【ライヴレポート】MUCC、ツアー<新世界>完遂「後悔も、失敗も、願いも、全部を連れてこの先の未来へ」

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MUCCが8月28日、Zepp DiverCity Tokyoにて全国ツアー<MUCC TOUR 2022「新世界」~Beginning of the 25th Anniversary~>のファイナル公演を開催した。現体制での初アルバム『新世界』を持って臨んだツアーファイナルのオフィシャルレポートをお届けしたい。

◆MUCC 画像

新世界とは真なる世界であり、どこか神がかり的な世界でもあり、何よりも進み続けることの意味を感じさせてくれる世界でもあった。2022年の6月9日に結成25周年の大きな節目を迎えたMUCCが発表した、現体制による初のアルバムであると同時に、通算16枚目のアルバムともなった『新世界』。その内容はまさにタイトルのごとく、MUCCというバンドが提示する新世界秩序そのものであったのではなかろうか。

新体制での緻密かつ濃密なグルーヴ。今の体制になったからこそ繰り出せるさらに洗練されたサウンドメイク。フェイクとリアルが雑に混ぜあわせられ氾濫する市井のタイムラインを横目に、巧妙な表現をもって彼らにとっての現実と願望が織り交ぜられていく歌詞たち。それらが渾然一体の様相で供されることにより、アルバム『新世界』の中には“四半世紀の歴史を紡いできたMUCCが進みゆく、ここからの新たなる世界”の姿が描かれていたに違いない。


また、アルバム『新世界』のリリース直後から始められた<MUCC TOUR 2022「新世界」~Beginning of the 25th Anniversary~>について言えば、なんと彼らは今までになかったアプローチでライヴ自体を“アトラクション”として定義する、というなかなかに斬新な手段を選択。最新鋭のライティングシステムや、随所にまでこだわった演出をしていくことで、生演奏の迫力や臨場感を前提とはしつつも、そこに完成されたエンターテインメントとしてのショー要素を盛り込んでいくことになったのである。

ゆえに、このたびツアーファイナルを迎えたZepp DiverCityの場内においては開演前に日本語・中国語・韓国語で順次、「新世界は夢烏(ムッカー=MUCCファンのことをさす愛称)の皆様の心が、猛スピードで、急旋回、急上昇、急降下するアトラクションです。みなさま、MUCCの新世界を心身ともにご堪能ください。それではいってらっしゃいませ」という、テーマパークでよく耳にするようなアナウンスが流されていた点も演出としてなかなかに粋だったかと。


そして、アルバム『新世界』と同じようにインスト「新世界」をイントロダクションとするかたちで、象徴的な“狂いそうな新世界 綺麗だった?旧世界”というフレーズがスケール感のある音像の中で歌われていった「星に願いを」、いかつい重低音が轟く中で曲にあわせ夢烏たちがクラップで加勢した「懺把乱」、昨秋に現体制での新たな一歩として世へ発表された楽曲「GONER」までの3曲が新譜のとおりの流れでプレイされていった場面は、観衆たちの意識が一気に新世界という名の異世界へと誘い込まれることに。だが、フロントマン・逹瑯は我々がただただ彼らの音楽に漫然と魅了されていくことを許してくれるわけもない。

「Tokyo! ひとり残らず、全員で暴れ狂えよ。いいか!!」──逹瑯

ここで投入されたのは、かれこれ20年前に発表された2ndアルバム『葬ラ謳』に収録されていた、根強い人気曲として夢烏から長く愛されている「スイミン」。逹瑯が派手に煽ったこともあり、ここでは夢烏たちの飛び跳ねぶりによってZepp DiverCityの2階席が激しく振動し出したのだが、コロナ禍以降に筆者が同会場にて臨場したさまざまなライヴと比較しても、この時の震度は限りなく随一であった気がする。


以降、今回のツアーファイナルではアルバム『新世界』の流れを下敷きにしながらも、絶妙な配分と配置をなされた楽曲たちが続々とオーディエンスを楽しませていくことになったのだが、本編中盤にてYUKKEがアップライトベースを使うことで艶っぽくアンニュイな空気感を醸し出してくれた「COLOR」、そこはかとなく'90年代UKロックの香りが漂う「R&R darling」の2曲は中でもすこぶる秀逸で、特に後者に関しては音源だとフェードアウトするところをフリーの尺でアウトロセッションをしていった展開が胸熱すぎた。

優しく穏やかなミッドテンポの揺れがひたすら心地よく、かれこれ後半のセッション部分だけでも約4分半が費やされた「R&R darling」。ミヤが楽しそうにインプロヴィゼイション的にソロを弾き、YUKKEが小気味よくジャンプしながら指弾きフレーズを響かせ、逹瑯が観客たちの顔を見わたしながら踊ったりフェイクをしたり、かと思うとメンバー同士が笑顔でアイコンタクトをとりあったり、というその様子は、時を忘れるくらいに素晴らしいもので、その様は彼らがさぞかしこのツアーで充実した時間を過ごしてきたのであろうな、ということをよく証明していたと言える。


「…今日の(アウトロ)はこのツアーで一番長かったな(笑)。楽しかったね! というわけで、今回は『新世界』というアルバムを作って良いツアーを廻れたと思います。今日でひとまずツアーは終わりますが、まだ君たちの声を聴くことが出来ていないので。本当の意味で『新世界』を完成させるのは、もうちょっと先のことなのかなと思ってますから、その時はまたよろしくお願いします」──逹瑯

この言葉の後には以下のような意思表明が付け加えられたことも、このライヴにおいては重要なポイントだったように思う。

「そしてね。25年前に始まったMUCCというバンドは、最初の頃ずっと“現実なんて最悪だ、絶望だ。未来なんてくそくらえ!”という感じで歌ってきていましたが、ここに来て“現実を噛みしめて、未来を見ようじゃねーか”という思いをのせて作った歌がたくさん出来ているというのは、非常に感慨深いなと。てめーらの後悔も、失敗も、願いも、全部を連れてこの先の未来へ行こうと思います!」──逹瑯


ここからの「咆哮」の歌詞にある“響かせろこの決意を” “決意の時がきたのなら 声枯らして叫べ”なるくだりは、当然ながら我々にとってもリアルな言葉として受け止めることが出来た。サポートドラマー・Allenがミヤと共作した「Paralysis」、ミヤがサイケデリックペイントが施されたX JAPAN・hideモデルのモッキンバードを持ってパフォーマンスした「零」、この夜Zepp DiverCityに観客として来場していたというSATOちの存在を意識して選曲されていたとも推測出来る「前へ」と、相変わらず彼らの組むセトリは隙がなく完璧だ。

そのうえで、MUCCは勢いやノリだけにまかせて能天気に前進していくタイプのバンドではないことを本編の最後であらためて実証することになり、昨今の世界情勢ともリンクした残酷で辛辣な現実が綴られた「いきとし」では重苦しい空気がこの場に生み出されてしまう。だからこそ、そのあとに「世界中に明かりが灯りますように…」という逹瑯の一言が添えられてから放たれた「WORLD」はこの場内に居合わせた人々の心を浄化し、温かく包容していく救いの歌として聴こえてきたのかもしれない。


なお、アンコールでは名は体を表すパワーチューン「爆弾」、MUCCのライヴには欠かせない「蘭鋳」、これまたSATOちが作曲に参加している「家路」、ツアー中に各地で披露されていったという新曲「終の行方」の計4曲が奏でられたのだが、終演後には会場出口にてQRコードがプリントされたフライヤーが来場者全員に配布され、これをデジタル端末で読み込むと“エンドロール動画”が再生され、それをもってこの日のライヴが終結するという締めくくり演出が観客たちのことを待ち受けていた。

ちなみに、その動画によると12月21日にはミニアルバム『新世界 別巻』が発表となり、12月22日と23日には恵比寿リキッドルームにて<新世界 完結編>と題されたワンマンライヴが開催されるという。詳細が発表済みの10月から12月まで続いていく<MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」〜朽木の灯〜>も含めて、MUCCの25周年はまだまだこれからもてんこ盛りらしい。


真なる世界であり、どこか神がかり的な世界でもあり、何よりも進み続けることの意味を感じさせてくれる世界でもあった新世界を経て。MUCCの前途が洋々たるものとしてこれからも続いていくことは、もはや約束されたも同然だ。

取材・文◎杉江由紀
撮影◎冨田味我

■<MUCC TOUR 2022『新世界』~Beginning of the 25th Anniversary~>2022年8月28日(日)@ZeppDiverCityセットリスト

01. 星に願いを
02. 懺把乱
03. GONER
04. スイミン
05. パーフェクトサークル
06. KILLEЯ
07. NEED
08. HACK
09. 未来
10. COLOR
11. R&R darling
12. 咆哮
13. Paralysis
14. 零
15. 前へ
16. いきとし
17. WORLD
encore
en1. 爆弾
en2. 蘭鋳
en3. 家路
en4. 終の行方(新曲)

■<MUCC TOUR 2022「新世界」〜Beginning of the 25th Anniversary〜>Zepp DiverCity Tokyo公演アーカイブ配信

アーカイブ視聴期間:2022年9月11日(日)23時59分まで
チケット販売期間:2022年9月10日(土)23時59分まで
視聴チケット価格:4,500円(税込)
ニコニコ生放送:https://live.nicovideo.jp/watch/lv338215756

■<えん8>

2022年9月6日(火) CLUB CITTA’
open17:00 / start18:00
出演:MUCC、THE BACK HORN、COCK ROACH
▼チケット
前売¥7,500(税込)
※入場時ドリンク代別途必要
一般発売:8月13日(土)
https://eplus.jp/sf/detail/0036930010-P0030583P021001


■<MUCC 25th Anniversary TOUR「Timeless」〜是空・朽木の灯〜>

10月09日(日) 高知 CARAVAN SARY
10月10日(月•祝) 岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
10月16日(日) 名古屋 Electric Lady Land
10月17日(月) 名古屋 Electric Lady Land
10月23日(日) 浜松 Live House窓枠
10月25日(火) 大阪 BIGCAT
10月31日(月) CLUB CITTA’
11月04日(金) 神戸 Harbor Studio
11月05日(土) 神戸 Harbor Studio
11月15日(火) 鹿児島CAPARVOHALL
11月17日(木) 長崎 DRUM Be-7
12月04日(日) 大阪 松下IMPホール
12月14日(水) KT Zepp Yokohama
▼チケット
前売\9,600 (税込)
※入場時ドリンク代別途必要
一般発売:9月10日(土)〜


■インストア/トークイベント

■<「新世界」発売記念インストアイベント『生写真渡スンです会』>
9月14日(水) start18:00 福岡・HMV&BOOKS HAKATA
 ※参加メンバー:YUKKE
▼イベント概要
NEWアルバム「新世界」の制作中、またはライヴツアー中に使い捨てカメラでメンバーを撮影したレトロな生写真を参加メンバーが直接お渡しします。https://55-69.com/news/8189

■単独トークライヴ<YUKKE!! 孤独のトークライヴ2022!!「不安」>
9月15日(木) 福岡 SQUARE GARDEN
open17:30 / start18:00 / end20:00 ※予定
▼内容
YUKKEが初の単独トークライヴを敢行。写真を交えて語るツアー<新世界>の裏話や福岡の地ならではの企画。更に美声も少し聴かされる不安な一夜。YUKKEがYUKKEの魅力にふんだんに迫ります。
▼チケット
前売り:¥3,948(ドリンク代別)
一般チケット販売:後日アナウンス
※当日券の販売は予定しておりません


■アナログ盤『新世界』

2022年9月6日(火)発売
【完全生産限定商品(2LP)】MSHN-164~165 6,900円(税込)
▼朱ゥノ吐+会員先行予約
受付期間:8月6日(土)12:00〜8月15日(月)23:59
※予定数に達し次第受付終了となります、あらかじめご了承ください。
https://fanicon.net/web/shops/4122 
●DISC1●
▼SIDE-A
01 新世界
02 星に願いを
03 懺把乱
04 GONER
▼SIDE-B
01 パーフェクトサークル
02 HACK
03 NEED
04 未来
●DISC2●
▼SIDE-C
01 R&R darling
02 COLOR
03 Paralysis
▼SIDE-D
01 零
02 いきとし
03 WORLD

■ミニアルバム『新世界 別巻』

2022年12月21日(水)発売
※収録曲等詳細後日

■<MUCC TOUR 2022「新世界」〜Beginning of the 25th Anniversary〜 「新世界 別巻」発売記念公演 「新世界 完結編」>

2022年12月22日(木) LIQUIDROOM
2022年12月23日(金) LIQUIDROOM
※チケット詳細後日

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