【インタビュー】miwa、最新アルバム『Sparkle』への5年間で見えてきた景色

■絶対に忘れないほうがいい部分だけはなぜか覚えている
■作った時の気持ちが色あせない

──数年に渡って制作してきた作品が収録されていますが、全体のバランスはどのように？

miwa：「DAITAN！」とか「神無-KANNA-」「アイヲトウ」などこの2年でリリースしてきたシングル曲とともに、アルバム曲として作っていた曲をカップリングや配信でもリリースしていたので、もう一回曲順や入れる楽曲から再構成して、改めて考え直しました。でも、かなり数年前に書いた曲も今書いた曲も、ひとつにつながっていることが感じることができて、「Sparkle」で始まって「Who I Am」で終わるのが自分でもしっくりきて、何度でもループできるようなアルバムになったなって感じているんです。

──アルバムって、自分にとって一番感度の高いものを集めたプレイリストみたいな感覚もありますよね。

miwa：そうですね。今はCDで聴く人も少ないんですけど、私の中では「Sparkle」で始まって次は「CLEAR」で「Who I Am」で終わるのをひとつの作品として提示することがCDだと思っています。サブスクで聴く人は、アルバム単位で聴くことを意識してないと思うんですけれど、作り手の想いとしては「こういう曲順で聴いてもらいたい」って思いが詰まっている。

▲『Sparkle』初回生産限定盤B

──長いキャリアを持つと、自分の作品と言えど「今では歌いたくない」とか「気持ちが乗らない」「自分の青さが恥ずかしい」など曲への思いも変化すると聞きます。miwaさんは自分のたくさんの曲をどのように咀嚼していますか？

miwa：私は、多分、作ったときの想い・記憶・作ったときのエピソードがあるから歌えるんだと思います。作ったときのことって忘れないんですよね。

──つらく、忘れたいような思い出と重なっているものはないですか？

miwa：つらい思いというより、そこに込めた思いとか、何でそのメロディや歌詞にしたのか、なぜこの曲を作ろうと思ったかが大事なものは忘れないんですよね。細かいことや自分の発言は忘れていたりするんですけど、自分のなかで絶対に忘れないほうがいい部分だけはなぜか覚えているので、それがあるから曲に対しての最初の気持ちが残っている。作った時の気持ちが色あせない…そこですね。

──作りたいという衝動ですね。

miwa：そうですね。曲作りが苦しいときもあるんですけど、でも作った時の気持ちが楽曲に入るので、そこですかね。

──どうして曲を作るのだと、自分で思いますか？

miwa：伝えたいんだと思います。私は自分の中の何かを形にして、その表現が音楽で。歌でも十分自分を表現できると思うんです。でも曲を作るのは、伝えたいメッセージがあって、それを作品にすることがおもしろいと感じる部分があるから続けられるんだろうなって思います。テーマとか自分の想いが乗ったメロディと詩を歌いたいと思ってる。

──自分が表現したいものに対して、自分のスキルが追いつかないストレスはありますか？

miwa：そこを今回はコライトで解消して楽しくクリエイションできたなって感じています。共作をすることで、自分になかった視点とか、自分ひとりだと煮詰まって苦しい時間を一緒に相談したり提案してもらえたりして、しかもすごくポジティブ。「こうじゃない」ではなく「このほうがいい」というアイデアがいっぱい生まれていくのが面白いなと思っていて、そこがいい作品作りにつながったなって思っています。メロディも詩もそれぞれの面白さがありました。

──コライトって魅力的ですね。

miwa：NAOKI-Tさんとやってきたその作業は私はずっと好きなので、今回も2人で仕上げたものもありますけど、そこに大知くんやjamさんが入ったりすることで、さらに新しい刺激があっておもしろかったなって思います。




──ぜひ『Sparkle』を引っ提げてライブをたくさんやりたいですよね。

miwa：そうですね。今回は東名阪にしたんですけど、無事周れるといいなと思いながらリハーサルをしているところです。

──どんなライブになりそうですか？

miwa：声を出したりタオルを回したりも難しいと思うので、制限が多い中でのライブになってしまうんですけど、やっぱりみんなには安全第一で楽しんでもらえたらと思っています。そんななかでも直接歌を届けられるのはものすごい貴重な機会だなと今は思うので、その貴重な機会に楽しんでもらえるように、歌を直接聴くことを身体全部で受け止めてもらえる楽しいライブにしたいなと思っています。

──お客さんが声を出せないという状況は、MCにも影響しますか？

miwa：「イエーイ」とか「ワー」とか言っちゃいけないから、それをやっちゃうようなことを言わないように気を付けよう、みたいな。みんな言いたくても言えないかわりに、めいっぱい拍手や手拍子をしてくれて、その思いが伝わってくるので、そこもグッとくる。みんな我慢のある中で、それでもめいっぱい楽しもうとしてくれるので、私もそれを感じて受け止めて、もっと思いが伝わるようにって思ってやっています。

──『Sparkle』を聴き込んでライブに参加したいです。

miwa：アルバム全体を通して、自分らしくあることをテーマに歌っている曲が多いんです。今までの常識や生活様式、世の中の価値観などいろいろなものが変わっていく中で、自分の価値観を大事にできたらいいな、それが自分らしさじゃないかなって。自分らしさって、自分だけのオリジナリティを指す場合もあるけど、それ以上に「自分の価値観を大事に生きていく」ってことを伝えたいなと思います。

取材・文◎烏丸哲也（JMN統括編集長）