増田勇一が選ぶ『4月/5月の20枚』

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入院やら『MASSIVE vol.6』の制作やらもあって、すっかり更新が遅れてしまっていたこの月次報告。今回は一気に2ヵ月ぶんまとめてお届けすることにしよう。この4月と5月にリリースされた新譜のなかから、筆者が聴きまくっていた作品群は以下の通り。

【4月の10枚】
■JACK WHITE『BLUNDERBUSS』
■MINISTRY『RELAPSE』
■百々和宏『窓』
■THE JUNEJULYAUGUST『EDELWEISS』
■SPIRITUALIZED『SWEET HEART,SWEET LIGHT.』
■OBLIVION DUST『9 GATES FOR BIPOLAR』
■PARADISE LOST『TRAGIC IDOL』
■RUFUS WAINWRIGHT『OUT OF THE GAME』
■FEEDER『GENERATION FREAKSHOW』
■UNLEASHED『ODALHEIM』

邦洋ごちゃまぜの10作品のなかでも、特によく聴いたのはジャック・ホワイト。この時期に観たいくつかのライヴで開演前のBGMとして耳にした記憶もある。百々和宏の初ソロ作品もじんわりと心にしみたし、高野哲がこれまで以上に“深く潜った”感のあるTHE JUNEJULYAUGUST(通称ジュンジュラ)の新作も、なかなか抜け出させてくれなかった。収録曲の数と同じだけ物語のルートが用意されたOBLIVION DUSTの新作については、そうした作風自体のユニークさ以上に、各々のメンバーがこのバンドについて抱く“理想”の重なり具合が興味深かった。また、デス・メタルやブラック・メタルにはさほど明るいほうではないのだが、UNLEASHEDの本邦デビュー盤にあたる新作については、そのブルータルサよりもむしろ美しさに酔わされた。

上記10作品の他によく聴いたのはHIGH ON FIRE、ノラ・ジョーンズ、過去の代表的な楽曲群を現ラインナップで再構築してみせたUNITEDのリレコーディング・ベスト・アルバム、LOSTPROPHETS、WILSON PHILLIPSといったところ。ただし、実際にいちばん長時間にわたって聴いていたのは『MASSIVE vol.6』で取材したアーティストたちのインタビュー音源だったような気もするのだが。

【5月の10枚】
■TIM CHRISTENSEN AND THE DAMN CRYSTALS『TIM CHRISTENSEN AND THE DAMN CRYSTALS』
■FEAR FACTORY『THE INDUSTRIALIST』
■THE CULT『CHOICE OF WEAPON』
■CRUCIFIED BARBARA『THE MIDNIGHT CHASE』
■SLASH featuring MYLES KENNEDY AND THE CONSPIRATORS『APOCALYPTIC LOVE』
■GARBAGE『NOT YOUR KIND OF PEOPLE』
■STORM CORROSION『STORM CORROSION』
■KREATOR『PHANTOM ANTICHRIST』
■SIGUR ROS『VALTARI』
■EIGHT AND A HALF『EIGHT AND A HALF』(輸入盤)

続いては5月発売の新譜から。この月もなかなかの豊作だった。DIZZY LIZZ MIZZYの解散から14年、ソロ名義でも素晴らしい作品を発表し続けてきたティム・クリステンセンによる新バンド名義での今作については、前々から輸入盤を聴きまくっていた読者も多いはずだが、ここにきてようやく日本盤が登場。押しつけがましさとは無縁のメロディの洪水には、ある種のデトックス効果があるのではないかとすら感じさせられるほど。10月に決まっている来日公演も楽しみなところだ。そうした“心の浄化作用”についてはSIGUR ROSやEIGHT AND A HALFに関しても同様だが、同時に、タイトルからしてかなりベタなKREATORの新作に詰め込まれた“相変わらずの価値観と攻撃性”にも、血がたぎるような興奮よりもむしろ心地好い“毒出し”の作用を感じた。

スウェーデン出身の女性4人組、CRUCIFIED BARBARAの第3作はまさに痛快きわまりないロックンロール・アルバム。来日公演実現を望みたいところだ。そしてTHE CULTの『CHOICE OF WEAPON』については、『SONIC TEMPLE』以降の作品のなかでは最高傑作と呼べるのではないかと感じている。スラッシュの作品については、正直に言えば、彼自身の存在感以上にマイルズ・ケネディの歌声に魅力を感じさせられた。他に、輸入盤で手に入れたSILVERSUN PICKUPS、そしていわゆる新譜ではないから選外としたが、MOTT THE HOOPLEの映画『すべての若き野郎ども』の公開に合わせてリリースされた日本独自企画による“妄想サウンドトラック盤”ともいうべき『THE BALLAD OF MOTT THE HOOPLE』も当然ながらのヘヴィ・ローテーションとなった。

さて、6月はどんな新譜が飛び出してくることになるのか。豊作状態が続くことを願いつつ、次回こそは6月が終わった時点ですぐさま更新することをお約束しながら、今回はこのへんで。

増田勇一
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