【インタビュー】MUCC、YUKKEが語るアルバム『1997』の多重的な遊び心と信念「メンバーに対する驚きが尽きることがない」

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■オマージュすることの楽しさ
■どんどんアイデアが出てくる


──ベーシストとしてのYUKKEさんも、今作で曲ごとに様々なチャレンジをされている印象です。どんなふうに振り返りますか?

YUKKE:元々MUCCが持っている曲の振り幅が広いので、最後に自分というフィルターは通すんです。だけどその前に、“こういう曲調を弾いているベーシストって、どういう人だろう?”ってまずは想像して、そこから機材選びに入っていく、その繰り返しでした。

──『1997』の場合はそれがよりたくさんあったのではないですか?

YUKKE:曲の種類だけ弾き方があって楽器選びも変わるので、例えば「Round & Round」であれば、当時のZI:KILLやD'ERLANGERへのリスペクトを感じながら作られていて。ライヴで一度披露しているんですけど、やっぱり俺はSEELA(B / D'ERLANGER)さんの弾き方になるんですよ (※ベースのピッキングフォームを真似て)。

──ベースを構えるフォルムからして変わるわけですね。

YUKKE:うん、全てがそういうことに宿るというか。機材選びも面白くて、この曲ではSEELAさんの機材を調べて、アンプもトレース・エリオットを使ってみたり、“こんな感じかな?”ってイメージしながら弦選びからこだわって。ベースソロはすごくシンプルなプレイで、“ダーツクダーツクダーツク”っていうフレーズをいかにタイトにちゃんと弾けるかが今回のレコーディングで一番苦労したことなんです。レコーディングの初日あたりに録った曲なんですけど、ソロの部分だけ「もうちょっと練習させてください」ってお願いして、最終日の最後に改めて録りました。納得行くテイクが録れたので良かったです。



──ミクスチャーロックとメロコアが融合したような「Boys be an Vicious」は、イントロのベースリフがスリリングです。

YUKKE:THE MAD CAPSULE MARKETSのイメージですよね。逹瑯からああいう曲が出てくるのは意外だったんですけど、今回のアルバムに必ずなきゃいけなかったピースだと思います。THE MAD CAPSULE MARKETSはMUCCというバンドの根底にリスペクトがあって。1997年とか、俺が加入する少し前のMUCCは、THE MAD CAPSULE MARKETSの曲の後にMALICE MIZERの曲もやるという、だいぶ滅茶苦茶なコピーバンドだったんですよ(笑)。この話を聞くと、今のMUCCに納得がいきますよね(笑)。その後、SHAZNAのコピーもやって、「Melty Love」を逹瑯が歌うという。

──すごい振り幅ですね。

YUKKE:当時、THE MAD CAPSULE MARKETSはMUCCの機材車の中でいつも流れていたし、知らず知らずのうちにそのサウンドが叩き込まれていて。'90年代のパンクはすごく聴き込んでいたわけではないですけど、友だちの家に行くとGreen Dayとかが掛かっていたんですよ。「Basket Case」のベースが“ドゥルルン”って入るところは、ベーシストであれば全員が絶対に一回は弾いているフレーズだと思うんですけど、そこを思わせるようなパートを一瞬入れてみたり。自分の中では'90年代との辻褄がすごく合う感じがする曲ですね。MUCCが育ってきた'90年代サウンドが、今の子たちにどう響くのかなというのは楽しみなところです。

──「October」は驚くほど素直なバラードで、逹瑯ソロではなく、MUCCとしてこの曲を出してきたというのも感慨深いです。

YUKKE:すごくいい曲だなと思います。とても柔らかい印象のバラードなんですけど、そのぶん演奏しているほうからしても、込めるものがすごく強くなるんです。逹瑯の想いが歌詞に分かりやすく表現されていて、それはしっかりした演奏の上でしか成り立たない。力強くいきたいところもあえて抑えるエモさというか、その辺の抜き差しはMUCCをやっているうちにだんだんできるようになってきたので。ライヴでもしっかり演奏したいと思っています。

──“永遠の愛”という言葉が歌詞に出てきますね。

YUKKE:逹瑯の知人である御夫婦のことを歌っていて、亡くなった時に書いたらしいですね。誰の歌詞を見ても、やっぱりその人にしか書けない詞なんだな、というのは思います。

──「October」=10月ということから、2023年10月に旅立たれた櫻井敦司(BUCK-TICK)さんへの想いもあるのかな?と勝手に想像していましたが、モデルは違うんですね。

YUKKE:逹瑯も「そう思われちゃうかな」と懸念していたんです。けど、「そうじゃない」ということはこの間言っていました。



──「不死鳥」の終わりのほうのギターは、BUCK-TICKの「KISS ME GOOD-BYE」へのオマージュなのかな?と思いました。

YUKKE:そういうふうに感じてもらえるところは、このアルバムのいろいろなところにあって。ギターソロやリフ、ベースもキーボードも全楽器フレーズにあるんですよ。そこを探してもらいながら聴くアルバムとしても楽しめるかなと。

──発見の喜びがありますね。

YUKKE:オマージュすることの楽しさってあるんですよね。トリビュート作品でのリーダーの遊び方を昔から見ていますけど、“面白いな”と思っていて、そういうセンスがすごいなと。どんどんアイデアが出てくるし、とにかくすごく楽しそうだから。自分自身も、「△ (トライアングル)」のスラップフレーズはレッチリ(Red Hot Chili Peppers)を意識しているんですけど、そのまま弾いたらダメだし、“こことここのスケールを押さえておけば、それっぽさを匂わせることができるから、あとは自分で少し崩して弾いてみよう”とか、いろいろ考えて。“この音とこの音が入ってるから、分かる人は感じてくれるだろう”とか。そういうことを考えているのは面白かったです。

──「△ (トライアングル)」はピンク・フロイドとかプログレというキーワードもありましたが、イントロのギターだけになるリフ部分はレッチリの「Give It Away」を彷彿とさせます。どの曲も1曲の中にさまざまなオマージュが挿入されているようですが、そういったアイデアはアレンジ段階でメンバー間の意思疎通や共有があったんでしょうか?

YUKKE:いや、特になかったんですよね。それぞれがそれぞれのアイデアをフレーズに乗せていった感じです。だから、聴けば聴くほど面白いし、楽曲のカラーもその時々で変わって聴こえるかもしれない。

──そのさじ加減は難しかったのでは?

YUKKE:そのさじ加減がセンスなのかなと思いますね。


──では、ツアー<MUCC TOUR 2025 「Daydream 1997」>が4月5日からスタートしますね。意気込みを聞かせてください。

YUKKE:もうすぐリハーサルが始まるので、それまでずっとベースを弾いて体に入れておかなきゃって感じですね。楽しみです。1曲目のインスト「Daydream」を抜いてもアルバム収録曲が15曲あるので、ほぼこれだけでライヴを完結できるし、そこに数曲入って来る感じになると思います。

──アルバムの曲は一回のライヴで全曲聴けると思っていて大丈夫ですか?

YUKKE:大丈夫だと思います!

──シンガロングする情景が思い浮かぶ曲が多いですし、お客さんと一体になるようなツアーになるでしょうか?

YUKKE:そうですね。インストを除く始まりの「桜」は、これまでのMUCCのアルバムの入り方とはまた違う切り口だと思うんですよね。これまでだったらたとえば、「蜻蛉と時計」や「Guilty Man」あたりが1〜2曲目に入ってくるイメージだと思うんですけど、もしスピード感ある「桜」がライヴのオープニングとなれば、また違った印象を受けるんじゃないですかね。




──ツアー後の6月9日には<2025スペシャルMUCC Day>開催も決定しています。4月1日に詳細が発表されますが、何か特別なことを準備されているんですか?

YUKKE:久しぶりに、お客さんから募集してのリクエストライヴをやってみたいなと思っています。これからメンバーと話し合うんですけど…恵比寿The Garden Hallは20年前ぐらいにやったことがある会場ですよね?

──2003年1月以来のようですね。

YUKKE:あ、初めてスッピンにTシャツ姿でニット帽とかを被ってライヴをした会場ですね。

──それは結構特殊なライヴですね。

YUKKE:22年前としては新しかった気がします(笑)。わり方ができればいいかな。25周年はずっと追われていたので、今年はしっかり一つ一つのイベントとかアクションと向き合いながらちゃんとやりたいですね。

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