【ライブレポート】Official髭男dism、1年半ぶりのワンマンで完全復活「1回転べば強くなる」

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Official髭男dismは正真正銘のライブバンドであると再確認したステージだった。藤原聡(Vo, Pf)の声帯ポリープ発症により1年5ヶ月ぶりのライブとなったファンクラブ公演<Official髭男dism one-man live 2024 -UNOFFICIAL->は、バンドとファンの「待ちわびた」という思いが美しく混ざり合う時間となった。

◆ライブ写真

開演前の注意喚起アナウンスが「長い間ライブの開催を待ってくださり、チーム一同心より感謝しております」など粋な台詞を挟むと、テンションが高まる観客たちはBGMのMy Chemical Romance「Welcome To The Black Parade」に乗せてクラップを鳴らす。同曲が止まると同時に暗転し、メンバーとサポートメンバーの計11人がステージに登場。藤原による1フレーズのピアノ弾き語りにメンバーが音を重ね、「ミックスナッツ」で幕を開けた。

パーカッション、キーボード、ギター、ホーンセクションが加わる演奏はダイナミックであり、ライブハウスで聴くにははちきれんばかりにゴージャスだ。ドラムカウントから「ノーダウト」につなぎ、藤原の「1年半ぶりのワンマンライブであり4年ぶりの声出しライブ!  楽しんでいこうぜ!」という熱い言葉に促されるようにフロアからはシンガロングが起きる。「ホワイトノイズ」も地に足のついた堂々とした演奏とのびのびとしたメロディ、いまこの瞬間に湧き上がる高揚感と歌詞のメッセージを真摯に届けるボーカルが会場を包み込んだ。なかでもラストに藤原が晴れやかな表情でハイトーンを響かせた姿は、彼の完全復活を強く印象付けた象徴的シーンと言っていいだろう。


3曲歌い終えた藤原は、アリーナツアーまでライブが待ちきれないという理由からスタッフに無茶を言いこの公演が実現した旨を語る。そして「こんなに(観客の歓声や熱気が)ヤバいとは思わんけん、舞い上がってしまっていて……。緊張とかもあったんだけど、俺たちの人生が帰ってきたー!って感じ!」「今日は伝え漏れのないように、1曲1曲しっかり届けていく」と喜びと決意をあらわにした。

楢﨑誠(B, Sax)が作詞作曲を担当したあたたかいグルーヴが生まれる「Choral A」、松浦匡希(Dr)が藤原と共作した爽快感と力強さを併せ持つ「フィラメント」の後、ステージはメンバー4人のみになり「日常」で内省的なムードに引き込む。メランコリックでありながらもぬくもりを感じさせる音は、観客を解き放つような浮遊感に満ちていた。Official髭男dismは元来、人間の感情や物語の本質の解像度が高い楽曲を作り続けているが、その手腕は上がり続けている。なかでも仄暗さとポップネスを併せ持つ「日常」は冴えたるもので、この日の歌と演奏は夏の青空に佇む大きな雲のように、心に陰や疲れを抱えている人とも、健やかな気持ちに包まれている人とも調和しているように感じられた。「聴き手に寄り添う音楽」とはよく言うが、彼らの楽曲はそこからさらに一歩深く切り込む、誤魔化さない勇敢な優しさがある。だからこそ我々聴き手は安心してその音の渦に飛び込むことができるのだろう。


小笹大輔(G)が作詞作曲した「Rowan」で甘美かつ切ない空気に染めると、「たかがアイラブユー」では朗らかな演奏で揺らし、ドラマチックなバンドインストを挟んでハードロックナンバー「FIRE GROUND」へ。藤原がLEDを仕込んだショルダーキーボードで大胆なパフォーマンスを見せたり、藤原、小笹、楢﨑、サポートメンバーの宮田'レフティ'リョウ(G, Key)の4人が横並びでヘビメタライクなモーションでプレイするなど、持ち前のロックキッズスピリットをのびのびと解放した。

「Laughter」で盛大に前半セクションのクライマックスを飾ると、小笹が「俺の知っているヒゲダンのお客さんよりもパワーアップしてみんなが戻ってきた」「めっちゃ待っててくれたんだなと伝わってきた」と喜びを伝える。その後は楢﨑が観客に向けてユニークな声出しの練習を始め、そこから鮮やかに「ESCAPADE」につなげた。ポジティブなムードは絶えることなく、藤原が「俺たちと言えばこの曲歌わなきゃだめだろ!」と叫びピアノで「Stand By You」のイントロをプレイする。軽やかで躍動感のあるクラップとシンガロングがステージと客席の垣根を越え、この日いちばんと言っていいほどの幸福感と純度が湧き上がった。まさに「未来がハイになる 君と歌になる」という歌詞を体現する瞬間だった。その後の「I LOVE...」も観客の歌声が入ることでスケールが増し、曲の本来のあるべき姿としてその場に立ちのぼっていた。


藤原は1年5ヶ月ぶりのライブで歌唱することについて、ユーモラスな語り口で「(喉の調子がいいのか、喉が無事なのかどうか)よくわかりません。楽しすぎて自分の身体を冷静に見られません」と観客を笑わせる。そして2023年2月の日本武道館公演で声が出なくなったことを振り返り「待ってくれている君たちがいるなら何がなんでも治すという気持ちでここまでやってきました」と告げると、「1回転べば強くなることを学びました。至らないことがあったらそれを悔しさに変えてもっと成長してやろう、もっといいライブをみんなに観てもらおうと、心の整理ができました」「本当に自分の心が“ステージ”という場所に向かっていることをあらためて実感しました。“なんで俺はステージで歌えないんだろう?”という思いが今日のライブに全部乗っかってます」など前のめりな様子で自身の気持ちを丁寧に明解に言葉にした。

「締めくくりが来る寂しさも乗せて、最後の曲を演奏します」と彼が言うと「ラストソング」へ。バンドメンバー一人ひとりが藤原の言葉に思いを重ねるように演奏し、藤原も歌詞の一言一句を噛み締めるように歌う。さらに「アルバムの中でもトップクラスの爆発力のある楽曲を最後にやって帰ります。みんなに会えなくて悔しい思いをしているときに書いた曲であり、映画のエンドロールで流れた曲です。だけど今日はこの曲を君たちと鳴らして、俺たちの未来のオープニングテーマにさせてくれませんか!?」と呼び掛けて本編ラストに届けた「SOULSOUP」は、迸る情熱が隅々まで輝かしい。これまでの苦しみを前に進むエネルギーへと変換するだけでなく、観客から向けられたエネルギーもすべて味方にした彼らは、さながら少年漫画の主人公だった。


「Anarchy」でアンコールをスタートさせた後、松浦は「ほんと帰ってきたな……って感じがします。最高だぜ!」と率直な気持ちを吐露し、小笹は「よりギアを上げて、こんなもんじゃないライブをどんどんやっていく」と意欲を見せる。5日前から緊張していたという藤原はこの日の充実を噛み締め、「みんなもこの先の人生で肩の力を抜きたいと思ったタイミングで、またこういうふうに出会えたらと思っています」「ちゃんと皆さんのところへ音楽を届けていけるバンド人生を歩んでいきたいと思います。こうやって戻ってこれたのは皆さんのおかげです」と頭を下げた。ラストの「TATTOO」は歌詞がこの日のバンドとファンを映し出しているようにも感じられ、より深く染み入った。

最後にメンバーがステージ前に集まると、観客の歓声を一挙に浴びた松浦は「ほんと声出しっていいね! 最高でした!」、楢﨑は「アリーナツアーのリハしてるんだけど、正直めっちゃかっこいいです。楽しみにしててくれ!」、小笹は「このライブが終わって、100%の気持ちで『Rejoice』ツアーに向かっていけるのでみんなついてきてください」と告げ、藤原は最後にこの日何度も口にしていた「生きてて良かった!」という言葉をこの日いちばんの声の大きさと熱量で伝えた。


1年5ヶ月ぶりのライブに充実感と歓喜と驚き、一抹の緊張感を抱える4人の姿には、そこはかとなくバンドを始めた当初の頃のような初々しさもあった。豊かな感受性と想像力を持つ彼らならば、立ち止まったからこそ見えたものはこの日表現したこと以上に山ほどあるはずだ。まだまだOfficial髭男dismは大きく、深みを増したバンドになる。そう確信する、祝祭感溢れる復活劇だった。

取材・文◎沖さやこ
写真◎TAKAHIRO TAKINAMI

メジャー3rdアルバム『Rejoice』

2024年7月24日(水)配信リリース
配信URL:https://HGDN.lnk.to/Rejoice

2024年7月31日(水)CDリリース
予約:https://hgdn.lnk.to/Rejoice_CD

・CD+Blu-ray(PCCA-06302/税込5,720円)
・CD+DVD(PCCA-06303/税込5,720円)
・CD only(PCCA-06304/税込3,520円)

収録内容
[CD]
01.Finder
02.Get Back To 人生
03.ミックスナッツ(TVアニメ『SPY×FAMILY』オープニング主題歌)
04.SOULSOUP(『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』主題歌)
05.キャッチボール
06.日常(日本テレビ「news zero」テーマソング)
07.I’m home(interlude)
08.Sharon(カンテレ・フジテレビ系月10ドラマ『マウンテンドクター』主題歌)
09.濁点
10.Subtitle(フジテレビ系木曜劇場 『silent』主題歌)
11.Anarchy (Rejoice ver.) (映画『コンフィデンスマンJP 英雄編』主題歌)
12.ホワイトノイズ(TVアニメ『東京リベンジャーズ 聖夜決戦編』オープニング主題歌)
13.うらみつらみきわみ
14.Chessboard(第90回NHK全国学校音楽コンクール中学校の部課題曲)
15.TATTOO(TBS系金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』主題歌)
16.B-Side Blues(キリン 午後の紅茶 CMソング)

[Blu-ray,DVD]
OFFICIAL HIGE DANDISM SHOCKING NUTS TOUR selected from NIPPON BUDOKAN
01.Pretender
02.I LOVE...
03.Tell Me Baby
04.Choral A
05.Subtitle
06.parade
07.115万キロのフィルム
08.異端なスター
09.宿命
10.ミックスナッツ
11.Universe
12.Clap Clap
13.破顔
14.ホワイトノイズ
Behind The Scenes from OFFICIAL HIGE DANDISM SHOCKING NUTS TOUR

【販売店舗別オリジナル特典】
Amazon.co.jp:巾着
タワーレコードおよびTOWER mini全店、タワーレコードオンライン:クリアマルチポーチ
全国HMV/HMV&BOOKS online:缶マグネット
セブンネットショッピング:トートバッグ
楽天ブックス:アクセサリートレイ ※オリジナル配送パックでお届け
その他法人:A4クリアファイル

Official髭男dism 旧譜キャンペーン


キャンペーン期間
2024年7月30日(火)より開始〜特典なくなり次第終了いたします。

特典
Official髭男dism オリジナルチケットクリアファイル
期間中に対象店舗にて対象商品ご購入1点につき、特典1点をお渡しいたします。

対象商品
・ラブとピースは君の中(LACD-0251)
・MAN IN THE MIRROR(LACD-0276)
・What’s Going On?(LASCD-0075)
・レポート(LACD-0285)
・エスカパレード(LACD-0293)
・Stand By You EP【通常盤】(PCCA-04717)
・Pretender【通常盤】(PCCA-04785)
・Traveler
[CD+Blu-ray] PCCA-04820 / [CD+DVD] PCCA-04821 / [CD only] PCCA-04822
・Official髭男dism one-man tour 2019@2019.07.08日本武道館
[Blu-ray] PCXP-50739 / [DVD] PCBP-53284 / [CD only] PCCA-04896
・HELLO EP
[CD+DVD] PCCA-04960 / [CD only] PCCA-04961
・Universe
[CD+Blu-ray] PCCA-06010 / [CD+DVD] PCCA-06011
・Editorial
[CD+Blu-ray] PCCA-06055 / [CD+DVD] PCCA-06056 / [CD only] PCCA-06057
・ミックスナッツEP
[CD+Blu-ray] PCCA-06136 / [CD+DVD] PCCA-06137 / [CD only] PCCA-06138
・one-man tour 2021-2022 -Editorial-@さいたまスーパーアリーナ
[CD+Blu-ray] PCXP-50907 / [CD+DVD] PCBP-55590 / [CD only] PCCA-06160
・Chessboard / 日常
[CD+Blu-ray] PCCA-06224 / [CD+DVD] PCCA-06225 / [CD only] PCCA-70563

キャンペーン対象店舗
https://www.ponycanyon.co.jp/info/54

<Official髭男dism Arena Tour 2024 - Rejoice ->

2024年
9月20日(金)マリンメッセ福岡A館
9月21日(土)マリンメッセ福岡A館
9月28日(土)大阪城ホール
9月29日(日)大阪城ホール
10月18日(金)ポートメッセなごや第1展示館
10月19日(土)ポートメッセなごや第1展示館
11月12日(火)Kアリーナ横浜
11月13日(水)Kアリーナ横浜
11月19日(火)真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
11月20日(水)真駒内セキスイハイムアイスアリーナ

券種/料金
指定席:11,000円(税込)
指定親子席:大人11,000円(税込)・こども5,500円(税込)

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