【ライブレポート】スガシカオ「23年後、弾き語りライブは想像していなかった」

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2020年2月25日、LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で開催された<SUGA SHIKAO Hitori Sugar Tour 2020『明日、君の街に歌いに行くよ』>東京公演。2013年から始めたスガシカオがひとりでギターを持ってステージに立ち、弾き語りで歌うシリーズだ。

ステージ上には、四角の絨毯。その上に機材とギター。何の舞台装飾もない。四角い絨毯は公開された秘密基地のよう。そして、彼と観客が向き合う場所。東京は、キャパ2000超えのホールだが、始まってしまえば余計な飾りなどいらないことに気づく。18:30過ぎ、客電が落ち曲が流れ始めると、下手から登場。「労働なんかしないで 光合成だけで生きたい」からライブは始まる。2019年4月17日に11thアルバムとして発売されたタイトル曲だ。この曲のタイトルを聞いたとき、これはきっと多くの人が願うことではないか、と思った。誰もが思いつつ、言葉にできなかったこと“労働せずに光合成だけでいきていけたら…”。鬱々とする部屋を描きつつ、光合成という太陽を糧にする生き方を望む。パラドックスさが響く楽曲。ギターソロでは、秘密基地からはみ出して、地元東京へ挨拶をするよう。

MCでは、新しくなった渋谷公会堂へ足を運んでくれた観客への感謝。そして、足元の機材について、実際にやってみながら説明をする。

ひとりと1本で曲を進めつつ、MCではデビューからいろいろあったけれど、デビューした日に、23年後にこんな大観衆のなかで弾き語りライブをやっていることは想像していなかった、と伝えた。


そして、この日は、ライブ会場と通販のみで本当に近くで曲を聴いてくれる人だけに届けるために創った『ACOUSTIC SOUL 2』の販売日。完売後の再販はないとのこと。そのCDから「1+1」。奥田民生さんを目指して創ったという制作話を披露。

“ぼくらは位置について 横一列でスタートをきった”で始まる「Progress」は、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」のテーマ曲として、より多くの人にも知られる曲。進捗を意味するこの曲は、誰もの背中を押し、自分のズルさや弱さを認めさせてくれる優しい曲だ。

そして、カバー曲コーナーへ。他の会場では客席の方にカードを引いて決めてもらうらしいが、この会場では難しいということで、「あらかじめ決めてきました」と。サザンオールスターズの「慕情」。続き、1968年に発売され、改めて歌詞を素晴らしいと思いセレクトした「三百六十五歩のマーチ」。そして、Little Glee Monsterへ楽曲提供した「ヒカルカケラ」。最後に、嵐に楽曲提供した「アオソラベタル」の4曲を披露。カバー曲もセルフカバー曲も、ギターと声だけで表現した瞬間、すべてがスガシカオ色になる。

ここで、Hitori Sugarなのに、ひとりでなくなりゲスト登場。初期のバンマスであるキーボード森俊之氏が登場。『ACOUSTIC SOUL 2』で、彼がキーボードを弾いた「発芽」。心に芽吹いた君という蕾がものすごい力で咲き、自分をえぐっていき、壊していくという歌だ。アーティストが年齢を重ねていくと、いったいこれからどんな歌を歌うのだろう?と思うことがある。彼のように鋭い視点で特徴的な歌詞を歌ってきた30代から23年を経て、若さの勢いだけではない歌は?と思ったときに、今回の「発芽」は、まさに23年を経たから生まれた歌だと感じた。そして、ドラム沼澤尚氏を呼び込み、「アストライド」。

この3人での演奏を聴けるのは、Hitori Sugar東京ならではだろう。本人も客席側で聴きたいと。


『ACOUSTIC SOUL 2』収録曲「ヤグルトさんの唄」、ヤグルトさんはファンの間では周知のことだが、彼の母の愛称だ。そう、母に向けた歌。直接は言えない言葉が並ぶ。誰にも自分を生んでくれた人がいて、そこには親子の数だけの関係がある、しかし、いつかは離れていく。子供の頃、当たり前に思っていたことひとつひとつが大切な思い出になる。

本編ラストは、安全と冒険、退屈と充実、どっちを選ぶと歌う「ストーリー」。明るい日と書く明日を抱えながら、人生というストーリーを歩く。

2時間半に渡った<SUGA SHIKAO Hitori Sugar Tour 2020『明日、君の街に歌いに行くよ』>東京公演。気づけば途中から一人ではなかったけれど、彼が敢えてこのツアーを組む意味は、彼の中にある忘れてはいけない何かを確かめるためなんだろう、と勝手に想像した。

写真:橋本塁 [SOUND SHOOTER]
寄稿:伊藤緑 http://www.midoriito.jp/

<SUGA SHIKAO Hitori Sugar 2020「明日、君の街に歌いに行くよ」(2020年2月27日時点)>

2020年3月16日(月) 神奈川:CLUB CITTA' 開場/開演 18:00/19:00
2020年3月19日(木) 群馬:高崎 club FLEEZ 開場/開演 18:30/19:00
2020年3月20日(金・祝) 山梨:甲府 CONVICTION 開場/開演 18:00/18:30
2020年3月23日(月) 愛知:名古屋 ボトムライン 開場/開演 18:30/19:00
2020年3月27日(金) 京都:京都 KYOTO MUSE 開場/開演 18:30/19:00
2020年3月30日(月) 兵庫:神戸 チキンジョージ 開場/開演 18:30/19:00
2020年3月31日(火) 大阪:なんばHatch 開場/開演 18:00/19:00
2020年4月9日(木) 福岡:福岡 DRUM LOGOS 開場/開演 18:30/19:00
2020年4月10日(金) 熊本:熊本 B.9 V1 開場/開演 18:30/19:00

◆スガシカオ・オフィシャルサイト
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