【インタビュー】友成空、人生観を描いた新曲「未来電話」リリース「明日の僕から昨日の僕へ」

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シンガーソングライターの友成空が、新曲「未来電話」をリリースする。同曲は11月22日より配信されているアシックスジャパン ショートドラマシリーズ『シゴトはもっと楽しめる』の主題歌に起用された。

◆ショートドラマ

このショートドラマはワーキングシューズを展開しているアシックスジャパンが建設業などの業界において、労働人口減少や高齢化などにより人手不足が大きな課題となっていることも踏まえて、「シゴトはもっと楽しめる」をテーマに建設、運送、製造業をはじめとした「現場で働く人」を主人公に設定して製作された、働くすべての人を応援するヒューマンドラマ。今年1月に第1弾が公開され、今回が第2弾となる。

「未来電話」は晴れやかな青空を彷彿とさせるサウンドデザインと、生きているなかで巻き起こる葛藤が綴られた歌詞が交差するポップチューン。今年頭にヒットした「鬼ノ宴」や、12月27日にリリースされる「ACTOR」とはまったく異なるアプローチに、あらためて彼がポップスにおいてのオールラウンダー=令和のポップキラーであることを実感できるだろう。「未来電話」が生まれるまでにはどのような背景があるのか、2024年を振り返りながら語ってもらった。

   ◆   ◆   ◆

◼︎もし未来の自分がいたら、今の自分になんて言うんだろう

──2024年は年始から「鬼ノ宴」のヒット、初ワンマンの開催と大きなトピックが多い1年となりましたね。

友成空:自分の想像よりもはるかに変化が多く、パーソナルの世界から飛び出した感覚のある年でした。それまで僕にとって曲作りは、大切な思い出や自分のネガティブな感情、過去に置いてきてしまったもの、後悔などを残しておくタイムカプセルのようなものだったんです。でもそれ以外の作り方もしたいなといろいろとトライしているなかで、1個飛び出せた感覚があったのが「鬼ノ宴」なんですよね。

──なぜパーソナルな観点以外の制作をしたいと思われたのでしょう?

友成空:大きなきっかけは大学に入ったことだと思います。高校までは関わる人も限られていて自分の世界もすごく小さくて密度が濃いけれど、大学で自分の世界が広がって、彩り豊かになっていったんですよね。あとは曲作りをするなかでタイムカプセルを作るだけでなく、「こういう人に聴いてほしい」という気持ちがどんどん強くなっていったんです。でもいざその人たちにプレゼントするような曲を作るとなると、どうしても自分の経験と思いだけではその人の世界を表現できなくて。それもあって曲を作り始めるきっかけが「自分から見える情景」というよりは、「こういう曲が作りたい」という音楽になっていったんです。

──「この曲を自分以外の誰かに届けたい」という思いが、友成さんのソングライティングに変化をもたらしたんですね。それが「鬼ノ宴」にもつながったと。

友成空:だから「鬼ノ宴」はファンタジーや想像性の強い曲でもありますね。でもそういう曲が作れるようになったことで、より一層自分のパーソナルの部分は大事にしないとなと思ったんです。

──と言いますと?

友成空:人のため、世の中のためという思いを主体に行動していると、自分がよくわからなくなってくる感覚もあるんです。だから自分の中に湧き上がるエネルギーはそのまま純粋に楽曲やライブパフォーマンスに出せるようにしたいという意識も芽生えました。そういう意味で言うと、今回リリースされる「未来電話」は、タイアップ曲でありながらもパーソナルの部分も大事にした曲なんですよね。



──「未来電話」はアシックスジャパンショートドラマシリーズ『シゴトはもっと楽しめる』第2弾の主題歌で、ショートバージョンが今年7月に友成さんのSNSにアップされていましたね。

友成空:実はお話を頂く前に1番の部分はできていて、それこそ自分のために作ったんですよね。そのときの自分が未来の自分から掛けてほしい言葉を目いっぱい書いたんです。

──確かに1番のAメロは《見えないゴールへ急かされる毎日》や《できないばっかで嫌になってく時》など、心情吐露が印象に残ります。

友成空:「鬼ノ宴」が出る前と出た後で自分の状況が一変して、自分が目標としていた「あのチャートに乗る」「このプレイリストに入る」「TVで紹介される」ということを一気に叶えてもらったんです。となるとここから次のステップに移らなくてはいけないけれど、そうすると否応なく未来のことを考えなきゃいけない。でもそのときの僕にとって、次の目標を設定するのは難しいことだったんです。そのなかで「もし未来の自分がいたら、今の自分になんて言うんだろう?」と思ったところから作り始めたんですよね。そんなときにアシックスジャパンさんからお話を頂いて、「未来電話」ともう1曲の計2曲をお送りしたら「未来電話」を気に入っていただけて。ドラマのコンセプトを把握したうえで2番を作ったんです。

──だから2番に「足跡」や「誇らしい靴」といった言葉が入っていると。

友成空:「誇らしい靴」はこの曲でいちばん書きたかったポイントなんですよね。ワーキングシューズは汚れて傷ついてボロボロになればなるほど、履いている人が一生懸命お仕事をされている証であり、靴が履いている人の足を守ってくれた証であるとも思うんです。僕も昔飲食のバイトをしていて、先輩の靴はすごく履き込んでいることが見てすぐわかるんですよね。「生きること」もそういうことであってほしいなとすごく思って……。人間はどうしても老いていくものではあるじゃないですか。





──そうですね。

友成空:それによってどうしたって不自由な面が出てくるけれど、そういう面もひっくるめて「生きていれば生きているほど良くなっていくし、老いていけば老いていくほど楽しくなっていくものだ」と思えたら、今を楽しく生きられるなと思うんです。傷ついた瞬間は痛くて悲しいかもしれないけれど、だからこそ楽しいと感じられることが未来にたくさん待っている。そんな世界であったらいいなという気持ちでこの歌詞を書きました。

──2002年生まれでその境地に達するとは……。ただただ驚いています。

友成空:(笑)。幸運なことに僕の周りに老後の生活や第二の人生を楽しんでいる方が多いんです。なかでも父親の幼馴染の方と話したときに言っていただいた言葉が胸に残っていて。「人は人生の岐路で選ばなかった道を否定することで、今の自分に自信を持とうとする。でも選んだ道の先がどんな結果だったとしても“こんなにいい未来が待っていた”と思えば、どんな道を選んでも良かったと思える」といった話をしていたんです。その言葉がすごく響いて、それを曲にしたいなと以前から思っていたんですよね。

──友成さんが2024年に感じた気持ち、過去の経験、アシックスジャパンのドラマのコンセプトと、様々な要素がしっかりとひとつになった曲なんですね。

友成空:おこがましいかもしれないけれど、僕の状況と建設業界には重なる部分もあるのかなと思ったんです。建築は職人さん一人ひとりの細やかな業務の積み重ねで、とても大きなものを作ることなんじゃないかと思って。それは人間が生きていく過程でいろんなことを積み重ねて、時間の経過によって結果的に視野が広くなっていくことに似ているような気がして。そういう過程を書ければなと思いました。





──その過程を描くうえでのモチーフは、なぜ“電話”だったのでしょう?

友成空:ほんと最初は何も考えてなくて、直感的に「未来の自分から電話がかかってくる」と思ったんです。でも後々考えてみると、自分は電話とともに変化してきた感覚があるんですよね。僕が生まれた頃にはガラケーが既に普及していて、小学校に入るか入らないかのあたりでスマートフォンが出てきて、それは子どもの自分にもすごく大きな変化だったし、この20年でいちばん世の中を変えたツールだとも思うんです。

──確かに電話の変遷は時代を象徴していると思います。曲中では黒電話とプッシュホンの呼び鈴がアクセントにもなっていて。

友成空:実はあれ使い分けていて、未来から電話がかかってくる場面ではデジタルの音、過去の自分が考えていることを歌っている部分は黒電話の音が鳴っているんです。

──へええ。言われてみると確かにそうですね。

友成空:シンセサイザーの質感やドラムの感じ、ピアノの音の処理は80年代、90年代あたりのイメージで、そのぐらいの時期の音楽が思い浮かべていた未来をイメージして、時間の経過を描けたらなと思ったんですよね。

──お話を聞いていると、友成さんは直感と理論のバランスが絶妙ですね。

友成空:最初のきっかけは基本的に思いつきなんです。でもそれが後々自分のヒントになること、伏線を回収していることがよくあって。「電話」という言葉も直感的に出てきた言葉だけど、時間の移り変わりを表現するにはベストなモチーフだと思うし、それは昨日の僕から明日の僕への電話みたいだなと思うんですよね。昨日ダメだと思っていたことが今日になってみると「ダメだと思ってたけど実はあれでよかったじゃん」と思うことが多々あるのは、明日の僕から昨日の僕への電話でもある気がしたんです。

──ご自分からの電話をちゃんと受け取っているから、辻褄も合うのでしょうね。実際にドラマをご覧になって、どのように感じましたか?

友成空:いちばん感情移入したのが、ちょっと調子に乗って年上の職人さんに指示を出す若い現場監督の男の子のエピソードで。音楽を作るときの僕の感じに似てるなと思ったんです。まずは状況を把握している現場監督が指示を出して職人さんがご自身の育んできたスキルを発揮するように、僕の活動もまずは僕から始めないと始まらないので、焦りもあって。そういうなかで曲作りをして、いろんなことが動き出していって……そうやってゼロからイチを作っていると、つい自分がトップのような気がしてしまうんです。僕、チームには必ず上下関係があるイメージがあったんですよ。





──そうですよね。アルバイト先にも指示出しのリーダーがいることがほとんどですし、10代の学生生活も先生以外にも、生徒会長や委員長、リーダー、キャプテン、コーチなどがいて、その人たちの指示に従うことが多いです。

友成空:部活動はレギュラー選手もいればベンチの人もいて、ベンチにも入れない人もいる。だからチームにどうしても殺伐としたイメージを持っていたんです。ドラマのあのエピソードを観て、お仕事はお互いのキャリアや肩書きではないところで付き合える、人間と人間で付き合えるんだな、それがチームなんだろうなと思ったんですよね。僕もこんなふうにいろんな方々と協力しながら音楽活動をしていけたらいいなとあらためて思わされました。

──社会に出ると多種多様な人々と接する必要がありますし、特に10代、20代の方々は年上と接する機会が多いから気苦労も多いですよね。どんなふうにお願いをすればいいのかも悩んでしまうし、質問も勇気がなくてできなかったり。

友成空:そうなんですよね(苦笑)。僕もやっぱり自分の理想があるので、映像作家さんやプレイヤーの方々に注文をつけちゃうし、それが申し訳なかったりするんです。ずっとその道のプロとしてやってきた方々に自分の理想をブつけていいんだろうか……と悩むし、全部おまかせします!と言えたらいいけれど、やっぱり自分が表現したいことはあるし、そういう葛藤は多いです。だから自分の思い通りに動かそうとしていた若い現場監督さんに、中村獅童さん演じる上司の言った「俺たちはひとつのチームなんだ」という台詞が心に残ったんですよね。ありふれた言葉だなと思っていたけれど、あの文脈で聞くとちゃんと意味が感じられたんです。

──それぞれが担う役割を尊重し合っていきたいですよね。友成さんは音楽制作の方法と、人との関わり方が似ているのかなと、お話を聞いていて思いました。それこそお名前の通り“友”という概念を大切になさっているなと。

友成空:名前負けしない音楽活動はしたいなとは思っていますね。“友成空”は小さい頃からお世話になっている方につけていただいた名前なんですけど、最初のうちはもうひとりの自分の場所を新しく作ってもらったような感覚があって、あんまり馴染めなかったんですよ。でもだんだんと人からこの名前で呼んでもらうようになって、だんだん自分の中にも「自分は“友成空”なんだ」という気持ちが芽生えていったんですよね。自分ひとりで自分を形成していくのは難しい。自分が自分であるためには、自分以外の誰かの存在が必要不可欠なんだなと気づきました。

──「未来電話」で描かれた未来は“明日”でしたが、その先のイメージなどはありますか?

友成空:もともとすごく遠いところを考えるクセがあるんですよね。ひとつ大きな理想は、高校生の頃に観た初台のオペラシティで観た大貫妙子さんのクリスマスコンサートみたいなライブがしたくて。僕も大貫さんくらいの年齢になったときに、あんなふうにミニマムで落ち着いた雰囲気でライブができる人だったらいいな……と思います。

──ライブは楽しめていますか?

友成空:ずっと作り手としてこつこつ音楽をやってきたので、やっぱり音源と違って“一度限り”であるライブはパフォーマンスの場で、スポーツ的な側面があるような気がしていて。だから最初のうちは戸惑いや不慣れな気持ちがあったんです。今もそういうものと向き合いながらステージに立っているんですけど、最近になって少しずつ楽しさを見つけられるようになってきています。ひとりだからこそいろんなことができるなとも思うんです。

──そうですね。ソロアーティストさんは自由度が高いですから。

友成空:編曲まで自分でやっているのは自分の強みだと思うし、楽曲に込めた自分のポリシーを100%そのまま舞台上でみんなに伝えられるのはすごくうれしいんですよね。ゆくゆくはいろんなミュージシャンの方との化学反応のような、別の伝え方にもトライしたい気持ちがあります。……あと質問の「もっと先のイメージ」として描いているものがもうひとつあって。本当に大きな野望なんですけど、音楽の教科書に載りたいんです。

──素敵ですね。

友成空:いやあ、ほんと“未来”というよりは、ふたつとも“遠い理想”って感じなんですけど。

──とんでもないです。友成さんは毎日のように何十年後の自分へお手紙を送り続けているんでしょうね。だから昨日の僕と明日の僕をつなぐ「未来電話」という曲も生まれたんだろうなとも思いました。では2025年はどんな年にしたいですか?

友成空:2025年は“友成空ブレイクイヤー”だと思っていますね。アーティストとしてブレイクするのもありますけど、今までの自分を崩していくこともしてみたいなと思っていて。ひとつのところにとどまらずに音楽をやりたいんです。


──友成さんは活動初期からずっと、様々なサウンドアプローチをしていらっしゃいますものね。「鬼ノ宴」がリリースされたときはまたさらに作風を広げたと思いましたし、12月27日にリリースされる「ACTOR」もまったく切り口が異なりますし、SNS上にアップされているショートバージョンの新曲も非常に多彩です。

友成空:泳ぐように曲作りをしているので、いろんなふうに作っていけたら、パフォーマンスしていけたらと思っています。聴いてくれる方によっては「こういう曲を求めてるのに」と思うことはあるかもしれないし、そういう人を置いてくつもりはないけれど、でも自分の海は絶対に広げていきたくて。これからもそういう気持ちで曲は作っていくつもりです。

取材・文◎沖さやこ

ショートドラマシリーズ『シゴトはもっと楽しめる。』

WEBショートドラマ『ワンチーム、ワンホーム』
監督:チェンコ塚越
脚本:柄シャツ男
出演者:中村獅童、兒玉遥、砂川脩弥、柄シャツ男、芝崎 昇、ブンシリ
主題歌:友成空「未来電話」
特設サイト:https://www.asics.com/jp/ja-jp/mk/working/brand-movie2

アシックスジャパン ワーキング公式サイト:https://www.asics.com/jp/ja-jp/mk/working
アシックスジャパン公式Instagram:https://www.instagram.com/asics_working
アシックスジャパン 公式YouTube チャンネル:https://www.youtube.com/user/ASICSJAPANMOVIE

友成空 2nd ONEMAN LIVE<空感 kū-kan>

2025年1月5日(日)東京・duo MUSIC EXCHANGE
開場 18:00 / 開演 18:30

チケット:プレリザーブ3次抽選先行
先行期間:11月19日(火)18:00~11月25日(火)23:00
受付URL:https://w.pia.jp/t/tomonarisora/
※1人様4枚まで
※電子チケット/紙チケット選択可能

「ACTOR」

2024年11月27日 Digital Release

Apple Music Pre-add / Spotify Pre-save (配信予約):https://tomonarisora.lnk.to/actor
Lyric:https://www.uta-net.com/song/363619/
TikTok:https://vt.tiktok.com/ZSjfFvq7X/

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