ロレイン・ジェームス、アンビエント志向のWhatever The Weatherを始動しデビューAL4/8リリース
ノース・ロンドンのプロデューサー、ロレイン・ジェームスがアンビエント志向のエイリアス、Whatever The Weatherを始動しGhostlyと契約、そしてHyperdubからリリースされ、絶賛された2021年のアルバム『Reflection』に続いて、この新しい名義でのデビュー・アルバムの日本のみのCDリリースも決定した。
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アルバム・タイトルにちなんで各曲名は全て温度になっており、キーボードの即興演奏やヴォーカルの実験を取り入れ、アトモスフィアや音色を形作ることを優先したモードで、静と動、寒と暖を行き交う心地よくも刺激的な音世界を作り出している。アンビエント〜IDMを横断する20年代エレクトロニカの紛れもない傑作と言え、マスタリングはテレフォン・テル・アヴィヴが担当しており、TTAファンも必聴の内容と言えそうだ。
ノース・ロンドンのプロデューサー“ロレイン・ジェームス”は、パンデミック以降の激動のこの2年間をアートを通じて駆け抜けてきた。この間、NTSラジオでマンスリーのショーを始め、Bandcampでいくつかのプロジェクトを共有し、Hyperdubの2つのリリース、『Nothing EP』と、2019年のブレイクした作である『For You and I』に続くアルバム『Reflection』の録音を行った。また10代以来の未知の創造的な領域へと戻ってきたというべきかもしれない。クラブ・ミュージックとは対照的に、このモードではキーボードの即興演奏とヴォーカルの実験が行われ、パーカッシヴな構造を捨ててアトモスフィアと音色の形成が優先されている。このように異なる頭脳空間から、新しい座標と気候が生まれ“Whatever The Weather”という新しいプロジェクトが誕生したのである。
本アルバムのマスタリングを依頼したテレフォン・テル・アヴィヴ、HTRK(シンガーのジョニン・スタンディッシュは『Nothing EP』に参加)、ルシーン(ロレインがリミックスを手がけた)など、アンビエントと親和性の高いGhostly Internationalのアーティストたちの長年のファンであるロレインはGhostlyが空気感のあるトランスポーター的な楽曲で構成された、このセイム・タイトル・アルバム『Whatever The Weather』の理想的な拠点であると考え、このリリースへと至った。
『Whatever The Weather』のタイトルは全て温度数で表されており、シンプルなパラメーターによって、ムードを盛り上げるためのニュアンスに焦点を当てることができる。彼女の浮遊する宇宙は変動し、曲ごとに凍ったり、解けたり、揺れたり、花開いたりしていく。セッションでのジャムを元にしたアプローチを「自由な流れまかせ、私が終わったように感じたら止める」と説明し、彼女の潜在意識によってリードできるようにする。その即興演奏は、ひとつの環境の上を通過する突然の天候のような、本質的な流動性を持っている。場所は固定されているように感じるが、状況は変化していく。
アルバムの冒頭を飾る「25℃」は、柔らかなハミングとキーボードが降り注ぐ太陽のような曲。この曲は最も長い曲で、温和な風が上下すると至福の時が訪れるという点であり、安定した印象を与えるが、彼女の作品は組織的な混沌を好む傾向がある故に、その様相は当然ながら一時的なものである。このユートピアから、最もメランコリックな 「0℃」へと急降下し、浮遊する孤立したシンセ・ラインは、冷厳なビートと静電気の嵐を横切っていく。続く「17°C」では跳ね上がるような勢いのキーボードに車のクラクション、ブレーキの音、横断歩道の会話などのサンプリングが織り交ぜられ、ジャングル〜ドラムン調の変則ブレイクビーツが駆け抜けるIDM調のキラー・チューンをみせる。
この作品の一部では、ロレインはネオクラシックに傾倒し、流れ落ちるピアノの鍵盤と暖かいディレイの物悲しいヴィネットを表現している。前半最後の「2°C (Intermittent Rain)」は嵐のような短いループで終え、「10℃」ではリセットされた感覚が浸透する。エコーをかけたオルガンの上で直感的に音を混ざ、ジャズ志向を示唆する非定型のリズムにロックしたり、外したりしている。「4℃」と「30℃」は、彼女のヴォーカルの実験の幅を示すもので、前者はリズミカルで別世界のような効果があり、後者は最もストレートな歌声(彼女はデフトーンズのチノ・モレノとアメリカン・フットボールのマイク・キンセラをインスピレーション源として挙げている)を聴くことができる。
本作は「36°C」で幕を閉じるが、この曲は冒頭の「25℃」のようにシンセサイザーのコーラスが心地よく、空を飛ぶようなこのコレクションにふさわしいブックエンドとして機能している。周期的、季節的、そして予測不可能な、まさにその名の通りであり、アンビエント〜IDMを横断する20年代エレクトロニカの紛れもない傑作だ。
『Whatever The Weather』
PLANCHA / Ghostly International
ARTPL-168 2,200 yen + 税
※日本独自CD化
※ボーナス・トラック1曲収録
※解説:野田努(ele-king)
■Tracklist
01. 25°C
02. 0°C
03. 17°C
04. 14°C
05. 2°C (Intermittent Rain)
06. 10°C
07. 6°C
08. 4°C
09. 30°C
10. 36°C
11. 28°C (Intermittent Sunshine) [Bonus Track]
◆ロレイン・ジェームス Bandcamp
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