【ライブレポート】蒼井翔太、求める声と応える声が“DETONATOR”に
2月25日。外は生憎の雨模様だったが、TOKYO DOME CITY HALLは第3バルコニーまでぎっしりに埋まっている。この日は<蒼井翔太 LIVE 2024 WONDER lab. DETONATOR>の東京公演だ。
◆ライブ写真
2023年11月にリリースした約6年ぶりとなるアルバム『DETONATOR』を引っ提げ、大阪・愛知を回ってきたツアーも、いよいよファイナルを迎える。ステージにはバンドセットと階段、そして映像を流す細長いモニターがあるくらいで、華やかというよりはシンプルで、どこか無骨な印象さえ受ける。
会場の空気が期待で膨らんでいく中、バンドメンバーが次々とステージに登場し、少しずつサウンドが厚みを増していく。そして最後に蒼井が登場。「Freestyle Lover」で、会場の空気は一気に弾ける。ペイントされたデニムのセットアップに身を包み、ロックなナンバーを歌い上げ、流れるように「Eclipse」へ。オーディエンスも待っていたとばかりに声を上げ、さらには曲中のリップ音で悲鳴が起きる。
きっと、数年前のライブではさして珍しくない光景だったのだろう。しかしオーディエンスは、この数年間、声を奪われていた。5年ぶりに解禁された声出しで、ようやく想いをダイレクトに届けられるようになったのだ。
「イノセント」ではそんなオーディエンスとさらにコミュニケーションをとるかのように、ステージの端から端までをめいっぱい使い、パフォーマンスを繰り広げる。
TOKYO DOME CITY HALLのステージに立つのは2015年の<2nd LIVE UNLIMITED>以来とのこと。「そこから9年くらい経って、全然また違った景色に見えますよ。楽しみながら、落ち着いて、皆さんを見ながら歌える気がしています」と笑う蒼井。「久しぶりの声出しライブですし、拍手もしたいでしょ? その暇がないかもしれないくらいハイスピードで進んでいくので、お互いに持ってきた気持ちをぶつけ合いながら、確かめ合いながら大切に過ごしていきましょう」と言う。そしてハンズクラップの中で始まった「Existence」、続く「SMILE SMILE SMILE」ではダンサーが登場し、会場のボルテージは加速していく。
アコースティックギターのイントロでそれまでの雰囲気がガラッと変わり「Key to My Heart」へ。ステージライトが蒼井に集まり、まるで星の中で歌っているかのようだ。
バンドメンバー紹介の後は、白のシャツに黒のタイとハーフパンツ、さらにはソックスガーターというパンキッシュなスタイルで登場し、「BAD END」を披露。「PSYCHO:LOGY」ではその歌唱スキルをフル稼働させて歌い上げる。そして「硝子のくつ」から、「Harmony」へと続き、「Tone」ではキュートなダンスで魅了する。
曲が終わると、チャイムが鳴り響き、ダンサーたちが机と椅子を持って登場。蒼井は「遅い! 遅刻ですよ! 先生は待ちました!」と言い、学園コントさながらのMCコーナーに突入し、2年25組の“最終授業”が始まった。この日はダンサーのTAKAMASAと、キーボードでバンマスの堀倉彰が、蒼井の印象や、アルバムタイトルにちなんだ「爆発的にテンションが上がること」を答え、さらには最終日ということで、ダンサーのリーダー・KOTAも回答。チームの関係性が垣間見えるようなアットホームな雰囲気が微笑ましい。
リラックスモードのまま、「Alright」へ。机と椅子を使ったミュージカル風の振り付けや、バトンを使ったダンスを披露。大阪と愛知公演では惜しくも失敗してしまったというバトントスも、この日は見事に成功した。
ダンサー紹介のあとは、Y2Kテイストのサイバーな衣装にチェンジ。「J-E-A-L-O-U-S」では事前のレクチャー動画にもあったコール&レスポンスが完璧に決まる。そして、初期の代表的なナンバーである「Virginal」「絶世スターゲイト」と続く。
MCでは、1ヶ月ほどバトンの練習したことを明かし、再びバトントスにチャレンジ。難なくバトンをキャッチして、会場を沸かせた。
そして、2023年は新しい出会いがたくさんあった年だったと振り返る。その出会いのひとつ、女王蜂のアヴちゃんが手がけた「8th HEAVEN」をハスキーなボーカルでドラマティックに歌い上げる。そして「知ってるところは一緒に歌ってー!」と「glitter wish」へ。蒼井の声に続きオーディエンスも歌う。多幸感で満たされているうちに、ライブ本編は残すところ1曲となってしまった。
「今日が終わったら、また明日から僕は日常に戻っていきます。そして皆さんも。でも、忘れないで。僕はここにいて、みんながここにいる。そのことを忘れなければ、みんなまた会えるんじゃないかな」と語りかけ、祈るように言葉を続ける。
「──また、会えますように」
本編ラストナンバーは「巡」。しかし、歌い出したかと思った刹那、声が止まってしまった。歌声が聞こえないまま、背にあるモニターには歌詞だけが紡がれていく。何が起きたのか戸惑ったが、次に発した声で理解した。蒼井は泣いていたのだ。とはいえ、歌が止まったのはほんの一瞬。その後は、丁寧に言葉を届けるように歌い切り、本編は終了した。
アンコールは、ライブTシャツに着替えて登場。「Shake Shake! Together!」で、会場は再び熱狂の渦に包まれる。「ずっと…」ではオーディエンスと共に歌い、蒼井とファンがこれまでに築いてきた“絆”のようなものを強く感じさせた。
MCでは本編ラストの「巡」で泣いてしまったことに触れ、「まさか、いままで笑顔で歌った曲で涙するとは思わなかった。笑顔でみなさんと次に会うための約束をしようと思ってたんですけどね……ここまでの思い出が一気に波のように押し寄せてきて。皆さんに会えてとても幸せだなって感じています」と、率直な気持ちを伝える。さらには3月29日に新曲「EVOLVE」がデジタルシングルとして配信リリースされることも発表された。
「次の曲に行きたくないな〜。ここにみんなで泊まる?(笑)」と冗談も交えつつ、「めちゃくちゃにブチ上がる曲です」と言って始まった「give me ♡ me」では、残っているすべてのエネルギーをぶつけ合うようなコール&レスポンスで会場が一つになる。「皆さんの渾身のコールが、体全身に響き渡りました! ありがとうございます!」そう言ってステージを後にするが、なおも求める声は止まらない。そして応えるように再び登場。
「今回のライブは楽しくて楽しくて。久しぶりにバンド編成でお送りして、日によっては自分の中でもペース配分がおかしくなるんじゃないかってくらい、全てを出し切るつもりで今回のツアーに臨ませてもらいましたが……もうちょっといたいよね、ここに」と蒼井が語りかけると客席から声が上がる。
「みんなの声で、またライブが繋がっていくと思うんで。願ってて! 皆さんが願えば、きっと夢は消えないし、実現すると思います。じゃあ……本当に盛り上がる曲を歌いたいと思います。準備はいいですか。聞いてください。新曲「EVOLVE」」。ライブ初歌唱とは思えないほどオーディエンスのコールも完璧で、新たなライブアンセムとなる予感がしたこの「EVOLVE」で、ライブ、そして<蒼井翔太 LIVE 2024 WONDER lab. DETONATOR>の幕が閉じた。
そこには声があった。求める声と、応える声と。
ずっと溜め込んできた互いの想いが声として伝わり、それがDETONATOR=起爆装置となって、まさに“爆発”した──そんな夜だった。
取材・文◎加賀谷優子
ライブ写真◎上飯坂一、高田真紀子
セットリスト
1. Freestyle Lover
2. Eclipse
3. 零 (東京公演1日目)
イノセント (東京公演2日目)
MC
4. Existence
5. SMILE SMILE SMILE
6. Key to My Heart
バンド紹介コーナー
7. BAD END
8. PSYCHO:LOGY
9. Fake of Fake (東京公演1日目)
硝子のくつ (東京公演2日目)
10. Harmony
11. Tone
MC
12. Alright
ダンサー紹介コーナー
13. J-E-A-L-O-U-S
14. UNLIMITED (東京公演1日目)
Virginal (東京公演2日目)
15. 絶世スターゲイト
MC
16. 8th HEAVEN
17. glitter wish
MC
18. 巡
【ENCORE】
19. Baby Steady Go!! (東京公演1日目)
Shake Shake! Together! (東京公演2日目)
20. ずっと…
MC
21. give me ♡ me
【W ENCORE】
22. EVOLVE (東京公演2日目のみ)
Digital Single「EVOLVE」
配信日:2024年3月29日(金)
作詞・作曲:綿貫直行/編曲:綿貫直行、佐藤厚仁
TVアニメ『出来損ないと呼ばれた元英雄は、実家から追放されたので好き勝手に生きることにした』OP主題歌
ファンクラブイベント情報
日程:2024年6月29日(土)
会場:東京・八王子 J-COMホール
※昼夜2回公演
ツアーファイナル東京公演配信
<蒼井翔太 LIVE 2024 WONDER lab. DETONATOR>
放送日時:2024年3月31日(日)20:00~
番組詳細:https://bit.ly/49k7WDq
はTVアニメ『出来損ないと呼ばれた元英雄は、実家から追放されたので好き勝手に生きることにした』
2024年4月からテレ東・BSテレ東ほかにてTVアニメ放送開始
U-NEXT・アニメ放題で最速配信!他サービスでも順次配信
【スタッフ】
原作:紅月シン『出来損ないと呼ばれた元英雄は、実家から追放されたので好き勝手に生きることにした』(TOブックス刊)
原作イラスト:ちょこ庵 漫画:烏間ル
監督:古賀一臣 シリーズ構成:池田臨太郎 脚本:大草芳樹
キャラクターデザイン・総作画監督:細田沙織 美術監督: 渡辺 紳 撮影監督: 武原健二 坂井慎太郎
色彩設計: のぼりはるこ 編集:大岩根力斗 音響監督:高桑 一 音響効果:和田俊也(スワラ・プロ)
音響制作:TOブックス 音楽:羽岡 佳 音楽制作:キングレコード
オープニング主題歌:蒼井翔太「EVOLVE」
アニメーション制作:スタジオディーン×マーヴィージャック
【キャスト】
アレン:蒼井翔太 リーズ:栗坂南美 アンリエット:鬼頭明里 ノエル:雨宮 天
【イントロダクション】
「ようやく探しに行くことができる。前世から待ち望んだ平穏な暮らしを。」
神の恩恵『ギフト』を得られず、出来損ないと呼ばれた少年・アレン。
しかし、彼の正体は――前世の記憶と力を持つ元英雄だった!?
実家である公爵家から追放されたのをいいことに、自由気ままな旅を始めようとするアレンだったが、
元婚約者の暗殺未遂に遭遇することになり……!?
今世こそのんびりしたい元英雄の、望まぬヒロイック・ファンタジー開幕!
公式HP:https://dekisoko-anime.com/
公式X:@dekisoko_pr
(C)紅月シン・TOブックス/出来そこ製作委員会
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