【インタビュー】10-FEET、シングル「helm'N bass」完成「何万字の意味を込めたひと言が誰一人に伝わらなかったとしても、僕は思いを込めて作る」
10-FEETが7月3日、アルバム『コリンズ』以来約1年半ぶりのCDをリリースした。シングル収録は全3曲。3x3バスケットボールリーグ『3x3.EXE PREMIER』応援ソングにしてリード曲「helm'N bass」、『2024 ABCプロ野球テーマソング』の「gg燦然」、TVドラマ『フェルマーの料理』主題歌の「Re方程式」といった全タイアップ付きの3曲は、10-FEETらしいミクスチャーロックに貫かれている。
◆10-FEET 画像 / 動画
イントロとアウトロ部分に大胆なレゲエアレンジを組み込んだ「helm'N bass」は、艷やかなメロディーラインを中核とした8ビートアレンジが10-FEETの新たな一面を垣間見せた。シーケンスとラップが性急に激走するデジロックと、それと対を成すように大きなメロディが印象的な「gg燦然」、“料理”と“数学”をかけ合わせた『フェルマーの料理』の物語よろしく、デジタルとトリオバンドならではのスリルが見事に混ざり合った「Re方程式」など、三曲三様の楽曲に彼らの変わることのないスタイルと新たな展開が感じられる仕上がりだ。
屋内公演としては自身最大規模となるアリーナワンマンライブ<10-FEET ONE-MAN LIVE 2024 〜急なワンマンごめんな祭〜>を大盛況のうちに終え、自身主催<京都大作戦2024 〜翔んで騒いで万々祭゛〜>を間近に控える3人に、シングル「helm’N bass」についてじっくりと話を訊いた。
▲シングル「helm'N bass」
◆ ◆ ◆
■まず僕らが今どんな曲を書きたいのか
■そういうことを確認してから始めてます
──21枚目となるシングル「helm'N bass」が7月3日にリリースされました。まずジャケット写真は様々なものがコラージュされたデザインで、見ている側のイマジネーションを刺激されるんです。10-FEETのメンバー3人から具体的なアイデアなどをデザイナーさんに投げたんですか?
TAKUMA:投げてないんですけど、なんか受け止めはってくれたんじゃないですかね。
──収録される3曲を聴いて?
TAKUMA:はい。曲からメッセージとかを受け止めて。現代アートみたいなデザインですよね。
──美しいのか、カオスなのか、細部まで見るといろいろ考えさせられます。受け止める人によって、その人それぞれの意味を感じると思うんです。
KOUICHI:最初に仕上がってきたジャケットを見たとき、俺は単純にカッコええなと思いましたね。「helm'N bass」の歌詞にも出てくる“kami飛行機”も入っていてね。
NAOKI:俺も最初にパッと見た感じ、このジャケットはすごくロックやなと思って。そういうカッコ良さを感じましたね。素直に、むちゃくちゃいいなって。
TAKUMA:いまだに眺めてしまうというか。このアートはどっから持ってきたんやろうとか、ジャケットを作ってくれたデザイナーさんに取材したくなりますよ(笑)。そういう機会があったら話を聞いてみようと思ってます。例えば、左上側の瞳はどういう意味合いなんだろうかとか。左下側の天使とか、なにをイメージしてくれたんやろうとか。KOUICHIも言ってたけど、紙飛行機があったり。曲を聴いて歌詞を見て、いろいろ受け止めながらデザインを考えてくれたんやろうなってすぐに分かるし。曲を受けて描いてくれはったんやろうな、という感じがいいなと思って。
──ライブにおけるコール&レスポンスのような、感情や気持ちのやり取りが?
TAKUMA:はい。
──曲の真意を理解しつつ、ジャケットのデザインで返すという。アーティスト同士のコール&レスポンスですよね。
TAKUMA:ですね。
──今回のシングル「helm'N bass」は3曲入りです。昨年配信リリースした「Re方程式」は2023年10月にマスタリングをしていて、「gg燦然」は2024年3月、「helm'N bass」は2024年5月にマスタリングしています。「Re方程式」はドラマ『フェルマーの料理』の主題歌にもなりました。これまでアニメやドラマのテーマソングの場合、TAKUMAさんは原作をしっかり読み込んでからソングライティングしてきましたよね。
TAKUMA:そうですね。ただ、コミック『フェルマーの料理』は事前に全てを網羅して内容を知っていたわけじゃないので、後追いでしたけど。『フェルマーの料理』の作者さん(小林有吾)は、コミック『アオアシ』なども書いている方で、好きな作家さんだったんです。『アオアシ』をけっこう深めに読んでいたから、作品が変わっても、作家さんの人柄や人間味が出ているなと思いましたね。
──コミック『フェルマーの料理』は、数学と料理を融合させて、料理の真理を拓くストーリーやテーマを持つ作品ですよね。この「Re方程式」では、料理に関するワードも出てきますが、料理に限らず、創作する人たちの苦悩やもがきが入っていると感じました。
TAKUMA:タイアップやテーマソングの依頼をもらったとき、その作品のテーマをもとに作り始めるときもあるんです。だけど最近は着手するときに、一旦テーマとかを意識せず、今の俺ら、今の10-FEETってどんな感じやろみたいな感じで、音楽作りはそういうふうにフリーな感じで着手してから、その作品に向かっていったほうがいいんやなって、最近は思うんです。
──最初の段階から、アニメや映画のテーマにあまり捕らわれすぎないように?
TAKUMA:まず僕らが、今一番どんな曲を書きたいのか、どういう曲を書けるのかとか、そういうことを感じたり確認してから始めてます。次にアニメのテーマとか、そういうものを後から要素として入れていくほうが、タイアップやコラボの相手が求めているものに、より近づけるんじゃないかなって。
──つまり、今の10-FEETを俯瞰するところから?
TAKUMA:そうです。今ある音楽ネタや曲のアイデアの中から、どれが一番今回のテーマに合っているかではなくて、俺らが一番いい感じで表現できそうなやつという視点で選びました。で、そこから歌詞であったり、「Re方程式」というタイトルであったりとか、要素としてプラスしていった感じです。
──TAKUMAさんは、歌詞と曲でいったら、まず曲が先に浮かぶことが多いわけですよね。
TAKUMA:多いです。同時に出ることもたまにありますけど。「Re方程式」は曲が先行しました。
KOUICHI:そこからみんなで、構成をああしようこうしようっていう。
──イントロの感じが、作品のワンシーンを強烈に想起させるんですよ。主人公の北田 岳が、料理作りと格闘しているとき、レシピが数学のごとく、数式のごとく頭の中を駆け巡っていくシーンなんですが。
KOUICHI:そのシーンにイントロがハマってる感じですか? 曲の元ネタ段階から、この始まりのパターンやったっけ?
NAOKI:いや。後からイントロのパターンを足した気がする。最初は普通にカウントで8ビートで始まってて。そこに、なにかイントロというか、頭の部分を作ったほうがいいんじゃないかって。
KOUICHI:バンドアレンジで大きく変わったのは、その部分ぐらいかな。
TAKUMA:うん。積み重なっていったアレンジはあるけどね。
──プレイやサウンドのアプローチ的に、あまりひねくれたことをせず、ストレートに正々堂々とやっているのが、この曲のカッコ良さだと思いました。意識的にやったアレンジもありますか?
TAKUMA:音楽的にそんなに意識したことはなかった気がするんですけど、敢えてやったことといえば、作品の内容に合わせて数学とか幾何学を感じれられるような音色も少しはあったらいいんじゃないかなっていうのを、だいぶ最後のほうの段階で。そういう作業をしていたとき、現場にいたスタッフの誰かが「ゲーム音ぽい」みたいなことを言ったんですよ。「ゲーム音ぽい」というのは、まさに数学を感じられる音を出そうとしていたからだ、と今は思っていて。
──なるほど。
TAKUMA:でも、タイアップやテーマのことを知らん人が聴いたら、そう聴こえるんやなと。タイアップ曲でありつつ、10-FEETの曲でもあるわけやから、そこでさらに、もう一回アレンジを加えたんです。そういうことを理由にジャッジしたことも、いい経験だったな。とはいえ、ひとつかふたつの音色だけの話なんですけどね。イントロ部分に関しては制作の後半に作って、音色決めはもっと後でしたから。ドラマのテーマとか、どういう場面で流れるかっていうこともイメージしながら、遊び心を持って作りました。それがドラマのシーンともうまくはまっていたと思うんで、良かったですね。
──タイアップやテーマソングを作るときって、新たな視点や視野が制作過程で芽生えたり、刺激になるんですね。
TAKUMA:刺激と経験になりますね。普段の僕らはそういう形でテーマを持ってこないですから。“数学と料理が合わさったテーマで曲を作ってみましょう”とか絶対にならない(笑)。そういう意味では、いい経験になってると思いますね。
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