今わかるのは、エレカシは時代を生きるバンドであるということだけだ
今わかるのは、エレカシは時代を生きるバンドであるということだけだ |
『good morning』 FAITH RECORDS BFCA-75001 3,059(tax in)発売中 1.ガストロンジャー 2.眠れない夜 3.ゴッドファーザー 4.good morning 5.武蔵野 6.精神暗黒街 7.情熱の揺れるまなざし 8.I am happy 9.生存者は今日も笑う 10.so many people (good morningバージョン) 11.Ladies and Gentlemen 12.コール アンド レスポンス 『sweet memory~エレカシ青春セレクション~』 FAITH RECORDS BFCA-75003 3,059(tax in)発売中 1.悲しみの果て 2.風に吹かれて 3.今宵の月のように 4.昔の侍 5.さらば青春 6.四月の風 7.孤独な旅人 8.真夏の星空は少しブルー 9.月夜の散歩 10.遠い浜辺 11.赤い薔薇 12.sweet memory 13.武蔵野 14.石橋たたいて八十年 15.始まりはいつも | 人々の関心を音楽に向ける要因は様々である。 初めてロックに触れた頃のことを思い出してみよう。恐らく中学時代に洗礼を受けたケースが多いのではないだろうか。 強烈なギター・サウンドやメッセージ性の強い歌詞など、突き動かされるものは十人十色だ。単なるカッコよさだったり、中には何かしらの抑圧からの解放といった意味あいで自己の体験を語る人もいるかもしれない。今風な流行りは癒しだから、学術的な分析をすれば、多かれ少なかれ精神を浄化する要素は含まれているのだろう。 ただ、そのどれもを抽象するならば“衝撃”という言葉が最も当てはまるように思う。 エレファント・カシマシの名を知る人は多いはず。 多くの場合、キッカケは「悲しみの果て」('96年)、「今宵の月のように」('97年)といったヒット曲だろう。 少し彼らの歴史を遡っておくと、中学校のクラスメートだった宮本浩次(vo,g)、石森敏行(g)、冨永義之(ds)によって'81年に結成。'86年に冨永の高校時代の同級生だった高緑盛治(b)が加入し、現在のラインナップが固まった。そして'88年にアルバム『エレファントカシマシ』でデビューする。 これまでにオリジナル・アルバムだけでも11枚のリリースになるから結構な数だが、ここまで固定したメンバーで活動を続けている事実も、実は凄いことである。少しでもバンド活動を経験したことのある人なら、その大変さは理解できるはずだ。それゆえの阿吽の呼吸は、当然、バンドの表現力の一つとして奏功してくる。 先述したように、シングル・ヒットを契機に彼らの一般的認知度を高めたのはここ4~5年と言ってもいい。とはいえ、人知れず活動している素晴らしい音楽集団がいくつも存在していることは、改めて説明するまでもないだろう。 バンドの質を考えるとき、作品のセールスには本来的な重要性はない。送り手が表現したいものが、受け手に多く共感を呼べば売れるのは間違いないが、そんな構図だけでは計り知れない魅力が音楽にはある。 エレファントカシマシは、一定のセールスを記録したことで、確かに支持者も増えた。しかし、それだけのことなのだ。 話を戻そう。昨年夏、レコード会社を東芝EMIに移籍。その第一弾シングルとなった「ガストロンジャー」('99年)で度肝を抜かれたリスナーは少なくなかった(個人的には'99年のベスト・チューンの一つ)。アルバム『ココロに花を』('96年)、『明日に向かって走れ―月夜の歌―』('97年)、『愛と夢』('98年)の3作品で提示していた方向性とは違ったニュアンスを感じさせる、豪快な叫びが込められていたからだ。 今年4月にリリースされたアルバム『good morning』(2000年)の力強さも然りである。 まさしくロックによる初期衝動を思わせる“衝撃”を感じずにはいられなかった。もちろん、昨今のアメリカで猛威をふるうようなヘヴィ・ミュージックに形を変えるわけでもない。脈々と流れる王道的なサウンドが基本だ。そこに秘められた驚異的な威力は、宮本浩次の目を通した世界観があってこそだろう。歌詞の意味を深く考えるまでもなく、彼の息づかいそのものが痛いほど耳に突き刺さるのだ。これをロックと呼ばずして何と言おうか。 こんなことを強調すると、さぞかし怖いバンドに思われそうだが、それもまた一面と捉えてほしい。優しくもの悲しい、叙情味溢れた楽曲を創造し続けているのも魅力だ。 たとえば、9月にリリースされた『sweet memory~エレカシ青春セレクション~』は、エレカシ入門として手頃だろう。宮本浩次が、青春をテーマに13曲をセレクトした企画盤である。素朴に歌い上げられるメロディに、純粋な男性性を見出すもよし、単に懐かしい風景を思い起こすもよし。肩の力を抜いて聴けるが、その一方で背中を押してくれるような感覚もある。 現在、エレファント・カシマシは全国ツアー“Rock! Rock! Rock!”を敢行中だ。 ロック・バンドはライヴでこそ本領が発揮されるもの。彼らにも言えることである。ブラウン管で頭を掻きむしりながら熱弁する宮本浩次は、ステージで自由奔放に自身の人生を描き出す。 ときにはメンバーに体当たりもするし、オーディエンスに悪態をつくこともある。 ライヴでの彼らを見たことのない人にとっては、最初はその姿に驚くかもしれないが、そのあまりに自然体な行動すべてに愛情が満ち溢れていることも次第にわかってくる。 音楽に身を委ねながら、非常に濃密な時間を過ごすことができるのだ。 今回のツアー・ファイナルは(も?)2001年1月4日。 21世紀最初のライヴだが、そんなことはどうでもいい。恒例となった日本武道館公演で何を見せてくれるのか。同じライヴは二度とない。 今わかるのは、エレカシは時代を生きるバンドであるということだけだ。 文●土屋京輔 |
2001年1月 4日(木) 日本武道館 open/17:30 start/18:30 ticket 4,725 information:ディスクガレージ 03-5436-9600 |
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