【ライブレポート】北園涼、「人生をかけて自分の背中で証明していきたい」
アーティスト・北園涼は、熱い男だった。
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ミュージカル『刀剣乱舞』小狐丸役、MANKAI STAGE『A3!』高遠 丞役など、2.5次元舞台を中心に俳優として活動している北園涼。俳優として年々人気を高めていく中、2019年にアルバム『Ark』を持ってアーティストデビューしたわけだが、それは単なる人気をあてにしたデビューではないことが、<北園涼 LIVE TOUR 2021「Frontier」>ファイナル公演、東京・HY TOWN HALLで行われたライブを見てはっきりとわかった。
このツアーは、自身2作目のアルバム『Frontier』を掲げて行われたもの。北園涼にとって初めての全国ツアーでもある。アルバム『Frontier』に寄せて2回取材をする機会があったのだが、インタビューで彼の言葉を聞いたときにまず思ったことは「強い信念がある」ということ。そしてその印象は、今回のライブを見た後により強くなった。
ライブの幕開けは、「Great Escape Runner」。本日のライブを支えるバンドメンバー、中嶋康考(G)、MINORI(B/One Year Later)、裕木レオン(Dr)がステージに現れイントロが流れ始めると同時に、観客は一斉に席を立ち、北園を迎え入れようと大きく拳を上げる。コロナ禍でのライブが故に、一席ずつスペースが空けられ、歓声を出すこともできないとはいえ、“これぞライブ”という光景に心が沸き立つ。
赤い照明を背にステージに登場した北園はフロアに手を伸ばしながら、“生きた屍には なりたくなんてないだろ”“突き動かせ未来を”と、力強いメッセージを投げつけてくる。続く「Just call me the Beast」では中嶋のギターソロの前に魂の雄叫びを。アコースティックライブとバンドライブの二部構成で行われた本ツアーだが、東京公演はフルバンド構成。だが爆音のバンドサウンドにも北園の声量は負けない。舞台で鍛え上げられたものなのだろう、一語一語がはっきりと聴こえる分、歌詞に込められたメッセージがまっすぐに伝わってくる。
ロック色の強い2曲の後は、「いよいよ全国ツアーのラスト。みなさん準備は整っていますか!?」と問いかけ、「ちゃんとお水も飲んでね、自分のペースで楽しんでください」とファンへの気配りを見せる北園。激しいライブパートと、この優しさのギャップも、北園涼らしさ。俳優として誰かを演じている舞台上の北園涼とは違って、“北園涼そのもの”を見ていることに気づかされる。
1stアルバム『Ark』から披露された「Hero」では朝焼けのような照明演出も相まって、ここから世界が拓けていくような感覚に。北園の声には、スケールの大きな楽曲もよく似合う。「Over the little night」では激しいパフォーマンスを一旦納め、しっかりとマイクを握り伸びやかなボーカルワークで丁寧に歌い上げた。曲終わり、会場を見渡してゆっくり手を上げた北園のシルエットが印象的だった。
場面は変わり、再び激しいロックパートに突入。「True Loud」では羽織ったシャツもはだけ、間奏前には「かませ!」と叫ぶなど、役を演じている時の姿はまるでない。重いバスドラからの「Signpost」でも絶え間なく跳びながら観客とバンドメンバーを煽る。この頃にはフロア全体の熱量も十分に高まり、ヘッドバンキングするファンの姿も見られた。
そしてアーティスト・北園涼としての始まりの曲「Ark」で最高潮の盛り上がりに達する。ここがコロナ禍でのライブ会場とは思えないほどの熱気だ。ルールを遵守し観客は声を発していないにも関わらず、今この時を楽しもうとする意気が肌で感じられる。北園が“僕が箱舟になって キミのその手を離さない”“未来を共に目指して”と歌いながら伸ばした手の先に、観客が掲げる手がある。この場所、この時を共有する全員がひとつになった瞬間だった。
そして、ここからがクライマックス。MCで北園は、自身の在り方を語る。インタビューでも“僕が「やれる」ということを証明して、昔の僕と同じようにくすぶっている人たちの背中を押して、引っ張り上げて、自信をつけてほしいと思ってる”と語っていた北園。ここまでその信念に基づいた楽曲を披露してきた上で、改めて自身の音楽活動に込めた思いを語り始める。
「みなさんは自分の足で歩いて、自分で選択してここまできたみなさんだと思います。これからもそうであってください。どんな時だって理想通りにはいかないしいろんなことがあるけれど、自分が変わらないとどうもならないし、周りが変わるのを待っていてもいつになるかわからないし、この世の中、自分が変わらないと先に進めません。もしまだちょっと踏ん切りついていない、まだ踏み出せない、という人に僕の言葉が少しでも響いて、その人にちょっとだけでも光が差したら嬉しいなと思います。そうやって僕は音楽活動を続けていきたいし、自分で自分の人生をかけて、自分の背中で証明していきたい」
人気俳優、イケメンと言われ、ファンもたくさんいる。あえて歌わなくとも、彼の言葉を好意的に受け止めてもらえる土壌はできているはず。しかし北園は、「もっと自分の思いを伝えたい」という思いで、歌うことを決めた。そして全国ツアーを通して、生でその信念を届けた。
あえて意地の悪い言い方をするが、「人気若手俳優がアーティストデビューする」という字面には、ある程度約束されたものを感じる。しかし北園涼は「今CD出せば売れるから」歌っているのではない。現に、続くMCでは「もしかしたらみなさんが望んでいない部分も見せてしまうかもしれない。でも俺は俺の人生を全うしていきたい」とも述べていた。ファンの中には「イメージが崩れるから歌わないでほしい」と思う人もいるかもしれない。でもそれを恐れずに、伝えたいことを自分が伝えたい方法で伝えようとしている北園には「人気若手俳優がアーティストデビューする」イメージとは真逆の、泥臭さを感じる。やはり北園涼は熱い男だった。
そして自分の思いを伝えた後、「自分たちの人生を精一杯明るくするために生きていきましょう。俺たちの未来に光あれ」と宣言し、ラストナンバー「ヒカリアレ」を投下。間奏あけのソロパート、繰り返される“ヒカリアレ”の言葉は、きっと聴いた人の背中を押しただろう。
幕が降りてもアンコールを求める拍手は鳴り止まず、それに応える形で北園は「Gold」「Road」を披露。先ほどのMCを踏まえて改めて聞くと、とても勇気をもらえる楽曲だ。北園も「最後まで皆さんが激しく遊んでくださる姿が美しくて、幸せな1日になりました」と述べる。そして「10年後も、20年後も、こうやって歌っていたいしお芝居をしていきたい」と感慨深く語った。余談だが、そこから膝サポーターをしながらライブをするとどうなるんだろうという話や、明日行う“飲み”配信の話、老後の話などトークがとりとめもなく広がり、思わず笑ってしまう場面も。
オーラスは自身が初めて作詞に挑戦した、つまりもっとも自分の思いを込めた楽曲、「Frontier」。マイクを握りしめて自分の言葉をしっかりと伝える北園。そして大きく手を振りながら、心でコーラスを重ねる観客。北園の思いはしっかり伝わっているし、ファンの思いもまた北園にしっかり届いていたと思う。こうして初の全国ツアーは、明るい希望を残しながら、幕を下ろした。
なお、北園は今夏に3rdシングルをリリース、全国ツアーを行うことが決定している。俳優の北園涼はもちろんだが、生身の北園涼という一人の熱い男のライブも、より多くの人に知ってほしいと思う。
取材・文◎服部容子(BARKS)
写真◎釘野孝宏
セットリスト
M2.Just call me the Beast
M3.Hero
M4.ALIVE
M5.Over the little night
M6.True Loud
M7.Signpost
M8.Ark
M9.ヒカリアレ
アンコール
M10.Gold
M11.Road
M12.Frontier
2nd ALBUM『Frontier』
【Type-A】CD+DVD
COZX-1704~5/¥4,000+税
【Type-B】CD
COCX-41363/¥2,700+税
[CD収録曲]
M1. Relive
M2. Gold
M3. Great Escape Runnner
M4. Signpost
M5. Frontier
M6. True Loud
M7. Just call me the Beast
M8. Road
M9. Over the little night(映画『BLOOD-CLUB DOLLS 2』主題歌)
[DVD収録予定内容]※Type-Aのみ
北園涼無観客配信LIVE「Frontier」アコースティックLIVE(2020年7月26日)
・Long way to GO
・Over the little night
・Hero
・キミのそばで
・Just call me the Beast
・ALIVE
・ヒカリアレ
・Be Bright
・Drive
・Frontieer
特典映像
北園涼2ndワンマンライブin神田明神ホール(2020年2月24日)
・Ark
・Lowlight
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