【インタビュー】DEZERT、千秋が語る47都道府県ツアー開幕直前の最新作と自問自答「俺たちはどう音楽をやっていくか」

DEZERTが6月11日、ミニアルバム『yourself: ATTITUDE』をリリースした。2024年末の日本武道館ワンマンを成功に収め、メジャーデビュー2年目に突入したDEZERTが、初の47都道府県ツアー<47 AREA ONEMAN TOUR ’25-’26 “あなたに会いに行くツアー”>開幕直前に放つ最新作の完成だ。
2025年上半期もDEZERTは、コンセプトライヴ<「study」>やメンバー<生誕祭>などの自主企画公演をはじめ、様々な対バンやイベント出演といった精力的で継続的なライヴ活動を展開してきた。その合間を縫って制作されたミニアルバムが『yourself: ATTITUDE』となる。ある意味では、武道館後の意思表示とも、新たなフェーズを示唆するサウンドとも取れる全5曲には現在の彼らの勢いも熱量も封じ込められているが、全曲の作詞作曲を手掛けた千秋(Vo)曰く、「肩の力を抜いて」制作に臨んだのだという。しかし、その心境へ至るまでの過去も、未来への揺るぎない意志も、意図せず詰め込まれる結果となったようだ。
初回限定盤には、2024年9月開催の<Let’s Go Budokan?! – みんなで武道館へダイナマイ!!->、2025年2月開催のコンセプトライブ<「study」#12-” タイトルなし” の補習編->と<「study」#13 -“最高の食卓”の補習編->のライブ映像収録Blu-rayが付属されるほか、初回限定盤および通常盤には、それぞれボーナストラックとして千秋が自宅レコーディングを行った“スーパー弾き語り” を収録を収録するなど、ボリュームもサービス精神も大盛りの意欲作。そのすべてについて、千秋がじっくりと語ったロングインタビューをお届けしたい。
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■僕らの歴史の中でいうと
■このタイミングはリスタート
──2024年末に初の日本武道館ワンマンを成功させて、メジャーデビュー2年目に突入してのミニアルバム『yourself: ATTITUDE』ですが、今回はどういったモードで制作をスタートしましたか?
千秋:デモ自体は、武道館前というか昨年の秋口から出していたんですけど、今回は数あるデモから選抜したというのが近いですね。いっぱい曲がある中から、みんなで「この曲入れようか」みたいな感じで相談して。
──その選曲基準には、武道館後であり47都道府県ツアー開幕直前にリリースされる今回の作品だからこそ、みたいなことはあったんでしょうか?
千秋:僕にはなかったですね。今回は最初から「とにかく僕はいっぱい曲を作るから、その中からみんなで選んでみよう」みたいな感じで制作していたんです。このタイミングだから、というのはその後の作業で。みんなで話し合って、仲良く手を取り合って収録曲を決めていったという感じ。
──実際、武道館以降ということも含めて、このタイミングでのリリース作品って重要ですよね。
千秋:そうなんですけど……一昨日からこの作品の取材がスタートして、初めて気づいたことがいっぱいあったんですよ。「今のタイミングだから、これを入れたんでしょ?」みたいなことを言われて。そんなに考えてなかったんですけど、“たしかにそうかも、へえ”って思うことが多くて。
──メンバー間でテーマやコンセプトを具体的に話したわけではないけど、自ずと今のDEZERTだからこその曲が選ばれていったと。
千秋:今回はそんな気がします。そもそも僕はミニアルバムって好きじゃなくて、嫌だったんです。僕らの世代ってやっぱりフルアルバムだから。ただ、今はサブスク時代なので、みんなあまりミニアルバムとかフルアルバムとかは気にしないのかなと思ったりして。肩の力を抜いてやったような気がしますね。

──バラエティー豊かという意味でも5曲のバランスがいいですし、聴き終えた後の感触が爽快だったんです。抜けがよくて煌めきがあると感じていたので、どの辺りまで意識していたのかを聞きたかったんです。
千秋:これがフルアルバムだったら意識せざるを得ないんですけど、本当に意識しなかったんですよ。タイトルもいい意味で適当というか。
──そうなんですね。
千秋:ただ、47都道府県ツアーは意識してましたね。武道館があって…こう言うと語弊がありますけど、武道館は僕らがファンを連れていったイメージが強いというか、無理やり連れてきたみたいな感じだったんですよ。バンドの13年という歴史のアドバンテージを使ったし、“初期はライヴに行ってたけど今は全然好きじゃない…けど武道館は行ってみようかな”という人もいたと思うので。そういう武道館ワンマンが終わって、なんやかんやで僕らの歴史の中でいうと、このタイミングはリスタートなんですよ、確実に。
──そうなりますね。
千秋:例えば、メッセージであったり僕のバンド観というものは、ぜんぶ武道館で吐き出したので。今回は肩の力を抜こうっていうのはあったんです。
──それは感じます。武道館を終えて、でも、これからも人生もバンドも続くし、ここからどうなっていくんだろうっていうのを、ガチガチにシリアスになりすぎずに、自然に歌にしていっているなという。それが爽快感や軽やかさにもつながると思うんですが。
千秋:今年に入って1月、2月、3月くらいまではめちゃくちゃヘヴィに考えていたんです。47都道府県ツアーも適当に発表したわけじゃなくて目標や意図があるし、結成15周年も近づいてきたし、どう向かおうかいろいろ悩む部分があって。最初は深刻にどうしようかと考えていたんです。それこそメンバーやスタッフと今後の展望についていろいろ話し合ったり、自分で考えたりしていく中で、“まあ、リスタートなので深く考えないでおこう”と。
──その話があって、この5曲が決まっていったということですか?
千秋:そうですね。リスタートなんですけど「「変身」」は、僕の中で全然肝じゃなくて。
──ミニアルバムの1曲目で、これがいわばリードトラック的にオンエアされていく曲ですけど。
千秋:これは意外性もないし、誰も文句言わんやろって(笑)。この曲だけは、歌詞を書かずにメロディだけでデモを送ったんです。結構アンチテーゼがあったというか、“こういうの、みんな好きやん?”みたいな。“この曲で俺らの世界は変わらない”っていう。でも、そういうのって大事じゃないですか。だから歌詞はちょっと意識して、絶対選ばれるものにしようと思ったんですよね。この歌詞を見たら、うちに関わった人は、“これは千秋の言いたいことだろ。リード曲っぽいよね”って感じると思うので、そこへのアンチテーゼ。で、まんまと選ばれてたので、ちょろいなと(笑)。曲自体はもちろん本気で作ってますけどね。
──はい(笑)。「「変身」」ではここまでのバンドのストーリーとか、きっとあのことを歌っているんだろうなとか、背景が見えてくる曲になっています。
千秋:だから満場一致で1曲目になったくらい。結構ラクにというか、もう新たな気持ちにならざるを得なかったし、引きずると悩みすぎるので、もう行くしかないかっていう。っていうか、この“行くしかないか”っていつ終わんのやろ?って思ってるんですよ。若さゆえの“行くしかないっしょ”って、あるじゃないですか。これを毎年思えていることが果たして素晴らしいことなのか。“今年はまあ、まあまあで”と思えるときがいつ来んのやろと思いながら、年明けを過ごしてましたね。
──そういうことを考えに考えていたところから、千秋さん自身がうまく切り替えられたきっかけなどは何かあったんですか?
千秋:完全に自問自答を繰り返していっただけですね。誰かの影響を受けるとかも嫌だし、相談する先輩もいないので。僕らみたいな歩み方をしている人たちっていないから、あまり参考にならないんですよ。だから、結局最後は“行くしかないっしょ”みたいな。それにしてもしんどいなと。
──ラクになったら曲を書かなくなりそうじゃないですか。
千秋:今年正月に実家に帰ったときに思ったことがあって。俺はあまりバンド活動のこととか、地元では言わないんですよ、いまいちピンと来ないだろうし。でも、親戚も武道館ワンマンをやったことは知ってて、「武道館ってどうだったの?」とか言ってくれるんですよ。だから、今回実家に帰るときも、いつもはボサボサの髪の毛で髭生やしながら「ウィース」って感じだったんですけど、今回はきちっとジーンズをはいて身なりを整えつつ、東京土産もいつもは東京ばな奈とか定番なものだったんですけど、おしゃれなケーキを買うか…みたいなことがあったり(笑)。そういうことも含めて、いろいろ考えた上半期ですね。
──ははは。
千秋:そういう中で、僕が今回一番入れたかった曲は、「明日暗い月が出たなら」だったんです。これは僕のマインドセットというか。これを今、伝えなきゃいけないということでもないし、昔からあるデモの曲なんです。だけど、これは確実に入れたいと思っていて。
──「明日暗い月が出たなら」のデモはいつ頃作っていたんですか?
千秋:2016年とかですね、ずっと好きで、自分で聴いていた曲で。
──好きだけど、これまで出すタイミングがなかったと。
千秋:そうですよね…タイミングがなかったんですね。改めて聴き直して、今回の選曲用のデモの中にぶち込んで、“この曲を入れたい”って強く思った。そういう気持ちがあったのはこれだけで。
──とてもいい曲ですね。
千秋:別の取材でも「これは千秋くんっぽいね」って言われました。
──どこか諦念というか達観した感じもありつつ、ここから先を静かにも見ている。それを素直なフレーズで書いている曲です。
千秋:僕自身が好きな曲だから、たとえ「この曲は好きじゃない」って言われたとしても、僕は傷つかないと思うんですよ。例えば「「変身」」があまり好きじゃないって言われたら、「お前とは仲良くできへんわ」とか「いいよそれで」って気持ちになると思うんです。だけど「明日暗い月が出たなら」を「長い」とか「あまり好きじゃない」と言った人がいたとしたら、「もうちょっと話せばわかるねんけどな」っていう。そういうマインドの曲です、僕的には。







