【ライブレポート】オレンジスパイニクラブ、「一番大きな愛をあげたいなと思います」
2023年9月にリリースしたセカンドフルアルバム『Crop』を携え全国を巡ってきたオレンジスパイニクラブのツアー<2nd Full Album 「Crop」Release ONEMAN TOUR 2023 -見えないものに愛を->のファイナル公演が12月9日、東京・Zepp Shinjukuで行われた。ここでは、イベントのオフィシャルレポートをお届けする。
◆ライブ画像
2022年のツアーでも好評だった企画の再来となる『オレスパのちょこラジライブ』(お客さんから寄せられた悩みにメンバー4人が応えていくラジオ番組風トーク)を前説がわりに、スズキユウスケ(Vo, G)、スズキナオト(G, Cho)、ゆっきー(B, Cho)、ゆりと(Dr)がステージ上に置かれたドア(それ以外にもソファや電気スタンドなど、部屋を模したセットが作られていた)を通って登場すると、満員のフロアから大きな歓声が送られる。そしてユウスケの「ようこそ!」という絶叫を皮切りに、アルバムのタイトル曲「Crop」からライブは始まっていった。軽快なアレンジが鮮やかに広がり、その上でユウスケはリッケンバッカーをかき鳴らし力いっぱい歌う。優しくて熱くて切ない、これぞオレンジスパイニクラブという幕開けに、Zepp Shinjukuはいきなり最高潮だ。
3曲目「タイムトラベルメロン」を終え、「今日は朝起きたときから爽やかな気持ちで……」と言いつつ、エレベーターで乗り合わせたおじさんに「行ってらっしゃい!」と声をかけられテンパって「わかりました!」と返事してしまったという微笑ましいエピソードを開陳するユウスケ。「今日はツアーの最後なんで、大いにカッコつけさせてください」というセリフもバッチリ噛んで場を和ませると、「no reason」へと突っ込んでいく。ツアーを回ってきてますますギュッと密度を増したようなアンサンブルがなんとも心地いい。どっしりとしたバンドの存在感があるから、情けなさとギラついた意思が交錯するこの曲の歌詞もなんだか希望に満ちて聞こえてくる。さらに前身バンド時代の「ノーバイブ」へ。「あなたたち全員の幸せを俺らが全部叶えてやるからよ!」というユウスケの言葉がZepp Shinjukuを揺らした。
その後、ゆりとのドラムソロから入った「洒落」、ソリッドなロックンロールチューン「東京の空」を経て、ここでゲストとしてアルバムにもアレンジャーとして参加したキーボーディスト、トオミヨウが登場。お客さんと一緒に「トオミさーん!」と呼び込まれた彼も加わった5人編成で、「理由」や「ハルによろしく」、さらに「タルパ」「まいでぃあ」といったライブの定番曲を生まれ変わらせていく。どの曲でも鍵盤が入ることで一気に楽曲の表情が豊かになり、オレスパの優しくて柔らかな側面を浮かび上がらせていく。それが極まったのが『THE FIRST TAKE』の再現となった「キンモクセイ」だった。5人で鳴らす豊かな音に、ユウスケの「ここにいる全員の声を聞きたいです!」という言葉に応じたオーディエンスのシンガロングが加わり、美しい光景を描き出す。「ピンクフラミンゴ」ではユウスケの動きに合わせてフロアでも手が揺れ、幸福な一体感が生まれた。
その後の「hug.」までトオミとともに全8曲を演奏すると、もうあっという間にライブは後半戦。「大事な人と気持ちを分け合っていってください」というメッセージとともに「パピコ」を届けると、ゆっきーのベースソロから直情的なパンクチューン「君のいる方へ」を投下。さらに「急ショック死寸前」のロックンロールが会場の熱を高めていく。「君のいる方へ」ではユウスケが、「急ショック死寸前」ではナオトが、それぞれ自分のギターを高く掲げてフロアを煽っていたのだが、その仕草があまりにもそっくりで、妙なところで「やっぱり兄弟なんだなあ」と納得してしまった。
そんな「急ショック死寸前」を終え、ユウスケが「まいったなあ、あと3曲です」というとお客さんから「えー」という声が漏れる。永遠に続きそうなほど長い「えー!」(ユウスケも「ギネスです」と称賛)を引き出して、ライブは終盤に突入していった。ユウスケとナオトのふたりにスポットライトが当たるなか痛快なハーモニーを響かせた「モザイク」、そして全員でジャンプして再び最高の一体感を生み出した「エブリディ・ロックンロール」を経て、本編ラストは「敏感少女」。最後にガツンとオーディエンスを射抜いて、ひとまずライブは終わりを迎えた。
その後はアンコール。ゆっきーが2024年3月1日に結成12周年記念のライブ<ザ・マイベスト20>(メンバーやスタッフが好きな曲を持ち寄って全20曲のセットリストが組まれる)を開催することを発表すると、再びトオミをステージに呼び込み「イージーゴーイング」を披露。そして最後は4人だけで「スリーカウント」。高速のビートに合わせてステージの上も下もこの日最後の大騒ぎ。すべてを出し切るような演奏を爆発させると、気持ちいい後味とともにオレスパはツアーファイナルの幕を下ろした。ユウスケはライブ中にツアーを振り返りつつ「いろんな人にいろんな愛をもらった。今日だけはみなさんにこのツアーで一番大きな愛をあげたいなと思います」と語っていた。トオミを交えてのスペシャルなパフォーマンスも、バンドのすべてを曝け出すようなセットリストも、まさにオレスパからファンに届けられた愛の形。その思いはひとりひとりにしっかり届き、とてもあたたかで心地よい空気となって、ライブが終わったあとも会場を包み込んでいた。
取材・文◎小川智宏
撮影◎冨田味我
スペースシャワーTV『オレンジスパイニクラブ LIVE SPECIAL -見えないものに愛を-』
https://tv.spaceshower.jp/p/00088049/
<ザ・マイベスト20>
開場:18:15/開演:19:00
オフィシャル先行
期間:2023年12月9日(土)20:30〜12月17日(日)23:59
https://w.pia.jp/t/orangespinycrab-themybest20/
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