った者たちが活躍の場を与えられるのは当然のことではないか? 我々LAUNCHは、テキサス州オースティンで2日間公演中のThe Cultのカリスマ・フロントマンをキャッチすることができた。ちょうどAstburyとメンバー(昔からの同僚、Billy Duffyや元Guns N' Rosesのドラマー、Matt Sorumなど)が再び観衆の目の前に姿を現そうとしていた時である。Astburyは悪魔の角を頭上に高々と掲げると、観客に向かってこう告げた。「自由にロックできる日がまたやって来たぜ」 ――最初の質問はもうこれしかないですね。今、この時代にやっているというのはどういう気分ですか? IAN: 最高! とにかく今、自分たちに起こってることすべてにワクワクしてるんだ。このアルバムは本当に力を入れて作ったから、ある種強力な期待感やな高揚感があるんだよ。たぶん『Love』の時と同じような感覚だと思う。たとえて言うなら、確信に満ちた気分と成功の予感ってとこかな。それに、俺たちをすごく応援してくれてる人もたくさんいるしね。多くの人が俺たちを高く評価してくれている。要するに、俺たちにとっては今がエキサイティングな時代なのさ。 ――なぜ今なんでしょう? 今、この時にこういう状況が生じているのは、何が起こったからだと思いますか? IAN: そうだなあ、俺たちがまた一緒にやろうと考え始めたのは'98年頃だった。今から何年か前のことさ。今、時代が俺たちに味方してくれるのには、2つの理由があると俺は思っている。1つめは、俺たちの音楽が確かにオルタナティヴ・コミュニティに根ざしているということ。実際、俺たちはイギリスのパンクやオルタナティヴのシーンから出てきたわけだからね。決して単なるストレートなアリーナ・ロック・バンドじゃない。俺たちにはそういうルーツがあるのさ。ここ10年ほど、北米のラジオの中枢部分を担っていたのは、パンクやオルタナティヴだろ? つまり、俺たちも常にその中に自分たちの足場を確保していたってわけだ。 それから2つめは、俺たちが常に他よりも少し……うーん、何て言えばいいのかなぁ? ドラマティックとは言わないけど、まあ、いわゆる最近人気のある多くのバンドよりもワイルドだって事実があると思う。パフォーマンス的にね。たぶん、今の人たちはライヴでもっとそういう部分を感じたいと思ってるんじゃないかな。アコースティックギターを抱えた男たちが自分の足もとを見ながら、ガールフレンドに振られたと嘆くようなのは、ちょっと飽きてしまったと。そんなのはもう随分時代遅れだし、きっと人々はもっともっと表現豊かでダイナミックで自信に溢れていて、多くは適度にカッコ良く脚色されていて、それでいて楽しくてシャレが効いてて、洞察に優れたものを求めているんだと思う。つまり、伝統的ロックンロールのいい部分すべてってことさ。何もかも一瞬にして砕け散る可能性がありながら、実際にはとても強くて逞しい……、こういう感覚ってエキサイティングだろ。ガッツいっぱいで演奏をこなし、観客に何かを与えられる奴らを観に行くってのはさ。奴らは君たちから何かを奪ったりしないし、観客“以下”になったような気分を味あわせることもない。何かに参加しているんだという実感を君たちに与えているのさ。俺も1人の音楽ファンとして、今までなかなかこの感覚を得られずにいたけどね。 それから、今の音楽には怒りや暴力、攻撃が多すぎるきらいがあるんじゃないかな。何だか軽々しく「あれもクソだしこれもクソ」って言ってる奴らばかりだろ――何の解決策を与えるわけでもなくさ。要するに、そこには本当の意味でポジティヴな客観性なんかありゃしないのさ。俺たちは一貫して、ありとあらゆるライフスタイルや解決方法を提案し続けてきたバンドだと俺は思いたい。まあ、オーディエンスのことを見抜けるほどすごい奴らじゃ全然ないけどさ。ほとんど来る者は拒まずって感じだから。俺たちにハマる奴なら誰でもね。ヒップホップ畑から来た奴だろうが、ロック畑だろうが、オルタナティヴだろうが、ダンスだろうが、何だろうが、そんなことは別にどうだっていいんだよ。ただ俺たちがやっていることに共感してくれるなら大歓迎だってこと。分かるだろ? それに、仕事とかそういう問題でもないんだ。これは俺の人生そのものだし、俺はそれが大好きなのさ! ――昨夜のショウでは、あなたが「安心して。大丈夫だよ……」と語る感動的な場面がありましたね。 IAN: 何でも好きなことをやって大丈夫ってことさ。誰かを傷つけさえしなければ、もう何の問題もないし、俺もちっとも気にしないね。 ――このニューアルバムは、あなたたちの過去の作品と比較してどうですか? IAN: 前よりも相当ヘヴィになっている。ギターのチューニングをかなり外したんだ。音楽を長く続けることのメリットの1つは、自分がやっていることが自然と上達してくるってところだと思う。自分でもだいぶ歌が上手くなったと思うし、歌詞の面でも以前よりはるかに焦点が定まってきたんじゃないかな。昔はバラバラだったからね。恐らくこれは……いろんな状況にさらされていたことが原因だろうな。自分ではそういう変化をすぐに表現したいんだけど、アルバム作りにはサイクルがあるし、そういう感情を新鮮なまま保っていることも非常に難しい。だから、結局は大体1年くらいの間に起こったと思われるアイディアをごちゃまぜにする羽目になるのさ。 けど、今回のアルバムはすごくまとまった作品になってるよ。どの部分も互いに繋がりがある感じで、歌詞の内容にもすべて関連性があるんだ。攻撃性と知性、諷刺と純粋でセクシーなロックのエネルギーとのバランスも絶妙だ。必要な要素がすべて詰まっているという感じかな。決しておとなしくはないけど、尊大でもない。誇りと自信に満ちているけど、決して偉そうじゃない。俺たちはまさに正しい作品を作ったと思うよ。最初は紙とペンを手に何かを打ち立てようと躍起になってたけど、そのうちに止めてしまった。そういう方向には向かわないって分かったから。頭で何かを計画するなんてことはできなかったんだ。それに、(プロデューサーの)Bob Rockのおかげで、俺と(ギタリストの)Billy(Duffy)の中間に道を見い出すことができたのさ。Billyと俺は本当に同じことを一緒にやりたいとは思っているけど、自分たちのすべきことに関しちゃ、ある部分、ある意味で正反対の考えを持っているからね。けど、今じゃ俺たち2人の間に多くのハーモニーがあることが分かった。強力なハーモニーがね。 ――それがThe Cultの強みの1つだと思われますか? そういうあなたとBillyの“戦争”みたいなものが? IAN: 俺たちは全員対等な関係なのさ。分かるだろ? 例えば、昨日の夜なんかは、みんな(他のバンドメンバー)はおネエちゃんのいるバーに出掛けてた。けど俺はMogwaiに会ってた。これこそ俺たちの関係を簡潔に物語ってるよ。俺はこういうバンドにいて、俺たちはこういう奴らで――それぞれが全然違う人間なんだ。テイストも違うし、ライフスタイルも違う。俺はネイティヴ・アメリカン文化や仏教の伝統なんかにハマってるけど……バンドの他の奴らにとっちゃ、そういうものの神聖さってのは『Hustler』か何かのページを開くのと同じようなもんだろうし!(笑) どうかな。まあ、たぶんそうは言わないだろうけど…… ――このアルバムは、歌詞の面でも以前よりかなりまとまりが良い、と言ってましたが…… IAN: ああ、テーマ的にも前より遥かにまとまりのあるものになっているんだ。メインテーマの1つとしては、このアルバムには孤立感を扱った部分がたくさんあるってことかな。つまり、俺たちが暮らしているこの社会には莫大な数の広告があって――どういう服を着ろとか、何を飲めとか、どういう風に考えろとか、何をしろとか、いろいろ指図する人間がいるわけだ。しかも最近じゃますますその度合いが激しくなってきている。情報伝達の加速にメディアにインターネット、エトセトラ、エトセトラ。そんなんじゃ迷子になっちまうよ! いや要するに、そんなものにばかり囲まれていたら、自分なりの在り方を確立するのが難しくなるってことさ。だから皆が同じものに興味を持つようになる――同じような服を着て、同じようなことを言う奴がうじゃうじゃいるだろ。個性的な人間を見ると、人々は立ち上がってそいつを打ちのめそうとする。(Marilyn)Mansonがいい例だ。何か悪いことが起こると、全部彼の責任にされちまう。問題の真の原因に目を向けないでさ。Eminemみたいなメッセンジャーを撃ち落とすような真似はやめてほしいよ。彼らは単なるメッセンジャーで、原因じゃないんだから。それに、彼らの影響なんかじゃないしね。彼らはただ道標とかガイドの役を担っているだけだ。 だから、ある意味ではこのアルバムは、そういった文化からの孤立感を歌ったものだと思うんだ。例えば、俺は30代後半の男だけど、別にどうしてもスポーツカーが欲しいとか、Maxim誌の表紙モデルと付き合いたいと思ってるわけじゃない。俺のライフスタイルだと、そういう選択はないわけだよ。もっと全然違うことに興味が向いてるのさ。恐らく他にも同じような人はたくさんいるだろうし、そういう人たちは機会さえ与えられれば、それを表現したいだろうと思うんだ。今まで数多くの凶悪事件が報道されてきた――コロンバインとか、'99年のウッドストックとか――若者たちが非常に腹を立てているってことが分かるだろ。まるで家庭にはもはや父親の存在がないんじゃないかって思えるほどさ……。 だから俺は、バランスを取り戻すために俺たちが何かの形で手助けできるんじゃないかって考えたいんだ。もちろん、不満の声はもうとっくに聞こえてきてるさ。「おいおい、それは少し大仰だし尊大なんじゃないの、お前らに何の権利があってブツブツ…」ってね。うるせえって感じだよ。俺は自分の経験から話をしてるんだ。俺は父親で、これは俺の経験したことだ。俺はいろんな旅をしてきたし、これは俺が考えたり思いを巡らしたりしたことで、俺の見解なんだ。別に賞賛してくれる必要はないし、そんなこと頼んじゃいない。ただ、俺の見方、考え方を言ってるだけさ。決して鋭い意見とか賢明な意見を述べようとしているんじゃない。本当に心の中でそう感じているだけなんだ。俺はいたって誠実な人間だと思うしね。純粋にスピリチュアルな意味で、今こそがこのバンドにとって正しいタイミングだと感じただけなんだ。 さっきも言ったけど、俺たちはメインストリームからある意味はじき出されたみたいになってるだろ。“オルタナティヴコミュニティ”はここ何年か、俺たちを相手にもしてくれなかったし。けど、“She Sells Sanctuary”は常に多くのラジオ局にとって番組構成のバックボーンを担ってきたし、今じゃ彼らも手に負えなくなって、俺たちを呼び戻そうとしている感じだ。「君たちの力が必要なんだ、戻って来てくれ、俺たちのためにショウをやってくれ!」ってね。 音楽が再び重要視されるようになるのを、ぜひ見てみたいよ。ロックミュージックだけじゃなくて、あらゆるジャンルでね。今のところ音楽は、映画の次ぐらいだろ。映画のほうが音楽よりもはるかに重要なものになってしまっていると思うんだよね。メディアだって、ロックスターより映画スターのことばかり書いてるようだしさ。もちろん、Puffy Combsとなりゃ話は別だけど! でも、そんな時に、もし社会現象になったりなんかすると――それはもう社会現象を超えてもっと別のものになる。社会はスペクタクルを求めてるんだ。誰もがスペクタクルを欲しがってる。スペクタクルこそが新しい“ロックスター”なのさ。そのスペクタクルがどんなものであれ――それこそ多くの人にとっての評価の基準となるものだ。そしてそれは毎週新しいものに進化している。 ――進化といえば、このアルバムを作っている最中、サウンドを“より現代的にする”ことは考えましたか? 同業者たちに負けちゃいけない、みたいな。 IAN: まあね、確かに周囲に左右されるってのはあると思うけど。このアルバムを作っている最中に、Bobと話していてすごく面白いと思ったことがあるんだ。「'85年頃のイギリスのサウンドってのはメチャクチャ多様だったのに、まるで活用されなかったよな。けど、俺は最近イギリスの音楽に――上手い言葉が見つからないけど――ゴシック時代の匂いのようなものを感じるようになったんだ。トーンや音色を様々に変化させたりっていう、そういうのがアメリカの音楽にも聴かれるようになった。回りまわってそんな風に影響が現れるってのも全く奇妙な話だけど」ってね。 で、俺たちはそういうサウンドで実験を始めた。そしたら、それがメチャクチャ新鮮だったんだよ、どういうわけかね! というか、俺に言わせりゃ、パンクは新しいブルースになったんだ。最近の連中はRobert JohnsonやHowlin' Wolfのことを、'80年代のロックバンドと同じように崇拝の気持ちを持って語ったりしないだろ。昔の連中はロックという音楽がどれほど貴重な財産かってことを、ちゃんと知ってたけどね。俺が思うに、今はパンクロックのほうがもっと重要視されてるらしい。つまり、Steve Jones(The Sex Pistols)がギターの神様なんだよ! それから、Killing JokeのGeordie(Walker)みたいに、コーラスやエコーを使って独特のサウンドを出していたギタリストたちの時代もある……。Siouxsie & the Bansheesの作品とか、ある時期のCureとかね。メチャクチャ革新的なサウンドだよ。けど、ある程度の時間がたって初めて、人々は実際にそういったものにちゃんと目を向けて、「ワオ、すげえ音出してんなあ、あんな時代なのに」って言えるようになるんだ。で、そういうのが流行ったりもした。 それから、もちろんリフに関しては、Led ZeppelinよりもむしろBlack Sabbath風のリフを選ぶようになったんじゃないかな。Tommy Iommiのリフは――ああいうスタイルのリフ奏法ってことだけど――ロックミュージックの世界じゃいたる所でやたら聴かれているみたいだからね。あと、リズムの面から言うと、ヒップホップのリズムがロックに恐ろしく巨大な影響を与えているのは明らかだ。だから、今言ったような要素と俺たち独特のテイストを全部ミックスすれば、今の俺たちがどんなものかが分かるってわけ。要するに、俺はU2が大好きだけど、今はある種“ルーツに戻る”というか、例えば『The Unforgettable Fire』をロックとして再現してみること……それだけじゃあまり意味がない。今風の味付けを加えなきゃダメなんだ。それが最も重要なことさ。そうでなければ、自分の周囲で起こっていることを本当に描写していることにはならないし。自分の置かれている環境を語っているとは言えないから。 ――最後の質問はMatt Sorumについて。彼があなたのバンドに何をもたらしたかを聞かせてください。 IAN: Mattはとにかく俺が今まで会った中で身体的に最もアグレッシヴなドラマーだろうね。まるで野獣さ! あいつを抑えるのは至難の技だよ。何せビッグ・アニマルだから、バカでかいスペースを与えてやらないと。性格もやたらハデだし、ドラマーとしても非常にアグレッシヴで、バンドにかなり骨太の基盤を与えてくれた。俺たちがさらに極めようとしていることにとっては、それこそなくてはならないものさ。そういう意味でMattは本当に大きな原動力になっているし、それにものすごく徹底した奴なんだ。そりゃあ難しい時期もあったよ。前のドラマーのScott Garrettのことは俺たちみんな、友達として大好きだったからね。でも奴のドラムスタイルだったら恐らく、俺たちのウエイトを支え切ることはできなかったんじゃないかと思うんだ。俺たちのキャラクターとか性格から考えるとね。 時として、エンターテイメントとして始まったことが、もはやエンターテイメントとは言えない世界にまで行ってしまうことがある。もっとずっとシリアスで、1つの目的のためだけに自分たちが完全に縛られてしまうようなね。そしてその目的とは、オーディエンスやリスナーが体験する気分を、歓喜とかそういうところにまで高めてやるってことだ。(笑) セックスが遊び気分の前戯から始まって、最後には核心――動物的な行為ってことだけど――に辿り着くみたいなもんだな。Mattが俺たちにもたらしたものの1つがそれだと思う。つまりそういうエネルギー、精力ってことさ。 By Neal Weiss/LAUNCH.com | |