――前シングル「FLOWER」の反響が大きかったですね。 平泉:そうですね。みんないい笑顔でした(笑)。 伊賀:偶然、意識していないところで「FLOWER」がかかっているのを聴くと嬉しいですよね。自分が演ったやつじゃない感じに聞こえるんだけど、覚えているっていう(笑)。 ――その「FLOWER」にしても、今回リリースのシングル「ECHOES/TRAIN」にしても、歌詞に"雨"空"光"といった自然界のものを多用しますよね。ご自身でテーマがあるのですか? 平泉:今回の「ECHOES/TRAIN」ではちょっとそういった流れから外れたかなと思ったんですけど、「FLOWER」作っているときは確かにありましたね。連想ゲームじゃないけど、"花"って言葉があって、こういうもんだよねって書き出しました。普段は歌詞を書いてからタイトルつけるんですけど。 ――では、今回はどこらへんをきっかけに、詞を作り出したのですか? 平泉:<何気ない仕草でキミは伝えていたんだね/とても近くにいたから 気付かなかったのかな>ってサビのところですね。やるせない、言い切りじゃない表現が自分らしいかなって。で、この部分を大切にしたかったので、ほかの部分の言葉を埋めるのが大変でしたね。すごく透明感のあるメロディだったんで、それを活かすためにも。 ――特にどこらへんを苦労したんですか? 平泉:ん~、やっぱり<ベイビー>ってところかな(笑)。思い切って"ベイビー"って使っちゃうところですよね。 ――なるほど(笑)。でも、ここは"ベイビー"以外は考えられないですよね。 平泉:ええ。ここにクリアな言葉をはめないと、モヤッとした感じになるんですよね。 ――その大事にしている<何気ない仕草で~気付かなかったのかな>から歌詞中の"ボク"は心情的に発展がないのですが、"気付かなくてゴメンよ"みたいに表現しなかったのは、敢えて? 平泉:そうですね……、物語っぽくしたくなかったのと、この感情が沸きあがった瞬間……「やさしさ欠けてたかも?」ってのを切り取りたかった。要するに独り言なんです。それで、ゴメンね、とはならなかった。 ――伊賀さんは、歌詞に関してアドバイスを求められたりしますか? 伊賀:そうですね。彼はレコーディングの歌入れギリギリまで歌詞を作るんですよ。だから、煮詰まってくると、「伊賀さん~、どうしよう~?」って言うから、「こうしたら?」「こういった言葉は?」ってアドバイスするんですけど、それでは納得いかないみたいで(笑)。 平泉:いや、実際使わなくても、ちゃんと参考にはなってるんですよ(笑)。発想の展開にもなるし。 ――メロディーとしては、benzoお得意のメロウ・ソウルですよね。リスナーとしては世知辛い社会の中にいる、自分から敢えて飛びこまないと見い出しにくい世界観だと思うのですが、作曲者の平泉さんの場合はどうなんでしょう。 平泉:んー。そうですね、もう僕の素材がそういうものなんでしょうね。別に、最初からフォークやろうとか、ロックやろうとか意識して音楽作っているわけではなく、自然とグルーヴィな感じでこういうメロディになるので。……意識するのは苦手なんです。 ――プロモーションビデオは「ECHOES」を撮ったんですよね。 平泉:ええ。サニーデイ・サービスの曽我部(恵一)さんが監督してくれたもので。すごく色がきれいで、ファンタジックなんです。 伊賀:4人がシルエットでね。いい感じで仕上がってますよ。 ――benzoは「FLOWER」を境にすごく変わったと思ったんです。というのも、以前はbenzoのよさであるライヴ感が、CD音源としてはパッケージされ尽くしていないかなと。でも、「FLOWER」からライヴとCD音源の差が埋まってきていると思うのですが、なにか大きなきっかけがあったのでしょうか。 平泉:「FLOWER」はスタジオに入る前に、一回ライヴで演ったんです。それが大きな違いかなぁ。レコーディング方法を変えたってのはなかったですけど、いい感じでレコーディングに突入できたのは確かです。 ――今回のシングルでは「TRAIN」のほうは、すでに何度かライヴで演ってますが、「ECHOES」はまだ披露していないですよね。この前のライヴ“王冠アワー”では、「諸事情によりやらない」って言ってましたし。 平泉:すごく作りこんでしまったのでね。いつもなら、ちょっと演ってみようかって感じでできちゃうんですけど、「ECHOES」はギターやキーボードの音を詰めこみすぎちゃって、さて、どれを弾きましょうかって(笑)。それと反対に、「TRAIN」はbenzoの曲のなかでも、攻撃的な曲なので、熱いうちに打て、じゃないけど、すぐに演ってしまおうと。 ――「TRAIN」のベースラインがうねっていて、カッコいいですよね。 伊賀:キーボードの高野(勲)クンと、あれいいね、これいいねって言いながら作っていったんですけど、結構、この曲の核になっていると思うんです。 平泉:うん、うん。 ――ライヴを観て思ったのですが、楽曲の作り方やアレンジから、ギタリストとしての平泉さんはソロを取るギタリストよりも、全体としてアンサンブルのひとつとして曲に入り込むギタリストという印象を受けたのですが。 平泉:ん~。ソロも取りたいですよ。それはそれでおもろいし。スティーヴィー・レイ・ヴォーンとか最近好きですし。どちらかというと、勲クンのほうが、ソロを取りたがらないタイプですね。 ――お2人はインターネットはされますか? 伊賀:僕はけっこう、やります。 平泉:僕はメールくらい。 ――ネット上で、音楽をやり取りできる手段が広まりつつありますが、それに対してどう思われますか? 伊賀:いい音楽をやっていても、宣伝費用や手段を持たない人が、広めるにはいい手段だと思います。逆にプロの人の音源がいつの間にか、ダウンロードされて売られていたりすると問題になったりしてるじゃないですか。ああいうのはちゃんとセキュリティーがあると……。 平泉:インターネットがないと音楽が広まらないってなると、寂しいですけどね。まだそうじゃないから。
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