【レポート】B'z、＜Treasure Land 2023＞開幕「ここに集まってくれている皆さんが一番ハードコアです」

2023年6月から9月にかけて開催される全国ツアー＜B'z LIVE-GYM Pleasure 2023 -STARS-＞を控え、その前哨戦として開催されるイベント＜B'z presents -Treasure Land 2023-＞が幕を開けた。

◆＜Treasure Land 2023＞ 画像 / 動画

3月10日(金)、11日(土)、12日(日)の3日間、会場は幕張メッセ国際展示場4・5・6・７ホールという大規模なものだ。



グッズやフードコート、フォトスポットなど、無料で入場できるお楽しみポイントも満載だが、やはり最大の山場は、特設大型ビジョンで鑑賞できる2本のライブ映像だ。イベント初日となった3月10日午前09:30、＜B'z LIVE-GYM Pleasure ’93 -JAP THE RIPPER-＞の上映一発目が開始となる直前に、松本孝弘と稲葉浩志が突然ミニステージに登壇、会場は炸裂するような歓声に包まれた。ステージで見るいつものふたりと異なる姿にも、ファンの興奮は隠せない。

「おはようございます。本日は＜B'z presents -Treasure Land 2023-＞にようこそいらっしゃいました」──稲葉浩志

当然のことながら、歓声とどよめきと拍手が止まらない。

「みなさん、ほんとに平日のこんな朝早くからご来場ありがとうございます。お元気でしょうか。我々にとって35周年を記念した初めてのイベントなんですけども…」──稲葉浩志

「金曜日の朝イチからこんなに集まって、みなさん大丈夫なんですか？」──松本孝弘

「金・土・日といろんな時間帯でやっていきますけども、この金曜平日の朝イチ…ここに集まってくれている皆さんが一番ハードコアです（笑）」──稲葉浩志


稲葉浩志に褒められて、来場者の歓声が速くもピークを迎えてしまった。その後もフレンドリーな空気のまま、事前に受け取ったファンからの質問に答えるというコーナーに突入した。「30年前のライブ、その開演前の自分にアドバイスするとしたら？」との問いには、「あの頃、バンドが随分と前のめりになっていたので、もうちょっとリラックスできたら良かったよね」(松本孝弘)、「(ステージ上の)段差に気をつけてと言いたい（笑）。今では考えられないような階段がありますからね」(稲葉浩志)と、すでに怖いものなど何もなかった無敵の破天荒なライブアクトを思わせる発言が飛び出してきた。

続いて、前日まで雨が降っていた渚園の天候を憂いて「あのとき、何か願掛けはしましたか？」という質問に対して、松本孝弘は、しっかり勝負パンツを決め込んでいたことを明かした。ちなみに当時はアニマル柄だったが、現在の勝負パンツはもう少し落ち着いた柄になっていると吐露し、拍手と笑いを誘う。ちなみに稲葉浩志は、実際に自宅でてるてる坊主を作っていたことを明かしており、どうやらそのおかげをもって当日の好天を呼び起こしたようだ。

3つ目の「全国各地でツアーを続けてきたふたりにとって、思い出に残っている場所は？」という質問には、松本孝弘は「渚園は想い出深い」と答えた。一回目(＜B'z LIVE-GYM Pleasure ’93 -JAP THE RIPPER-＞)は当日は好天になったものの、前日は雨のためにリハーサルが全部できず、二度目の渚園(2003年＜B’z LIVE-GYM The Final Pleasure “IT’S SHOWTIME!!”＞)はデビュー15周年に台風15号を呼び寄せ、開催が危ぶまれるものの、雨天強行により今もなお語り継がれる伝説のライブが繰り広げられることとなったものだ。激しい雨で足元もぬかるみ来場者の体温もじわじわと奪われる劣悪な環境だったが、「ビールを売りに来た出店の方が、急遽味噌汁を作ってくださって、それが一番売れたと聞いた」と、稲葉浩志が当時のエピソードを語ってくれた。

そんなトークで十分に温まった会場は、ふたりの開演宣言をもって、そのまま＜B'z LIVE-GYM Pleasure ’93 -JAP THE RIPPER-＞上演になだれ込んだ。


この映像は、1993年に渚園で行われたB'z初の野外ライブ＜B'z LIVE-GYM Pleasure '93 -JAP THE RIPPER-＞の様子を収めたフルバージョンだ。たとえ、このライブDVD作品を持っていたとしても、B'zファンを自認するのであれば、あるいはB'zのライブが好きなのであれば、この幕張メッセ3days＜B'z presents -Treasure Land 2023＞は観たほうがいい。

それは、映像作品には入りきれなかったフル映像だから、ではない。最大の魅力は、B'zのライブを愛してやまない、同じ気持ちを持った数千人と同じ場所で同じ時を過ごし、B'zライブの興奮と感動を分かち合えるという体験が、何よりかけがえのないものになるからだ。

映像は30年前に遡る。当然ながらここ30年の間に発表された楽曲は、そこに存在していない。だが、そこには紛れもなく今も変わらぬB'zがいる。年齢は30歳も若い。だが、何も変わらぬふたりがいる。そしてそこに映っている5万人のファンの様子も、今のファンと何も変わらない。

音楽は一瞬で時を超える。むしろ、デビューから5年間の歴史だけで作られたB'zの世界が、どれだけ完成度が高いものだったのかを改めて実感するものでもあるだろうし、長きB'zの歴史の中でもひときわ衣装の布面積の小ささが際立つライブアクトであったことも再確認できるだろう。そして、巨大なステージを走り回り、長いスロープを駆け上っても息を一切乱さない彼らのスタミナのモンスターぶりにも目をみはるに違いない。

多くのギターキッズに多大な影響を与えてきた松本孝弘だからこそ、その使用ギターに熱い視線を送るギター好きも少なくないだろう。YAMAHA MG-Mをメインギターに据えながらレスポールの使用頻度が徐々に増えてきた時期でもあり、ステージでもその様子が確認できる。衣装と合わせたゼブラ柄のMG-Mがメインだが、サウンドの要となっているのは1991年製のLes Paul Reissue Gold Top #1-5283だ。今のTak Matsumotoレスポール・サウンド確立の火付け役となった立役者である。コンサート最後には、キルトトップが眩しいGibson Custom Shop Edition Jimmy Wallace Les Paul(1991年製)も甘く艶やかなサウンドを聴かせているが、その後このギターは松本孝弘の手から離れたため、このギターのサウンドが聴けるのもこのステージが最後となるものだ。サウンドの要は、ロックマンのプリアンプとVHTのパワーアンプ2150が核となっているが、そのサウンドは、その後の5150～ボグナー～FATへとつながる、粒立ち細かくも豪快でファットなトーンへとシフトしていく貴重な過渡期サウンドが楽しめる。

見どころを上げれば枚挙にいとまがないが、勢いと若さに身を包み、彼らは走る、回る、跳ねる、踊る、そして叫ぶ。ワイルドさに溢れたB'zの野性味がここにある。最後に上がる豪快な花火も、そこから続く30年にわたる未曾有の活躍を予言し、そして今なお祝福しているようにも光り輝くのである。



取材・文◎烏丸哲也(JMN統括編集長)
撮影◎達川範一