【ライブレポート】正統的ヴィジュアル系を継承するヴァージュ
2017年の始動直後から、独自の魅力を持ったバンドとして大きな注目を集めているヴァージュ。昨年11月20日にリリースしたシングル「私ノ悪イ癖/白昼夢」で、より高い評価を得た彼らが、1月31日から2月11日にかけて<千>と銘打った東名阪ツアーを行った。
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ツアーファイナルであると同時に遼(Vo)の生誕祭も兼ねた東京公演は、赤羽 ReNY alphaで開催。ライブ当日は多数のファンが集まり、場内は開演前から賑やかな空気に包まれていた。
暗転した場内にダークなオープニングSEが流れ、ヴァージュのメンバーが1人ずつステージに姿を現した。客席から湧きあがる歓声を圧するように轟音が鳴り響き、ライブは「私ノ悪イ癖」からスタート。ヘヴィネスとレトロ感覚のメロディーを融合させた個性的な楽曲と二重人格者のように深みのある歌声と過激なシャウトを自在に使い分ける遼、そして力強くステージに立ってラウドなサウンドを叩きつけてくる楽器陣。強い存在感を放つヴァージュにオーディエンスの熱気は一気に高まり、ライブが始まると同時に客席はヘッドバンギングの嵐と化した。
「私ノ悪イ癖」の勢いを保ったまま、ヴァージュは「僕ノ悪イ癖」や「お人形遊び」などを相次いでプレイ。メンバー全員が激しくパフォームしながら毒々しさと華やかさを纏った楽曲を聴かせるステージは魅力的で、目と耳を奪われずにいられない。ヴァージュの個性と怒涛のリアクションを見せるオーディエンス、ステージ後方/両サイドに映し出される象徴的な映像や歌詞などが重なり合って、洒落た雰囲気の赤羽 ReNY alphaの場内が退廃的な空間に変貌したことが印象的だった。
「赤羽! やれんのかぁ!」という遼のアジテーションを挟みつつ続くセカンドブロックでは「二枚舌」や「ワイセツCandy」、新曲の「万華鏡」といったハードチューンが演奏された。こういったナンバーは、ハイエナジーなサウンドとエモーショナルなメロディー/ボーカルのマッチングを活かしていることがポイントといえる。攻撃性と抒情味を巧みにバランスさせた彼らのハードチューンは強い“惹き込み力”を備えているし、暗く、激しい世界観でいながら美しさを湛えているのも実にいい。こういうテイストを表現する手腕に長けていることが、ヴァージュが“正統的ヴィジュアル系の継承者”と称される由縁になっていることをあらためて感じた。
ライブ中盤ではスローチューンの「深海」と「白昼夢」を続けて披露。情熱的に歌いあげる遼、シンフォニックなギターソロを奏でる紫月(G)、アコースティックギターで楽曲の繊細さを増幅させる氷龍(G)、タイトなリズムとウネリのあるベースを活かして心地いいグルーブを生む或(Dr)と憂璃(B)。激しさを打ち出したライブの中で、バラードをしっかり聴かせられることも彼らの強みといえる。2曲ともに聴き応えがあって、オーディエンスは静まり返ってヴァージュが紡いでいく1音1音に聴き入っていた。
遼が破れた傘をさして歌った「止マヌ雨」や楽器陣にスポットをあてたインストゥルメンタルなどを経て、オリエンタルが香るヘヴィチューンの「ガラシャ」からライブは後半へ。狂騒感を纏った「籠女」と“尖り”を感じさせる「家族ごっこ」が畳みかけるように演奏された。「東京! ぶっ込んでこい!」という熱い煽りを入れながら歌う遼を軸に激しいステージングを展開しながらハイエナジーなサウンドを聴かせるメンバー達。そして、ヘッドバンギングや折り畳み、ジャンプなどを繰り返して一層熱気を高めていくオーディエンス。双方が放つエネルギーは膨大で、場内のボルテージはどんどん高まっていった。
このままさらに加速するのかと思いきや、「家族ごっこ」の後は洗練感を湛えた「オルゴール」をプレイ。この辺りの持っていきかたも実に見事で、熱くいきあげる中で聴く「オルゴール」はより強く心に響く。オーディエンスの感情に揺さぶりをかける流れが決まって、本編のラストソングとなった「海月」ではヴァージュとオーディエンスが完全にひとつになったことをはっきりと感じることができた。
アンコールに応えて再びステージに姿を現したヴァージュは、舞い散る美しい桜吹雪の映像とともにエモーショナルな「春愁」で再びオーディエンスを惹き込んだ後、「かくれんぼ」や「影」「醜劣」「Le ciel」といったアグレッシブなナンバーをプレイ。バンド、オーディエンスともに終盤に入っても全くパワーダウンすることはなく、場内はツアー・ファイナルにふさわしい熱狂的な盛り上がりを見せた。
「Le ciel」を聴かせた後、初めて遼のMCが入った。「最近は、自分はどうして歌っているのか考えることが多くなりました。多分、前向きに生きていけない自分のために歌っていました。僕は自分のことが大嫌いな人間だから、誰にもなにもしてあげられないと思います。でも、音楽を通してもっと多くの人の感情を見てみたい、日常に苦しんでいる誰かのために少しでも歌えたらと思いました。大切な曲ができたので、最後にこの曲を」と。
訥々と語るその言葉に、ヴァージュの新境地が見えた。生きづらさ、この世の儚さ、苦しみ、そういったものから、遼は一歩先に進んだのであろう。このMCの後に披露された新曲の「千」。それはウォームなサウンドと“どうか生きて 強く生きて”というメッセージをフィーチュアした良質な1曲で、オーディエンスに心地いい余韻を与えてツアーを締め括ったのはさすがといえる。
2020年の幕開けを飾る場で、自身の魅力やポテンシャルの高さを十分に見せつけたヴァージュ。今回のライブを観て強く感じたが、彼らは本当にミュージシャンシップの高いバンドといえる。ライブをする以上もちろんメンバー達は楽しむわけだが、彼らは自分達がカタルシスを得ることよりもオーディエンスに良質な音楽を聴かせることを重要視していることが随所で感じられた。そして、彼らはそんなスタンスで勝負できる魅力的な音楽性と高度な演奏力を備えている。ヴァージュの楽曲の表現力や演奏の安定感は抜群で、非常に観応えがあると同時に、音楽を楽しめるライブになっていた。
もうひとつ。一切MCを入れることなく、ひたすら楽曲を聴かせる構成や生誕祭と銘打っていながら和む演出などは皆無といった硬派な姿勢も彼らの魅力といえる。この辺りからは、彼らがヴィジュアル系をヴィジュアル系たらしめる美学や美意識を持っていることがうかがえる。
と同時に、ただ単に正統的なヴィジュアル系の焼き直しではなく、彼らの音楽はスクエアなヘヴィネスや疾走感といった2020年代にふさわしいテイストが活かされている。そんなヴァージュという存在には、気持ちを惹き寄せられずにいられない。
「千」で新たな顔を見せたことも含めて、今後の彼らがより多くのリスナーを魅了して、さらにスケールアップしていくことを強く予感させるライブだった。
文◎村上孝之
写真◎釘野孝宏
セットリスト
2.僕ノ悪イ癖
3.お人形遊び
4.毒苺
5.二枚舌
6.ワイセツCandy
7.万華鏡
8.べランドナリリーにナイフを添えて
9.深海
10.白昼夢
11.止マヌ雨
12.ガラシャ
13.籠女
14.家族ごっこ
15.オルゴール
16.海月
En1.春愁
En2.かくれんぼ
En3.影
En4.醜劣
En5.Le ciel
En6.千
ヴァージュ最新情報
3rd Mini Album Release決定
※詳細後日解禁
2020年5月6日(水・祝)高田馬場AREA
3周年記念単独公演開催決定
※詳細後日解禁
◆ヴァージュ オフィシャルサイト
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