まず最初に登場はネリー・ファータド。スレンダーなボディに端正な顔だちのかなりの美人シンガーである彼女だが、彼女の人気を支えているのはここアメリカでは圧倒的に女性の方。彼女が登場するなり会場は女性の声援に包まれた。
このライヴの数週間前に、かのアレサ・フランクリンの功績を讃える<DIVA LIVE>に駆け出しのシンガーとしては異例とも言えるゲスト・パフォーマンスに抜擢されるなどシンガーとしての注目度の高い彼女だが、その圧倒的な歌唱力はやはり本物。細い体を一杯に振り絞って出されるそのエグ味のある声が聴こえたとたん、会場は興奮の坩堝と化した。
その声に負けず劣らずサウンド面も充実。
DJ、ドラム、パーカションという3人のリズム隊が織り成す複合的なリズムは、彼女の摩訶不思議な音の個性をさらに輝かせることに成功。特にDJの腕前は見事の一言。単にスクラッチを聞かせるだけでなしに、様々な音色を披露する事で音に膨らみをもたせ、ロックにおけるDJのあり方の優れた見本であった。
また、ギタリストでありプロデューサー、バンマスでもある才人ジェラルド・イートン(元フィロソファー・キングス)のひび割れたディストーションあり、ボサノヴァありの自在なギターもネリー・マジックを見事に演出していた。
この、バンド全体をも巻き込んだ歌姫の魅力に会場は大喝采! 大ヒット・シングル「I'm Like A Bird」では予想を遥かに上回る大合唱が会場を包み込み、終演後も歓声はやむことがなかった。 | . | この“新時代の歌姫”の宴が終わった後、次いで会場を覆ったのは「ウオーッ!」という太い男性客の歓声だった。
ステージの中央に立つのはデヴィッド・グレイ。その極力無駄を排したフォーキーでシンプルなサウンドと、薄く敷いたデジタルなビートによるサウンドはここアメリカでも“癒し系”として解釈されているが、この男、いざステージに立つと、“線の細さ”なんて概念とは一切無縁なパワフルな男と化した。
大柄な体を激しく揺らしてギターをかき鳴らし、会場の隅々にまで響き渡るような巨大な声でソウルフルに歌い上げる。どうやら、日本で人気のロン・セクスミス、エリオット・スミスとは全くタイプを異にするアーティストであるようだ。
MCでもジョークをふんだんにまじえたトークがガンガン止まらない。どうやらかなりのエンターティナーのようだ。しかも、ショウマンシップは抜群に高い。歌唱力・楽曲、一切問題無し。バックバンドのドラマー、ベーシスト、キーボードの3人もクラブ・テイストの強い複雑なリズムを難無く弾きこなす。
会場の方もヒットナンバー「バビロン」をはじめ、大合唱で応酬。演奏者・観客ともども熱いテンションとなり、遂には興奮したデヴィッドがグランド・ピアノの上に立って観客を煽るほどに。
そして、“ラス・ヴェガスのライヴ”ということを考慮して、アンコールではデヴィッド、バンドメンバーともども金のスーツで登場し、6曲にも及ぶアンコールに応えるなど、最後までホットなままにライヴは幕を閉じた。 |