【インタビュー】Dear Chambers「僕らは友達から親友になり今度は“ひとつ”になりました」
2021年は、感染対策を遵守しながら凄まじい本数のライヴを繰り広げてきたDear Chambers。キャリア初となる1stフルアルバム『you & me』は、そんな生粋の現場主義であるDear Chambersというバンドそのものをきっちりと提示した1枚であり、ソングライターのモリヤマリョウタとバンドの今が存分に表れた1枚でもあり、バンドのこれまでを更新し、新たな表情を見せる1枚にもなった。BARKSでの彼らのインタビューは、これで3度目。いつもと変わらず和気藹々とした賑やかな現場だったが、過去2回のインタビューでしてきた同じ質問を、今回も投げかけてみた。その答えからも、3人の今を感じていただけると幸いだ。
■音源を作るときにはライヴのことをあんまり考えなかったかも
■だからリリースツアーの初日は、やっていてめちゃくちゃ難しくて(笑)
──1stアルバム『you & me』はどういう作品にしようと考えていましたか?
モリヤマリョウタ/Vo&G(以下、モリヤマ):なんか、考えている余裕がなかったですね(苦笑)。前のCD(『It's up to you』)を出した後からコロナ禍になったけど、音源は出さずにめちゃくちゃライヴやろうってことになって。127本ぐらいやったんですよ。その間にアルバムの曲も作れたらいいねって話をしてたんですけど、全然書いていなくて。だから、作り方は今までとあまり変わってないんですけど。
秋吉ペレ/B&Cho(以下、ペレ):うん。結局いつもと同じ感じというか。曲の欠片みたいなものはあったけど、1、2ヶ月で一気に詰めていく感じだったんで。
しかぎしょうた/Dr&Cho(以下、しかぎ):ただ、作る曲の数が増えたっていうぐらい。
ペレ:いつもの倍っていう(笑)。
──EPとは違って、勢いだけではやりきれない量というか。
しかぎ:そうそう(笑)。大変でしたね。
モリヤマ:でも、この1年間で言いたいことが自分の中でまとまっていたから、歌詞はわりとすぐに書けました。
──127本ということは、3日に1本ライヴをしていたことになると思うんですが、そこは決められたルール内であれば、どんどんやっていくべきだと。
モリヤマ:そこは年齢もあいまってというか。このバンドって、ここ(モリヤマ、ペレ)が25のときに始めたんですよ。しかぎはちょっと下だけど。で、周りのバンドや同い年のバンドに追いつくために必要なものって、もうライヴしかないと思って。今はみんな止まっているから、この1年は突っ走ろうって決めて、基本的には話が来たら断らずに全部出る感じだったんですけど。
──周りとの差別化はありつつも、このご時世でこれだけの本数をやるということは、決断というと大袈裟かもしれないけど、結構大きなことではありました?
ペレ:そこはシンプルではあったんですよ。「ライヴがやりたい」ってなっていたから、それはやるよね?っていう、当たり前の感じだったかもしれないです。その中にルールがあって、ダメなものはダメだし、やれるのであればやろうっていう感じでやってきたので。だから、あまり構えた感じでもなかったですね。それがずっと当たり前でやってきたからっていう感じです。
しかぎ:うん。今までと違うことをしていこうというわけでもなかったし、ライヴハウスもやると言っているし、各地に呼んでくれる人がいるのであれば、やれる範囲の中でやれることをやっていこうっていう。周りからどう見られるかを考えたことも個人的にはちょっとあったんですけど、結局、行ったら喜んでくれる人達がいて、ライヴハウスの人達も「来てくれてありがとう」って言ってくれて。だから、とりあえずやれることはやるっていう感じでしたね。
──そういう状況の中でアルバムとなると、そりゃ作る暇なんてないって話ですね(笑)。
3人:ははははははははは(笑)。
モリヤマ:やっぱり1本のライヴに注ぎ続けていたから、何かを作るっていう気持ちになかなかならなくて。しなきゃいけないわけじゃないけど、したほうがバンドのためには良いと思いながらも、うーん……っていう状況がずっと続いていて。急にモード変わったもんね?
ペレ:そうだね。スタジオだけじゃなくて、急に来るときもあったじゃん? 移動中に歌詞を考えたりすることもあったし。スイッチが入ったときにギュッとやる感じだったかもしれないです。
──そういう作り方ができるようになったとか?
モリヤマ:いや、前からそんな感じではあったんですけど……でも、音源を作るときには、ライヴのことをあんまり考えなかったのかも。いつもは6曲とかに絞らなきゃいけなかったけど、アルバムでいっぱい曲を出せるから、やってみたかったことをやってみようっていう感じだったので。だから、リリースツアーの初日は、やっていてめちゃくちゃ難しくて(笑)。
ペレ:本当にライヴのことを考えてない感じ出てたもんな?(笑) こんなに大変なの!?っていう。
モリヤマ:そうそう。やりたいことをやりすぎちゃって、これどうすんだよ!?って。
▲モリヤマリョウタ/Vo&G
──そのなかでも特にやってみたかったことというと?
モリヤマ:なんだろうね? ドラムのフレーズからサビを考えた曲もあったんですよ。
しかぎ:「to day」はそうだったよね。あとは「あの丘の上」も。
モリヤマ:「あの丘の上」に関しては、昔、しかぎがフェスによく行っていたんですよ。俺ら2人はあまり行ってなかったけど、(しかぎは)サークルモッシュとか作っていた感じで。
ペレ:いわゆるキッズってやつですね。
しかぎ:鬼キッズでした。ディッキーズ履いてたし。
モリヤマ:で、キッズが盛り上がるドラムパターンある?っていうところから作っていたんですよ(笑)。
しかぎ:だいたいスタジオで曲を作っているときに、こういうのがやりたいっていうフレーズを、特に何も言わずに勝手に叩き出したりするんですよ。そこに2人が付いてきて、曲になることもあったりするんですけど、「to day」と「あの丘の上」は、マジでキッズのことをイメージしていて。
モリヤマ:自分が聴いたら盛り上がるドラムパターンみたいな感じ。
しかぎ:そうそう。
──今まではそういう作り方ってしてなかったんですか?
モリヤマ:してなかったです。
ペレ:作ってるとき楽しそうだったもんな(笑)。「次って何がくるの?」とか。
モリヤマ:でもまぁ、わかりやすい曲があればいいかな、みたいな感じではありましたけどね。結構ノリで作った感じでした。
──アルバムを聴いていて気になった点についてお聞きしていきたいんですが、まずは1曲目の「桜の歌」について。過去に発表した「BABY」について、あの曲は銀杏BOYZの大オマージュで、大リスペクトという話をしていましたが、GOING STEADYに『さくらの唄』というアルバムがありますよね。
モリヤマ:これ、昔のバンドの曲なんですよ。GOING STEADYがあのアルバムを作ったときのことを調べていたんですけど、『さくらの唄』っていう漫画があって。そっちを曲にしています。でも、曲の感じは完全に銀杏BOYZです、もう頭っから(笑)。
──そうですよね。始まった瞬間に……
ペレ・しかぎ:はははははは!(笑)。
モリヤマ:「やったな」っていう(笑)。
──(笑)。まさにそう思いました。
モリヤマ:でもまぁ、あれだけ言ってきたんで、「やったな」って思われても別にいいかなって。
▲秋吉ペレ/B&Cho
──もともとは昔のバンドで作った曲だったと。
モリヤマ:1stミニアルバムにも昔のバンドの曲を入れてるんですよ。それが「幸せになってくれよ」で、1stフルアルバムを出させてもらえるってなったときに、1曲入れてもいい?っていう話を元メンバーにもして、これを選びました。
──そのときとアレンジは変えているんですか?
モリヤマ:まったく違います。(GOING STEADYの)「DON'T TRUST OVER THIRTY」と(銀杏BOYZの)「大人全滅」ぐらい違う。
ペレ:説明もその仕方か(笑)。
モリヤマ:(笑)。もともとはもっと爽やかだったんですよ。ギターロックとか、青春パンクみたいな感じだったんで。
──「幸せになってくれよ」のお話が出ましたけど、今回収録されている「ずっと心だけは」に、〈幸せでいてくれよ〉という歌詞がありますよね。
モリヤマ:自然と出てきたんですよ。出てきたときに、これって「幸せになってくれよ」と一緒だよね?っていう話をして、3人で(拍手しながら)おおーって。
しかぎ:「素敵ー」って(笑)。
▲しかぎしょうた/Dr&Cho
──あの曲を越えようと意気込んでいたというよりは、自分のことを再確認した感じだったんですかね。
モリヤマ:そうですね。なんか、(GOING STEADYの)「青春時代」みたいな曲を自分なりに作れないかなと思っていたんです。で、昔のことを振り返っていたんですけど、それもあってか、フレーズも過去からの引用が多いイメージもあって。だから「うわ、出てきた……」って感じでした。俺、たぶん「幸せになってくれよ」以外で、〈幸せ〉って言葉を使っていないんですよ。使っていないよね?
ペレ:ああ……使っていない気がする。
しかぎ:うん。確かにそうかも。
モリヤマ:だから、選んだんですよね、きっと。なんかスピリチュアルな話みたいになっちゃったけど(笑)、なんだろうな……もう29歳になるんですけど、たとえば、仕事して、結婚して、地元の友達と楽しく遊んで、みたいな人生もあったかもしれないんですよね。でも、俺達が選んだ人生は音楽で、これでよかったんだっていうのが〈幸せでいてくれよ〉っていう歌詞なんですけど、それを再確認できましたよね。あんなこともあったけど、今が一番良いよねっていう。作れてよかったです、この曲。
──今回のタイトルについてですが、これまでの作品は『Comeback to me』『Goodbye to you』『Remember me』『It’s up to you』といった形で、「me」と「you」が交互に来ていて。今作は『you & me』なわけですけども。
モリヤマ:そこは過去のEPのこともありつつ、好きなバンドのこともありつつ(笑)。「you & me」とかね、銀杏BOYZとかGOING STEADYとか。
──「YOU & I」?
モリヤマ:そうです。でも、つまるところ、これだけライヴをし続けて来て思ったのが、ステージの上にいる俺らも、聴いているお客さんと結局は一緒なんですよ。俺らは音楽に救われてきた、ただの人間であって、それを目の前にいる人達にしているだけのことであって、何も変わらないんですよ。そういう意味でつけました。このタイトルで、誰かの生活に寄り添えないかなと思ってますね。
──「ベイビー・ドンド・クライ」は、まさにその関係性を歌っている曲ですよね。
モリヤマ:この曲を中心にアルバムを作ったんですよ。最初に作ったのがこの曲だったから、これまで思っていたことがそのままバン!って出てきたんで、歌詞はめちゃくちゃスラっと書けましたね。アルバムの中で、言いたいことを一番言っている曲だとは思うんですけど……スタジオでやったときに、「すっごい良い曲だね」って2人に言われて。いつも言ってくれるんですけど、瞬発的に「やばいね」って言葉が出てきて、それがめちゃくちゃ嬉しかった記憶がありますね(笑)。
──しかぎさんとしても、すごくいい感触があったと。
しかぎ:そうですね。できたなー!って思いました(笑)。
モリヤマ:泣いてたもんね。
しかぎ:そうそう(笑)。俺、ライヴ中とかも結構泣いちゃうんですよ。「BABY」のときもそうだったんですけど、先に曲の構成だけができていて。で、ベランダでタバコを吸っていたら、歌詞を持ってきて、最初に弾き語りで聴いたんですけど、シンプルに泣いちゃって。そのときと同じ感覚でした。
ペレ:俺は、「ベイビー・ドンド・クライ」を初めてスタジオで合わせたときに、うわ、マジか、この曲……ってなって、一回落ち着くためにタバコ吸った記憶があります。
モリヤマ:みんなどっかで一回タバコ吸ってるな。
ペレ:ロビーでタバコ吸いながら、すげえ曲できたな……って浸っちゃうぐらい感動してました。
──特に感動したポイントというと?
ペレ:なんか、優しくないけど、優しい感じっていうか。トゲトゲの形をした優しい曲みたいなイメージがあるんですよ。それってパンクロックの真骨頂だなと思って。そこがすごいなと思ったんですよね。ひとりって言われているのに、ひとりじゃないって言われているような。すごく抽象的だけど、僕がパンクロックを初めて聴いたときの感覚にマジで近かった。中学生だったらバンド始めてるなっていう感じ。
モリヤマ:素直(笑)。
ペレ:いや、なんて言えばいいのかわからないけど、それぐらいよかったんですよね。
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