【インタビュー】MUCC、ミヤが語る『惡』と新境地「死をポジティヴに捉えるというコンセプト」

■無くなってしまう気がするんですよ
■だから俺は表現することをやめない

──ライヴでアルバム『惡』をどう表現していくのか、まだ先が見えない状況ですけども、今後に関してどういうイメージを持っていらっしゃいますか？

ミヤ：ぴあアリーナMMでのアリーナワンマンからアルバム『惡』の世界観を始める予定だったので、中途半端にやりたくないという気持ちがあります。とにかく現在はライヴができない状況だし、すべての世界観を見せることは不可能。だけど、違う形であれ、少しでも新譜の形をお客さんに見せたいという気持ちもあるんです。やっぱりしっかりとした世界観は生の現場で見せたいので、コロナが収束するまで我慢してもらうしかないんですよね。配信ライヴで演奏すること自体は別にできるんですけど、それって元の表現の仕方とちょっと変わってきちゃうというか。

▲YUKKE (B)

──そこで初おろしはしたくはない、という感じ？

ミヤ：うーん、初出しが配信とか画面越しって何か寂しいですよね。そうせざるを得ない状況ですけど、そもそも配信って、ライヴの現場に行ったことがある人にとっての、もう一つの楽しみ方だと思ってるので。

──どのアーティストにとってもライヴは重要ですけど、特にMUCCには不可欠という感じがしますし。生ライヴの記憶の残像を元に、新曲を聴いてイメージを膨らませるのも楽しいんですが、一度も行ったことのない状態だと、なかなか難しいですし。

ミヤ：難しいというか、元々、表現方法としてそれがしたかったわけではないので、初見が配信だと切ないというか。イヤだというわけではないんですよ。だからエンターテインメント的なことは、今やれることをやっていく。それと映像系でいえば、新しく仕込んでいるミュージックビデオのネタもあるので、そろそろ家にいながら楽しめるタイプの配信をいろいろと提示できると思います。実は、現在の状況になる前につくり始めたもので、面白い仕上がりになると思います。

──着々と進めていらっしゃるんですね。今後について、さほど暗くは考えてらっしゃらないですか？

ミヤ：配信でできることは最速でやろうとしているし、この前も配信ライヴをしたばかり。そういう形で楽しめるものを提供することは絶対にやめない。もちろん、それがバンドの本質とか核心に触れる表現ではない、ということが分からない人もいるだろうし、MUCCに興味を持って初めて観たのが配信ライヴでした、というのは新しい形だとは思うんです。だけど、ゆくゆくは現場に来てライヴを観てもらえるようにしたいな、それまで待っていてほしいな、という気持ちで、今できることをやっています。この状況が落ち着いても、たぶん、復活するのはうちらみたいなエンターテイメントに関わる職業が一番最後じゃないですか？

▲SATOち (Dr)

──最も初期段階から影響を受け、最後の最後まで元に戻れないでしょうね。

ミヤ：娯楽とか音楽って、医療とか食べ物とかをつくっているような生活の根幹を支える仕事をしている人たちに必要だと思うんですよ、休憩と一緒で。だからこの前の配信ライヴは、そういう人たちの“息抜きになってくれればいいな”という気持ちで、寄付をするようなつもりで、お昼時にやったんです。元々ライヴ以外の発信はしてこなかったアーティストの場合、お客さんは行きたくてもライヴがないから行けなくなるわけじゃないですか。“そこをなにで埋めてるのかな？”って考えますよね。ただ生のライヴが復活することを我慢して待つだけなのか、“こんなにライヴが観られないなら、現場には行けないけど、配信という形で何かやってくれる人のほうがいい”ってなるのか。結局うちらは表現することが仕事なので、何かしら表現をし続けないと、無くなってしまう気がするんですよ。だから、俺は表現することをやめない。

──なるほど。

ミヤ：あと、今回は初回プレス特典にハイレゾ音源が付くんです。盤はマスタリングエンジニアにやってもらってるんですけど、ハイレゾ音源のマスタリングはすべて俺がやっていて、これは全く別モノなので2ヴァージョン同時発売みたいな感じでもあるんです。しかもダウンロード版にはシングル曲が2曲入って全18曲。これらも、今ライヴがない分、普段とはちょっと違う楽しみ方を提供できたらいいなと思ってやってみたことです。

──お話を伺いながら、ミヤさんの強さを感じています。心が折れることはないですか？　思い通りにいかない事態が多発している状況だと思うのですが。

ミヤ：うーん、そこまでネガティヴじゃないかな、俺は。“心が折れる”ということがどういうことなのかが分からないというか。何かが起こったら、それがその後のためのものだと考えてしまうタイプなので。コロナによって働き方も絶対変わりますよね。だから、いい機会だと思うんですよ。さっき言った神様の話じゃないけど、“人類が変わる瞬間なのかな”という気がしてますし、今ここで何もできないアーティストは淘汰されていくという気もしているんです。だから俺はポジティヴに捉えていますよ。

取材・文◎大前多恵








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