【ライブレポート】スターダスト☆レビュー、笑顔と感謝に満ちた8ヵ月ぶりの単独ライブ

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スターダスト☆レビューのライブ<新型コロナ対策ライブ「こんなご時世、バラードでござーる」>が8月30日(日)、東京・日比谷公園大音楽堂にて開催された。

◆ライブ写真

同公演は政府や都、会場から示された新型コロナウイルスの感染拡大予防ガイドラインに基づく対策を行い、座席数を会場キャパシティの半分に絞った上で、観客を入れて開催されたもの。

また、公演の模様は「Streaming+」で生配信も実施。こちらでは、開幕前に「飲酒、飲食しながらの閲覧は自由ですが、年齢のことを考え、飲み過ぎ食べすぎには注意しましょう」といったユーモラスな注意事項配信が並ぶなど、配信ならではの楽しみもあった。

開演時間の17時。緑に囲まれた日比谷野外大音楽堂は、背後に立ち並ぶビルへ夏の青空が映え、どこか神秘的な雰囲気が感じられた。根本要(Vo,G)による軽快な挨拶とともに舞台へ登場したメンバーたちは、互いにソーシャルディスタンスを保ったまま“エア円陣”を組んで、それぞれの立ち位置へ。ピアノによる囁くようなオープニングが流れ始めると、会場に集まった1,200人の観客を眺める根本の表情に深い感動の色が差す。


8ヵ月ぶりとなる単独ライブの冒頭を飾ったのは「Single Night」。エネルギーの躍動を感じる都市的なイントロを持つ同曲は、本来ならば離れた恋人同士の寂しい夜を歌う曲なれど、観客とバンドとの距離が遠くなったコロナ禍の中では、また違った意味を持つ。ギターのソロが祝祭的に降り注ぐと、喜びに満ちたバンドメンバーの笑顔が輝く。

続く「愛してるの続き」「ふたり」は、どちらも穏やかで愛に満ちた作品だ。丁寧に音を掴むヴォーカルの心地良さは、そっと寄り添うような歌詞によく似合う。どこか懐かしさのあるイントロから壮大なロックバラードへ展開していく音楽の中、観客の顔をひとりひとり確かめていくような根本の視線が印象的だった。

MCでは、まず「会いたかったですよみなさん、ホントにようこそいらっしゃいました!」と観客への感謝を口にした根本。コロナ禍で打撃を受けた音楽業界において、“ライブバンド”として知られるスターダスト☆レビューも、2019年12月に行われた<還暦少年ツアー>ファイナル公演以降、この2020年8月30日(日)の公演まで、単独ライブが一度もないままだった。

普段とは半分の観客数に絞られた今回。歌いながら声が詰まった場面を「涙もろくなったんです。年齢のせいです」と冗談めかしたり、配信でライブを見るファンのため、客席へ「ネットの皆さんに大きく手を振ってみましょう、ありがとう!」と呼びかけた後、「なんか(ライブの)終わりみたいになっちゃったよ」とはにかむ根本へは、笑い声よりも大きな拍手が贈られる。これも、観客が声を上げて笑うことすら制限されたコロナ禍ならではのことだ。

「今日はバラードです。盛り上がりません。それどころか私はリハーサル中に寝ました。歌いながら」「(眠くなったら)交代で寝てくださいね」というジョークで場を盛り上げつつ、4曲目に披露された「GOOD-BYE, MY LOVE」は、メロウで切ないラブソングながら、端々にピリリとした“苦み”が感じられる初期の作品だ。ベースが歌う副旋律に絡むジャズテイストなキーボードの音色が、次第に傾き出した陽射しの中の風景にもよく似合う。

「中村中ちゃんが素晴らしい詩を書いてくれました」と紹介された「潮騒静夜」では、微かに聞こえる蝉の声すら静寂への味付けのようになる。秘めやかな詩を完璧に歌い上げた根本は、「配信にて歌詞をご覧の皆さま、どうですか?」と得意顔。

途中、1981年のデビューから40周年を迎える今までを振り返り、半年もライブを開催していないことは無かったことが語られた。まだ100%とはいえないが、少しずつライブを再開できることへの喜びは、バンドだけではなく、公演を待ち望んでいたファンも同じ気持ちを抱いていることだろう。

また、今回のライブではバラードが中心に演奏されることに関し、根本は「バラードって似た感じじゃない。歌っててそう思うんだもん」と際どいコメント。その言葉に、メンバーたちは苦笑いしていた。


ここでは本来、続けて数曲を演奏する予定だったそうだが、まだまだ話し足りないという根本はMCを入れることを宣言。「だって話す機会ないんだもん。(観客は)茶飲み友達みたいなもんだよみんな」と語って、「トワイライト・アヴェニュー」の伸びやかなメロディを歌う。

今回の公演は、スターダスト☆レビューにとって始めての有料配信ライブとなった。合間のMCでは、5月に行われたYouTubeでの無料配信ライブのことにも触れ、「(無料配信ライブと有料配信ライブが)そんなに変わってないのに、なぜ金取るんだっていうのがあるんですけど、僕らも危なくなってきたんです。“年中模索”が“年中金策”になってきてですね」というジョークが冴える。

続いてバンドは“カラオケでよく歌われる曲”として、「追憶」「もう一度抱きしめて」を2曲続けて披露した。新型コロナウイルス感染症の拡大による自粛期間中、知人の飲食店のカラオケを借りて、いつも3~40曲歌っていたという根本。この日のライブでも、喉の調子は好調だ。

ここで根本は、一席ずつ空いた客席を市松模様にたとえ、“市松模様=和風”という連想から、和風な曲として「おぼろづき」「木蘭の涙」を披露。ただしテーマ的には“一抹の”不安があるという。

その不安が的中し、「おぼろづき」では歌詞を間違えて演奏がストップ。根本と柿沼清史(B)の「何が歌わせたんですかね、僕に。ああいう歌詞を」「そうだね。夢見ちゃったね」というやりとりの後、「もういっかいMCからいきますか。“一抹”の不安を抱えながら」と再開して、トラブルにも笑いで対処する円熟したバンドの余裕を見せた。


陽が落ちて透明さが増した空へ、祈るように静な詩が吸い込まれていくと、名曲「木蘭の涙」の密やかなイントロが流れる。藍色に沈み出した風景の中、擦れた母音の残響がコーラスと切なく混じり合い、影となった観客席へ降り注ぐ様は、美しい映画のワンシーンのように見えた。

ここで、ずっと座っている観客に軽いストレッチを勧めつつ、メンバー紹介と称した休憩時間&トークショーがスタート。根本の紹介に呼ばれてステージの前に出たメンバーたちが取り出した巻物には、コロナ禍の生活における「暇つぶし」をテーマとした5・7・5の川柳が書かれていた。

高圧洗浄にハマって水道代が3倍に跳ね上がった寺田正美(Dr)、運動のつもりで外に出てはつまみ食いを繰り返してしまった柿沼清史、犬の散歩で足を火傷した岡崎昌幸(G,Key)、電子機器をいじりすぎた添田啓二(Key)、カレーをデリバリーして回った林 “VOH” 紀勝(Perc)。元気よく手を挙げてはそれぞれの自粛生活を語るメンバーたちに、根本がツッコミをして回る。そんな根本は自粛生活中、2キロほど痩せたという。

休憩が開けると“カラオケコーナー”と称し、生演奏が行われていない「一秒も離さない」「Let's Call It “Love”」「季節を越えて」のメドレーが、カラオケ音源を使って披露された。解放的なコーラスと穏やかなサウンドが重なる、生演奏とは一味違う贅沢な時間。浮遊感が増したラブソングは、陽が暮れたばかりの時間とよく似合う。

生演奏に戻った「もう一度ハーバーライト」では、ひな壇に腰掛けてコーラスを作るメンバーたち。黄昏色の温かな照明の中、まどろみの中でスキップするようなメロディが歌われると、夕暮れの渚の情景が浮かんでくる。

続いて、「チャレンジ曲です。場合によっては2度やる場合もあります」「ヤバいときには、久々のライブで感動して声が詰まったんだと思っていただければ」と宣言してから、7月にリリースされたニューアルバム『年中模索』からの新曲「偶然の再会」をライブ初披露。今回が初演ということで、配信では曲名の下に「※初演奏につき、多少難ありですがご了承ください」とテロップまでついていた。


最新シングル曲となる「偶然の再会」は、時を超えた再会から始まるふたりの関係を、ワクワクするようなメロディと甘酸っぱいリズムに乗せて歌う作品だ。完璧にパフォーマンスしたバンドの姿を眺めていると、2021年からの開催を予定されているニューアルバムを引っさげたライブが楽しみになる。

「偶然の再会」以降は、スタンディングの許可が下りた。しかし感染拡大防止の観点から、観客が大声を出すことは禁じられている。この状態で行われるライブを「コール&ノーレスポンス」と称した根本が「みんないくぜー!」とコールすると、観客は無言で手を挙げレスポンス。その光景は「ぞわぞわするね!」と根本が言う通り、非日常的なものに見えた。

続く2曲は“コロナ対策曲”とのこと。曲名に絡め、「“三密嫌ぁ~んボリー”……“うしみつジャンボリー”でしたね」「とにかく消毒しなきゃいけないということで、“magic~手を洗おう~”」と洒落を飛ばせば、ばらばらとした拍手が上がる。なお、「magic~手をつなごう~」では、後半部分を替え歌にして、手洗いの仕方がレクチャーされた。

そこから間をあけずに、定番のナンバー「夢伝説」を披露。現在進行形の演奏を楽しみつつ、同時にパーカッションやキーボードの小技を俯瞰できるのが、配信ライブの長所のひとつだ。


前曲の余韻が消えぬ間に、「HELP ME」のショッキングなイントロが夜闇を切り裂くと、ステージはこれまでのあたたかな雰囲気から一転。ハスキーな歌声と高度な演奏技術で、大人の色気をたっぷり含んだジャズロックを存分に魅せる。

クライマックスへ向かう「と・つ・ぜ・ん Fall In Love」は、世の中の閉塞感を吹き飛ばすような快速さで奏でられた。演奏中には、“コロナ対策ダイエット運動”がスタートし、マスクやフェイスガード、雨合羽を身に着けた根本、岡崎、林がマラソンや水泳、バレーボール、卓球、ロッククライミングといったスポーツの動きを模した体操を披露していく。だが、どちらかといえば運動というよりコントのようだった。

本編最後のMCでは、半年ぶりのライブが開催できたことへの喜び、そしていつか会場で会おうという約束を語った根本。ライブの開催のために尽力してくれた方々への感謝が語られると、観客席からは彼らへの拍手が贈られた。

そして、壮麗なコーラスとともに始まる「Find My Way」が本編の最後を飾る。同曲は2004年にリリースされた作品だが、“呼吸するだけで目一杯の夏の日”という歌い出しや歌詞の端々が、そのまま今回のライブのこと、そしてコロナ禍における世界のことを表しているようだ。しかし希望に満たされた旋律と歌声は、いつかこの状況を抜け出し、また出会えると信じさせてくれる。


満場一致のアンコールを受け、「もうちょっとやってもいいですか?」と再登場した6人は、定番のナンバー「今夜だけきっと」、そしてバンドの音楽性の高さを遺憾なく発揮する「NO! NO! Lucky Lady」を披露。この日いちばんの高音シャウトも飛び出した。

最後には、これからもさまざまな配信イベントが行われていくことを予告して、6人の歌声が重なる「AMAZING GRACE」をアカペラでパフォーマンス。感謝の言葉を繰り返し、笑顔に満たされた3時間のステージを締めくくった。


なお、スターダスト☆レビューは10月より月1回の配信企画を実施。初回は『月イチ配信企画第一弾!スタッフ応援トークライブ『年中模索』取扱説明会』と題して10月2日(金)に配信され、チケットは現在販売中となっている。

さらに10月28日(水)には、2019年に行われた野外コンサートの模様を収めた『STARDUST REVUE楽園音楽祭 2019 大阪城音楽堂』が、映像作品とライブアルバムとしてリリースされる。

Photo by Mariko Miura
文◎安藤さやか(BARKS編集部)

[セットリスト]
<スターダスト☆レビュー「こんなご時世、バラードでござーる」>
2020年8月30日(日)東京・日比谷野外大音楽堂
M1 Single Night
M2 愛してるの続き
M3 ふたり
M4 GOOD-BYE, MY LOVE
M5 潮騒静夜
M6 トワイライト・アヴェニュー
M7 追憶
M8 もう一度抱きしめて
M9 おぼろづき
M10 木蘭の涙
M11 一秒も離さない~Let's Call It “Love”~季節を越えて
M12 もう一度ハーバーライト
M13 偶然の再会
M14 うしみつジャンボリー
M15 Magic~手をつなごう~
M16 夢伝説
M17 HELP ME
M18 と・つ・ぜ・ん Fall In Love
M19 Find My Way

ENCORE
M20 今夜だけきっと
M21 NO! NO! Lucky Lady
M22 AMAZING GRACE

■リリース情報

■Blu-ray・DVD『STARDUST REVUE 楽園音楽祭2019 大阪城音楽堂』
2020年10月28日(水)発売
[収録曲]
1.Can't take my eyes off you
2.この胸で泣けばいい
3.流星物語
4.恋するTシャツ
5.空がこんなに青いはずがない
6.トワイライト・アヴェニュー
7.Be My Lady
8.夢伝説
9.Cassiopeia
10.さよならの足音
11.B型を愛して下さい
12.パイナップルプリンセス?私の青空
13.Stand By Me
14.うしみつジャンボリー
15.WAOH!
16.心の中のFollow Wind
17.BEATに愛を込めて
18.太陽の女神
19.還暦少年
20.HELP ME
21.Danger Lady
22.Goodtimes & Badtimes
23.Gently weeps

■CD『STARDUST REVUE 楽園音楽祭2019 大阪城音楽堂』
2020年10月28日(水)発売
[収録曲]
1.この胸で泣けばいい
2.恋するTシャツ
3.空がこんなに青いはずがない
4.トワイライト・アヴェニュー
5.Be My Lady
6.夢伝説
7.心の中のFollow Wind
8.BEATに愛を込めて
9.太陽の女神
10.還暦少年
11.HELP ME
12.Danger Lady
13.Goodtimes & Badtimes
14.Gently weeps

■配信情報

月イチ配信企画第一弾!
スタッフ応援トークライブ「年中模索」取扱説明会
出演:スターダスト☆レビュー
スペシャルゲスト:佐橋佳幸
2020年10月2日(金)19:30配信スタート
(2020年10月5日(月)23:59まで視聴可能)
発売日:~2020年10月5日(月)21:00まで
専用発売URL:https://eplus.jp/sdr1002/

[問]Streaming+(イープラス)
https://eplus.jp/streamingplus-userguide/

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