【ライブレポート】吉田兄弟、華風月をゲストに迎えた<吉田劇場>で「3回目でやっと和。やっと華」
20周年を迎えた吉田兄弟が現在行なっている意欲的な試み<吉田劇場>。毎回、異なるアーティストを迎えての2マンライブだ。今年は計4回行われる公演の第3回目、去る10月15日の華風月との一夜をレポートしたい。
◆<吉田劇場> 画像
異なる何かと何かを結びつける。そういう架け橋をいくつも目撃したステージだった。そもそも、MIYAVI、H ZET TRIO、華風月、Creepy Nutsというラインナップからして、様々なジャンル間に架けられた橋以外の何者でもない。同時に、ゲストが変わるということは居合せるお客さん同士も変わってくるということでもある。そこは開演前の客席を見回しても顕著で、もうおもしろいぐらいだった。
9月9日の初日は1列に1人はMIYAVIそっくりの髪型をした男子がいた。全体としてもかなりMIYAVI寄りの客層だったと思う。対して今回、1列に1人いたのは和服の女性だった。部分的に和を意識したお客さんまで入れればけっこうな数だった。これは華風月のファン。さらにはMIYAVIの時には少数だった年配の方がかなりいた。こちらは昔からの吉田兄弟のファンだろう。
そんな客層を前に、まずは吉田兄弟のステージが始まった。1〜2曲目は兄弟2人だけの演奏だったが、3曲目は打ち込みや歪んだギターが入ったトラックを流してのナンバーだった。
MCで弟の健一が「1回目ロック、2回目ジャズ、3回目やっと和(笑)」と言えば兄の良一郎が「(女性初登場という意味もかけて) やっと華」と返す。
と言いつつも、その吉田兄弟の音楽自体がすでにクロスオーバーだ。4曲目もイントロからアラビックなムードが漂う。ヨーロッパのトラッドを感じされるような作品もあった。ラストが「津軽じょんがら節」という王道だっただけによけい、彼らがそれだけではない道を歩いてきたことがよく分かった。今回のような趣向のライブをやるに至った経緯も、選曲から垣間見えていた。
続いて華風月。和楽器バンドの母体となった彼女たちはボーカル&ピアノの鈴華ゆう子、尺八の神永大輔、箏のいぶくろ聖志というトリオ編成。まず2曲が披露された時点で気がついた。尺八は時にフルートのような、箏は時にハープやギターのような位置づけでプレイされていることに。
その上で鈴華ゆう子だ。音大ではピアノを専攻しつつ詩吟の師範。経歴からして和洋のハイレベルなミクスチャーの彼女。そのパフォーマンスがこの日も爆発していた。情感あふれるピアノを奏でつつ和なポップスを歌う。一方で3曲目には詩吟を披露。続いて童謡「ちいさい秋」をアレンジした組曲。圧倒的な歌声で聴かせたこのくだりは年配のお客さんの体をもゆすらせていた。場面によっては尺八と箏だけにも関わらず、まったく不足を感じさせない2人の演奏の説得力もやばかった。
最後は吉田兄弟と華風月のセッション。和楽器バンドにも三味線がいる。プライベートで飲みにいったこともあるそうだ。だから「はじめまして」ではない相性の良さがあったのかもしれない。とはいえ事前の音合わせは数回だったという。それにして!と思える息の合い方があった。
特にお互いの持ち曲に参加するという形で4曲を披露したのち、最後に披露された新曲「時の旋律」。これは普通この編成ではまずやらないであろうプログレといってもいい複雑な展開を持ったナンバーで、一回限りの紹介で終わるのが惜しいような出来だった。
終演後、吉田兄弟の2人にたずねてみた。「相手が誰かという以前に、ライブを重ねることでコラボ自体の質も深まってきてるんじゃないですか?」と。すると「そう、そうなんですよ!」と大きくうなずいた彼ら。だとしたら12月17日に行われる今年最後の公演にして最も想像のつかないCreepy Nutsとのコラボ。その内容も非常に気になってきた。
取材・文◎今津 甲
■<吉田劇場2020 〜100年後に継承される新たなる伝統を共作し、未来へ遺す〜>
open18:00 / start19:00
出演:吉田兄弟/Creepy Nuts
▼チケット
・指定席¥6,000
・プレミアムシート¥7,500 ※前から5列目以内 / 当日、吉田兄弟のリハーサル10分見学可能
・配信チケット¥2,000-
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