【対談】ORANGE RANGEのRYO × 演出家の元吉庸泰、新たな朗読劇に「楽曲の可能性みたいなものを見てみたい」
結成21周年を迎えたORANGE RANGEの名曲を題材に、脚本家が完全オリジナルストーリー化し、それを人気声優陣が朗読する公演<-音読stage-Story of Songs Track1 ORANGE RANGE>が、2月8日から12日まで、ヒューリックホール東京にて開催される。“アーティスト楽曲 × 豪華声優陣 × 新進気鋭のクリエイター陣”による新たな朗読劇公演となるものだ。
◆RYO (ORANGE RANGE) × 元吉庸泰(演出家) 画像
「花」「おしゃれ番長 feat.ソイソース」「ミチシルベ~a road home~」「以心電信」「キズナ」「上海ハニー」といったORANGE RANGE珠玉の楽曲群が、演出家にして脚本家の元吉庸泰と、新進気鋭の若手脚本家によって新たな物語に生まれ変わり、豪華声優陣が命を吹き込む。あの時、あの瞬間の想いが、新たな煌めきとして紡がれ、融合された新しいリーディングライブの誕生だ。その第一弾がORANGE RANGEとなる。
全9公演、総勢63名の声優が集結し、声優リーディングで奏でられる楽曲の物語。この朗読劇公演に先駆けて、ORANGE RANGEのRYO、同公演の演出を務める元吉庸泰が語った対談形式のオフィシャルインタビューをお届けしたい。
◆ ◆ ◆
■“音”と“物語”を演劇の主役に
■自分から入り込んでいく感覚
──最初に、今回の企画<-音読stage-Story of Songs>について聞いた際の印象をそれぞれ教えてください。
RYO:僕らとしては、もう嬉しい限りだし、新しいことはメンバーみんな好きなので、最初に話を聞いた時点でかなり前向きでしたね。ありがたいなと思いつつ、“どうなるんだろう?”というワクワクもありました。
元吉:アーティストの楽曲を朗読劇にするという話自体は、わりとあるんですよ。最初にその話をいただいた時は“あぁ、ありますよね”と思ったんですけど、その後に「ORANGE RANGEさんで」と聞いて「えぇっ!? マジで?」って(笑)。初めてプロデューサー陣と話をした時「え? 「キリキリマイ」で1話やるってことですか? 「キリキリマイ」言うてるだけで話終わりますけど、大丈夫ですか?」みたいな(笑)。“どういうふうに本にしていくか?”、そこは衝撃を受けましたね。ORANGE RANGEさんというチョイスがちょっと攻めすぎてて…初めて聞いた際の言葉は、本当に「マジで?」でしたね。
▲RYO (ORANGE RANGE)
──ORANGE RANGEのメンバー間で、反対意見や懸念する声はなかったんでしょうか?
RYO:企画自体を“やる”ということだけ最初に聞いたんですけど、“何の曲なのか?” “どの曲でつくるのか?”ということは聞いてなかったので、“やっぱり「花」とかになってくるのかな?”と思ってたんですけど。いろいろな曲をやると聞いた時に“あぁ、面白そうだな”と思って、そこからはみんな、前向きな感じでしたね。
──各話の楽曲(「キズナ」「花」「以心電信」「ミチシルベ ~a road home~」「上海ハニー」「おしゃれ番長 feat.ソイソース」)に関しては、どのように決まったのでしょうか?
元吉:まず作家(脚本家)を集めたんですが、集まった作家たちも演劇の中でジャンルがバラバラだったんですよ。三浦(香)さんは2.5次元をよくやられている方で、(福田)響志くんはミュージカル、谷(碧仁)くんは小劇場というちょっとアングラなところでやっているんですけど、共通するのは3人とも“青春がORANGE RANGEだった”ということでした。で、まず集まって、「何やりたい?」というところから始めました。僕が「*~アスタリスク~」が大好きで、「全体的なテーマを「*~アスタリスク~」にしたい」という話をした後、みんなでおもちゃを取り合うみたいにやり始めたんですけど、谷くんがマニアで、ものすごくマイナーな曲しか選ばなかったんですよ(笑)。「それはマズい」という話になりまして…「俺は知ってるけどね…」と(苦笑)。結局、みんなが知っている知名度のあるメッセージ性の高い曲をそれぞれが1曲、あとは本当に好きな曲を1曲ずつで、ひとり2話ずつ書こうということになりました。最終的に選ばせていただいて、それが奇跡的に良いバランスだったので、そのまま走っちゃおう!ということになりました。意図せずこの形になった感じですね。それだけORANGE RANGEの楽曲がバラエティに富んでいるということですね。
──これらの楽曲を使用して、どのような朗読劇になるのでしょうか? 現時点で明かせる範囲での構想を教えてください。
元吉:朗読劇って、“劇”であり“見せる”ことがメインになるじゃないですか? でも、この“音”と“物語”を演劇の主役にできないか?というところから始まって。空間における声優さんの声と音、物語を目をつぶっていても楽しめる……単純に物語や音や交換される感情を“制作側に見せられる”のではなく、“自分で取っていく”というアプローチになるように、セットや映像表現などを選んでいるところです。プラネタリウムで星を見ているような感じに近い。ラグジュアリーなものになればいいなと考えつつ進めているところです。
RYO:いや、もう今の話を聞いていても、なるほどなと思うところがありました。自分たちの曲に関しても、いろんな曲調のものがあるぶん、“自分から入っていく”感覚というのは面白そうだなと思いました。
▲元吉庸泰(演出家)
──選曲に関して、RYOさんはどのような印象を持たれましたか?
RYO:嬉しいのが「papa」(※「以心電信」の劇中で使用予定)とか、「雨」(※「花」の劇中で使用予定)とかって、あまりフィーチャーされないんですね。ライブでは僕らは好きでやってて、飛び道具のような感覚でやってるので。そういうところが拾われているのは嬉しいですね。あとは、最初の段階の台本を読んだ時に、“曲を聴いてくれていたんだろうな”というのを感じ取れたので、それが嬉しかったですね。世代が近いというところもあって、続けてきたからこそ、こういうことができているんだな、というのを感じ取れたので、それが一番嬉しかったですね。
──書き上がった脚本を読まれての感想、たとえばご自身が制作時に曲に込めた思いと重なる部分であったり、逆に“こう解釈するか!”と驚いた部分などがあれば教えてください。
RYO:「以心電信」と「papa」が使用されている話(「以心電信」)なんですけど、「papa」という曲は、僕らはコミカルに書いたんですね。「思い切り遊べる曲を作ろうぜ!」と。YAMATOが、サビで「パパが帰ってこない」とか「カブトムシ見つけた」とかレコーディングで叫び始めて。あの時はわかんないままレコーディングしてて、夜中にみんなでいいテンションでのレコーディングだったので、「今のいいね!」とかっていう感じでやってたんですけど。結構シリアスな脚本になってて(笑)、そこは面白かったですね。こういう変化を今回はとても楽しみにしていたところだったので、“これは良いな”と思いました。
──元吉さんはジャンルやシリアスorコメディといった部分に関して、脚本家チームと物語を作っていく上でどんな話を?
元吉:いつも一番考えるのが、“なんでこれを書いたのか?”ということなんですよね。シェイクスピアであれ何であれ、この作家はなぜこれを書いたのか?と考えるんですけど。それを考えた時、今回の物語はコメディであれシリアスであれ、自分の青春と被っている部分や自分のトラウマを乗せてきているなということを感じました。まさに「以心電信」を書いた谷くんは、家族に対してすごいトラウマティックなものを持っているらしくて。そんな彼が曲に救われていた、ということを物語を読んですごく感じて。そこはうまく演出的に引っ張ることができたら、メッセージが一番伝わるのかなとを考えながら、特に僕のほうでバイアスをかけるのではなく、作家がストレートに書いてくれたものを空間に投げつけることができれば、正解に近いんじゃないか? と考えながら今回はやっています。
──ちなみに今回の公演、出演者が63名いるんですが…。
RYO:すごいですね…。
元吉:えぐいですよね(苦笑)。
──出演者のみなさんに、どんな演出をしようと思い、どんなことを期待されていますか?
元吉:日本の声優さんって世界に誇るべきものだと思っていて。すごい量の物語に関わってきているので、すごい量の物語のストックがあるんですよね。だから今回、細かな演出をするというより、「思い思いに心を動かしてください」と言おうと思っていて。「ただし、心を動かさないというのはもったいないのでやめましょう」という形でやった時、どういう変化や、どこに思いを込めるのか? という部分で、その人の辿ってきた人生やストックの部分によって全然違ってくると思うんです。それが薄い人は薄くてもそれはそれで面白いものになると思うのでいいんですけど。僕はちゃんとルールを決めて、その中で思い思いにみなさん、音楽や場所を使って、映像を使って「遊んでください」とお伝えして、そこで化学変化が起こるんじゃないかということを信じています。欲を言うと稽古時間は欲しいですけどね(笑)。
RYO:ベテランの方もいらっしゃいますが、わりと若い方が多い中で、いまの声優さんたちはレベルが高い印象を持っています。こういう場で、自分らの曲を絡めた時にどんな表現をしてくれるのか? しかも、今お話を聞いていると、結構自由度が利きそうなところがあるので、どういう表現になるのか非常に楽しみですね。
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