『The Invisible Band』 EPICインターナショナル ESCA-8325 2001年6月6日発売 2,310(tax in) 1 Sing 2 Dear Diary 3 Side 4 Pipe Dreams 5 Flowers in the Window 6 The Cage 7 Safe 8 Follow The Light 9 Last Train 10 Afterglow 11 Indefinitely 12 The Humpty Dumpty Love Song 13 Ring Out The Bell(Bonus Track) 14 You Don't Know What I'm Like(Bonus Track) 15 Beautiful(Bonus Track) 前作に続きプロデューサーにナイジェル・ゴドリッチを迎え、ロサンゼルスで制作された待望のサード・アルバム。本国イギリスでは、アルバム・チャート初登場第1位(6/24付)というバンド初の快挙を成し遂げ、アメリカでのブレイクも期待されている。7月上旬にはDidoをサポートした米ツアーが終了、27日にはついにフジロックのステージで彼らに会える! 『Good Feeling』 EPICインターナショナル ESCA-6757 1997年9月26日発売 2,345(tax in) 1 All I Want To Do Is Rock 2 U16 Girls 3 The Line Is Fine 4 Good Day To Die 5 Good Feeling 6 Midsummer Nights Dreamin' 7 Tied To The 90's 8 I Love You Anyways 9 Happy 10 More Than Us 11 Falling Down 12 Funny Thing '96年のデビューEP「All I Wanna Do Is Rock」、'97年のセカンドシングル「U16 Girls」を経て発表された記念すべきデビューアルバム。すでにシングルで高い評価を受けていたFran Healyのソングライティングと、Oasisのサポートアクトが呼び水となり、英チャートでは瞬く間にトップ10入り、“Happy”“Tied To The '90s”のシングルカットもヒットした。プロデューサーはU2、Peter Gabriel、Dave Matthews Bandなどを手掛けた大御所、スティーヴ・リリーホワイト。 『The Man Who』 EPICインターナショナル ESCA-8011 1999年6月2日発売 2,520(tax in) 1 Writing To Reach You 2 The Fear 3 As You Are 4 Driftwood 5 The Last Laugh Of The Laughter 6 Turn 7 Why Does It Always Rain On Me? 8 Luv 9 She's So Strange 10 Slide Show 11 Be My Baby 12 Writing To Reach You (The Deadly Avenger's Bayou Blues Mix) 13 Writing To Reach You (The Deadly Avenger Instrumental Remix) デビュー作で聴かれた若々しいエモーションが影を潜め、内省的で深みのあるバラッド指向が全面に打ち出された傑作セカンド。5月の発売時(日本では6月発売)、全英チャートで5位に初登場。8月に入ってから1位に上り詰め、その後も何度かトップに返り咲きながら売れ続けた。このメガヒットでTravisはブリット・アワードの「ベスト・バンド」と「ベスト・アルバム」を受賞。名実ともにイギリスの国民的バンドとなった。一連の Radiohead作品を生んだナイジェル・ゴドリッチと Manic Street Preachers、U2を手掛けたマイク・ヘッジズがプロデュース。 | | Travisのメンバーはまるでジキルとハイドのような生活を送っているに違いない。地元、英国でのFran Healy、Andy Dunlop、Dougie Payne、Neil Primroseは正真正銘のロックスターで、チャートのトップに立ち、ライヴをソールドアウトにし、一挙手一投足を大衆が切望するようなクリエイティヴ集団として存在している。これに対して米国では、Travisは一部には知られているものの、ほとんど無名と言ってもいい存在である。すでにアルバムを3枚リリースし、絶え間なくツアーを行なっているキャリア10年のこのスコットランドのバンドは、いまだにメインストリームの周縁に位置しており、主としてギターと英国式アクセントと青白い肌をフィーチャーした音楽にどっぷり浸かっている人々から熱烈な支持を集めている。 絶賛を集めた'99年の『The Man Who』に続く『The Invisible Band』は、フォーキッシュで心地よいアンセム的ロックというTravisの類のないスタイルに引き続き磨きをかけたものだ。アルバム全体を通じて極めて暖かく、極めて壮大なサウンドが聴かれ、各曲があたかも5万人の聴衆によるキャンプファイアを心に描いて書かれたようである。それでもなお、このアルバムがバンドのレーベル(Epic)とレコード業界の多くの人々が期待している商業的なブレイクスルーにつながるかどうかは、今後の展開を待たねばならない。だが、バンド自身はそうしたことをことさらに強調するつもりはないようだ。リードシンガーのFran HealyはLAUNCHに「僕たちは現時点で非常に幸福な立場にあるんだ。まったくの新作と歌うべき新曲、そして歌いかけるべき数多くの聴衆がある状況でツアーに戻れるのはハッピーなことだよ」と語っている。 ――新作は『The Man Who』と比べてどのように違っていますか? FRAN: バンドが子供が育つのと同じように成長するものだとしたら、まさにそんな感じだね。自分自身に成長を強制することはできない。つまり「1年後には4フィート11インチになる」みたいなことは言えないのさ。髪も伸びるし、指の爪も伸びる。歯が生えてくるし、背も伸びる。やがては髭も伸びてくるし、声も低くなる。そういうことだよ。強制されるんじゃなくて、生理的に自然に起きることなんだ。僕らのバンドとしての成長過程もまったく同じことさ。つまり僕らはおよそ10年間ずっと一緒にやってきて、レコーディングアーティストとして3枚のアルバムをリリースした、そういうことだよ。そして僕たちにとっての食料や栄養は、ライヴで演奏することだったんだ。 『The Man Who』のときは、数えてみたんだけど、だいたい18カ月で247回のショウをやったことになる。「これで充分だ、でももっとやれたんじゃないか」と思って、他のバンドの例も計算してみたら、僕らはたいていの連中より約100回も多くやっていることに気付いたんだ。だからツアーをやったと思ったら、今度はレコーディングしてたみたいな感じ。それで、ツアーを必死でこなしているうちに、だんだんと成長し、自然に前へ進んでいけたら理想的だよね。正確には何が変わったか分からないけれども、僕らは何らかの形で多少は成長したんじゃないかな。 ――確かに成長はいいことです。成長がなければトラブルに見舞われていたと思いますよ。 FRAN: その通り! 僕らは自分たちがバンドとして持っている優れた部分をできるだけ維持しようと努力してきたけど、今回はどういうわけかそれ以上に開花した感じなんだ。新作にはとっても満足しているよ。 ――Travisの曲についてよく言われることのひとつに、ハッピーな歌ばかりだということがあります。それはニューアルバムにも当てはまりますか? FRAN: うーん、僕はあらゆる音楽は人を元気づけるものだと思うな。Travisの音楽だけがそうだというわけじゃないよ。Limp BizkitもRadioheadもJacques BrelもScott WalkerもChopinも、あらゆる種類の音楽が祝福なのさ。口を開けて歌いだせば、たとえそれが自殺をした人の歌であれ、「The hills are alive with the sound of music」という歌であれ、すべてが祝福であり、人を元気づけてくれるものなんだ。言葉やテーマは実際の音楽の良さをぼかしてしまうものだと思うよ。音楽とはメロディとリズムをベースにしたもので、残りのものは後からついてくる。つまり楽典的な部分や歌詞、プロダクションに関するあれこれは、メロディとリズムによる最初のマジックを縁取るために存在するんだ。 こうしたことはたいていアクシデント的に起こるもので、数多くの偉大なソングライターたちと話した結果、これは僕だけの意見ではないと判明した。僕が言っているのはPaul McCartneyやDavid Bowieなどの同時代の最高のソングライターたちのことで、彼らはみんな何もないところからアクシデントのように音楽が現れて、まるで自分が偶然その場に居合わせたように思えたと言っている。だからオリジナルのマジックがぼやけてしまわないような形で、装飾を加えていかなければならないのさ。すべての音楽がハッピーなのはそのためさ。したがって答えはイエスだね!(笑) ――多くのアーティストが、ソングライティングとは稲妻をつかむようなものだと語っています。そのプロセス自体はあなたにとって楽しい、あるいはハッピーなものですか、それとも困難なものだと思っていますか? FRAN: 極めてタフなプロセスだよ。真っ暗な部屋に入っていくようなものだからね。光の源はどこにもなく、目では何にも見ることができない。アメリカンフットボールのフィールドや野球のスタジアム級の真っ暗な部屋に入っていって、暗やみの中で小さな小さなピンを見つけるように言われるようなものなんだ。それはまるでジェダイの精神術を身につけてフォースを使わなくちゃいけないみたいなもので、たいがいはこちらが向こうを見つけるんじゃなくて、向こうがこちらを見つけてくれる。 とても興味深いことだけど、頭と心と体と魂をその状態に持っていくのは難しい。いまだにどうやればいいかわからないよ! たいていは時間がかかってしまうね。ルールもないし、どうやっていいかもわからないから、恐ろしいことでもあるんだ! 僕には今でも自分がどうやって曲を書けばいいのかわからないけど、とにかく座って何かが起こるように努力しているんだ。 ――そうしたポジティヴさはどこから来るのでしょうか? ロックミュージックの規範ではないですよね。 FRAN: それこそがロックミュージックの規範だよ! この間、ある週にLinkin ParkとLimp Bizkitを見に行ったけど、ファンタスティックで最もジョイフルでブリリアントなショウだったね。そこでは大爆発が起こって、聴衆は空中にパンチを食らわしながら、素晴らしい夜を堪能していた! 観客は自分たちでエンジョイしているだけなのさ。あれこそが上げ調子でポジティヴだったね。それがポジティヴィティってことだよ。だから僕はすべての音楽がポジティヴだと考えるのさ。 ダウンビートな歌であれ、アップビートな歌であれ、こうしたタイプの言葉は表面上のことで、氷山の一角に過ぎないんだ。音楽の下に横たわっているもの、つまり音楽の見えない部分は、言葉では語れないものなのさ。記述不可能なものだから、感じるしかないんだ。歌が耳から入っていって脳のポイントまで届くと、聞き手のエゴを吹き飛ばし全面降伏させて謙虚な気持ちにさせるのと同時に、ファンタスティックな気分にもさせてしまうんだ! 僕たちの音楽には確かにメランコリックな部分もあるけど、一方で、落込んでるときにその瞬間の気持ちに訴えかけるメランコリックな曲を聴いて、自分は孤独じゃないと感じる事実からもポジティヴさが引き出されると思う。「他の誰かも同じように感じているんだ」ってね。Joni MitchellやNeil Youngの一部の曲、それにある種の曲のある種のライン、John Lennonの「Imagine」は古典的な例だけど。誰もがそんな風に考えているけど、みんなが一体だと感じる必要はない。我々はみな独立しているべきで、それぞれが特有な存在だと政府からは言われるけど、実際は違うんだ。我々は同一の大衆の無意識を共有していて、音楽、芸術、スポーツはすべてそれに訴えかけて、我々は一体だと感じさせてくれる。我々1人ひとりの間には壁が存在しているとしてもね。 ――そのとおりですね。Neil Youngの『Tonight's The Night』は世界で最もハッピーじゃないアルバムですが、私はそれを聴いて素晴らしいと感じます! FRAN: そうだよ、それには何か意味があるんだ。僕にとって歌が家だとしたら、実際の家そのものや家の基礎にあたるのがメロディとリズムであり、言葉はオリジナルのメロディとリズムを装飾するものなんだ。つまり家に開かれているドアや窓みたいなものだよ。そこからリスナーを中へ迎え入れて、今まで行ったことのない場所へと連れて行くわけ。それが音楽の役割だと僕は思うな。音楽学者は同意しないかもしれないけど、僕にとってはそうなんだよ。 ――さきほど“invisible(見えない)”という言葉を使われましたが、アルバムタイトルの『The Invisible Band』について教えてください。明らかに何か深い意味がありそうですが……。 FRAN: そうだね、思いついたときは「レコードにはまったく素晴らしいタイトルだ!」って考えた。覚えやすくてミステリアスな感じ、それがまず第一に重要だったんだ。大衆カルチャーの中にはすでに『The Invisible Man(透明人間)』が根づいているから、とても覚えやすい。でも後から考えてみると、そのおかげでMTVもテレビさえもないラジオだけだった時代に連れ戻されるような気がしたのさ。それで僕はすべての音楽はラジオなんだと考えるようになった。だって大作映画が時として名作小説の言葉やイメージを傷つけてしまうように、MTVやテレビは素晴らしい音楽のいくつかを台無しにしてしまうからね。破壊しないまでも、音楽そのものが聴き手をどんな気分にするかという本当に重要な部分から興味をそらしてしまうことは確かだよ。 ビデオが音楽とまったく同時に作られたのならば素晴らしいけど、実際はそうじゃなくて音楽自体が最初から先に存在しているんだ。音楽のように目に見えないものは、およそ90%は表面下で聴き手に訴えるから、議論したり説明したりできないというのが僕の考えだ。音楽は聴き手を全面降伏させ、その自我や無意識にアピールする場所へとストレートに到達する。そして自我を吹き飛ばしたり、あれこれとクールなことをやってのけるんだ。もちろん見えないところでね! 音楽の目に見える10%の部分については、「おい、Bob Dylanの歌詞はすっげえクールだぜ」とか、「Beatlesのメロディはとってもなんたらかんたら」とか議論できるんだよ。でも何か別のもの、説明できない何かが存在する。それこそがマジックなんだ、目には見えないけどね。僕たちは400万枚もレコードを売っているのに、どんな風体の連中か知らない人たちが未だにいるという事実も、今回のタイトルからよりダイレクトに連想されることのひとつだね!(笑) ――1stシングルの「Sing」は、あなたのフィアンセに向けて書かれた部分もあるそうですね。 FRAN: テレビの音を消してMTVを見ながら書いた曲でね。スウィングビートの特集をやってたんだ。テレビの画面を見ながらギターを弾いてハミングするっていうスタイルで曲を作ってて。それでこの曲を歌い始め、ちょっとクールなメロディを思いついて、自然とサビっぽいパートへと進んでいったときに“Swing...If youswing, swing, swing, swing”と歌ってたというわけだよ。誰かが誰かをブランコに乗せるところを想像していたんだ。まるで子供がブランコに乗っているときのような気分だったね。とってもクールな気分でさ! それで、次にスタジオに入ったときにメンバーに聴かせたら一緒に演奏してくれたんで、アイデアを残しておくためのちょっとしたアウトテイクのつもりで録音したんだ。その時にサビの途中で“swing, swing, swing”から“sing, sing, sing”に変わっちゃったんだ、ちょうど半々くらいの感じでね。その夜に持って帰って家で聴いて、「マジかよ、“sing”って歌っちまった!」って気付いたんだ。歌うことについての歌になってしまったけど、それはそれでとってもキュートだし、チャーミングだと思ったのさ。だから、ヴァースの歌詞は僕のフィアンセのNoraに向けたものにしたんだ。彼女はいつでも僕らが一緒にいるとき、まったく歌いたがらないからね。「ダメよ、歌えないわ。私はひどい声をしているもの」って彼女が言うから、僕は「頼むよ、しゃべってないで歌ってくれよ!」みたいな感じさ。だって人が誰かを愛していたら、その人の前で歌えるようになるべきだろ! そういうことだよ。でも、今では彼女も歌ってくれる、素晴らしいことだよ。効果はあったわけだね!(笑) ――では、彼女はTravisの曲も歌うようになったのですか? FRAN: もちろん、アルバムをかけているときには一緒に歌っているよ。それに彼女はGuruとかその類いの自分が聴いてるあらゆるヒップホップに合わせてラップもしてるんだ。Dr.Dreもお気に入りだ。でも、とにかく今ではほとんど何でも歌ってるよ。素晴らしいことだね。 ――自分の曲が彼女にそんな影響を与えたなんて、とてもいい気分ですよね。 FRAN: そうだね。「Sing」は、「Dance」とも「Cry」とも「Laugh」とも、単に「Let Go」とも単語を取り換えることができる。だって子供のころは表現としていつでも歌っていたんだからね。でも、だんだん大人になるにつれて歌わなくなるんだ。「声が悪いから歌いたくない」とか言ってさ。だけど子供の時は、そんなこと気にしなかったんだよ! そういう部分をいつまでも、少しでも自分の中に残しておくべきだと思うな。ストリートで狂ったように歌っている人たちを見て、「何のために歌っているんだ?」と思うこともあるだろう。でも、楽しんで、いい気分になる、そうしたことこそが重要なのさ。 ――この数年間、アメリカで多くの時間を過ごされているようですが、そのことは今回のアルバムのインスピレーションになりましたか? アメリカは明らかにインパクトを及ぼしていますか? FRAN: そうだね、アメリカはTravisを必要としていると思うよ。向こうへ行って、たくさんの時間を過ごしたから確実にそう言えるね。僕たちはぴったりのバンドだよ。U2やR.E.M.と同じようなツアーバンドなんだ。アメリカは旅をするためにできているようなところがあるだろ? 果てしのないツアーをやって地の果てまで回っても、同じ場所で2度演奏することなんてないんだ。でもアメリカのある部分は確実に影響を与えたと思うよ。新作の曲の半数ちょっとは、僕らがアメリカをツアーしている途中で書かれたからね。「The Humpty Dumpty Love Song」はシアトルで、「Indefinitely」は正確には覚えていないけど確かニューヨークの近くで、「The Cage」はニュ-ヨークで作ったんだ。だからいろんなことがメロディや何かに影響を及ぼしているはずだけど、どういう形かは自分ではわからないよ。確かに言えるのは僕はアメリカで演奏するのが好きだということさ。古き良きオープンロードという考え方が気に入っているんだ。バンドにとっては非常に魅力的に思えるんだよ、昔のロックンロールの“ぐだぐだ言ってないで、とにかくバスに乗れ”みたいな感じでね。(笑) ――それでは、アメリカでの生活をエンジョイされているわけですね。 FRAN: こっちへ来るときは素晴らしい気分さ。だってフレッシュな新しい感覚で、最初からスタートするわけだからね。だって僕らがイギリスの隅々まで回って演奏していたころ、誰も僕らを知らなくて毎日が闘いみたいなものだったことを思えば、アメリカへ渡ってくるというのは最高の瞬間だよ。僕たちは現時点で非常に幸福な立場にあるんだ。まったくの新作と歌うべき新曲、そして歌いかけるべき数多くの聴衆がある状況でツアーに戻れるのはハッピーなことだよ。 ――アメリカ人はあなたがたの母国での人気ぶりを知らないと思います。イギリスでの状況はどのように考えていますか? FRAN: 正直なところ、奇妙な感じで、よくわからないんだ。自意識過剰になってしまうのがオチだから、人気のことは気にかけないようにしている。実際のところはけっこう静かなもんだよ。つまりね、レコードを250万枚売上げたということは、みんなが『The Man Who』を持っているみたいなものだよ。でも、人々は「これは我々の歌だ」と言っているような感じなんだ。それは僕らの意図したところでもあるんだけど。 僕らはとっても伝統的で、昔かたぎのバンドなんだ。大工さんが平日に仕事をして、パン屋さんがパンを焼き、みんなが自分の仕事をして、週末になるとバンドが演奏して、人々は打ち解けあって話をする、そんな黄金時代に連れ戻してくれるようなバンドを目指しているんだ。それはある種のサービスだね。だから、僕らはイギリスの公共サービスのひとつなのさ! 救急隊があって、自動車協会があって、そしてTravisがあるんだ。バンドのメンバーはとっても気さくな連中なんで、リスナーは歌の中に自分自身みたいなものを見出しているんだと思うな。まったく素晴らしいことだよ。大衆が僕らのことを、僕らの音楽を気に入ってくれているなんてね。 例えば我々はみんなBeatlesのメンバーのことを知っているけど、彼ら自身よりも彼らの音楽のほうをずっとよく知っている。百万人もの人々がカラオケで「Yesterday」を歌い、歌詞も全部知っている。つまり歌そのものと大衆が重要なのであって、バンドのメンバーのことなんてそれほどでもないのさ。 ――悪名高いイギリスの音楽プレスの対処に困っていることはありますか? FRAN: 新聞や雑誌は読まないんだ。それが対処法。本当に一度も読んだことないよ。本だって読まないけどね。僕は読書家じゃなくて、鑑賞家なんだ。映画を見るのも好きだし、テレビを見るのも好きさ。テレビっ子というか、テレビ世代なんだよ。国語の教師にとっては悪夢のような存在だったろうね! でも、偉大な国語の先生が何人かいて「おい、この子は読書は嫌いだけど、物を書く才能はあるぞ」って気付いてくれたんだ。そんな先生にひとりでも出会えれば、素晴らしいことだよ。僕には読むことよりも、書くことのほうに才能があったのさ。他人が書いた言葉には、あまり共感できないみたいだね。 ――他人の言葉という話になりましたが、Queenの「Killer Queen」をカヴァーしましたね。いったいどうしてやることになったのですか? それからアメリカでのリリース予定はありますか? FRAN: アメリカでも発売されることになるだろうね。今はB面に収録されているけど、ナップスターやその手のダウンロードで入手できるはずだ。ある晩スタジオ(ロサンゼルスのOcean Way)で曲を作っていて、メンバーは帰ろうとするところだった。ちょうど連中が出て行くときに、Eマイナーのコードを“ジャン、ジャン、ジャン、ジャン”って感じで掻き鳴らして、笑わせようと思って歌い始めたのさ。歌詞なんてちゃんとは知らなかったけど、Homer Simpson的なスタイルで“She keeps Moet etChandon in her pretty cabinet...”(イカれた声で歌い始める)と続けたんだ。そしたらAndyがギターをとりだして演奏に加わったというわけだよ。 それで2週間くらいたって、AndyとDoggyが夜遅く出掛けたときにQueenのベスト盤を買って帰ってきて、全部のコードを覚えたのさ。 そんなわけでB面として録音してみることに決めたんだ。練習曲としては驚くほど素晴らしい作品だよ。やっていて楽しかったし。僕らの友人のJason Falknerにもちょっと手伝ってもらったよ。スタジオに来てピアノを弾いてくれたんだ。だからヴォーカルとギターソロ以外は、マイクスタンドに吊り下げた小さなトライアングルも含めて全部が生演奏なんだ! ギターソロはマルチトラックで、確か5回くらい違うパートをダビングしたよ。思った通り時間はかかったけど、実際の演奏はとても簡単だったから、“おい、「Killer Queen」が演奏できるんだったら、ほとんどなんでもやれちゃうってことだよな!”って気分になれたね。 僕らは長い間ずっと一緒に演奏してきているから、どんな感じの曲を取り上げても割と簡単にいい感じでやれるようになってるのさ。面白い経験だったよ。オリジナルに忠実というわけにはいかないけどね。だってQueenのヴァージョンよりいいものが作れるわけがないし。僕らのはちょっとしたスコティッシュバージョンという感じだよ。かすかにスコットランド的なんだ。 ――ライヴでも演奏されることになりそうですか? FRAN: この曲はたしかQueenもライヴで演奏したことはなかったんじゃないかな。だから僕たちなんかが挑戦しようとは思わないね! By Neal Weiss/LAUNCH.com | |