【対談】吉田兄弟×MIYAVI、「未来に残すためには、新たにかっこいいものを作っていかないとならない」
アーティスト活動20周年を迎えた三味線デュオ・吉田兄弟。彼らがこのアニバーサリー・イヤーに企画したのが<吉田劇場>だ。毎回ゲストを迎えてコラボ曲をも披露する、という意欲的な有観客・配信による2マンライヴ。今回はその初日、9月9日に共演したMIYAVIとの対談をお贈りしたい。対談はまだライヴの熱も冷めやらぬ翌日に行われた。
◆ ◆ ◆
■民謡界を超えてもっと色んな人に津軽三味線を聴いてほしい── 吉田良一郎
──まずは個々にお聞きします。以前ある記事で「いつもどんな音楽を聴いてるんですか?」という質問に、良一郎(兄)さんがアコーディオンのアストル・ピアソラ、健一(弟)さんがフュージョン・ギタリストのパット・メセニーの名をあげているのを見かけました。その温和な印象に対して今回の<吉田劇場>のゲストたちはMIYAVI、H ZETTRIO、華風月、Creepy Nuts。いきなり爆発してますよねー。
吉田健一:(笑)。「もっと色んな音楽を吸収したい!」「想像を超えるものをやりたい!」っていう想いがあったんです。
──ふだんからバンド物も聴いたりするんですか?
健一:けっこう聴きますよ。3ピースぐらいの、少ない人数の中でお互いがどうからむか? みたいなものが好きで。
吉田良一郎:ボクはバンドというより、姫神のようなアジアンチックな民謡アレンジの曲が好きですね。
──ギターは持ってます?
健一:高校のときはバンドで奥田民生さんとかやってました。でも気づいたら弦は6本あるのに3本しか使ってなくて、「だったら三味線でいいや」ってなったんです(笑)。
──一方MIYAVIさんは'00年代の中頃、その名もKAVKI BOIZという和太鼓の入ったバンドをやってましたよね。当時から和なものへの関心が高まっていたんですか?
MIYAVI:高まらざるをえなかった、んです。
──というと?
MIYAVI:10代の終わりのアジアを皮切りに海外へ行くようになって、自分の国のことを語れるかどうかが重要になってきたんです。日本だと海外のギタリストの様に弾ける人ほど本物っぽく見えたりするけど、向こうでは似れば似るほど通用しない。なぜならコピーした相手がもうそこにいるから。そうなると「じゃあ自分たちにしかないものってなんだ?」ってなる。で、そこを再勉強し始めて…。
──昨夜のライヴで三味線の人間国宝・鶴沢清治の話をされてましたよね。
MIYAVI:はい。鶴沢さんのことを知ったのは20歳ぐらいなんですけどね。吉田兄弟さんの爪も鶴沢さんみたいに裂けてるのかどうか、気になってました(笑)。
健一:一の指(人差し指)? 弦を填める為に溝を作ってるよ(と、左手の人差し指を見せる)。
MIYAVI:そうなりますよね。ボクも練習してた時期があるんでなんとなく分かる。
健一:え、マジで?
MIYAVI:『アンブロークン』ってハリウッド映画の中で、囚人を黙らせて三味線を弾くシーンがあったので(Blu-ray特典に未公開シーンとして収録)そのために当時、上妻宏光さんに習って少し練習してたんです。あの大きなバチを振り続けるのは大変ですよね。
健一:前にサンフランシスコでライヴをやったとき、パット・メセニーが観にきてくれたんですけど、やっぱりバチの大きさにびっくりしてた。「ビッグ・ピックだ!」って言って(笑)。
──ここまでの発言からも垣間見られるように吉田兄弟さんとMIYAVIさん、独自の道を切り開こうとしているところでも共通してますよね。単なる伝統芸やジャンルとしてのロックではなく。
MIYAVI:してるでしょうね、そこは。
健一:伝統っていうのも大事なんですけど、三味線界って昔からの曲ありき、なんですよね。未来に残そうとするなら新たにかっこいいものを作っていかないとならないのに。で、ボクらは中学のとき、まず流派から離れて全国大会で1位になることで実力を証明しつつ、オリジナルを作るようになっていったんです。
良一郎:民謡界を超えてもっと色んな人に津軽三味線を聴いてほしい、これを世界に持っていきたい、という想いでね。そういう意味では和太鼓の林英哲さんには衝撃を受けましたね。
MIYAVI:英哲さんとは何度か一緒にやったな。
良一郎:ボクらもオファーは何度か頂いたんですけど。
MIYAVI:断ったの??
良一郎:いやいや、スケジュールが合わなかっただけです(笑)。
MIYAVI:吉田兄弟さんが三味線界に思ってたのと同じようなこと、ボクにもずっとありました。僕は最初、サッカーの夢に挫折してロックに救われた。「ロックって、こんなに自由なんだ!」と。でも、ふと見渡してみると昔と同じようなことをやって、それがロックだと言ってる人が多い。今は、たとえばエイサップ・ロッキーだったり、トラヴィス・スコットなど、ヒップホップのほうがよっぽどロック。壊して新しいものを作るのがロック、だとしたら、俗に言われてるロックって、全然ロックじゃないじゃんって。
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