勝手ながら、非常に複雑かつ難解な比喩を許していただきたい。Xzibitのキャリアを乗り物の1つにたとえるなら、それはガンマ線が降り注ぐ銀河を旅する巨大な宇宙船だろう。その船に乗る者たちは、いつしかFantastic Four(訳注:有名なアメリカンコミック)に姿を変えてしまう。 意味がお分かりだろうか? 分からない人たちのために言えば、要するに、我々は今やXzibitをFantastic Fourの一員と呼ぶことができる、ということである。アルバム3部作の最後を飾る作品『Restless』が完成した今こそ、ヒップホップで宇宙的支配力を手に入れるというXzibitの夢を現実のものにする最大のチャンスなのだ。 '96年に『At The Speed Of Life』が、'98年には『40 Dayz And 40 Nightz』が評論家たちの称賛を浴びたにもかかわらず、Xzibitはいまだにアンダーグラウンドから抜け出すことができずにいる。しかし、1曲のラジオヒットが、1人のハングリーなMCを一躍グルーピーやグラミーの世界にまで押し上げることのできるこの惑星なら、別名“X to the Z”とも呼ばれる西海岸出身のラッパーが、アンダーグラウンドから飛び出してスターの座をつかむのもそう遠い未来の話ではないだろう。 「俺はバトルラップのアルバムを2枚作った。その中で、自分がライムを吐けることを証明し、バトルサークルにおける自分の役割を果たしたつもりだ」。Xzibitは力強く、誇らしげにこう語る。「今は、もっとコンセプトのある曲をやってる。このアルバムは、MCたちの才能を吸い尽くすということにかけては俺の実力以上の作品になってるよ」。Snoop Doggのアルバム『Top Dogg』からのシングルで、爆発的ヒットとなった“B Please”にゲスト参加し、エネルギーをもらったXzibitには、すでにこの地球を征服する準備ができているようだ。 「Snoopとやった“B Please”は、地上に落ちるや否やそこらじゅうで爆発しまくった。あれは、俺にとってはアメリカ国外での初めてのシングルヒットだったんだ。世界的な曲だったからね。そのおかげで俺の露出度が上がったし、ファン層も確実に広がったよ」 まるでトール(訳注:北欧神話で雷・戦争・農業をつかさどる雷神)のハンマーのようにマイクを操るこのコーンロウ頭のMCは、メディアに大々的に取り上げられた今年のUp In Smokeツアーに、EminemやIce Cube、Snoop Dogg、Dr. Dreらと共に参加し、さらに多くのファンを獲得した。そして、『Restless』のエグゼクティヴプロデューサーをDreが務めたことにより、今までアンダーグラウンドに身を潜めていた彼の、メインストリームにおける認知度も格段にアップしたのである。 「Dreはこのプロジェクトのエグゼクティヴプロデューサーってことで、選曲も手伝ってくれたんだ。アレンジもやってくれたし、フックをどこに持ってくるかとか、チャントをどこに入れるか、みたいなアドバイスもしてくれた。俺が絵を描いて、Dreがそれに色を付けてくれたって感じさ」 『Restless』でDr. Dreは4曲のプロデュースを手がけている。まず1stシングルの“Take Your Stripes”と胸にズンズン響く“You Know”。この2曲にはDre自身も参加している。また、ギターメインで熱く燃える“Take Me There”では、Tray DeeとMs Roqをフィーチャーし、「Xzibitは言葉の喧嘩ならいつでも買うぜ」という世の中のラッパーたちへの警告を込めた。そして、もう1曲は“Black Rabbit”。さらにDef SquadのEric Onassis(Erik Sermonという名でも知られる)とTeamstersもプロダクションに加わった。Mel-Man、DJ Quik、Soopafly、Battlecatといったウェストコーストのプロデューサーたちがドープビーツを打ち出す一方で、SnoopやNata Dogg、Eminem、Tray Dee、Defari、King TeeらがXzibitとマイクでリリックを交わし合う。Snoopなどは、Parliament~Funkadelicを思わせる曲“DNA”でもXzibitと言葉の戦いを繰り広げている。 アルバム全編において、ファンたちは身をかがめてXzibitの攻撃から体を守らなければならないだろう。なぜなら、熱く燃える彼が落とす爆弾には、超人ハルクがスーパーマンにデスマッチを挑むよりも、はるかにもの凄いパワーが備わっているからだ。Mel-ManとBattlecatのプロデュースによるギャングスタファンク“Get Your Walk On”について、Xzibitはこう語っている。「これはパーティトラックなんだ。クラブでワイルドに盛り上がれるやつさ」。一方、DJ Quikがプロデュースを手掛け、Suga Freeの痛烈なウィスパーヴォイスをフィーチャーした“Sorry I'm Away So Long”は、Xzibitの幼い息子に捧げた内省的な曲。「ツアーに出ている間、かわいい息子に会えなくてどれほど寂しいか、君にはきっと分からないだろう」という気持ちを切々と綴っている。 スーパーヒーロー候補生なら、誰でも確固たる戦略を持っていなければならない。Xzibitにとっては、西海岸の重鎮たちと常にリンクしていることが世界征服のための巧妙な戦法なのだ。 「今の若い人たちは、俺のようなリリシストがSnoopやDreみたいなビッグスターと一緒にやってるってことに魅力を感じているのさ。西海岸ではここ最近そんなことは行なわれていなかった。Snoopの『Top Dogg』とかDreの『Chronic 2001』とかUp In Smokeツアーとか、俺が経験してきたことのすべてが、今、もの凄く役に立ってるよ。俺はいいアーティストだし、俺の音楽は完璧すぎるほど完璧だ。だから、今こそミリオンセールスを狙う時なんだ。『Restless』で俺は、昔からのファンを満足させると同時に新しいファンも喜ばせるつもりだよ。今まで長い道のりを走ってきたし、長い間戦ってきたんだから、最高と呼べるものしか出すつもりはないね」 |