【インタビュー】シキドロップ、挑戦と冒険が詰まったアルバム『名付け合う旅路』
いよいよ、答え合わせの時が来た。2021年に4曲の配信シングルをリリースし、1曲ごとに新たなビジョンを垣間見せてくれた二人と、期待をつのらせてきたファンの思いが、一つになる時が来た、シキドロップの4thミニアルバム『名付け合う旅路』。作詞作曲、アレンジまでをメンバー自身が手掛けるという、挑戦と冒険が詰まったアルバムのテーマは、ずばり「旅」だ。青春の光と影を映し出しながら、行きずりキャラバンのようにさすらう中で、銀河鉄道に乗って未来を目指す二人からの、この時代を懸命に生きる人たちへのメッセージとは?――新たな四季が、いま始まる。
■アルバムのテーマは、旅は旅でも「さすらい」というか
■遊牧民のキャラバンとか、そういったニュアンスです
――本題に入る前に、去年のクリスマスに突如配信された新曲「サクラジカケ」について。こんな良い曲が、何の脈絡もなく、なぜ突然リリースされたんだろう?という話から。
平牧仁(以下、平牧):あの曲は…そもそも僕は、アーティストとして「ライブをやるためにアルバムを出す」というところがあると思っていて、ライブをやるごとに作品が昇華されていくと思うんですけど、それがここ2,3作は全然できていなかった。アーティストして、気持ち悪さをずっと感じていたんです。ライブ込みで曲を作っていたところもあったので、「伝わっていない部分もあるんだろうな」って、モヤモヤしたまま続いてきたんですけど、じゃあ今のご時世ですぐにワンマンができるのか?と言ったら、それも違うし。このまま行ったら4枚目のミニアルバムが出ちゃうし、それが出る前に片を付けておきたいなと思って、シキドロップの結成記念日である12月24日に合わせて、僕の一存で、急ピッチで作らせてもらったのが「サクラジカケ」です。
――理解しました。なるほど。
平牧:それができたおかげで、僕の中で一区切りがつきました。
宇野悠人(以下、宇野):やって良かったよね。
平牧:作品としても良かったし、シキドロップとしても良かったし、作家・平牧仁としても良かった。たまっていたものがデトックスされたというか、ずっと付きまとっていた亡霊がいなくなった感じがします。「サクラジカケ」を出すことで、自分の中の区切りになりました。
――「サクラジカケ」は、過去にリリースした曲のタイトルや歌詞を織り込んで、4年間のすべてをまとめるような曲でした。
宇野:21曲ぶんだっけ? よく入れたよね。
平牧:すべてコロナのせいですけど、ライブができない期間に「ベストアルバムを出そう」というアイディアをいただいたんですよ。やるならどういうものがいい?って考えた時に、一個の作品として成立させたいと思って、僕の中でそういう(過去の曲名を織り込む)アイディアが出たんですね。「『サクラジカケ』というアルバムだったら有りかも」ということで、じゃあそういう曲を作ってみますということで、ひねりだしてみたら、案外良い曲になって良かったなという。
宇野:あはは。
平牧:結局、ベストアルバムを出すほどのキャリアではないということでリリースはなくなったんですけど、曲だけ単体で出そうということになったのが「サクラジカケ」です。でも、曲もミュージックビデオも思いのほか良いものになったのと、特に映像は悠人の知り合いがやってくれて、作品として素晴らしいものになっちゃったというか。サービス曲のつもりで作っていたのが、案外クオリティが高くなってハッピーです(笑)。
宇野:「CDに入れてくれないの?」という声もあるし。
平牧:もともと大々的に出す予定はなくて、結成記念日だったし、「既存のファンに向けて」という気持ちが強い曲ですね。僕らはいつも「新規の方に向けて」というものが強いんですけど、今回はそうではなくて。
宇野:だって、今までの曲を聴いたことがない人にとって、何が「仕掛け」なのかわからない(笑)。
平牧:そもそも、「ライブができない代わりに」という意味もあったので。ライブに来れない人へのアプローチという意味で、既存のファンの方への気持ちが強い曲ですね。…「サクラジカケ」のインタビューになっていますけど(笑)。
――ごめんなさい(笑)。どうしても確認しておきたかったので、これでスッキリしました。では本題に行きましょう。これまでもシングルの連続リリース時に話してきましたけど、新しいミニアルバム『名付け合う旅路』には「旅」というテーマがあるということで、あらためてこのアルバムはどういう性格のものなのか?という話から始めたいと思います。
平牧:そうですね、あらためて言うと…旅は旅でも「さすらい」というか、その日その日で居場所が変わるとか、遊牧民のキャラバンとか、そういったニュアンスですね。それと、毎回このインタビューで言ってきましたけど、「コロナ禍だからこそ」ということをあえて強く打ち出していて、コロナ禍になって、アーティストとしても人間としても価値観が変わって、自分の生き方をあらためて考えた時に、遊牧民のようにさすらう生き方だなと思ったんですね。今までは1年単位で考えていたことが、「明日のことすらわからない」という、特に僕や悠人のような生き方をしていると、「明日どうやって生きていこう?」というものになってしまった。それは誰のせいでもなく、「そもそも、こうだったのかな」と思ったりもして。
――ああー。はい。
平牧:そこで今一度「生きる、って何だろう?」ということをすごく考えたんですけど、それは難しいことではなく、シンプルに「人生って旅じゃん」ということになったんですね。深く考えた結果、簡単な答えになったということなんですけど。
――悠人くんにとって、この『名付け合う旅路』という作品は、どんなものなんだろう。
宇野:僕は今回、ほぼ全曲でアレンジをやらせてもらっているので、僕にとってのテーマは「冒険」「挑戦」でもあったなと思うんですね。シングルのリリースのタイミングが(制作の)順番通りではないので、わかりづらかったかもしれないですけど、僕の中ではかなり成長できたなと思ってます。コロナだったからこんなことができたというか、新しいことに挑戦する、いいきっかけをもらえたなと思っているので、僕的には満足です。
――時系列で言うと、どれが最初の曲ですか。
平牧:この7曲で言うと、「育つ暗闇の中で」ですね。
宇野:ああ、そうか。だから「育つ暗闇の中で」(のアレンジ)だけは、僕じゃない。
――自作のアレンジは、「傘」が最初でしたっけ。
宇野:「傘」を作って、これで行けるかもしれないということになって、次に「名付け合う旅路」をアレンジしたのかな? はっきり順番を覚えていないですけど、「名付け合う旅路」は最初の頃でした。だから正直言うと、もうちょっと(アレンジ的に)行けるところはあったかな?と思いつつ、それも僕の成長の過程というか。そもそも「名付け合う旅路」は、そんなにアレンジしなくてもいいよね、という話からスタートしたんです。たぶん今だったら、もうちょっとほかの音選びもできたのかな?と思いますけど、当時は満点だと思ってました。
平牧:そういうもんだよ。
――先行配信曲を除くと、リスナーが初めて聴く新曲は「名付け合う旅路」と「行きずりキャラバン」ということになります。
平牧:そうですね。
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