chelmico、ツアーファイナルで「帰りたくない! LINEするね!」
RachelとMamikoの女性二人組によるラップ・グループ:chelmicoが、今年2019年8月21日にリリースしたセカンド・アルバム『Fishing』を引っさげて行った全国ツアー<chelmico Fishing Tour>。追加公演も含めた全7公演を増動員数約5000人を全てソールド・アウトさせ、chelmicoへの注目度の高さを、集客という数字の形でも証明した彼女たちだが、そのツアーの最終公演が、9月29日、赤坂BLITZにて行われた。
◆ライブ画像
会場には10代や20代を中心にしたオーディエンスが集まり、また、男女比もほぼ半々に近く、chelmicoが性別を超えて愛される存在であることを感じさせた。舞台上にライブDJであるTOSHIKI HAYASI(%C)がステージに登場すると、「パーシー!」という声援や拍手が起こり、彼がchelmicoファミリーとして信頼され、愛されていることを伺わせる。それに続くように、暗転した舞台にRachelとMamikoが登場すると、その歓声は更に大きくなり、会場の期待感は最高潮に。
そして二人が舞台上の上手と下手に分かれると、ライブはアルバム『Fishing』の冒頭を飾る「EXIT」からスタート。暗転したままのステージに立つRachelとMamikoのソロパートでは、それぞれにスポットライトが当たり、直立した姿勢でオーディエンスと対峙するようにラップを披露する二人。お互いに視線を合わすこともなく、いつものchelmicoの持つフレンドリーな感触とは違う、シリアスでスリリングな演出でステージは幕を開けた。しかし、視線を交わさなくても、お互いのラップの掛け合いやユニゾンの妙は形になり、二人のスキルと絆の確かさを感じさせる。そして「EXIT」を歌い終わると、一転してカラフルな照明とサウンドで、CMソングにも起用された「爽健美茶のラップ」を披露。会場が一体となってのクラップに合わせて、フックでぴょんぴょんと飛び跳ねるRachel、オーディエンスにハンズアップを促すMamikoと、それぞれのスタンスで、ライブへの喜びを形にする二人。「今日はツアー・ラストですよ! だから楽しみましょう! chelmico好きな人は手を挙げて!」とMamikoが促すと、会場の全員が手を挙げ、その手が挙がったまま、chelmicoの中でも屈指のパーティ・チューンである「switch」に流れ込み、Rachelの高速ラップの畳み掛けと、Mamikoのメロディアスなフロウに、会場のテンションも一気に盛り上がる。フックでの可愛らしい振り付けをコピーするオーディエンスも多く、ハッピーな空気感が会場を包んでいく。そしてお笑いトリオ:トンツカタンの森本晋太郎をナレーションに迎えた「BEER BEAR」など、その空気は更に明るくなり、その空気感を冷まさないように「みんな気持ちよく過ごせてますか? なんかあったら相談乗るよ!」と、面白味をまぶしながらちゃんとオーディエンスを気遣う二人の優しさとステージ・コントロール力には感心させられる。また、オーディエンスも真似しやすい指揮のような振りつけのある「ひみつ」や、楽曲に漂うメランコリーな心模様や世界観を、お互いにすれ違ったり離れたりする動きでも表現する「Navy Love」など、パフォーマンスとしてのアプローチも随所に織り込まれ、ライブだからこそ形になる表現が、これまでのライブよりも格段に増えているのが、今回のツアーでの非常に興味深いポイントであり、成長だろう。そしてそういったメランコリーさであったり、心のひだを描くような一連の楽曲を「仲直り村」で回収する流れも心憎い。
そして、スタンドマイクを立てて「午後」や「Balloon」をしっとりと聴かせつつ、Mamikoの「しっとりしたあとには明るくしたくなるよね」という言葉から、オーディエンスに最近嬉しかったことを募る二人。「給料が上がった」「免許が取れた」「誕生日」という観客からの言葉に「ピース!」と答え祝福し、「そんなみんなにこんな曲を捧げます」という言葉から「OK, Cheers!」。ステージと観客が一体になってのハンズ・アップとフィンガー・スナップ、そして「OK, Cheers!」というメッセージの合唱によって、押し付けがましくなく、それでも非常に心地よい喜びが会場を包んでいく。「私達が初めて作った曲をやりたくて」という言葉から「ラビリンス’97」へ。過去曲でありながらもオーディエンスの盛り上がりは非常に高く、chelmicoのリスナーがしっかりと彼女たちの楽曲に向き合っていることも感じさせられ、アーティストとリスナーの幸せな関係が築かれていること伺わせる。Mamikoの「ここからどんどん盛り上がっていきますよ!」という言葉に、Rachelも「ツアーファイナル! 寂しい! でもめちゃくちゃ踊りましょう!」と続け「Highlight」、そしてオーディエンスもタオルを回して「Player」と、ライブの盛り上がりは最高潮に。そして「リハーサルから泣きそうになってたんだけど、頑張って涙腺を閉じてたんですよね」というRachelの言葉に、「『ラビリンス’97』で始まった私達がこんな場所で出来るなんて思わなかった」と二人の「これまでといま」を振り返るMamiko。そして「色んな気持ちを込めて『Fishing』最後の曲を歌います、「Bye」」と、ゴスペル調の楽曲を丁寧に二人は歌い上げ、サビは会場一体になっての大合唱で、舞台は幕を閉じた。アンコールではツアーグッズに着替えた二人が登場し、「久々に演る曲です!」と「Oh!Baby」。この曲も含め、興味深いのはchelmicoのラップをなぞるオーディエンスの多さだろう。そこからは、chelmicoの楽曲が一緒に歌いたくなる性質を持つということと同時に、二人のラップがなぞりたくなる、ラップ欲を刺激する存在であることも感じさせられる。
そして続くMCでは「次回の全国ツアーが決定しました!」と発表するRachel。<chelmico 感謝祭Tour 2020>と題されたツアーは、来年3月1日に横浜よりスタートし、全国10箇所を2ヶ月かけて回る全国ツアー。そして最終日となる5月15日のEX THEATER ROPPONGIは、今回の赤坂BLITZを超えた最大規模のソロ・ライブであり、会場からは大きな祝福の拍手が起こった。
ラストのMCでは、Rachelが「皆さんやスタッフに本当に感謝しています。もうそれしか言えない」という言葉に続いて、「マミちゃん、うちら友達になれてよかったね」とMamikoに呼びかける。そして「……恥ずかしい、楽屋で言ってよ」と言いながら、お互いに拳をぶつけあうという、照れ隠しと友情を感じさせるアプローチにも、更に大きな拍手が会場から起こった。
そしてライブのラストは、彼女たちの定番曲である「Love is Over」。大合唱と拍手に包まれた会場を去りがたい二人は、「帰りたくない! LINEするね!」とオーディエンスに呼びかけ、ステージを後にした。スキルフルなラップと愛らしさに加えて、パフォーマンス力も手に入れた二人の「友情」が、どこまで届いていくのか、強く期待を感じさせられるライブだった。
テキスト:高木JET晋一郎
撮影:横山正人
■<セットリスト>
M2.爽健美茶のラップ
M3.switch
M4.BEER BEAR
M5.ママレードボーイ
M6.ひみつ
M7.12:37
M8.Navy Love
M9.Timeless
M10.仲直り村
M11.午後
M12.Balloon
M13.OK, Cheers!
M14.Summer day
M15.ラビリンス'97
M16.Highlight
M17.Player
M18.Bye
〈ENCORE〉
EN1.Oh! Baby
EN2.ずるいね
EN3.Love is Over
【Spotify】
chelmico Fishing Tour Final 2019.9.29 @BLITZ AKASAKA
https://twitter.com/warnermusic_jp/status/1178248631524052992?s=21
■<chelmico 感謝祭 Tour 2020>
3月7日(土) 福岡 DRUM LOGOS
3月8日(日) 熊本Be.9 V2
3月14日(土) 岡山 YEBISU YA PRO
3月15日(日) 京都 MUSE
3月20日(金・祝) 札幌 Sound lab mole
4月4日(土) 仙台 CLUB JUNKBOX
5月8日(金) 大阪 BIGCAT
5月10日(日) 名古屋 ReNY limited
5月15日(金) 東京EX THEATER ROPPONGI
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◆chelmico オフィシャルサイトこの記事の関連情報
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