【対談インタビュー】暁(アルルカン)× 逹瑯(MUCC)、「一番強い右ストレートを出すしかない」

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■アルルカンのメンバーが感じたかった感情を
■しっかりと与えてあげられるようなステージが出来たら(逹瑯)


──さて。一方のアルルカンも今年10周年ということで、年明けには<Anthology~10th Anniversary Special Night~vol.1>の2デイズで『puzzle』『PARANOIA』『ラズルダズル』『真っ赤な嘘』といった過去音源たちに焦点を当てたライヴを開催されていましたが、あのコンセプチュアルなライヴを通してあらためて何か気付かれたことはありましたか。

暁:アルルカンには「今もうこれライヴで出来ないな」みたいな昔の曲ってあんまりないし、普段から新旧問わずセットリストに組み込む派なんで、そこまで大きな発見とかはなかったです。その分、あらためてやってみてしっくり来たかな。アルルカンとしての遍歴はあるし、自分たちでも変化は感じるけど、そこに違和感はなかったです。それに、自分らとしては10周年っていうのはお祭りだから、まずはお客さんたちを楽しませたいっていう気持ちが先にあったし、そこでああいうライヴをやってみんなが喜んでくれたっていうのが嬉しかったですよ。

──それは大変素晴らしいことですね。

暁:ありがとうございます。昔のことを知ってる人たちは当時の懐かしさもありつつで楽しんでくれてたみたいだし、僕に角が生えてない時から知ってくれた人たちからすると、こんな時があったんだ!って面白がってもらえたみたいだし。みんながハッピーだった、っていうのが凄く良かったです。

──MUCCは今年これから<MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」~鵬翼・極彩~><MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」~志恩・球体~><MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」~カルマ・シャングリラ~>と3本のTimelessシリーズツアーが11月まで続いていくことになるそうですが、昨年の第1段<MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」~是空・朽木の灯~>を経てみて、何か実感されたことはありましたでしょうか。

逹瑯:うちもね、お客さんたちが楽しそう。それは凄いやってて感じる。

──逹瑯さん御本人は?

逹瑯:お客さんたちが楽しそうってことは、こっちも楽しいですよ。っていうのは、たとえば『是空』なんてもう20年前の音源なわけだから、さっき暁が言ってたみたいにその当時リアルタイムで聴いてくれてた人たちと、当時を知らない人たちだとライヴの楽しみ方もちょっと変わってくるわけでしょ。だって、20年前ライヴに来てた人たちの中にはゴリゴリに病んでて「MUCCの音楽に助けられてます」とか「将来のことなんて考えられません」みたいな、自分の人生は真っ暗だって思い込んでた人たちもけっこう多くて。あれだけ多感な時期を過ごしてたその人たちが今や家庭を築いてたり、今は幸せみたいな感じで笑顔を見せながらライヴに来てくれてるわけですよ。で、当然そこはある意味で歌ってる自分も一緒だからよくわかるんだよね。あの頃、悲痛な感じで音楽に救いを求めてすがりついてた自分たちのことを、今の自分だったら「大丈夫だよ」って抱きしめてあげることが出来るというか。明らかに昔とは違う表情で楽しそうにしてるみんなの空気感が、フロアに漂ってるのがいいなって思います。

──それと同時に、当時を知らない方たちも当時に近いライヴを追体験することは出来るわけで、Timelessシリーズは本当に貴重な場ですね。

逹瑯:渦中にいた当時は、もがくように闇の中で渦巻いてる感情のみにまかせて歌ってたから、それと今の空気感は絶対的に違うんだよね。だから、Timelessツアーでやってることって“再現ライヴ”ではないんですよ。だけど、それだけに凄く自分にとっても心地よくて。あの当時は自分にとってリアルでしかなかったものを、そのまま再現するだけとか、演じるというかたちで嘘をつきながら歌うとかでもなくて、今は今の感情でここまでに育ってきた曲として歌いそれを楽しむことが出来る、っていうのがほんとにイイんだよね。包み込むような感覚で激しい曲をやれたっていうのが凄く良かった。

──逹瑯さんは今しがた「今は今の感情で」という言葉を発されましたけれど、暁くんは昨今「世界の終わりと夜明け前」に端を発するかたちで、その後の「MONSTER」あるいは「PICTURES」で“今の感情”を赤裸々に歌う、ということを以前にも増して激化させて来ていらっしゃいます。これは傍からみていると相当に勇気の要ることなのではないかと思うのですが、ご自身でもその意識は強くお持ちですか。

暁:強みだと思ってやってますね。それがないと先がない。振り返ってみると、過去にやってきたことも根本的にはずっと今の感情を歌うことだったし、歌詞を書いたり歌うことで向き合うことになる現実とか辛さとか喜びとか、それが結果的に聴き手にも強く刺さりますから。このところ新曲を作っていても、それはとても必要なところだなって感じてます。ただし、受け手側が余白を感じられるようなものもここからはちょっと作っていきたいなと思っている自分もいるんですよね。「PICTURES」でひとつやり切ったところはあるので。


──「PICTURES」の先を行くあらたな一歩が、4月5日に出るという現在制作中のアルバム『δυσ-τόπος ~Dystopia~』の中に刻み込まれていくわけですね。

暁:はい、そうなっていくと思います。

逹瑯:まぁでもさ、暁は昔から変わらず悩み続けてるよね。そこもずーっと変わってないんじゃない?

暁:そうですね(苦笑)。

逹瑯:ひとつ悩みが解決したとしても、すぐまた次の悩みを抱えちゃうでしょ。暁は考えることが好きなんだろうね。「PICTURES」みたいなかたちで悩みを曲として昇華させてもいるし、それが暁のスタイルなんだろうな。だけど、さっきの「受け手側が余白を感じられるようなものにも挑戦していきたい」っていうのも凄く良いと思うね。余白がある歌とか曲って、聴いた側が自分のものとして受け取ることができるじゃない?

暁:いやー。そうなんです、それはほんとそうなんですよ。

逹瑯:聴いた人のものになるような曲がいろいろある中に、ああいう「PICTURES」みたいなプライベートで核のしっかりしたものが入ってくると、さらに際立って感じられるんじゃないかなとは思うな。そこのバランスとか対比が生まれていくと、アルルカンの音楽はもっと良いものになっていく気がする。

暁:ありがとうございます! 忘れたくないんで胸に刻み込みます…!

──ではここで、再び話題を<10th Anniversary 2man「餓者髑髏」>の件に戻しましょう。2マンということはそこそこの曲数を双方が提示出来るはずですが、そこに向けた戦略はもうなにかしら立てていらっしゃいます?

逹瑯:ちょうど昨日、ミヤさんから「曲順これで行きます」っていう連絡が来たんですけどね。知りたい? 先に全部教えようか(笑)。

暁:あははは、それはさすがにちょっと(笑)。

──正攻法なのか、意外な展開なのか、でいうとどちら寄りです?

逹瑯:とりあえず、MUCCってこういう感じのバンドだよねっていうのを知ってもらうには凄く良いセトリになってるんじゃないかな。わりと幅広いと思うよ。

──対するアルルカンは?

暁:まだ組んでないんですよ。といっても、一番強い右ストレートを出すしかないですよね。それしかないと思います。

逹瑯:右ストレート? それを思いっきり出すんだったら、アルルカンだったら祥平が一番強そうだな(笑)。

──リーチが最も長そうではありますね。

暁:物理ですか(笑)。

──右ストレート加減で言えば、武道館での<V系って知ってる?>でアルルカンが見せた1番手としての剛腕ぶりは実に見事でした。まだ昼間だったしょっぱなに、いきなりの強烈かつ鬼気迫るステージングで居合わせた人々を半ば唖然とさせていましたものね。

暁:武道館で昼間から超個人的な歌「PICTURES」で始める、というのはちょっと気持ち良かったです(笑)。

逹瑯:あれは良いトップバッターだったねぇ。しかも、ああいう曲でハッとしてくれるようなお客さんっていうのは長く寄り添ってくれる可能性が高いんじゃない?

暁:きっとそうですよね。僕もそう思います。

──ライヴでの「PICTURES」が凄いのは毎回2コーラス目の内容が変わるところで、あの尺に言葉をきっちりおさめてくるところにも何時も感心しておりますよ。

暁:いやそれが、ハミ出ちゃったりしてることもけっこうあるんです。言いたかったのに言えなかったことが出てくることもめっちゃあるし、何時も頭の中で「これは言えた」「これも言いたい」ってグシャグシャになってるから毎回大変ですよ(苦笑)。

逹瑯:あれって即興なの?

暁:ある程度はあらかじめ決めとかないと僕は言葉が出て来なくなっちゃうんで、大体の流れは決めておいてあとはポイントごとに勢いで行ったりしてます。急遽足したり、決めててもその場で出て来ない時はそのまま言えないで終わることもあるし。最終的にはその時によりますね。

──そういえば、アルルカンは年明けの<Anthology~10th Anniversary Special Night~vol.1>で遂に声出し解禁ライヴをされたそうですね。MUCCは2月に入ってから川崎と大阪で<[MUCC 25thAnniversary Special Liveムック試験導入公演その5.暴れて、感じて、声出しOK。『咆哮』>を開催することになっていますが、ひとあし先に声出しライヴを久々に体感された暁さんはどのようなことを感じられましたか。

暁:なんでしょうね。あれはもう、この約3年やってきたライヴとは別物でしたね。僕はコロナ禍になってからライブ再開までめちゃくちゃ気を使ってたし、納得しないとステージにも立てないな、というところからのスタートだったので。長い時間をかけて、プロセス踏んで、ようやく次に進みましょう、って感じで自分としては筋を通して来たうえでやっと出来たライヴでもあったから、みんなの声を聴けた時はやっぱめちゃくちゃ嬉しかったです。シンプルに、お客さんたちの声が聴こえてくるって“もう1回ほんとの意味で会えた”感じがしましたね。気持ちが凄く充たされました。みんなもきっと、素直に「ライヴってこれだ」って感じたんじゃないですかね。アルルカンのライブは双方向で。僕は結局メッセージを叫ばずには居られないし、ファンもそのエネルギーに触れて吐き出したり受け取りにライブに来てる。バラバラなんですけどこれがたまたま共鳴した時に、ああこれがアルルカンのライブだ、って思い出せたんで、このところライヴに来てなかったっていう人たちにも、ぜひこの感覚はまた感じに来て欲しいなって思います。まだ怖いとか不安だっていう人がいるのはわかるんですけど、そこをクリアすることが出来るなら、戻ってきたアルルカンのライブってのを感じに来て欲しいなと思いました。

逹瑯:俺らはこれからだから、どんな空気になるのかな?っていうのを楽しみにしてるとこですけどね。でもどうなんだろ? 声出しもそうなんだけど、今までだって若干の笑い声とか予想外な展開になった時の歓声みたいなものは微妙に出てたじゃない?

──意図せず漏れる感嘆の声、笑い声は確かに多少ありましたね。

逹瑯:だから、声に関してはここから自然と出てくるようになる気がしてるけど、そこより難しいのがモッシュ・ダイヴだよね。

暁:うん、そこ問題ですよねぇ。


──ヴィジュアル系のみならず、各ジャンルともそこなしにここからも制約に縛られたままライヴ活動を継続し続けていくのは厳しいところがあると思います。少なくとも、このあいだの大盛況だったワールドカップや各国で再開しているフェスの様子を見る限り、日本のこのガチガチな状況の方がよほど不自然に感じられますし。

逹瑯:今のところモッシュ・ダイヴに関してはOKかOKじゃないか、っていう話そのものを聞いたことがないんでね。もともとライヴハウスでだって暗黙の了解で行われてきたものだから、今日から解禁ですというのもどうなんだっぺな?というのがあるというか。大体、もしいきなりダイヴとか始めても自分たちが思っている以上に驚くほど体力落ちてるケースもありそうだからね。

──まだまだ一筋縄ではいかないところが多いかもしれませんが、幸い今度の<10th Anniversary 2man「餓者髑髏」>も各所協議の結果なんと声出しはOKとなったそうなので、ここは参加する方々全員で出来る限りの楽しみ方をしていきたいものです。

逹瑯:フルキャパで発声は25%なんだっけ?

暁:謎ルールではありますけど、楽しんでいきましょう(笑)。

──最後に、逹瑯さんから当日に向けたアルルカンへのメッセージをお願いいたします。

逹瑯:ここはもう、誘ってくれてありがとう!という気持ちでね。アルルカンのメンバーが感じたかった感情を、しっかりと与えてあげられるようなステージが出来たら良いなと思ってますよ。

──すなわち、ありがとうという気持ちで思い切りブッ叩きに行くということですね。

逹瑯:うん(笑)

──暁さんはどう立ち向かわれますか。

暁:MUCCが凄いのは当たり前なんで、アルルカンはアルルカンを貫いていきます。高い壁にぶつかっていくことで見えてくるものが必ずあるし、その自分に用があるんで! 全部ひっくるめてもらえるもんは全部もらいにいきます!!骨折してますけど全体重乗っけた右ストレート打ちに行くんで!

逹瑯:今日から毎日、骨のために煮干しと牛乳な(笑)。

取材・文◎杉江由紀

<アルルカン Presents 10th Anniversary 2man「餓者髑髏」 at 恵比寿LIQUIDROOM>

・日程/会場
2023年2月11日(土)恵比寿LIQUIDROOM

・出演者
アルルカン / MUCC

・開場/開演
開場17:30 / 開演18:00

・チケット料金
前売¥6,800(税込/D別)
当日¥7,300(税込/D別)

・チケット
【A】イープラスプレオーダー先行
受付期間:1月16日(月)12:00~1月28日(土)23:59
入金期間:1月31日(火)13:00〜2月2日(木)21:00
※枚数制限:お一人様4枚まで
https://eplus.jp/arlequin/

【B】一般発売
2月3日(金)10:00~
※枚数制限:お一人様4枚まで
https://eplus.jp/arlequin/

・その他
本公演は総演奏時間の約25%程度までの声出し可能とします。

・お問い合わせ
NEXTROAD 03-5114-7444(平日14:00~18:00)
http://nextroad-p.com/

アルルカン ライブ・ツアー情報

<Anthology~10th Anniversary Special Night~vol.2>
3月11日(土) 、12日(日) 新宿BLAZE
Day1:【1部】Anthology -Utopia-【2部】Anthology -影法師-
Day2:【1部】Anthology -ANIMA-【2部】Anthology -secret-

<10th Anniversary Tour「escape from dystopia」>
4月8日(土) 渋谷CLUB QUATTRO
4月19日(水) 神戸 太陽と虎
4月20日(木) 神戸 太陽と虎
4月22日(土) 京都MUSE
5月3日(水祝) 金沢AZ
5月4日(木祝) 長野CLUB JUNK BOX
5月6日(土) 新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
5月20日(土) 仙台darwin
5月21日(日) 仙台darwin
5月28日(日) 名古屋Electric Lady Land
6月3日(土) HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3
6月4日(日) HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3
6月10日(土) 柏PALOOZA
6月11日(日) 柏PALOOZA
6月17日(土) HEAVEN'S ROCK 宇都宮 VJ-2
6月21日(水) 岡山IMAGE
6月22日(木) 広島SECOUND CRUTCH
6月24日(土) 福岡BEAT STATION
6月25日(日) 福岡BEAT STATION
7月1日(土) 新横浜NEW SIDE BEACH!!
7月2日(日) 新横浜NEW SIDE BEACH!!
7月8日(土) 札幌SPiCE
7月9日(日) 札幌SPiCE
7月22日(土) 大阪BIG CAT

MUCC リリース情報

■映像作品「新世界映像全集 高画質盤」(Blu-ray)
2022年2月22日(水)発売
価格:3,960円(税込)
収録曲
01.星に願いを
02. R&R darling
03. COLOR
04. Paralysis
05. 零
06. GONER /WORLD
07. 空-ku-(Mixed by Miya)

■NEW MINI ALBUM「新世界 別巻」
2022年12月21日(水)発売
【特別書籍特装盤】 MSHN-169/170 13,000円(税込)※受付終了
【初回限定盤】 MSHN-171/172 3,960円(税込)
【通常盤】 MSHN-173 2,530円(税込)

収録曲
01.空 -ku- (Mixed by Miya)
02.猿轡
03.I wanna kiss
04.別世界
05. HOTEL LeMMON TREE
06.SLAVE
07.終の行方
08.猿轡(Original Karaoke)
09.I wanna kiss(Original Karaoke)
10.別世界(Original Karaoke)
11. HOTEL LeMMON TREE(Original Karaoke)
12.SLAVE(Original Karaoke)
13.終の行方(Original Karaoke)

・特別書籍特装盤、初回限定盤、共通収録
Documentary of 『MUCC TOUR 2022「新世界」〜Beginning of the 25th Anniversary〜』
新世界ツアーの密着映像にメンバーインタビューを交えたドキュメント映像
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