【インタビュー】ジョーイ・テンペスト「ある意味、これも新たなスタートだね」
スウェーデン出身のヨーロッパは、1980年代北欧メタルの先駆者として日本ではいち早く火が点き、1986年『THE FINAL COUNTDOWN』での大ブレイクを果たしたバンドだ。1990年代には長きに渡る活動休止という事実上の解散も経たものの、2004年に再結成アルバムをリリースし、以降はコンスタントに活動を続けている。
近年は<LOUD PARK 13><Kawasaki Rock City>などへ出演、2019年4月に実現した久しぶりの単独公演は、3夜連続のメニューが異なるスペシャルな内容となった。
来日公演の会場となった川崎クラブチッタでは、定刻になると待ち切れない満員の場内から歓声が沸き起こり、それに応えるようにメンバーが登場。お馴染みの白いマイクスタンドを華麗に操るジョーイ・テンペスト(Vo)を中心に、まずはニューアルバムからの幕開けとなる。ジョン・ノーラム(G)のひた向きなプレイも変わらず、ストラト/レスポール/フライングVと楽曲の時代ごとに使い分け、ジョーイもレスポールで何度かギター・ヴォーカルを披露、時に2人のツインリード場面も見所となった。
屋台骨となったイアン・ホーグランド(Dr)とジョン・レヴィン(B)のリズム隊も非常に安定し、今回ハモンド場面も多かったミック・ミカエリ(Key)とともにコーラスワークも欠かせない。初期曲も新鮮なアレンジで蘇り、新旧どの楽曲にもフルコーラスで合唱するオーディエンスへ、ジョーイは何度も日本語で感謝を伝えた。掛け合い部分では「Beautiful!」とのお褒めの言葉と、「ジョーイデス」と自己紹介する場面も和やかだ。オーラスでは客席に飛び降りる大サービスもあり、平成最後に相応しく「The Final Countdown」で締めくくられた三夜は参加者の新たな記憶に刻まれたことだろう。
バンドの中心人物であるジョーイ・テンペスト(Vo)が、4月27日のライブ後にインタビューに応えてくれた。
──久しぶりの単独公演となりましたね。
ジョーイ:とても楽しいし嬉しく思っているよ。それに川崎クラブチッタが凄く好きなんだ。天井の高さもあるし、お客さんも近くに感じられるわりに、大き過ぎず小さ過ぎず、ロックンロールショウには最高の場所だよね。
──ニューアルバム『WALK THE EARTH』は、前作からのライヴァル・サンズのプロデューサーのもと、有名なアビーロードスタジオで作られたそうですね。
ジョーイ:もともとライヴァル・サンズのアルバム『PRESSURE & TIME』が凄く気に入っていたので、マネージャーを通じてプロデューサーであるデイヴ・コブへ連絡をしてみたんだ。そしたら、デイヴも若い頃によくヨーロッパを聴きながらドラムを叩いていたって言うんだよ。それでまずはストックホルムに来てもらって、一度やってみようという話になり、それで前作『WAR OF KINGS』のプロデュースにつながったんだ。良い感じのコラボレーションができたけど、また改めてデイヴを呼んでやるとなると、彼のスケジュール的にも難しくてなかなか話が進まなかった。それならNOと言えないオファーをしようと思って、「アビーロードでどうだ?」と提案したんだ(笑)。
──今回もまた違うアプローチを感じましたが、意識したところを教えて下さい。
ジョーイ:これまでのアルバムを経て徐々に変わってきたとは思うんだけど、今回もわりと早めに曲を書いて、レコーディングも2週間でやった。ライブ録りっぽい感じで一気に録って、その中からベストテイクを選んで仕上げていくオーガニックなやり方なんだけど、実は『BAG OF BONES』の時に行ったケヴィン・シャーリー・プロデュースのやり方なんだよ。そのやり方と今回のデイヴもとても近いものがあって、どちらもルームマイクをたくさん置くんだよ。機材の近くに置くのではなく、スタジオ全体の音を使うんだ。決めるところは素早く、あとは流れにも任せて楽しくできた。結果として、僕らの演奏もよりルーツっぽい深みのあるものになった。アルバムの枚数を重ねた事もあるけれど、ライブの回数も大きいと思うし、頑張らなくても自然に表現できるようなところに僕らは来ていると思う。
──ミックの鍵盤もピアノとハモンドがメインとなり、ジョンの音色も含めディープ・パープルのようなサウンドに感じましたが、いかがですか?
ジョーイ:ディープ・パープルはとにかく影響の大きかったバンドだからね。特に『PERFECT STRANGERS』は、僕がストックホルムで観たディープ・パープルの初めてのツアーで、まだ子供だったけど5列目あたりでワーワー言って観たよ(笑)。やっぱり15歳から25歳くらいの間に受けた影響ってその人のそのものになるよね。深い部分にずっとそれが残って行くんだと思う、だから未だに曲を書くとそれが自動的に出てしまう。いま僕らもツアーバンドになっていて、自然な自分たちの姿がどんどん出て来ているから意識はしていないけど、やっぱりこうなってしまうよね。
──まさに『PERFECT STRANGERS』の頃を感じました。
ジョーイ:そうでしょ?あれは1984年頃だよね?僕らのバンドがスタートしたばかりで、あのライブを観た事がとても大きかったし、本当に重要だった。
──ライブでも、初期曲のアレンジがディープ・パープルぽくなっていましたね。
ジョーイ:「Memories 」などはイントロから変えたからね。最初スローな感じから盛り上げて行くのが好きなんだ。ツアーが長くなると途中で思いつきでやった事がそのまま続けて行く事になったりも多いんだよね。「Ready or Not」もね。
──時折、ジョーイにもイアン・ギランを感じましたよ。
ジョーイ:クール。それは嬉しいね。イアン・ギランやデヴィッド・カヴァーデイルは良く聴いていたし、ホワイトスネイクもミッキー・ムーディーが居た頃のツアーやレインボーもシン・リジィも全部同じストックホルムのアイススタジアムって会場で観たんだ。それを観て翌日のリハーサルをみんなで頑張っていたんだよ(笑)。
──アルバムタイトルは、このアルバムで原点である地球に戻って来たという意味でしょうか?
ジョーイ:その説もいいね。『WALK THE EARTH』って言葉の表現ではあるんだけど、今回は高揚感のある曲が欲しいと思っていて、みんなで一体感を味わえるようなね。そしてみんなが歩いているこの地球、同じ空の下、というような事を伝えたかったんだ。
──再結成された時の『START FROM THE DARK』の頃を思い出しました。
ジョーイ:確かにそうかもしれない。ある意味、これも新たなスタート…未来に向けてのスタートという事だよね。『START FROM THE DARK』は僕らにとって本当に新しいスタートだったけど、今回はここから先へというスタートだね。実際「Pictures」や「Turn to Dust」のような毛色の違う曲もあるでしょ?制作過程においてもインスピレーションの湧くままに、楽しんで新しい事をどんどんやろうと思って作ったアルバムで、発想を全て受け入れながら作ったんだ。「Wolves」もそう。ちょっと前の僕らだったら、こういう事はやらなかったかもしれない。
──キー・マルセロ(G)時代の2枚のアルバムからもライブで演奏し続けているのは、バンドの代表曲だという思いがあるからでしょうか?
ジョーイ:うん、5人のメンバー全員がそう思っているよ。5人全員が一致してやりたいという曲があれなんだよ。毎回ニューアルバムの曲も加えるとなるとみんなの希望を全部入れるのも難しいけど、今回の日本公演はとてもユニークな内容なんだよ。毎晩セットリストを変えるなんて他のバンドでもそうはやらないだろうからかなりクレイジーだけど(笑)、これもチャレンジであるし自分たちにとってもエキサイティングなんだ。
──本当に素晴らしいショウでした。
ジョーイ:日本はとても特別な国なんだ。長年、僕らの友人でいてくれているみんなに感謝しているよ。マサ・イトウが1983年に僕らを見つけてくれて、1984年にはプロモーションで来日して『WINGS OF TOMORROW』を紹介できて、それ以来ずっとみんなに良くしてもらっている。『THE FINAL COUNTDOWN』以前に僕らを応援してくれていたのは、母国スウェーデンと日本なんだよ。世界の多くの国は、『THE FINAL COUNTDOWN』で僕らを知ったからね。だからスウェーデンと日本には特別な思いがある。そして日本のファンはギタープレイも好きでしょ?それが僕は嬉しいんだよ。そして客席に飛び込んでも日本のファンはリスペクトを持って接してくれる。ちゃんと「ここは大丈夫そうかな?」と見てるんだ(笑)。場所によってはやらないよ(笑)。本当にありがとう。
取材・文:Sweeet Rock / Aki
写真:Yuki Kuroyanagi
<EUROPE ~ TOUR THE EARTH 2019 ~>
【4/26】
1.Walk The Earth
2.The Siege
3.Rock The Night
4.Nothin' to Ya
5.Sign of The Times
6.Wasted Time
7.Open Your Heart
8.Ready or Not
9.Turn to Dust
10.Scream of Anger
11.Carrie
12.War of Kings
13.Hole in My Pocket
14.Dreamer
15.The Second Day
~ Drum Solo ~
16.Stormwind
17.Ninja
18.Dance the Night Away
~ Encore ~
19.Superstitious
20.Cherokee
21.The Final Countdown
【4/27】
1.Walk The Earth
2.The Siege
3.Rock The Night
4.In the Future to Come
5.The King Will Return
6.Sign of The Times
7.Got to Have Faith
8.Hero
9.Ready or Not
10.Turn to Dust
11.Seven Doors Hotel
12.Paradize Bay
13.Carrie
14.Start from The Dark
15.Sprit of The Underdog
16.Wake Up Call
~ Drum Solo ~
17.Ninja
18.Memories
~ Encore ~
19.Superstitious
20.Cherokee
21.The Final Countdown
【4/28】
1.Walk The Earth
2.The Siege
3.Rock The Night
4.Seventh Sign
5.Prisoners in Paradise
6.Sign of The Times
7.Catch That Plane
8.New Love in Town
9.Ready or Not
10.Homeland
11.Turn to Dust
12.Last Look at Eden
13.Vasastan
14.Girl from Lebanon
15.Carrie
16.No Stone Unturned
~ Drum Solo ~
17.The Beast
18.Ninja
~ Encore ~
19.Superstitious
20.Cherokee
21.The Final Countdown